※この作品はR-18です。

触手SFVRゲーム世界に転生したのにレベルが高すぎる   作:NO SKILL NO LIFE

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謝膣祭

 ミニヨモギモチとクチナシを船に迎え入れてから早一ヶ月。

 あの軍将校の一件以降たびたび回ってくるようになった暗殺依頼を適度に受けつつ、普通の病巣(ネスト)討伐依頼もこなしていたこの一ヶ月間だったけど、ここである問題が浮上した。

 

「──メシが不味い」

「そう? とても美味しいけど」

「人間とわたしたちの味覚はちょっと違うからね~」

 

 ゲームの時、食事関連の家具の一切を集めなかったせいか、宇宙船に備わっているフードプロセッサーは「見た目だけバラエティ豊かだけど味は一緒」みたいなものしか作れない。

 それがマンネリ気味……いや、正直に言おう。

 リイカの家で食べた料理が忘れられないだけだ。十数年ぶりに感じた味という快楽を求めているだけ。

 

「こう、お得な……俺よりレベルが高くて、悪性病巣(ネスト)で、口に含むと味も良いやつとか……」

「え゛、私達を食べる気?」

「ご飯が美味しくないという話題で真っ先にわたしたちを食べる発想に至るの、恐ろしいですね……」

 

 いやまぁ、あくまでこの世界は宇宙触手機械姦VRだし。

 下半身も気持ちよくて舌も心地いい、がベストじゃん。

 

「ああ、ですけど、料理をする病巣(ネスト)の噂なら聞いたことありますよ~」

「座標くれ」

「それが、彗星に住んでいるらしいんですよね~」

 

 ……流石は病巣(ネスト)。生物としての常識が通じない。

 なに彗星に住むって。あれの大気環境どうなってるかわかってんの?

 

「ヨモギ、その病巣(ネスト)って解体屋(バランシ=アエガ)の話?」

「そうそう~」

「あいつの料理って、人(・)間(・)料(・)理(・)じゃなかった?」

「え~? そうだっけ~?」

 

 おっと。

 ……え、グロい話? それとも女体盛り?

 病巣(ネスト)は殺戮を目的としていないはずだけど……エグい話か?

 

「どの道病巣(ネスト)の料理人だから、人間の舌には合わないと思うけど……」

「有名なやつなのか。星から出たことのないミニヨモギモチが知っている程度には」

「有名っていうか、古くからいるから、本能に刷り込まれているっていうか。……ああ、だから、レベルは相当高いはずよ」

「いいな。んじゃ情報収集をしよう」

 

 高速で動く彗星であろうと関係はない。

 こちとら伝説の病巣掃除人(ネストスイーパー)。相手が病巣(ネスト)なら見つけられない道理はない。

 

 コレクト44の全コネクションを使って見つけ出してやろう!!

 

 

 見つけた。

 けど。

 

「へい、膣出汁スープいっちょ上がりぃ!」

「精液うどんまだか! 茹で遅れてんぞ!」

「一番搾りオーダー入りましたァ! 両乳同時のオーダーでぇぃす!」

 

 ……とんでもない場所に来てしまった、かもしれない。

 

「ここ……どうなってるの? 病巣(ネスト)と人間が当然の顔をして一緒に過ごしてる」

「冥宇宙(ロウワー・ユニバース)。前に奴隷売買の話はしただろ? ここはそういう商いが行われている〝宇宙のごみ溜め〟で、掃除人(スイーパー)崩れ、軍人崩れ、苗床上がり、触手の快楽に溺れたやつ……そんで、人間を取り込むほどのレベルじゃないけど理性はまだ残していたい病巣(ネスト)とか、あんたたちみたいに別の目的を有する触手の集まる場所」

 

 速い話が宇宙のスラムだ。アンダーグラウンド。

 奴隷売買に始まり違法薬物や武器の密輸なんかも行われている。

 軍としてはここの存在を容認できないけれど、規模が規模なので潰せずにいるグレーゾーン。

 

 今俺とクチナシがいるのはそんな冥宇宙の片隅。

 店名、『らァ麺解体屋』。……彗星に住んでいるというのは少し前の話だったらしく、今はここでラーメン屋を営んでいるという情報を得て赴いた次第。

 

 ──店内で両手足を結び付ける形で吊るされた女性やふたなり。店員だろうやつらが彼女らに近付いてその体液やらなにやらを搾り取り、それを調理して客に出す。女性たちからは助けてほしそうな空気は感じられない……むしろ自分の体液を客に食われて喜んでいる節がある。

 とんでもないところに来てしまったなぁ。

 

「お姉さんら、注文しないなら席空けてくれ!」

「あー……そうだな」

 

 色々確かめたくて席に着きはしたけど、これは食べられ──。

 

「ゆるゆる子宮直搾りジュースと、あっさり精液つけ麺一つ。つゆは一番若い子で」

「あいよ!」

「……マジ?」

「病巣(ネスト)ですもの。あなたもミルクだけでも頼んだら?」

「じゃあ……生乳搾りジョッキで貰うか」

「炭酸の有無は?」

「無しで」

「あいよー!」

 

 母乳をジョッキで呑むだけでもアレなのに、炭酸て。

 どう、なんだろ。ちゃんと人間も楽しめる味になってんのかな……俺以外にも人間いるけど、こいつら味目的なんだろうか。ただのド変態なんじゃないのか……?

 

「っていうか、味なんか感じてたのか。以前俺を犯した時とかも」

「んー。今ほど理性があったわけじゃないから朧気だけど……あなたは極上の味だったと思う。特に子宮壁が最高の味してて……もし私達に消化器官があったら、食べちゃってたかもしれないくらい」

「あー。まぁ俺の子宮は特別製だからかもな」

 

 しかし、浄化されることを「美味しい」と感じるのか。

 その辺……というかプレイヤーの体質周りはまだまだ全然情報解禁されてなかったからなぁ。どっかの研究所で培養されたってくらいで。

 色々そういうの調べて回るのもいいかもなぁ。

 

「……」

 

 視線。

 

「ん、どうしたの店長さん」

「いや……ちょいと話が聞こえちまってよ。姉ちゃん、そんなに美味ぇ身体してんのか」

「知らんが」

「保証するわ。とろけるほど美味しいと」

「……金なら払う。要望も全部聞く。──どうだ、姉ちゃん。ここで食材になってみる気はねえか」

「あー……と?」

「命の危険性は無ぇ、約束する! ああ自己紹介が遅れた。おれは伝説級(レジェンディア)病巣(ネスト)の解体屋(バランシ=アエガ)ってなもんだ。この世に生まれ落ちてから七千年、人間の身体から抽出できる味ってモンにハマり、究極の美味を追求し続けてきた。……が、最近頭打ちってもんを感じててよ」

 

 ああやっぱり俺っ娘いるじゃん、なんて感想は彼方へ。

 ワードが色々強すぎて全然頭に入ってこん。伝説級(レジェンディア)だけわかった。

 

「食材の厳選……どんな食材(人種)でも美味しく調理してやるってのがおれの売りだが、料理人としてのレベルアップを考えるなら、一度は極上の素材を使って最高のらァ麺を作ってみてぇ。……頼む! この通りだ!」

 

 大勢の客がいる前で土下座までする病巣(ネスト)。

 あんたらに頭部って概念ないんだから土下座もクソもねーだろ。

 

 で。

 

「あー。あんた。人間の舌に合う料理ってのはつくれんの?」

「金をとるほどとは思ってねえから出してねぇが、作れはする」

「んじゃ代金はそれで。メシを食いたくて俺はここまで来てんだ」

「……ってことは、引き受けてくれんのか!」

「名前と……あと顔出さなきゃいいよ。俺の顔はちと売れすぎていてな。なんらかのプロパガンダに使われかねん」

「もちろんだ! 約束する! いや、誓う!」

 

 なんだかなぁ。

 病巣(ネスト)の持つ愛の形は多種多様だけど……すげーのもいたもんだよ、本当に。

 

 

 それなりの期間拘束されるかもしれないということでクチナシには戻ってもらう……つもりだったのだけど。

 

「嫌よ。私だって食べてみたいもの。あなたで作る究極のらーめん」

「わたしもちょっと興味があって~……出てきちゃいました~」

 

 というワケで、このラーメン屋の社宅に泊まることになったらしい。オープンだな色々と。

 

 で、俺はというと、まず風呂に沈められて、触手で全身を……膣内や腸内まで洗浄された。気持ちよかった。

 その後なんらかの調味料が入っているらしいジャグジーに入れられて下味をつけられ、ようやく先程見えていた女たちと同じ格好……まんぐり返しのようなポーズで両手足を結ばれ、ペニス、膣、尿道、肛門なんかを突き出した状態で吊るされる。

 注文の多い料理店チックだなーとか思っていたけど、チックもなにもまさにそういう店だった。

 

 先程のジャグジーに入れられていた調味料が媚薬の役割も果たしているのか、何もしていないのにずんぐり濡れる膣。

 そこからたらーりと垂れた愛液を小皿に救い、味噌汁の味でも確かめるかのように口へ含む解体屋。

 

「……うめぇ。こりゃ確かに……極上だ」

「そんなものなのか」

「快楽を感じてねえ状態の愛液でこれほど美味い人間は初めてだ。これでマジイキした時の本気汁がどれほどになるのか楽しみでならねえ」

 

 快楽の度合いで味が変わるのか。すごい、本当にどうでもいい知識が増えていく。

 

「ああただ、クチナシは子宮壁の話をしてたけど……一応、俺の子宮は危ないぞとは言っておく」

「まだ大丈夫さ。おれの方がレベルが上だ。ただ、ぐずぐずしてっと抜かされるからな、試行錯誤はできるだけ減らす」

「伝説級(レジェンディア)だ、その辺はわかってるか」

「オウ」

 

 ほそっこい触手が膣内に入ってくる。気持ちいいではなくくすぐったいが勝る触手。

 そいつは膣道の中腹辺りで止まって……ぐりゅんと内壁を押し上げた。

 

「う……ぁ、ぉ、は……?」

「経験の浅い病巣(ネスト)は陰茎脚……女でいう陰核根を後付けで足しちまうんだが、おれたちの手が入った人体ってのはわずかに味が落ちる。食材そのままの味を活かすには、もとからあるモンを使った方が良い」

 

 腹の、奥で……違和感が響く。

 なにかが掴まれている。これは……。

 

「人体の神秘、になるのかね。あんたらふたなりって存在は、まるで女に後からペニスを付け足したかのような構造をしてるんだ。ペニスが元からあってそこに膣や子宮を付け足した、ってわけじゃなく、女にペニスやそれに準じた機能を付け足した存在。──だからかはわからねえが、ふたなりにあって女には無い構造体が幾つか存在する」

 

 触手によってそこをにぎにぎされるたび、ペニス全体へ甘くとろけるような痺れが波及する。

 なんだ。これは、何を揉まれている。

 

「その内の一つがこれだ。人間の医学書を漁って名前を調べてみたが、遍く宇宙じゃ呼び名が様々でよ。とりあえず一番しっくり来たのを使ってるんだが……今触ってる部分を半月脚という」

「ん、ぅ、あ、あっ」

 

 驚く。まるで……本当の女性のような喘ぎ声が出ている。

 

「膣道と尿道の二つを包み込むように設置された一対の半月型の筋肉。勃起する竿と上下する子宮。そこに繋がる精嚢と卵巣のそれぞれが間違っても絡み合わないよう、両者を必要な状況に応じて動かすって役割を持っているコイツは、その性質上性の快楽をダイレクトに受け取る仕組みになっている。そうしないとすぐに動かせないからな」

「あ、あふっ、ぉ、おお……!」

「女のクリトリス。ふたなりの亀頭。それらの感じる快楽を乗算した快楽値。半月脚への刺激は、非情に上質な快楽を食材へ与えることができる」

 

 激しい責めでもなければ、身体が改造されているわけでもない。

 ただ──気持ちいい。初体験だ、これは。

 

 来る。

 

「イ、ぐ……っ!」

 

 噴き出る愛液。

 それらすべてが鍋へ受け止められる。

 

「よし……いいぞ。さぁじゃんじゃん出してくれ。この鍋がいっぱいになるまで」

「お、オ゛ぁ……ぅっ、お、はぁぁっ」

 

 ぎゅむぎゅむと握られ液を吐き出す。灼熱に似た快楽が下半身を襲い、力を入れるということができなくなる。

 

「……精液の方も煮立ってきたな」

 

 掴まれる竿。解体屋は尿道口を覗き込んで笑みを零す。

 そして、二股に分かれた触手を……思い切り尿道へ突っ込んだ。

 

「ぁ……んぁああああっ!?」

 

 完全に嬌声だった。自分の口から出たとは思えないほどの……キャラクリエイトで聞いた時以来の嬌声。

 尿道責めはよくやられているのに、なんでこんなに気持ちいい。

 

「まだまだ、これで驚いていては気絶してしまうぞ」

 

 掴(・)ま(・)れ(・)た(・)のがわかった。

 尿道の中で、なにかが。

 

「そら……どこまで伸びるか!」

「お、ぉぉぉぁああああっ!」

 

 ずりゅりゅりゅりゅっと引き出されるは精液。二股の触手は尿道の中で精液を……半固形に固まった精液の先端を掴んでいたらしく、今それが、その全てが引き抜かれた。

 触手を産む快楽にも似た、けれど体験したことのない長い長い射精感。

 引き摺り出した精液麺をざるに入れた解体屋。彼女は俺の前に戻るなり、俺の乳房へ搾乳機の役割をするのだろう触手を吸い付かせる。

 

「良いコシの麺が取れたな。んじゃ吸うぞ……おお、良い分泌量だ。下味もしっかり染み込んでる」

「はぁ、ぁあ、あぁ、ぁぁあ、あぁぁあぁあ」

 

 まるで人間の舌のような触手が乳首を舐めしゃぶり、ちゅうちゅうと吸い付いて母乳を奪っていく。

 時を同じくして肛門へも触手が入り込み、こちらは普通の触手と同じような責めを開始する。

 

「しばらくはこれの繰り返しだ。鍋いっぱいの愛液(スープ)。らァ麺の命たる精液(麺)。一緒に飲む母乳(エール)。麺の硬さや太さは精液の濃度で決まる。とはいえ今回は客に出すモンじゃねえからな、そこまで大きくは変えねえ。究極の一を見つけるための試行錯誤に使うだけだ」

「あっ、は、っはぁ、ぁああっ」

「スープが仕上がったら今度は具材を産んでもらうからよ、それまでしばらく半月脚の快楽を楽しんでてくれ」

 

 触手の激しいプレイでしかイけないと思っていた。

 けど、これは。確かにヤってきているのは触手だけど……これは、これは。

 

「イ゛……!」

 

 またイく。姿勢上、その快楽を逃がすこともできずに。

 

 ふと。

 視線を、感じた。

 

 顔にかけられた布には小さな穴が開いていて、周囲からはこっちの顔が見えなくなっているけど、俺からは周囲を見ることができる仕組みになっている。

 ようやく見えた。

 

 俺の身体に突き刺さる、「エロい」ではなく「美味しそう」という視線。

 病巣(ネスト)も人間も関係ない、ただただひたすらに食材を見る……捕食者の顔。

 

 ──やばい、これ、ちょっとハマるかもしれん。

 

 現実じゃ絶対に叶わなかったあまりにも堂々とした露出。羞恥触手姦。

 

「おうお客さんら、あの子は今日入った極上モンでね。らァ麺の方はまだ途中だから出してやれねえが、生乳一番搾りなら出せる。──どうだい?」

 

 注文が殺到する。怒号のようなオーダーが入る。

 それを受けてか搾乳機のパワーが上がって、半月脚を責める触手の動きも激しくなった。

 見るからに荒くれ者な女の子。改造ペニスを持つふたなり。場違いなほど美しい容姿をした少女に、すまし顔であっても侮蔑の目を隠さないメイド。

 

 色んな目が、俺を見て。

 

「ぁ、ぁっ、ああ、イぐっ……ぅ」

 

 ああ、叶うことなら、全身隅々、つま先から脳天まですべて……美味しく召し上がってくれ……。

 

 

 

 突っ伏す。普通のラーメンを食いながら。

 

「そんなに気にしないでいいでしょ。あなたのらーめん本当に美味しかったし」

「ね~」

「うるせー……」

 

 三日後、俺は解放された。出来上がった〝至高のらァ麺〟は解体屋の目に涙を浮かべさせ、何か知らんがとんでもないインスピレーションを与えたらしい。

 俺から取れた出汁で作ったラーメンを食べたのは解体屋、クチナシ、ミニヨモギモチ、そんでどこぞから参ったらしいやんごとなきお方とかいう人だけ。やんごとなきお方に関して、当初は断ろうとした解体屋だったけど、その熱量に負けて食べさせてしまったのだとか。めっちゃ謝られた。

 そんなことはどうでもいいのだ。どうでもいいと返したし。

 じゃなくて……身体に染み込んでいた媚薬。あれにはどうやら、「自分から出たものが美味しく食べられると嬉しくなる」という催眠に似た思考をエロステータスとして植え付ける効果があったらしく、つまりなんだ、見られて嬉しいとか食べられて嬉しいとか、美味しく召し上がってくれとか。

 ああいうトンデモ発想は自前じゃないって話。

 

「ね、時々で良いからあなたのおつゆ吸わせてよ。ちょっとクセになっちゃった」

「ならあんたも色々レベルアップしてくれ……あんたのダンジョン結構好きだったからな……」

「努力はするわ」

「わたしも好きになっちゃいました~。店長さんから精液固めのコツも教えていただいたので~、船でも麺づくりができますよ~」

「そんなお家で簡単インスタントみたいな……」

 

 なんにせよ、まぁ、当初の目的は果たせた。

 人間料理に比べたら片手間だったとはいえ七千年の歴史が詰まったラーメン屋の人間用ラーメン。

 バリ美味い。

 

「……ちなみにミニヨモギモチ。俺のラーメン食ったらレベルが上がったとかそういう都合の良いことは」

「ないですね~。美味しかったですけど」

「まぁ、そうか。これができたら月一とかで食材になりにいってもいいんだけどな」

「レベルが上がるらァ麺ねぇ。なるほど、そういう着眼点もあるのか……」

「うぉ」

 

 びっくりした。普通に話入ってくるじゃん。

 

「いやなに、月一で食材になってくれる、なんて聞いた日にゃ、是非ともって話でな。もし本当におれがそういうらァ麺を開発したら、専属契約を結んでくれるか?」

「あ、ああ。まぁ開発できたらな」

 

 レベルに関しては絶対法則みたいなところがあるから無理だと思うけど。

 ……早まったか?

 

「ありがとうよ! ……で、まぁ、なんだ。恩を仇で返す形になっちまうかもしれないんで、本当は嫌なんだが……」

「ん?」

「さっき話した、やんごとなきお方がな。お前さんに会いたいそうで……どうだ、会ってくれるか?」

 

 ええ?

 生産者表示に興奮するタイプの方ですか……?

 

 

 その子は、俺が食材になっている時に見たあの場違いなほど美しい子だった。

 黒髪ロングで、歳の頃は十五、六。隣にいる済まし顔のメイドは何も言わずに佇んでいるだけ。

 

「初めまして、とーっても美味しい食材さん! 特に中イき膣出汁スープが美味しくて、二杯も頼んでしまったわ!」

「……帰っていいか」

「嬢ちゃん、おれ言ったよな。頼むから敬意を持ってくれ、って」

「あら? 食材さんにとって、美味しいって言われるのは嬉しいことなんじゃ……どうしましょうミランダ、わたくし、失敗してしまったかもしれないわ」

「素晴らしいことでございます。では失敗したのでこのような汚らわしい場所からは一刻も早く離脱し、お国へ帰りましょう」

「あの、ごめんなさい。バランシ=アエガさんから、ここの食材の方々は好きで食材になっていると聞いていて……だから、勘違いしてしまったの。どうか気を悪くなさらないで」

 

 依頼の管理ウィンドウにNewの文字が出る。

 えぇ……マジ? これクエスト?

 

「レフォだ。こっちはヨモギモチとクチナシ」

「初めまして~」

「初めまして、半分同胞さん」

 

 キッとクチナシを睨みつけてくるメイド。

 

 ──睨み返しておく。

 

「っ!?」

「っと、どんぱちは余所でやってくれ。……すまねえな、世話になったってのに、やっぱり迷惑を……」

「構わんさ。冥宇宙(ロウワー・ユニバース)じゃ日常茶飯事だろ。んじゃ店に被害が出る前に移動するかね」

「……そうだ、せめてもの礼に、専属契約とは関係なく……ここへ立ち寄ったら毎回らァ麺無料で一杯馳走するよ。そうだ、それがいい。人間用らァ麺も味を上げておくから、楽しみにしててくれ!」

「おお、そりゃ良いな。んじゃまた来るよ」

「オウよ!」

 

 いいじゃん。マジで嬉しいよそれ。

 料理が食べたくなったらいつでも行けるラーメン屋とか、普通にめっちゃいい。

 

 なんてさっぱりとした別れを挟みつつ、少し場所を変える。

 

 冥宇宙(ロウワー・ユニバース)でもひと気のない場所へ。

 着くや否や、少女の前に出て戦闘態勢に入ろうとしたメイド。ただしそれは少女自らに制される。

 

「なんだ、やらんのか。……じゃ、あんたらの自己紹介もらってもいいか?」

「ええ、遅れまして申し訳ございません。わたくし、宇宙均衡防衛機構軍第二戦術部隊隊長を務めます、アルエノ=ロ=ユニバースと申します」

「……そのメイド、ミランダです」

「お会いできて光栄です──伝説の病巣掃除人(ネストスイーパー)、コレクト44様」

「軍のお偉いさんだったのか。……あの店長があんたの正体を知っていて、且つやんごとなきお方、なんて言い方をしていたあたり、実は冥宇宙(ロウワー・ユニバース)は軍の管理下にあったってオチか?」

「素晴らしい洞察力ですわ、コレクト44様」

「名乗ったはずだけど?」

「ああ、申し訳ありません。レフォ様」

 

 殺意。……ミランダと名乗ったメイドからだ。

 余程お嬢様が大事らしいな。

 

「お察しの通り、実はここ、冥宇宙(ロウワー・ユニバース)は第二戦術部隊の管理下にある無法地帯。奴隷売買や違法薬物売買などが〝度〟を越えぬよう調節するための場所です」

 

 なるほどね。

 締め付けすぎると裏でヤバいものが流行っちまう。

 だから、管理下の無法地帯を設置して度合いの調節を図ってたのか。

 

 ゲームじゃそういう……なんだ、陰湿な話は出てこないんだよな。エロの邪魔になるから。

 

「で? そんなお偉いさんが何用だ。つーかクチナシも言ってたけど、よくそんな身体で軍部を上り詰められたな」

「あら……病巣(ネスト)と行動を共にしているのに、わたくしのことは差別なさるのですか?」

「あんたを差別してるっていうか、軍の潔癖を揶揄してるが正しいな」

「ふふ、隠し事はしないのですね」

 

 軍は根っからの病巣(ネスト)嫌いだ。

 プレイヤーが宇宙船で病巣(ネスト)を飼育しているのだって、研究のため、という名目が無ければ許そうとはしなかったほど。

 病巣(ネスト)を全ての悪と決めつけ、宇宙歴のすべてから彼女らを駆逐してきた軍に……人間と触手のハーフがいる、なんて。そもそも冥宇宙(ロウワー・ユニバース)を管理していること自体驚きなのに。

 

 一応言っておくけど彼女は『仔』じゃない。俺の『仔』が触手と人間のハーフって特徴を持っているだけで、別に普通にハーフやクォーターは存在するのである。

 

「第二戦術部隊は特別なのです。先日の将校様が取り入ろうとしていた先がわたくしたちと言えば、その特殊さも理解できますか?」

「……焚きつけたのがあんたら、じゃないんだな?」

「ええ。わたくしたちはあくまで宇宙の均衡を守る機構軍ですから、そのようなことはいたしませんわ」

「そうかい。んじゃ用件の方をさっさと言ってくれ」

 

 裏がありますよ、ってことだ。それも……病巣(ネスト)に関する後ろ暗いこと。

 このお嬢様も人体実験の果てに生まれた存在だったりしそうだな。……はぁ、可哀想なのは本当にやめてくれ。萎えるから。

 

「用向きは三つ。一つは、お子さんへの説得をお母様であるレフォ様に手伝ってほしい、という話」

「断る。ウチは自由にやらせてるからな」

「二つ目は、夜会への出席要請。もうすぐで開かれる軍部の夜会に出席していただけないか、というお誘いです」

「断る。んなもんに出るくらいなら病巣(ネスト)を狩る」

「三つ目は──……ふふ」

 

 妖しく笑うアエルノ。

 彼女はまるでダンスを誘うかのように俺へと手を伸ばし──。

 

「わたくしを、抱いてくださらない?」

 

 そんな言葉を吐いたのだった。

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