ステューシーを買った翌日に、ポリュノクスはステューシーを連れて街へと出ていた。
街はたいそう賑やかであり、そこら中に店が立ち、店員の呼びかけの声が聞こえる。
道には大量の人間が歩いており、国民から外からやってきたのであろう商人。他にも、人相の悪い海賊っぽい人物も歩いていて、その全ての人々の顔には笑顔が浮かんでいた。
そして、そんな中を歩くポリュノクスとステューシー。ステューシーの年齢は恐らく15歳以上。一方ポリュノクスは9歳なので、年齢だけ見れば姉弟に見えるかもしれないが、身長的には実はそこまで差はない。
ステューシーの現在の身長は175cmなのだが、ポリュノクスの身長は9歳にして既に170cmまで伸びているからだ。
ポリュノクスの身長が9歳にしてこれほどまでに伸びている理由は能力によるものだろうとポリュノクスは考えている。
《天性の肉体》《自然に生まれた怪物》この二つが上手い事作用しているのだろう。実際、《自然に生まれた怪物》を持っていそうなビッグマムは5歳にして既に5mもあったのだから、9歳にして170cmまで伸びているのも不思議ではない…というか、少し低いくらいだろう。
なので、並んで歩くと姉弟というよりはお似合いのカップルに見えるだろう。実際に街を歩く二人を見る国民の中にはひそひそと美男美女であるポリュノクスとステューシーを褒める声が聞こえる。
「ねえ、あの二人見てよ。めちゃくちゃ綺麗じゃない?」
「ええ、すごいわね。…私もあんなイケメンが欲しいなぁ」
「あはは! あんたじゃ無理よ」
「なんですって! そういうあなたも無理でしょうが!」
「おほほほ! 私にはすでに婚約者がいるので!」
「くっ…! か、勝ったと思わないことね!」
なんか喧嘩してそうに聞こえるが、言い合う女性たちの顔には笑顔が浮かんでいるのでいつものやり取りなのだろうと理解できる。
そんな二人を見てひそひそと話す国民の間を歩くポリュノクスは、ステューシーと共に街に出たはいいが何をするかを考えていなかったので何をすべきかを歩きながら考える。
「ステューシー、鉱山を見に行ってもいいか? 抜き打ち検査でもしよう」
「ええ、私は大丈夫よ」
「助かる。それじゃあ行くか」
とりあえずポリュノクスは鉱山を見に行くことにした。女性を連れて行く場所としては明らかに適していないことは理解しているが、鉱山の様子が気になってしまったので仕方がないだろう。
そうしてステューシーを連れて鉱山へと向かう途中に出会う国民の顔には必ず笑顔が浮かんでおり、みんな楽しそうだった。
「この国の人はみんな楽しそうね」
「二年前は貧困にあえいでいたのに急に裕福になったからな。そりゃあ笑顔にもなるさ」
歩いているとステューシーが周りの皆が常に楽しそうにしていることについて話してきたので、ポリュノクスはその理由を語る。
前世で言えばバブル期みたいなものだからな。前世の俺はバブルを経験したことがないが、大体こんな感じだっただろう。
鉱脈のあった山を所有して管理していた人物なんて、大富豪になりすぎて金が余っているのかお金をばら撒いて遊んでいたのを見たこともある。
この街で鍛冶を営んでいた親方も急に仕事が多くなった上に、上質な武器を打つとして有名なったせいで、今じゃたくさんの弟子を持つほどにもなっていた。
国民だってそうだ。普通、鉱山で働くなんて罰ゲーム以外の何物でもないんだけど、給料が破格なのでみんなこぞってやりたがる。
この国じゃ鉱山で働いている男はかなりモテるらしい。なにせ、金を持っている上に基本的に男らしい人物が多いためだ。
「二年前というと…ポリュノクス様がいらした時からね」
「俺が何かしなくてもいつか鉱脈を見つけて裕福になっていたと思うが」
「あら。でも、あなたが見つけなかったら何時まで経っても見つからなかったと思うわよ? 昔のこの国で見つけたとしても、お金が無くて掘ることはできなかったでしょうし」
その通りではあるんだよな。俺が見つけず、昔にこの国で鉱脈が見つかったとしてもこの国には掘る技術を持っている者が存在しなかった上に、鉱脈なんてものを見つけても国民には一切還元されなかっただろう。国王がアレだし。
そう考えると、二年前にこの国にやってきたポリュノクスのおかげともいえるし、この国を天竜人に捧げることを決意したエリストのおかげともいえる。
「それにしても、結構詳しいんだな? この国について」
「商売をする上でその国の情報は大事なのよ? 商売を始める前に調べてきたの」
それにしても詳しいなと思ったポリュノクスがステューシーに聞いてみたが、納得できる理由で返されてしまった。
実際はサイファーポールの任務上で知ったのだろうけどそれを一切表に出してこないのはさすがだ。
「俺も商売を始める時はしっかり調べることにしよう」
「天竜人が商売をするの?」
「国の運営も大きな商売みたいなものだからやることは変わらないさ」
そんな他愛ない話をしながら歩いていると鉱山が見えてきた。
鉱山の前には建物が建ち並び、まるで一つの街のようになっていた。
「まるで街ね」
「ああ。実際、ここの名称はエリスト鉱山街だからな」
「エリスト? 国王様の名前なのね」
「国王様に感謝するために付けたとかなんとか…ほら、あそこに銅像があるだろ? あれはエリストだ」
「…かなり美化されてるわね」
エリスト鉱山街の入り口に建っている威風堂々と言った様子の銅像。実はあれ、この国の王様であるエリストの銅像なのだ。
本物はでっぷり太っていて、上質な服の上に宝石を付けまくっている成金貴族みたいなやつなんだが、街に建っている銅像では何故か美丈夫になっている。多分、エリストがそういう注文を付けたんだろうと思うが、あの銅像を初めて見た人物が本物のエリストを見てよくがっかりしているらしい。
エリストの銅像という名の別人の美丈夫の銅像を見て、何とも言えない表情をするステューシーを連れて鉱山街の中へと入ったポリュノクスは、責任者が滞在しているであろう場所へと向かう。
到着したのは大きな屋敷であり、門の前には門番が立っている厳重な警備を敷かれている場所だ。
「ようこそお越しくださいました! ポリュノクス様!」
「ご苦労。責任者は中にいるか?」
「はっ! おります! すぐにでもお呼びいたします!」
「仕事があるならそっちを先に片付けてから来いと言え。待つのも嫌いではない」
「はっ!」
「あと、仕事の書類を全て俺のいる部屋に持ってこい」
「はっ!」
門の前にやってきたポリュノクスに気が付いた門番が緊張の気配を出しながらも、身に沁みついた敬礼をしてから門を開ける。
すぐにでも責任者を呼んでくると言う門番の言葉を聞いたポリュノクスは仕事を終わらせてから来るように伝言を頼んだ。
「すぐに呼びつけないのね」
「俺のために仕事を中断するなんて非効率的だろう」
天竜人としては異端であろうポリュノクスの対応を見たステューシーが疑問を投げかけてきたが、俺を出迎えるために仕事を中断するなんて、非効率以外の何物でもないのだからしないに決まっている。
ポリュノクスの言葉を聞いたステューシーは納得したのかそれ以上は言及してこなかった。
そんな会話をしながら屋敷から出てきた執事かなにかの案内に従って部屋に入ると、そこには既にこの鉱山街の責任者の姿があった。
「ようこそお越しくださいました、ポリュノクス聖」
「久しぶりだな、エギル」
ポリュノクスが部屋に入った時には既に立って待っていた人物。髪を剃ってスキンヘッドにしながらもそのスキンヘッドの頭に大きな傷跡が残り、どう見ても海賊にしか見えない凶悪な顔をしたこの人物こそ。エリスト鉱山街の責任者、エギルだ。
「ええ、ええ、お久しぶりです。それで、本日はどうなさいましたか?」
「抜き打ち調査ってやつさ」
ポリュノクスがそう言った瞬間、部屋をノックする音が聞こえてきたので入室を許可すると、先ほど書類を持ってこいと言っておいた門番の男が腕に書類を抱えて入り、それを机の上に置くとすぐさま部屋から出て行った。
「さて、見させてもらおうか」
「ええ、どうぞ」
机に置かれた書類に手を伸ばしたポリュノクスはそれらを全て見ていく。すると、おかしな点を見つけた。
「ん? これは何の費用だ?」
「ああ、それですか。それは私のへそくりですな」
ポリュノクスが手に持つ書類に書かれている謎の費用が気になって聞いてみると、あっさりとへそくりであることを暴露するエギル。
「まあいいだろう。バレないようにやれよ」
「勿論ですとも。それを知るのは私とポリュノクス様、他数人のみとなっております。その他の数人にもしっかり利益は与えておりますのでバレる心配はございません」
「それならば良い」
堂々と不正をしていると言い放つエギルに一応釘を刺しつつも黙認するポリュノクス。
まあ、これくらいなら別にいい。もし国民にバレたとしても庇わないとは言ってあるのでそこらはうまくやるだろう。
「うん、特に問題は無いな。このまま励むといい」
「ははっ、精一杯頑張らせていただきます」
書類を読んだ感じ、エギルの不正以外は問題がないことを確認したポリュノクスがエギルへと励ましの言葉をかけると、それを聞いたエギルは頭を深々と下げた。
それを確認したポリュノクスが立ち上がると傍に座って話を聞いていたステューシーも立ち上がり、最後にエギルが立ち上がった。
立ち上がったエギルは素早く扉の前に陣取ってポリュノクスとステューシーのために扉を開けた。
「さて。何度も言うが、上手くやれよ」
「勿論ですとも。本日はお越しくださってありがとうございました。また、いつでもお越しください」
門の前へとやってきたポリュノクスが、そこから去る前にエギルへと念のために忠告をしておくと、エギルは自信に満ち溢れた表情をしながら答えた。
まあ、こいつはあのエリストの息子らしいのできっとうまくやるだろう。エリストはそういう悪事はうまいからな。
そう思いながらポリュノクスはステューシーを連れてその場を後にした。
「さて、腹でも減ったから飯でもどうだ?」
「ええ。エスコートしてくださる?」
「勿論さ」
傍に歩くステューシーに飯でもどうかと聞いてみると肯定の返事をしながらエスコートの要求をしてきたので腕を差し出すと、ステューシーはポリュノクスの腕に腕を絡めて胸を押し付けてきた。
そんな胸の感触を感じながらも表情には出さないようにしているポリュノクスはステューシーを連れて美味しいと評判の店へと行くのだった。
♢
「…ふぅ」
ポリュノクスとの一日を終えたステューシーは自らが拠点にしている屋敷へと帰ってきた。
屋敷へと入ったステューシーは、奥にある自室へと向かって服を脱ぎながら今日のことを思い出す。
ポリュノクスは前世の記憶で知っていたが、ステューシーはCPの諜報員だ。それもすごく優秀な。
今回のステューシーに与えられた任務は、天竜人たるポリュノクス聖が遊びでやっている国の調査と、ポリュノクス聖が何を企んでいるのかの調査だった。
まず、島へとやってきたステューシーは島に歓楽街がない事に気が付くと、すぐに歓楽街を作り上げた。
そして、その歓楽街の責任者へと収まり、いつも厭らしい目で見てくる国王の視線に耐えながらポリュノクス聖と出会える機会をうかがっていたが、その機会は意外とすぐに現れた。
ある日、突然現れた国王がポリュノクス聖が歓楽街に興味を抱いているので来るように、と言ってきたので共に向かってみると、案内された部屋には確かにポリュノクス聖の姿があった。
ここからポリュノクス聖に近づき、情報を得ようとしていたステューシーだったがそこで不可解な事が起きた。
といっても、起きたのはステューシーの内心だ。
最初の内は特に問題なかった。いつも通りにポリュノクス聖へと対応していたが、急に自身の胸の内に知らない感情が生まれたのに気が付いた。
それは…恐らくは"愛"と呼ぶべき感情だろう。何故か、目の前のポリュノクス聖の姿を目で追ってしまい、任務なんて関係なくもっと知りたいと思ってしまう。
こんな感情を抱いたのが初めてだったステューシーは、少しだけ表情に出してしまうという諜報員にあるまじき失態をしてしまったが、ポリュノクス聖には気づかれていなかったようなので一安心だ。
その後に、歓楽街一の遊女を付けるという提案をしたステューシーだったが、ポリュノクス聖が欲したのはまさかのステューシーだった。
歓楽街一の遊女ではなく、自分を選んでくれたことを嬉しく思ったステューシーは、自分の胸の内に浮かんでいる感情に戸惑いながらもその後のポリュノクス聖とのお出かけでポリュノクス聖の情報を得ようとする。だが、純粋にポリュノクス聖とのお出かけを楽しんでいる自分もいることに気が付いた。
ポリュノクス聖がエギルという鉱山街の責任者と話している時にポリュノクス聖の横顔をいつのまにか眺めていたステューシーはそこで認めることにした。ああ、自分はこの人に恋をしたのだと。
だが、自分は諜報員であり、人間ではないクローン。いくら恋をしようともそれを叶えることはできないと自分を律したステューシーは、なんとかポリュノクス聖とのお出かけを終わらせて家に帰ってきた。
だが…離れたことで思いはより一層強くなっていく。すぐにでもポリュノクス聖の顔を見たいし声を聞きたい。そう思ってしまう。
「ん…」
服を全て脱いだステューシーは自身の肢体を鏡で見てみる。胸は大きく腰はくびれ、お尻は女性らしく丸い。この肢体を男はよく見てくるのを知っているステューシーは、自分の身体をポリュノクス聖は好いてくれるのだろうかと考える。
鉱山街の責任者との話し合いを終えた後に、思い切ってポリュノクス聖の腕を胸で挟んでみた時は、ポリュノクス聖は嬉しそうにしていた。なので、恐らく好いてくれるだろうと考えるステューシー。
それに、ポリュノクス聖は隠しているつもりだろうが、何度か胸やお尻に視線を移しているのも知っている。なのできっと自分の身体はポリュノクス聖の好みの範疇だろうと結論付けた。
そう結論付けると、今度はポリュノクス聖の身体のことを想像してしまう。ポリュノクス聖の腕を触った時はとても筋肉質で男らしい腕だった。そこから考えるにポリュノクス聖の肉体もきっと筋肉が付いているだろう。
そして…下。ポリュノクス聖のペニスはいったいどんな形なのだろうと考えるステューシーは、自分が発情していることに気が付いたが抑えることはせずに、鏡の中にいる自分の手が徐々に下半身に伸びていくのを眺める。
「ん…♡」
自分の秘所へと到達した手で秘所を弄ってポリュノクス聖に抱かれているのを想像しながら自分を慰めるステューシー。
そのままステューシーはベッドへと場所を移して自分の慰めて何度か絶頂を迎えると、余韻を感じながらそのまま眠りについたのだった。