オタクちゃんとギャル子さん〜ギャル好きの私がギャル三人から迫られても選べるわけがありません!〜 作:ハヤ0313
えっちな本を見つけられてしまいました
私には、仲良くしてもらっている人達がいます。
「
金髪で、褐色で、優しい人。
「村野さん。これお土産」
黒髪で、礼儀正しくて、優しい人。
「村野ちゃん。お絵描きさーせて」
なんとピンク髪で、かわいらしくて、優しい人。
「はいっ。い、いらっしゃい、です」
今日もそんな素敵な人達が私の部屋にやってきてくれました。
味気ない一人暮らしの部屋が、一気に華やぎます。
彼女達は普段から陰キャの私なんかとも仲良くしてくれて、学校でもよく話してくれます。
だから、そんな人達に心を開くのなんて時間の問題でした。
趣味で漫画を集めている事、自分でも描いてみてる事、諸事情で一人暮らしをしている事……いわゆる少しだけ秘密の事を話すのなんて、私にとって当然の事でした。
その中でも、一人暮らしをしている、というのが彼女達の琴線に触れたらしく、キラキラした目で見たい、行きたい、となったのは結構前の事です。
今では毎日のようにアパートに来てくれて……そうですね、溜まり場、そんな感じになりました。
「大峰さん、こ、この漫画、オススメ、です」
「マジ? 読ませて読ませてー」
そんな彼女達は、私と違って陽キャです。
皆して制服を改造してたり着崩してたりしてて、キーホルダーじゃらじゃらのネイルジャキーン、って感じです。
つまり、いわゆるギャルです。ギャルズです。
私とは住む世界が違う、そう思っていました。
……なんですけれど、何故か彼女達は私を気にかけてくれて、ホント、今でもなんで仲良くしてくれているのか分かりません。
「並森さん。い、いつもありがとう、ございます」
「いいよ別に。部屋使わせてもらってるわけだし」
利用されているんじゃないか、そう思った事もあります。
私なんかと仲良くするだなんて、絶対何か裏がある筈。
ですが、お金をせびられたり、パシリにされたり、そういうのは一切ありませんでした。
むしろ毎回スナック菓子や飲み物……彼女達用でもありますが……を持ってきてくれて、逆に生活が潤っているというかなんというか。
「小山内さん。パソコン、ど、どうぞ」
「あ、立ち上げてくれてたの? ありがとー!」
趣味をバカにしたりしないし、むしろ興味を持ってくれてあっちから歩み寄ってきてくれるし、今までそういう関係の人がいなかったので、こういう普通の友達、っていうのは、凄く新鮮です。
大峰さんは漫画を好みます。王道からオタクっぽいのまで、なんでも読む感じです。
並森さんは小説を好みます。小説と言ってもラノベですけど、最近は自分で買ってきたりしてるようです。
小山内さんは絵を好みます。私の液タブを使ってお絵描きしまくりです。
なので皆さん、オタクの知識をどんどん吸収している感じなんです。なんというか、趣味を汚染している感じがあって若干心配になるんですけれど、それはそれ、これはこれ、らしいです。
なので、なんというか、オタクに優しいギャルは実在するんだなぁ、って思う日々です。
「あ、そうだ。ウチ明日用事あるから」
なんて感慨に耽っていると、並森さんがそう言いました。
一緒に下校する事も多い私達ですが、今日みたいに別々で来る事もそれなりにあります。
そして家に来ない時があると、メッセージの時もありますが、キチンと律儀に伝えてくれます。
ほとんど毎日のように来てくれてるので、ちょっと、ちょっとだけ寂しいです。
「え、あたしもなんだけど」
だから明日は並森さん以外の二人が来るんだ、そう思っていると小山内さんも並森さんに続きました。
二人が居ない、となると大峰さんは来ないかもしれません。
家には三人全員か、誰か一人欠けた二人が来る、もしくは誰も来ない、というパターンなので、きっと明日は私一人の日なんだな、と思うと、分不相応ですが、とても、寂しいです。
「え、あーし明日このマンガの続き読みたいんだけど」
と、こっそり意気消沈していると、大峰さんが愕然としていました。
彼女が今持っているマンガ……あぁ、確かに気になるとこだ。なるほど、読みたいという気持ちが超分かります。
ですが、一人だというのなら流石の大峰さんも来ないでしょう。
彼女達と私は、なんというか、複数人だから仲が良い、って感じだと思うんです。グループだと問題ないけど個々人となると気まずい、的な。
なので、マンガはお預けという事になります。
「つ、続き、貸しましょう、か?」
だから私は、そう提案しました。あの続きを読めない、というのはムゴイ仕打ちです。
私は最新刊まで読んでいるので、しばらく貸しても問題ありません。というか彼女達が望むなら、いくらでも協力したくなります。
「え、マジで? 借り、いや、む……」
ですが、大峰さんは何かを悩み始めました。
あれでしょうか。汚してしまったらどうしよう的なサムシングを考えているのでしょうか。そんなの気にしなくて良いのに……い、いや、少しだけ気にして欲しいですが。
「並森、用事って?」
「内緒。けど明日は来ないよ」
「小山内、どのくらいで終わる?」
「え、あたしも来れないけど」
「マジか」
そう確認して、大峰さんはまた悩み始めました。
いったい何を悩んでるんでしょう……。
「ふーん……へー……ほー……」
い、いったい何を悩んでいるんでしょう。私を見つめて、なんだか不思議な表情をしています。
分かりません。分かりません大峰さん……!
「決めた」
そして、彼女は決断したかのように、そう言いました。
「明日あーし、一人で来るから」
そして、さも楽しそうに、私を見つめたのでした。
ロックオンって感じです。
な、何か嫌な予感がします……!
――――――
「村野、エロマンガ見せて?」
嫌な予感が、斜め上からやってきました。
学校帰り、私の家に直行してから開口一番がそれでした。
「……な、なんて?」
なので、聞き間違いであってほしいなーって思いながら、そう返しました。
ちなみに彼女達のマネです。なんて、って言うの、かわいいですよね。
「エロマンガ、見せて?」
が、大峰さんは繰り返してきました。
「ま、マンガの続きは……」
「それは今度。エロマンガ見せて?」
が、大峰さんは繰り返してきました。レトロゲーの序盤ばりのゴリ押しです。
が、屈しません。私にだって、屈したくない時くらいあります。
「そ、そんなの有る筈ないじゃないで」
「机の一番下」
「っ!」
おっと、何を言っているんだろう大峰さん。ちょっと危ないところを突いてくるじゃないですか。
ふふ。でも大丈夫です。そこは確かに彼女達に見せていない薄い本スペースですが、えっちなのはそこにはありません。
「そ、そんなところにえっちな本なんて」
「の更に下」
「!?!?!?!?!?」
おっと、何を言っているんだろう大峰さん。とてもピンポイントに当ててくるじゃないですか。
ふふ。でも大丈夫です。そこは確かにえっちな本スペースですが、手を付けられた形跡は今までありませんでした。
だからコレはたぶん、鎌掛け。ブラフ。
落ち着いて誤魔化せば問題ない……!
「いや、たまたま見ちゃったんよ」
「み、見た?」
「この間さ、一番下の段に、あー、ウスイ本?っていうのが詰まってるの見てさ」
「見たんですか⁉︎」
おっとそれは聞き逃せないですよ大峰さん。
家に入り浸っているとはいえ、そこは勝手に触れちゃならねぇって所なんですよそこは。戦争ですよ戦争。
だから村野さん、ちょっぴりオコです。どちらかというと青褪めてますが。
「あーいや待って、誤解してる」
だから、少しだけ、私にしては珍しく少しだけ抗議しようかと思ったのですが、大峰さんから先を制されました。
「この間さ、開いてたんよ」
「え」
おっとそれはどうなんだろう村野さん。めっちゃ不手際じゃないですかね。
……いや、ちょっと待って。開いてた? マジで?
「で、見られたくないモノなんだろうなーって閉めようとしたのよ」
ですが、続けられた言葉にホッとしました。
良かった。やっぱり大峰さんは優しい人だ。
「で、閉める時に、奥にエロマンガを見かけた」
「おっふ」
良くない。一切良くない。全然良くない。
「ウスイ本は見ないからさ」
「は、はい」
あらまぁなんて良い人なんだろう大峰さん。
「エロマンガの方は見せて?」
ですよね大峰さん。
「ぃ、いや、流石に、その」
ですが、私にも恥というものがあります。
こればっかりは譲れません。断固拒否です。
「お願い!」
が、大峰さんが頭を下げて拝んできました。
そ、そんなに読みたい……?
「あーしんちそういうの厳しくてさ!」
「は、はい」
それは聞いた事があります。
大峰さんの家は二次元コンテンツに厳しいのだとかなんとか。
だからそれを私のとこで補充してるのだとかなんとか。
「村野しか頼れないんだって!」
「えぇぇ……」
「アイツら面白がって逆に見せてくれねーし!」
「あぁ……」
それで並森さん小山内さんを頼ろうとしたけど断られた、と。
確かにそっちの方が面白い、って言っている風景が容易に想像出来ます。絶対ニヤニヤしながら言ったに違いありません。
「誰にも言わないから!」
「いや、それは、そう」
「アイツらにも言わないから!」
「いや、それは、そう」
言いふらされたら即死します。学校での居場所が……元からそんなにありませんが……完全に失われます。
……あれ?
「お二人は、知らない、んですか?」
アイツらにも言わない、という事は、彼女達はここの存在を、ここの奥の存在を知らない、という事なのでしょう。
開いていた、というからには見られてしまった、と思っていたのですが……。
「知らない知らない。あーしが即閉めた」
なんでも、たぶんコレ見られたくないヤツだ、と判断してすぐに閉めてくれたのだとか。
やっぱり大峰さんは良い人だ……!
「だから、ね?」
まぁその良い人から良くない事をお願いされているわけですが。
「なー。良いだろ村野ー」
あの、肩をガクガク揺らさないでください。
「女同士なんだからさー」
あの、目をキラッキラさせながら縋ってこないでください。
「なんなら私の恥ずかしい秘密教えるからさー」
あの、え、ん? 今なんて?
「恥ずかしい、秘密?」
「おうよ。超恥ずかしいぜ」
……大峰さんの恥ずかしい秘密。気になる。超気になる。
だけどそれを聞いてしまったが最後、えっちな本をご開帳しなければならない。
だけど気になる……!
「……めっちゃ悩むじゃん」
「うぐ」
だって、気になりますし……。
「オーケー。言うからエロマンガ見せて?」
「ぐぬぬ」
トレード……出来る価値はあるのだろうか。言葉は悪いけど、どうでもいい事だったらどうしよう。
「こほん」
あ、大峰さん、言う気だ。コレ私の意見聞かないヤツだ。
「え、えーと……」
ですが、なにやら頬を染めてもじもじし始めました。
……ちょっと、かわいいです。
というか何を言うつもりなんだろう。
「そのー……」
ごくり。
「……ォナニー」
「え?」
今なんて?
「毎日……してる……」
今、なんて?
いや聞こえてます。脳が理解を放棄しただけです。
なんて?
オナニーが? 毎日?
違う。
大峰さんが、オナニーを、毎日、してる⁉︎
「そ、そう、ですか……」
「なっ⁉︎ なんだよその反応⁉︎」
それ以上何を言えと⁉︎ 超反応しづらいんですけど!
へー、えっちですね。とか言える筈がないですよね⁉︎ 実際えっちにも程がありますけど!
「んあー! だからエロマンガ見せろー!」
めっちゃ顔赤くしてジタバタし始める大峰さん。アカン、かわいい。
「なんなら村野のオナニー頻度教えろーっ!」
「そ、そうはなりませんよねっ⁉︎」
「じゃあエロマンガ!」
「うっ」
なんという、じゃあ。
威力が大き過ぎて、見せません、とか言えないです。
「ぅぅぅぅぅ」
言えません。言えませんので、
「だ、誰にも言わないでくださいよ……!」
見せる事に、なりました……。