大根抜き遊びをしていた性分化疾患の女子がうっかり事故で股間が他の女子と違うのがバレてしまう話 作:喋家月餅太
オリジナル:現代/恋愛
タグ:R-18 TL セックス アナルセックス 半陰陽 性分化疾患 ふたなり ちんちん おしっこ
男子のペニスよりは小さいし先端に尿道口がなく排尿機能もないが股間に他の女の子にはないものがついていてアヤノやアヤノの親はそのクリトリスをちんちんと呼んでいる。
女の子にも極稀にちんちんのついている子がいて、そういう子は女の子なので男の子と違って立っておしっこができない、おしっこはちんちんからじゃなくてちんちんのうしろにあるおしっこの穴から出ていると教えられてきている。
もちろんアヤノにちんちんがあることは内緒だ。
だがある日、休み時間に大根抜き遊びをしていた時にAを引っ張った男子の掴み方が悪くズボンとパンツが脱げて下半身が裸になる事故が起きた。
その場は騒然。女子のアヤノには女子にはないはずのちんちんが付いているからだ。
アヤノは男だったという声が起き、アヤノはその場から逃げ出す。
アヤノはその日から学校にいけなくなってしまった。
学校に行かなくなり友達とも会わなくなってしばらく経った日、外を散歩していると事件の日に入院で学校を休んでいた男子のトシユキと偶然会う。
トシユキも噂は聞いている。だが、それに対して何も言うことはなく散歩に付き合ってくれた。
その日、トシユキが内緒に見つけた秘密基地にアヤノは連れて行ってしまう。そこでおしっこがしたくなったアヤノはトシユキと連れションすることに。
パンツを脱いでしゃがむアヤノを見てトシユキは「ちんちんがあるんだから立ってすればいいのに」という。
アヤノは自分のちんちんが男の子のものと違って立ちションができないと言う。トシユキはそれを不思議がる。
アヤノはトシユキなら見せてもいいかと思い、お互いちんちんのついている同士、股間を見せ合うことを提案する。
姉がいて女子の股間がどうなっているか知っているトシユキは女子とも男子とも違うアヤノの股間を目の当たりにして驚くのだった。
「俺が鬼な!」
学校の体育館は子供たちの元気な声が響き渡っていた。
夏の暑さが過ぎ去り長袖に慣れた頃の季節。
今日は雨が降っていて休み時間は校庭で遊べないのでみんな体育館で遊んでいた。
クラスの何人かは出遅れて端っこのスペースしか得られなかった。
ボールで遊ぶこともできないので「大根抜き」をする事にした。
大根抜きという遊びはこの地域の子供が室内出する遊びだ。
鬼になった一人を除いて腕を組んで横一列になって床に座り座る。鬼が一人を選んで脚を引っ張り、残りが引き抜かれるのを阻止するというルールだ。
少ないスペースで遊ぶことが出来るため体育館でスペースが確保できない場合、端の方さえキープできれば出来るのでこういう時にうってつけだ。
「いくぞ!」
鬼役を買って出た男子は勢いをつけて大根役をしている6人の一人である男子の足を引っ張る。
足を引っ張られた男子以外は組んで腕に力を入れて引き抜かれるのを阻止する。
両脇の男子と女子の力が強くてかなり切迫した攻防戦になる。
大根抜きで大事なのは全員の連携だ。
足を引っ張られた本人の両脇だけ頑張ってもバランスを崩してしまう。
その両脇、そのまた両脇と力を合わせて阻止しないとあっという間に持っていかれる。
「くそっ!」
鬼役の男子は力を込めて引っ張る。
「頑張れ!」「負けるな!」
大根役はお互いに声を掛け合って阻止する。
「んんっ!」
鬼は力を込めて引っ張るが無理だと思ったのか足を離した。
「はぁ……」
鬼は息を荒くしながら深呼吸をする。
そして次に狙う相手を選ぶ。
こうして引っ張ったり引っ張られたりしながら大根抜きの攻防戦は続いた。
途中で女子が引っ張られて鬼が交代したり、今度は別の誰かが鬼になったりと鬼を交代しながらゲームは続いていく。
昼休みも終わりに差し掛かった頃の事だった。
二番目に鬼になった女子が再び鬼になった。この女子は不器用で多少乱暴な所がある。
ただそんなこの女子が鬼になるのを皆は口には出さなかったが歓迎した。その方がゲームが白熱するからだ。
鬼は左から順番に大根役を見回してその中の女子であるアヤノの足を引っ張り始めた。
「っ!」
アヤノは左右の友達の腕をしっかりと掴んで鬼に抵抗する。
壁に背中を付けている大根役たちは教室に帰り始めている他のクラスや学年の子達の姿を見てこのアヤノとの攻防戦が今日の最後のゲームになると思った。
だからこそ盛り上がった。
アヤノもその両脇の子もしっかりと腕に力を込めて鬼に抵抗する。
「むっ!」
鬼も負けずに力を込める。
周りが教室に帰り初めたのが気配で分かったのか鬼も気合が入っている。
「ぐぅっ!」
鬼はアヤノの足をありったけの力を込めて引っ張る。
アヤノの足を掴んでいる手がズレて鬼は手を離しそうになった。
鬼は慌ててアヤノの足を掴みなおし力を思いっきり込める。
その時だった。
「えっ!?」
アヤノは引っ張られる感覚に違和感を覚えて下半身を見下ろした。
「あぁっ!」
鬼は眼の前の光景に驚いて引っ張るのを止めてバランスを崩しながら声を上げた。
『ええっ?』
アヤノの脚の色は履いていたジャージの紺色じゃなく肌色になっていた。
大根抜きで起こりがちが事故だがアヤノのズボンをパンツが脱げてしまい下半身が丸出しになってしまったのだ。
アヤノはその事に気がつくとどうしていいか分からず左右を慌てて見る。
「あれ。アヤノちゃん……?」
鬼役の子は素っ裸になったアヤノの下半身に違和感を覚えて困惑した顔をした。
「えっ?」
「どうして?」
「あれ?」
それにつられてアヤノの脚の付け根を見た他の子達も一斉に驚きを口にした。
アヤノは突然の事に一緒に遊んでいた子たちの様子に気がつくまで時間がかかり随分遅れて股間を手で覆った。
「うそ……。アヤノちゃん、ちんちん付いてる……」
「アヤノ、男の子だったの?」
「女子って無いだろ」
「なんで?」
友達の言葉にアヤノは自分の秘密を見られたことをはっきりと自覚した。
「嘘だろ。どれ!?」
左端に居て皆が驚いているきっかけを見損ねたお調子者の男子が立ち上がってアヤノの前に来て股間を覆っている手を無理やり退けさせた。
「ホントだ! アヤノ、ちんこついてる!」
お調子者は大根抜きをしていた七人の中で一番驚いた様子で言った。
帰ろうと体育館の入口に向かっていた他の学年の子もその声に振り返るが何か不穏なものを感じたのかそのまま立ち去っていく。
アヤノの股間は女子のそれと確かに違っていた。
女子はちんちんがない。その部分はぺったんこでお尻のように縦に割れている。
アヤノたちの学年では性教育はまだでその事を知らないだろうが、女の子の股間には何もないわけではなく割れ目の中にちんちんの代わりになる器官が付いている。
だが、この年代の子どもたちにとって女の子の股間はぺったんこで何もない、だ。
アヤノの股間は何もない股間ではなかった。小さなペニスのようなものが付いているのだ。
玉袋はないがミニサイズのペニス様のものがあり、「ぺったんこで割れている」股間ではなかった。
アヤノは騒然としている友達の様子に絶望を覚えた。
涙を流しながら目を泳がせている。
「返して!!」
鬼役の女子から脱げたジャージとパンツを奪い取る。
そしてそれを履くこと無く体育館の外に走り出してしまった。
突然のことにクラスの友達は全員固まってしまった。何が起こったのか分からなかったからだ。
「どういうこと? アヤノちゃんって男だったの?」
「でも、どうして女子で学校来てるの?」
「トイレの個室で立ちションしてたとか?」
アヤノが走り去った後、クラスメイトたちは口々にアヤノの股間についての疑問を言う。
その時、チャイムがなった。
「チャイム鳴ったよ」
「アヤノは?」
「分からない」
「とりあえず、戻ろうか」
クラスメイトたちはチャイムの音に冷静さを取り戻して座っていた子は起き上がると教室に足を向けた。
その際も急ぐ様子は無く、先程偶然見てしまったアヤノの股間について、アヤノは本当は男だったのかなどを話あっていた。
体育館に併設されたトイレに入るとアヤノは個室に入り手に持ったズボンとパンツを履くこと無くしゃがみ込んで泣き始めた。
アヤノの目からは次々と涙が流れてくるし、声を押し殺しても嗚咽は止まらない。
つい先程、アヤノが見られたアヤノの脚の付け根に付いているもの、それは絶対に誰にも知られたくないものだった。
アヤノには姉がいるが姉の脚の付け根とは違う。姉の股間はべったんこで割れている。
他の女子の股間を見たことはないが皆、姉と同じ形をしていると教えられている。
アヤノは事情があり他の女子にはないものが付いているのだ。
付いていてもアヤノは女の子。それは親からも保健の先生からも知っているし、それを秘密にするために担任も校長教頭も協力してくれている。
だけど、今日、その秘密がバレてしまった。
一緒に遊んでいた友達はきっとクラスの皆に話してしまうだろう。
女子にちんちんが付いてるなんて有り得ないってみんな思うだろうし、これからは女子として扱ってなんてくれない。
もしかしたらこれからは男子として学校に通わなければならないかもしれない。
自分が女の子だって股間にあるはずのないものが付いている事で自信が持てなくなる事はこれまでもあった。でも、それを家族や先生は支えてくれた。
でも、自分がどう思ってもちんちんが付いてる人を女だと思ってくれるはずがない。
教室に帰るのが怖くてトイレから出られない。
今いるのは女子トイレだが、女子トイレに入るのもこれで最後かもしれない。
泣き止むなんて無理だ。
「アヤノちゃん、そこにいるのね?」
どのくらい泣いていたか分からなくなった頃、個室のドアの外からアヤノを呼ぶ声がした。
保健室の先生だった。
「アヤノちゃん、お昼休みの事聞いたよ。とりあえず、出てきて保健室に行こうか。今は誰もいないから大丈夫。五時間目も出なくていいって――先生も言ってくれるから、先生と一緒に保健室に行きましょう」
アヤノは保健の先生の声に救われたという気持ちを覚えた。
保健の先生はアヤノの事情を知っているし、アヤノは病院で定期的に検査を受けているのを把握していて病院とも連携してくれている。
病院に行くのは他の女の子と違う身体だからというのは分かるがアヤノ自身それが何のためなのかはよく分かっていない。
昼休みに起こったことに対してどうしていいのか分からないが、保険の先生に頼るしか今はないと思えた。
アヤノは手に持ったままだったパンツをジャージを履いて体育館で丸出しだった状態の股間の状態から外に出れる格好になった。
「先生……」
恐る恐るアヤノはドアを開けて外を見た。
「よかった。出てきてくれて。大丈夫?」
「わかんない」
「今は授業中で廊下にも誰もいないから安心してね」
保健の先生は優しい笑顔で言った。
「うん……」
アヤノは泣き続けたことで赤くなった目をしながら保健の先生に着いて保健室に向かった。
途中の廊下はアヤノにとってとても怖い場所に感じた。
誰かとすれ違って股間の事を言われたりしたらと不安でしょうがなかった。
「大丈夫だからね」
保健の先生はポンとアヤノの背中に手を当てた。
ビクビクしながら体育館から近い保健室に着くとアヤノはベッドに寝ている人がいないかとか怪我をして来ている人がいないかを恐れて保健室の中を見渡した。
「誰もいないでしょ?」
「うん」
「とりあえず、何があったか話してくれないかな?」
そう言うと保健の先生は怪我の処置や体調を診るための椅子にアヤノを座らせた。
アヤノが椅子に座って落ち着くとアヤノの頭の中に昼休みの出来事を駆け巡った。
生まれてからずっと秘密にしてきた事がクラスの何人かに知られてしまった。今頃はクラス中にそれが広まっているだろう。
「先生、私、女の子じゃないの!?」
アヤノが意を決した様子で投げかけた問いに保健の先生は一旦驚き、一拍置いてから心配をする表情を見せる。
「アヤノちゃん、お父さん、お母さんや病院の先生も言っていたと思うけど、アヤノちゃんは女の子よ。大事な所が他の女の子と違うけど、ちゃんと病院の先生が女の子である事を調べてくれてるの」
「それは私も言われたけど、みんなが私が男子だって」
「そうね。それは皆も見たことないものだからね」
「私、男子になりたくない!」
そう言ってアヤノは泣き出してしまった。
保険の先生はその様子を見て、アヤノの抱えている自分への認識のゆらぎと周囲からどう見られるかの不安の重さは理解した。
今すぐに何かを理解させようというのは現実的じゃないとは思っていたがこれは長期戦になりそうだと感じた。
「そうね。先生が助けてあげるから、ちゃんとアヤノちゃんは女の子よ。でも、怖かったね。今日は先生がお話を聞いてあげるから、話してみて」
保健の先生がそう言うとその言葉に救われた気がして更に泣き出した。
そのアヤノの様子を見て、今日は一旦、親に迎えに来てもらってその上で学校としての対応を考えないといけないと考えた。
それからしばらくして担任の先生が様子を見に来た。
アヤノはそれからずっと泣き続けていたが、クラスの様子もあまり芳しくない状態らしい。
今日の所は担任からアヤノの母親に連絡をして迎えに来てもらう事になった。
アヤノ自身とクラスの状況の両方の面からしばらくアヤノは休むか保健室登校にするかをした方が良さそうだった。
この日、それからは母親が迎えに来て母親の車でアヤノは帰ることになった。
今後、アヤノがどうしたいかはアヤノが落ち着くのを待ってから決める事にするとの事だ。
それまでは学校を休んで担任が課題のプリントを家庭訪問を兼ねて届ける形になった。
アヤノはというとこの日、お風呂も入らずご飯も食べず泣き続けていた。
両親も姉もこの日はアヤノをそっとしておく事に決めた。
「ごちそうさま!」
アヤノは元気よくそう言うと、食べ終わった食器を流しに置いて部屋に向かった。
大根抜き事件が起こった日から数週間が経ちアヤノは落ち着いている様子だった。
だが、学校にはあれから通うことが出来ていない。
自分のアイデンティティの根幹を揺るがすような出来事があったのだ学校が怖くてしょうがなかった。
言ってしまえば今は不登校という状態だ。
最初の頃は家から出ることもままならない状態だったが、今では同級生に遭遇しない時間帯であれば散歩に出かけることも出来る。
近所の人からどうして学校に行かないのか聞かれるのが怖くて人に会いそうになると走って逃げたりはする。
事件の前の状態に戻るには遠い道のりのようだった。
朝ご飯を食べ終わると先生が定期的に届けてくれるプリントで勉強をする。
アヤノが学校に通うことが出来ないという状況は学校側も把握しているため家で勉強できる体制を整えてくれていた。
ここ二週間くらいは笑顔も取り戻せつつある。
だが、それでも一日に数回、思い出したように泣き出す事がある。
その様子を見ていて、アヤノを学校に復帰させることは難しいと感じ両親は進学後も不登校が続く覚悟をした。場合によってはフリースクールに通わせる事も検討したほうがいいだろう。
両親も学校もアヤノにとってどうする事が最適かを検討しているが決め手に欠けているのが現状だ。
そんな中でアヤノの姉はアヤノの遊び相手になるように努めている。
できる限り早く帰ってきて楽しいと思える時間を作れるように姉なりに行動していた。
姉にとってはそのくらいしか出来ないが、それでもアヤノにとって救いだった。
アヤノの状況は分からないが、姉の通う学校まではアヤノの噂は届いていない。
もしかしたら噂を聞いた生徒もいるかも知れないが「あそこの学校にちんちんが付いてる女子がいる」なんて大抵の人は荒唐無稽に思うだろう。
姉もアヤノの家族じゃなければそう思ったかもしれない。
そう思わないのはアヤノが生まれたときからアヤノが普通の女の子と違う身体である事を知っていて性教育を受けてからは学校の保健の授業では習わないアヤノのような人たちの身体について勉強する機会を得たからだった。
そもそもアヤノがどうして女子なのにちんちんが付いているのか。
アヤノは紛れもなく女性である。だが、特殊な体質で大勢の女性とは性器の形が違う状態で生まれた。
世の中には一般的な男性と身体が異なる男性、一般的な女性と身体が異なる女性が存在する。
その人によってどんな風に違うかという症状は千差万別だが、その様な身体に生まれる事を「性分化疾患」と呼ぶ。
アヤノの様に外性器の形が同性と異なる人もいれば見た目は他の同性と変わらないが思春期になってから異性の身体の変化が起こる人、第二次性徴が起こらない人などもいる。
まだ具体的な症状については分かっていない部分もあるが、アヤノは性器が普通の女性とは異なる。
アヤノの性器も女性器である事は確かだ。だが、クリトリスが小さめのペニスと言っていいくらいに肥大化しており、膣も内部が狭くなって場所によっては癒着している。
子宮はあるが卵巣が正常か否かはまだ検査が十分に進んでいない。
大根抜き事件でクラスの子達が「アヤノのちんちん」と認識したのはその肥大化したクリトリスの事だ。
実際に形はかなりペニスに近い。体積は同世代男子のそれの半分以下だが、それでも股間に突起があるならそれはちんちんと認識するのが多くの人にとっては自然だろう。
アヤノ自身は物心がついて少ししてから特別な体質でちんちんが付いてると説明されており、ちょうど性教育が始まる次の学年の前に先駆けてアヤノが具体的に他の女の子どうと何が同じで何が違うか、男の子とどう違うかを教えられるのを控えているところだった。
ちんちんが付いていながら自分が女の子であること、男の子と違う事を知る前にほんのわずかな時間であれ「アヤノは男なのか」と言われればショックは大きい。
本人も本当に女の子なのか疑問に思う事もあり、それが怖くなる事だってある。
だから知られたくなかったし言われる事を恐れてた事を言われた。
アヤノが同級生たちを恐れるようになるのも無理のない事だった。
こんな風に性分化疾患が周囲にバレた際に本人の性別として周囲が扱わなくなるリスクに同意対応するかは学校や親にとって頭の痛い問題だ。
いくつも例があるがそれらのノウハウは共有されたものが少ない。それ故に手探りを余儀なくされる。
それに一人一人すべき対応も違う。
特にアヤノが直面している状況の場合、クラスメイトたちが性分化疾患の存在を知らない事が事をややこしくしている。
彼らの親もそうだろう。子供の言葉を聞いて男性かのある子を女子として扱い、女子トイレを使わせていたとなればアヤノが学校に来る事を反対する保護者も出かねない。
実際に性分化疾患が知られた事により転校を余儀なくされた例もある。
そうなれば遠方の学校に自動車通学をする、持ち家を手放して引っ越すところまでしなければいけないかもしれない。
今回の件に関わる大人たちは周囲からのアヤノの扱いとアヤノ自身の精神状態の両面から慎重に議論を進めなければならなかった。
母親はあれからパートを休んでアヤノのそばにいるようにしているがそれもいつまで続けるかが悩みどころだ。
これ以上続くとなれば一旦、退職する必要があるだろう。
母親はアヤノが勉強道具を準備している物音を聞きながらため息をついた。
これからどうしていいのか、どうするのがいいかが見当もつかないからだ。
どこかで自分を責めていた。もし、アヤノを普通の女の子として産んであげられていたら……。
父親とそれは考えない約束をした。
アヤノが性分化疾患なのは誰のせいでもない。それにこの考えはアヤノが一番傷つくものだ。
親がアヤノの身体を肯定してあげないといけない。そうでなければアヤノは自分の身体を否定して生きていかなければいけなくなる。
「お母さん、準備できたよ」
アヤノは教科書にノート、プリントを持って戻ってきた。
学校に行かない間、担任からプリントとメモが定期的に届けられており自宅で勉強をするのだ。
その間はダイニングのテーブルで母親と一緒に勉強をする。
当初は一人にしておくのが心配な状態だったというのもあるし、今でも時間のことを思い出して泣いている時がある。
その時にそばにいてあげたい、その一心で居間での勉強をする約束にした。
母親は笑顔になり自然体で接するように努めた。
だが、その心の中ではこの状況をいつまで続けていいのかが不安でたまらなかった。
夕方になりアヤノの姉が帰ってきた。
姉は三歳違いだ。部活はやっていないが委員会に入っていてそちらが終わって遅くなる事もあるが出来る限り早く帰ってきてアヤノの勉強を見てあげている。
制服から私服に着替えて母親の代わりにダイニングに着いた。
姉とは時々、夕方の散歩に出かける。
アヤノの同級生に出会さない程度の遅い時間を選んでいる。
家から出られなくなったアヤノが外に出るための訓練で始めたがこの頃は姉には楽しみな時間だ。
今日は天気が悪いので散歩には出ない。
姉はアヤノの事をとても心配している。
親が心配しているのはもちろんだが、姉はアヤノの身体の事情を知っている唯一の子供として大人たちとは違う視点でアヤノの問題を見ていた。
思春期になれば性に関する色々な話を友達と交わすようになる。
姉も生理が来たか、胸が膨らんだか、脚の付け根や脇に毛が生えたか、身体の変化に関する話が同性の友達との間で交わされるようになる。
姉の同級生にも発育が遅くて最近生理が来たばかりの子やまだの子もいてそれを不安に思っている様子を見ている。
アヤノがこの一、二年にどんな身体の変化を迎えるかまだはっきりわからないという。
姉が現時点で経験したものを全て経験できるのか、一部を経験できないのか、一つも経験できないのか。
もしかしたら男子と同じ変化を経験するかもしれない。
まだアヤノの学年では授業で性教育を受けていない。
親からはアヤノは病院で学校に先駆けて性教育をすると聞いている。
二次性徴で起こる身体の変化が他の女の子と違う可能性があり、授業でショックを受けてしまわないようにするためだ。
だが姉は病院での性教育でもアヤノはショックを受けそうだと心配になった。
一部は姉も立ち会う事になってるが、どんな事を教わるのか。
アヤノと他の女の子の違いもそこできちんと教わるとは聞いているが聞くのは辛そうだ。
姉は六年生の頃にアヤノのちんちんの正体はこれじゃないかとアタリを付けていた。
多分当たっているだろうがそれをアヤノに教えていいかは悩んでいた。
その答え合わせもきっとあるだろうしなくてもこっそり医者に聞くことができるかもしれない。
それが当たっていたらアヤノは自分はきちんと女の子だと安心できると思った。
その正体と思われるものは姉の股間の割れ目の中にあるピンク色の小さな突起だ。
女の子の大事なところは平らで縦に割れているがその割れ目の中にはちんちんとはちがう女の子の大事なものが付いている。
タンポンのことを知ってどんなふうに入れるんだろうと考えてトイレで大事なところを見た時に偶然、女の子の股間についているものを見て知った。
その中の一番上にあった突起はアヤノのちんちんに似てると思った。
姉とアヤノはその当時、一緒にお風呂に入っていたので脚を広げてその事を教えてあげようかと何度も思った。
アヤノは小さい頃から自分が女の子じゃないんじゃないかと落ち込むことがあったから姉にも似たものがついていると知れば安心出来ると思った。
それに姉が自分に付いているものを知ってから数ヶ月後に学年誌の性教育漫画でそれが女の子みんなについてる事とその部分の名前を知ってから、アヤノを安心させてあげられる確信も持てた。
だが、そうしなかった。
医者からそれは聞くだろうと思った。それにアヤノが「具体的に他の女の子とどう違うか」を姉はきちんと知らない。
自分の股間についてるものだって知ったばかりで正しく知ってるとも限らなかった。
それでもし教えたのがデタラメだったらアヤノを傷つける事になるかも知れなくて怖かった。
お風呂でアヤノが偶然、姉に付いているものに気づいた時は教えてあげようと思ったが、その機会は来ないまま、アヤノの身体の事情とは別に姉妹で一緒にお風呂に入る事に姉の方が恥ずかしさを感じるようになって一人で入るようになってしまった。
勉強を教えながら今なら教えてあげても、と思った。
だが、今は母親はパートを休んでいて買い物に出かける程度。居ない時間は極めて少ないし短い。
妹の前で下半身裸で股を開いている所を見られてしまう危険性がある。かといって言葉だけではただの気休めの嘘にしか聞こえない。
だから病院での性教育を待ったほうがいいだろうと思った。
結局の所、問題が難しすぎて専門家の力を借りる以外に出来ることは何もなかった。
それは姉や親だけではなく学校もそうだ。
病院ではアヤノの事件に対する心の傷のケアから始める方針は決まっていた。
時間はかかるがアヤノが自分の身体を知る時をそれを知らないアヤノ以外はすがるように心待ちにしていた。
それからアヤノの事件からの精神的なダメージからの回復ためのケアから始まり、学校の性教育が始まる次の学年に入る前までにある程度の知識と認識を身につける事を目標にスケジュールが組まれてアヤノの身体についてのレクチャーが始まった。
定期的に病院に通い心理士と医師、医療ソーシャルワーカーなどが連携して行われるレクチャーでアヤノは自身の身体、そして男女の違い、自身と他の女性との違いを教わった。
最初はピンと来ていなかったものの少しずつ自分の身体の事を知り安心することもあればショックを受ける事もあり複雑な気持ちでそれを受け入れていく準備を重ねた。
それが数ヶ月間続いたある日。
アヤノは未だに学校に通うことが出来なかった。友達にも会うのがまだ怖い。
だが、近所の人と話したり、他の学年の子と遊んだりは少しずつ出来るようになった。
一足早く性教育を受けた事で自分と他の女子との身体の違いを理解して、自分が女の子である事と自分が他の女の子と同じ様に出来ない事を知った。
これから来る思春期をどう迎えていいのか戸惑いを抱えながら日々を過ごしている。
学年が上がり親に買ってもらっている学年誌でも性教育についての連載がコラムと漫画の二本立てで始まった。
それを読んでいて女子の身体の変化に自分に関係のあるものと関係のないものがある事は辛い事実だった。そんな戸惑いを抱えていた気持ちを持て余していたアヤノは皆が学校に通っている時間に散歩に出かけた。
アヤノが住んでいるのは地方都市の比較的新しい住宅地だ。
山や森林が周囲にあり午前中の時間に歩いていても静かだ。
学校に子どもたちがいる時間は外で遊んでいるのは親と一緒に出かけている学校や幼稚園に通う前の年齢の子たちだけだ。
そんな中、アヤノは言語化出来ない悲しい気持ちを持て余しながらそれを誤魔化すように歩いていた。
「あっ……!」
ぼんやりしながら歩いて居た所に見慣れた男子に出くわした。
「アヤノじゃん」
そこに居たのはアヤノのクラスメイトのトシユキだった。
「トシユキ。が、学校どうしたの?」
「お前、本当に休んでるんだな」
「そっちだって」
「俺は親の用事で遠くに出かけてて予備日っていうの? 一日余計に休んだから暇で出かけた」
「わたしも暇で」
「ふーん」
トシユキは去年の四月にアヤノのクラスにやって来た転校生だ。
アヤノとは席が近いが一緒に遊んだりした事はないし、それほど話す機会もなかった。
ちょうど大根抜き事件があった時は盲腸か何かで入院してたのを思い出した。
(もしかして、大根抜きの時の事、知らない?)
以前と変わらない接し方にアヤノは希望を持った。
「あのさ、トシユキ……。あっ!」
「どうした?」
事件について知っているのかの探りを入れようとアヤノが話し始めようとした時、向こう側に同級生の姿を見かけた。
「どうしよう!?」
「どうしたんだよ?」
「クラスの子がいる!」
「そりゃ学校が終わるくらいの時間だからな。今日は参観日か何かで早いんじゃなかったか?」
「そうなの!? どうしよう、わたし、もう行くね!」
「待てよ」
アヤノが走り去ろうとした時、トシユキはアヤノの手を掴んだ。
「何するの!?」
「いいから来い」
ぶっきらぼうにそう言うとトシユキはアヤノの手を引いて走り出した。
「えっ? えっ?」
アヤノはどうしたらいいか分からなくて、だがトシユキの手を引く力が強くて着いていく外なかった。
トシユキが走り出したのは林の方だった。
林とヤブに挟まれた狭い道を走っていく。
ジャージにスニーカーだったのでアヤノも走るのに困らなかったがそれでも急に走り出して慣れない悪路を走らされて困り果てていた。
しばらく走って開けたところに出るとトシユキは立ち止まった。
「お前、クラスの奴に会いたくないんだろ?」
「だから帰ろうとしたのに!」
「お前が走っていく方向にも他の奴がいた。それに散歩してたんだろ? 俺の秘密の散歩道だけど今日はここにするぞ」
「わたしトシユキと遊ぶって行ってないんだけど」
「いいだろ。俺も今日は暇なんだ。あと、お前、学校行けないんだろ。なんか一人にしづらいんだよ」
「わたしがどうだっての?」
「お前、嫌な事あって学校来れないんだろ。俺も前の学校であったからそういう時は何かして忘れたらいいし。どっちにしてもさっきはどっちに行ってもクラスの奴に会ってたぞ」
「そ、そっか」
ぶっきらぼうに言うがトシユキはアヤノの事を心配している様子だった。
それもそうだろう。理由を知っているかどうかは別にして何ヶ月も学校に来れない同級生が目の前にいてクラスメイトに会うことを恐れていたら誰でもトシユキの様な行動を取るかもしれない。
アヤノは突然の優しさに嬉しい気持ちになった。
とりあえずついて行って今日は一緒に遊ぼう。そうアヤノは思った。
友達と遊ぶなんて何ヶ月ぶりだろう。
トシユキとはあまり話した事はなかったがその分、安心して一緒に遊べる気がした。
「この先に俺の基地があるからそこに行くぞ」
「わかった!」
アヤノはトシユキの後をついて獣道を歩いてく。
基地を作ってるなんて男子らしいなと思った。
話には聞いた事はあるがアヤノは秘密基地を作った事は無かったからそれがどんな感じか分からなかった。
どうやら山や林や藪に作ったりしてるらしい事はおぼろげに知っているが実際に誰かの基地に行くのは初めてだった。
「ここが俺の基地」
先ほど立ち止まったところよりも少し広くて背の高い草や木に囲まれた空間でトシユキは立ち止まって言った。
アヤノは藪の隙間にできた獣道の向こうにこんな空間があるのかと驚きをもった。
「わたし、基地って初めて!」
「そうなの?」
「うん、だって基地って男子が作るものでしょ?」
「いや、前の学校の時は女子も一緒にやってた」
「そうなの?」
「うん」
アヤノはトシユキの言葉に驚いた。
確かに男子が基地の話をしてるを聞いたりしたが、女子がするのが変みたいな話は聞いたことがない。
アヤノが勝手に男子だけのものと思ってたのかも知れない。
本人には自覚はないがアヤノは小さい頃から「これは女の子のもの、これは男の子のもの」という意識が強い方だった。
それは自分に女の子にないはずのものが付いているから自分が女の子であることに人一倍こだわっていたからだ。
前なら「基地なんて男の子の遊び」とトシユキの誘いを断って帰っていただろう。
今は会うことの出来る友達がいないのもあり、普通に接してくれるトシユキにすがる思いもあったし、男女の区別にこだわる気持ちも自分が女の子である証拠を学んで薄れ始めているのかもしれない。
「ところでここで何して遊ぶの?」
アヤノはふと湧いた疑問をトシユキにぶつけた。
基地で遊ぶというのは聞いたことがあるが、山や藪の合間にある隠れた空間で何をして遊ぶのか見当がつかなかった。
「そうだな。今はこれ」
トシユキは斜め上の方を指さした。
「何これ!?」
そこには木の枝の間に架けられた屋根があった。
「屋根?」
「そう。今、これを作ってるんだ」
「トシユキくんが作ったの?」
「そうだよ」
「一人で?」
「俺以外にやるやついないからな」
「すごい!」
アヤノは感動した。
社会の教科書で見たことのある南国の人たちの作った小屋のように葉や草を結んで重ねたものだった。
そういった物を子供一人で作り上げている事に素直に感動を覚えた。
「これが出来れば急に雨が降っても雨宿り出来るだろ? 雨の日にも遊んだりも出来る」
「そうだね!」
「なぁ、俺、お前に秘密の場所を教えちゃったんだ。これを作るの手伝ってくれないか?」
「えっ?」
「お前、俺より背が高いし器用そうだから助かる」
「いいよ。でも、わたし、こういうのやったことないから大丈夫かな?」
「俺も思いついたのをやってるだけだから、とりあえず俺がやってるやり方教えるから一緒にやって」
「わかった」
そう言ってトシユキはこれまでここで遊んでいて集めたと思われる枝や大きな葉っぱなどを持ってきた。
他にも麻紐を鞄の中に入れていたようでそれを出す。
「これで作るんだ」
「うん、がんばるね!」
アヤノはトシユキのここで作り上げたものの一部を見てワクワクした気持ちになりガッツポーズをする。
「あ、そうだ」
「何?」
「ここの事、俺とお前だけの約束だからな。誰にも言うなよ」
トシユキは一度真剣な目でアヤノを見た後恥ずかしそうに目を逸らして言った。
「大丈夫だよ。わたし、今、学校に行ってないもん。誰にも話す機会ないし」
「仲いいやつとかと遊んだりとか」
「してない。学校行かなくなってから今日トシユキ君に会ったのが初めてだよ」
「そっか」
アヤノの言葉にトシユキはバツが悪そうに言った。
「だから、わたしたち、仲間だね!」
「何の仲間だよ?」
「ここの基地の」
「そうだな。よし、やるぞ」
「りょうかい!」
それからアヤノはトシユキに教わりながら屋根づくりを初めた。
枝を麻紐で縛って組み上げ、それが出来たら葉を乗せてそれも麻紐で結んでいく。
トシユキはかなり大雑把な性格のようで作った所がすぐに緩んだりしてやり直しが何度もあった。
アヤノはそれを見て手芸が好きな事で身につけた紐の結び方などをトシユキに教えて作り方を改善する方法を提案した。
トシユキは最初戸惑ったがアヤノに教わったやり方の方がうまくいくことが分かると今度はアヤノにあれこれ質問して作り方を変えていった。
一人から二人になった事と手先の器用なアヤノが改善案を出したことで集めていた材料は以前よりも早く組み上がっていった。
「これで全部?」
「そうだな。これで屋根のパーツはできた」
「ここからどうするの?」
「これを木の上に上げるんだ」
トシユキはすでに屋根をかけてある比較的低い木を見上げる。
「ここにだね」
「俺、背が低いからすごい助かる」
「あぁー」
トシユキはふてくされたような顔をして言う。アヤノはそれになんと言っていいか分からず曖昧な反応をする。
アヤノは女子の中で真ん中よりも少し背が高いほうだ。トシユキは背が低い。
この年頃は女子のほうが身体の大きい傾向にあるが、二人はそれが如実に現れた身長をしていた。
「まかせて! がんばる!」
「一人ではしゃぐなよ。俺もやるから」
「もちろん!」
組み立てた屋根のパーツを二人は持ち上げて木の枝に引っ掛け始めた。
トシユキ一人でも可能な高さではあるが、トシユキが方向を定めてアヤノがそれをさらに上に持ち上げる形で乗せていくととてもスムーズに進んだ。
三つ作った屋根のパーツはあっという間に木の枝に架けられて屋根としての完成を見せた。
「やった! できたね!」
「こんな早く出来ると思わなかった。お前、すごいな!」
「嬉しい。わたし、ちゃんと出来た?」
「うん、すごいよ」
トシユキに褒められてアヤノは嬉しい気分になった。
大根抜き事件から数ヶ月、アヤノには楽しいことや嬉しいと感じられることがなかった。
こうしてトシユキと偶然が重なって一緒に基地づくりをしてみて充実感を感じられた。
「今日はこれで作業は終わりだな」
「終わったらどうするの?」
「山を観察するんだ」
「山?」
「鳥とか動物とかここから色々見える。見てると面白いぞ」
「へぇ。わたしも見てていい?」
「お前はこの基地の仲間だからな」
「そうだね」
トシユキからも仲間と呼んでもらえた。アヤノはその事が嬉しく思えた。
「今日、ここに連れてきてもらったけど、わたしこれからも来ていいの?」
「いいぞ。誰にも言わないなら一人で来てもいいし、一緒にも来ような」
「うん! わたしもここで遊びたい」
トシユキは笑顔でアヤノの方を見た。
アヤノもその顔を見て笑顔になった。
学校に行けなくなったアヤノにとってここが新しい居場所になるとアヤノ本人もトシユキも思った。
「なぁ。ところでさ――」
「何?」
「――お前、学校には来ないの?」
「うん。行かないと思う。っていうか行けないよ」
「今は言うやつもいなくなったけど、俺が入院してる間に変な噂が広まってたもんな」
「噂……」
「女にちんこ付いてるなんて変な噂信じるのもどうにかしてるよな。ちんこ付いてたら男じゃん」
トシユキは藪の切れ間から見える向こうの山を見ながら言った。
アヤノはその言葉にドキッとした。
変な噂。あの時の事件とアヤノの身体の事情を知らなければそう思うだろう。
トシユキの言葉にアヤノはどう返していいか分からなかった。
ここは話を合わせるべきか。それとも本当の事を言うべきか。
「あのね。噂って本当なの」
「え? いや、さすがにないだろ」
「あるんだよ。わたし、女子だけどちんちんついてるの。その、男の子のとも違うんだけど……」
「どういうことだ?」
「ごめん、うまく説明出来ないけど」
「お前、本当に付いてるの?」
トシユキの問いにアヤノは無言で頷いた。そしてトシユキはアヤノの脚の付け根を見た。
「お前に?」
「わたしに。でも、わたしは女の子なの」
なぞなぞの様なアヤノの言葉を聞いてトシユキは戸惑ったが考えた。
トシユキには姉がいるが姉と話したりした色んな事を思い出した。
もしかしたらこれかもしれないというのは姉から聞いたことがあった。
「お前がそう言うなら信じるよ。何か色々あるんだろうな」
「うん。女の子なんだけど、普通の女の子と違うんだ」
「大変そうだな」
「そうだね」
二人の間に無言の時間が流れた。
アヤノはトシユキが自分の言葉を信じてくれた事が嬉しく思えた。
話の内容は分かってもらえてないんだろうが、事情がある事は分かってくれたようだった。
次の言葉をなにか言いたくてアヤノは頭の中を探したがすぐに見つからなかった。
そんな時、腰から下の部分にアヤノは違和感を覚えた。その違和感は限界まで遠くなさそうだった。
「ごめん、トシユキくん、わたし、おしっこしたい……」
「トイレ、そこって決めてるからそこでしなよ」
「ここで!?」
「ちゃんとしたトイレなんてないからな」
「えぇ……」
アヤノはこの基地のトイレがただそうとだけ決めた場所である事に抵抗を覚えた。
男子なら外で平気でおしっこするのかも知れないし、女子の友達もそうしたことのある子はいると話には聞く。
だが、アヤノはそんな経験がないため抵抗を覚えて。
(あぁ! もう仕方ない!)
尿意の方が限界に近くなったので抵抗があるがここのトイレを受け入れる事にした。
トシユキが指差したトイレの場所に行き、パンツを下ろしてしゃがむとトシユキもアヤノの隣に来た。
「えっ?」
「俺も我慢してたんだ。てか、なんでしゃがんでんの? 付いてるんだから立ってすればいいじゃん」
そう言ってズボンの前の方を下ろしてちんちんを出したトシユキは言った。
初めて見る同じ年代の男子のちんちんにアヤノはびっくりして顔を背けようとしたが目が釘付けになってしまっていた。
「わたし、できないの!」
「ちんこあるんだろ? 家とか学校で立ってしたら怒られるかも知れないけどここならいいぞ」
「そうじゃないの、わたしのちんちん、立っておしっこできない形なの」
「そうなの?」
「うん……」
自分の股間がトシユキと違う事を説明しようと言葉を探したがおしっこを我慢するのが限界になり無言のままおしっこを出した。
トシユキはアヤノがおしっこを出す音を聞くと納得したような顔をして自分もおしっこを出す。
アヤノは先っぽから前に向かっておしっこを出しているトシユキのちんちんを見ていた。
(男の子ってこんな風におしっこ出すんだ)
アヤノはちんちんが付いているがトシユキのちんちんと違う事を実感して自分が女の子である事への安心感と自分とは違うちんちんとおしっこの仕方への好奇心でソワソワする気持ちになった。
二人ともおしっこを出し終わった。
アヤノはポケットからティッシュを出しておしっこの出る場所を拭く。
「トシユキくん、このティッシュどうしよう?」
「そこの藪に隠しといたら?」
「よくないよ」
「他にないだろ」
「まぁ、しょうがないか。次来る時はゴミ袋持ってくる」
そう言うとアヤノは立ち上がってパンツとズボンを上げて藪の中におしっこを拭いたティッシュを捩じ込んだ。
薮の緑にティッシュの白とおしっこの染みの薄い黄色は目立つ。その様子にアヤノは罪悪感を覚えた。
「ホントに立ちションできないんだな。しっこの音が女の音だった」
「え? 男の子と女の子でおしっこの音違うの?」
「女の方がうるさい」
「知らなかった」
「ホントにちんこ付いてるのか?」
「うん、付いてるよ」
「ならなんで立ってできないんだよ」
「それは……わたしのちんちん、先っぽに穴がないの」
「しっこの穴?」
「そう」
アヤノは生まれては初めて自分の大事な所について誰かについて話したので恥ずかしくなり顔が赤くなった。
「じゃあ、どっから出てるんだ?」
トシユキは純粋な疑問として特に意識する事なく聞いた。
「ちんちんの後ろの方。ちんちんとおしりの穴の間におしっこが出る穴があるの」
「女と一緒だな」
「だってわたし女の子だもん!」
恥ずかしくて顔が赤くなっていた上に女じゃないかのように言われたアヤノは怒って言った。
トシユキはそのアヤノの態度に自分の言ったことマズさに気づいた。
「ごめん、そうだよな。お前、女だよな」
「ちんちん付いてるけどわたしは女の子なの! だから立っておしっこ出来ないの!」
「わかった。ごめん、本当にごめん」
トシユキも別にアヤノを男だと思ったわけじゃない。
髪を伸ばしているしアヤノは女子にしか見えない。だが、ちんちんが付いている人という所から男子と話してるような言い方をしてしまった。
申し訳ない気持ちでトシユキはなんて言っていいのか分からなくなってた。
「わたしこそごめん。普通、女の子にはちんちんなんてないもんね」
「いや、ごめん。俺こそ……」
「……いいよ。ねぇ、わたしのちんちん、見てみる?」
「えっ?」
トシユキはアヤノの言葉に耳を疑った。
「多分、見ないと立っておしっこできないちんちんだって分からないと思うから」
「いや、でも……」
さっきアヤノが隣でしゃがんでおしっこをしているのを見てトシユキは男子と女子のおしっこに対する違いみたいなものを感じた。
トイレでは女子は個室で一人きりになるし、さっきのように外でしてもしゃがむので股間が他の人に見えることはない。見えたとしてもそれはせいぜい立ち上がってパンツを履くときの動作で一瞬だ。
股間を見られることの重みは男子よりも大事なんじゃないかと思った。
「さっき、トシユキくんのちんちん見ちゃったから。わたしだけ見るのはずるいと思うし」
そう言ってアヤノはおもむろに太ももまでズボンとパンツを下ろした。
「お前!」
トシユキは顔をそらそうとしたが気になって目が釘付けになった。
「ね、付いてるでしょ?」
「ホントだ」
アヤノは腰を前に出して股間を強調するポーズと取った。
トシユキはそんなアヤノの股間を目を見開いてじっと見た。
確かにそこにはペニスと思われるものが付いていた。
長さはトシユキのペニスの半分くらいで、陰嚢はなかった。
「玉はないんだな。あとちっちゃい」
「女の子だから。立ったままじゃ見づらくない? しゃがんで見たら見やすいと思うよ」
「いいのか?」
「ちんちん付いてる者同士でしょ? わたしもさっきしゃがんで顔とちんちん、同じ高さだったからじっくり見ちゃったし」
「わかった。じゃあ」
そう言ってトシユキはアヤノの前でしゃがんで股間をじっと見た。
「トシユキくんのちんちんは先っぽに穴があるんだよね?」
「そうだな」
「わたしのはこうなってるの」
そう言ってアヤノはちんちんの包皮を向いてみせた。
「あ……! 何もない!」
アヤノのちんちんの先端はツルンとしていてただの丸い先っぽだった。
男性のペニスにある尿道口がない。
「ね。このちんちんなら立っておしっこ出来ないでしょ? さっき言った通りちんちの後ろにからおしっこ出てるから」
「前に飛ばせないな」
「お医者さんが言ってたの。女の子だからわたしのちんちんにはおしっこの穴がないんだって」
「そういうもんなのか」
「あと、タマタマもないのも女の子だから」
「しっこの穴と玉が男にあるってことか?」
「本当はもっと難しいんだけど、うまく説明出来ないからそう思ってもらったらいいよ」
「そうか……」
トシユキは確かにちんちんが付いているアヤノの股間を見ながらアヤノのちんちんの正体を考えていた。
実はトシユキにはアヤノのちんちんが何なのか思い当たることがあった。
「あ、ちんこの下!」
考え事をしながらアヤノの股間を見ていてトシユキは何かを見つけた。
「えっ?」
「お前、ちんこの下が割れてるじゃん。他の女と同じ」
「ホント!?」
「お前、知らなかったの?」
「だって下見てもちんちんしか見えないし。でも、わたし、割れてるの?」
「割れてるぞ」
「きゃっ!」
トシユキはアヤノの割れ目の事を伝えようとして思わず指で軽く押した。
アヤノはそれにびっくりして悲鳴を上げた。
「急に触らないでよ!」
「ごめん、でも他の女と同じだから」
「わたしも割れてるんだ」
アヤノは嬉しそうな顔をした。
「お前、普通に女じゃん」
「えぇ?」
「お前に付いてるちんこ、他の女にも付いてるぞ」
「トシユキくん、女子のお股見たことあるの?」
「姉ちゃんのはある。なんなら、割れ目の中も見たことあるぞ」
「どうして?」
「一緒に風呂はいってたし、あと、女の股にもちんちんの代わりに付いてるものがあるってわざわざ教えてくれた」
「え……?」
「これは内緒だからな。姉ちゃんにも誰にも言うなって言われてるんだ」
「い、言わないよ。わたしだってちんちん見せたし、これも内緒にしてね」
「当たり前だ」
トシユキはアヤノのちんちんをじっと見た。
姉と一緒に風呂に入っていた頃に姉が湯船に座って脚を開いたときの発見とそれ以降に姉の部屋で姉の大事な所を見せてもらった事を思い出しながら記憶の中のそれと眼の前のアヤノの股間を比較した。
「お前は他の女のここを見たことあるか?」
「うん。お姉ちゃんいるし、トシユキくんと同じ様に見せてもらったことある。あとね……」
アヤノも姉に陰裂の中を見せてもらったことがある。つい二ヶ月ほど前の事だ。トシユキと同じ様に絶対に秘密という約束で。
「……。わたし、ちんちんが付いてる事が理由で毎月病院に通ってるの。保健で習う男の人と女の人の身体の違いを病院の先生に学校よりも詳しく習ってるの」
「そうなのか。それって女の股がどうなってるかも?」
「うん。わたしと他の女の子がどう違うか、詳しく教わったよ。その時、お姉ちゃんも一緒で家に帰ってから知ったほうがいいって言って見せてくれたの」
トシユキは驚いた。アヤノがちんちんに関係して病院に通っている事は想像していなかったからだ。病院で診てもらわなければならない問題を抱えているのか心配にもなった。
「どう違うのか知ってんだ」
「うん。あと、お姉ちゃんのと見比べたし」
「じゃあ、俺の予想合ってる?」
「どんなの?」
「女の割れ目の中にちんこを小さくしたような尖ったのがついてて、お前のちんこはそれが大きくなったものだって」
アヤノはトシユキの言葉にびっくりして口を手で抑えた。
「すごい、その通り。わたしのちんちん、大きすぎるだけで女の子みんなに同じのが付いてるの」
トシユキの予想は的中していた。アヤノのちんちんはある面ではちんちんと違うものだ。
「じゃあ、うちの姉ちゃんに付いてた尖ったやつなんだな、これ」
「うん。わたしのお姉ちゃんにも同じの付いてたよ。わたしのお姉ちゃんは普通の女の子だから」
「そりゃ立ちション出来ないよな。でも、それならこれちんこじゃないじゃん。なんで『ちんちん』って呼んでるんだ? クリなんとかって名前だろ」
「クリトリス、ね。それは……」
アヤノはその辺も親から理由を聞かされていた。
「小さい頃って割れ目の中なんて知らないからだよ。小さい女の子からしたら女の子には『付いてない』だもん。でも、わたしのはお股に見えるように付いてるから。それにクリトリスって小さい子は覚えづらいでしょ?」
アヤノの親がアヤノの肥大化したクリトリスをちんちんと呼ぶように教えたのはトイレトレーニングの際に姉にないものがある事への疑問に先回りして教える為だった。
クリトリスは難しいがクリちゃんという言い方も検討したが、その頃のアヤノの年齢では知らないはずの物だし、下手にそう言う言葉を知っていて幼稚園に通う年になって人前で言ったり周りの子がその言葉を覚えたら性教育を教育の中で行う段取りを壊してしまう。
女児には自分の性器について知らないで居て欲しいという親もあるので正式な名前を教えずに「女の子だけどちんちんが付いてる」と教えたのだ。
医師からクリトリスと教えた子が周りの男子のちんちんを見る機会があった際にこれはちんちんじゃないかと思い親に話せないまま自分は本当は男ではないかと考えてメンタル面での不調を呈した事例もあった。
なのでアヤノには「女の子だけどちんちんが付いてる」けれど「男の子と違ってちんちんからおしっこが出ないから女の子」というロジックで自身の身体についての認識を形成することにした。
それは別の悩みを生むことになるが、女性器について幼い子供に教える事の難しさとの兼ね合いで悩んだ結果だ。
「なるほどな。まぁ、姉ちゃんも俺が見つけるまで知らなかったしな」
トシユキは色んな事を考えてアヤノの股間を見てという事が頭の中でつながって納得した。
そして同時に目の前にあるアヤノのモノが紛れもなく女の子のそれだと言うことを意識して顔を赤くした。
「どうしたの?」
「いや……」
今更、異性の股間を見てることが恥ずかしくなったという事は情けなくて言えなかった。
どうしていいわ分からずトシユキは大胆な行動に出て誤魔化した。
立ち上がってトシユキもズボンとパンツを脱ぎだした。
「トシユキくん!?」
「お前のだけ見といてずるいから。お前、さっき先っぽのしっこの穴の事言ってたけど見たことあるのか?」
「そう言えばない。さっき始めて男の子のちんちん見たから」
「なら見ろよ。しっこの穴とかキンタマとか知らないだろ」
「いいの?」
「これでおあいこ」
アヤノはトシユキのちんちんをしばらく見下ろしながら顔が熱くなるのを感じた。
それと同時に湧き上がる好奇心には抗えずさっきトシユキがしたようにしゃがんでトシユキのちんちんが見やすい姿勢になった。
トシユキはアヤノに股間を見つめられると照れながらちんちんの皮を剥いた。
「俺はここからしっこが出るんだ」
「こんなのなんだ。穴って細長いんだね。丸いんだと思ってた」
「そうだな。あと、ちんこの下にぶら下がってるのがキンタマ」
「これが……」
「触ってもいいぞ」
「え? いいの?」
「お前のちんこの下の場所さっき触ったし。でもそっとな。こうやって下から持ち上げるように触れよ」
そう言ってトシユキは手のひらを上に向けて軽くバウンドさせるような動作をしてみせた。
「うん」
アヤノはトシユキの陰嚢をそっと触る。それはアヤノが自分の身体のどこを触った時にも似ていない感触だった。
男子のちんちんを触るのも間近で見るのもアヤノにとっては初めての経験だった。
アヤノは姉の割れ目の中を思い出しながらトシユキの股間は自分に似てないとも思った。
さっきトシユキはアヤノのちんちんの下が他の女の子のように割れていると言った。
それも見たいと思った。それはここでは難しいから家に帰ってから鏡を使おうとも考えた。
「トシユキくん、ありがとね」
「おお」
アヤノとトシユキはお互いに赤面した。
二人ともお互いの股間は異性のものだと認識出来たからだ。
そして触れたり見られたり、逆にこちらが見たりしていると自分の股間に経験のない不思議な感触を感じることにも気がついた。
その感触はくすぐったいようで好ましい。だが、同時にすごく照れる感覚だった。
それがお互いを異性だと認識する事が身体で起こったものだと知るのはまだ先の事になるのだが。
トシユキに基地に連れて行かれて秘密の見せ合いをした日以降、二人は基地で一緒に遊ぶようになった。
二人並んで連れションはするがさすがに股間を見せ合うのはあの日だけだった。
アヤノは学校にはあれからも行けなかった。
結局六年生になっても復帰できず不登校のまま卒業することに。
ただそのまま不登校でいるのは良くないとアヤノ本人も思っていた。
周囲の大人とアヤノ本人で話し合った結果、卒業後、アヤノは隣の学区の学校にバス通学をする形で進学する事になった。
アヤノも大根抜き事件の事を知らない人のいる場所の方が安心できるし、不登校によっての周囲からの見られ方が気になっていた。
バスで40分ほどの距離で慣れない制服も合わせて大変だったがそれでも心配事から開放されて再び学校に通える事はアヤノにとって安心をもたらした。
その頃には同級生全体を恐れる気持ちは薄らいでいて学校の帰り道で再開した一部の友達とは再び遊ぶようになった。
トシユキは不登校時からアヤノの理解者であり続け進学後は基地に行くことも減ったがそれでも一緒に遊ぶような友人関係は継続している。
いびつな事はあるがアヤノの日々はある程度不登校前に近い状態まで戻りつつあった。
そして進学した年にアヤノ自身にも嬉しい変化があった。
初潮を迎えたのだ。
子宮と膣は体内に存在しているが、医師でも生理が起こるかどうかは分からなかったが無事初潮を迎えることができた。
自分の身体は女性だけど普通の女性と違う。それを医師から知らされてショックだったし、その身体だから女性としてのアイデンティティに悩んでいたし不安も強く感じていた。
そんなアヤノに初潮が来たことは女性である事の証明書を手に入れたようで嬉しかった。
だが、嬉しいことばかりじゃない。アヤノの初潮は他の女性が生理に持つ意味のうち一番肝心なものを持たない。
子宮内膜の排出が行われるが卵巣の排出は行われない。アヤノには女性としての生殖機能がないからだ。
膣の内壁が狭く癒着している箇所もあるため月経血が膣内で詰まるリスクもありその場合は病院で速やかに治療が必要である事も医師から聞かされている。
また、生理中の貧血や体調不良が強く出やすい。要は生理が極端に重いのも難点だ。
それでも女の子なのにちんちんが付いている、クラスメイトに見られた時に「男では」と言われたアヤノには女の子としての自覚に根拠を与えるには十分なものだった。
不登校で自分の居場所が揺らいだ経験のあるアヤノは進学してからは自分の居場所作りに努力もした。
まずは部活に入ることだ。運動部は身体の都合から病院と学校の両方から止められていた。
文化系の部活から選ぶことになったが皆の絆の強そうな吹奏楽部を最初に見当したが、年数会合宿があり、他の部員と一緒に大浴場に入ることができないアヤノは諦める必要があった。
結局、校内でも弱小の手芸部に入ることになった。
人数も少ないし活動も週数回なので物足りなさを感じたが部員間の仲がよく居心地がよかった。
元々手芸が好きで不登校中もいろいろな物を作っていたので楽しくもあったし、座って行うので生理中の体調不良も他の部活よりは苦にならない。
時間もあるのでトシユキをはじめ地元の友だちとも遊ぶ時間ができるのでちょうど良かった。
そうして新しい日常を過ごし、三年後受験を経て進学をした先ではトシユキと同じ学校に通う事になった。
この頃にはアヤノとトシユキの関係は変化していて以前より親密なものになっていた。
つまり今ではアヤノとトシユキは彼氏彼女の関係だ。
帰り道が一緒なので進学後も手芸部であるアヤノの部活、トシユキのアルバイトがある日以外は一緒に帰る。
二人は同級生の間ではよく知られたカップルだった。
親密になったとは言え基地で遊び始めた頃とお互いの接し方はそれほど変わらない。
アヤノは不満ではないが恋人らしくないとは思うことは多かった。
そんな二人は今日、関係を一歩先に進める事になった。
学校帰りに父親が単身赴任、母親が仕事で帰りが遅い、姉は隣町で一人暮らしをしているトシユキの家に行き、アヤノは初めてをトシユキに捧げる約束をしているのだ。
実は今日、初体験をするに当たって数ヶ月前から準備していた。
普通のカップルはそんな事をしないが、アヤノの身体は普通の女性とは違う。
医師に相談したが、他の女性と同じ様に性行為をすることは出来ない。
だからどうやって行為をするかをアヤノに可能な方法を調べて、トシユキはその中でどうしたいかを話し合ったのだ。
学校を出てバスにのり制服のまま二人でトシユキの家に向かう。
二人は緊張していた。
アヤノとトシユキは行為をするために必要なものがいくつかありそれらをお金を出し合って買い集めた。
トシユキの部屋にはその道具が置いてある。
二人がセックスをする準備は整っている。あとは部屋に行き、始めるだけだ。
家の前に着くと二人は緊張した面持ちで二人でノブに手をかけて玄関を開けた。
トシユキの家には友人として何度も来たことがある。
付き合ってから親の居ない時間に来るというのは初めてだし、これからする事の事を考えると心臓が高鳴った。
トシユキの部屋に入ってしばらく他愛のない話をしながら気持ちを落ち着けると急にトシユキは真剣な顔をした。
「アヤノ、今日、するんでいいんだよな?」
「えっ、そのつもりだよ。どうして?」
アヤノは砕けた空気を終わらせたトシユキの緊張にビクリとした。
「手術してからでもいいんだぞ。無理してないか?」
「あぁ……」
この数ヶ月話し合った事の最終確認だとアヤノは思った。
手術というのは膣の拡張手術の事だ。
アヤノの膣は狭くところどころ癒着している。そのため、セックスでペニスの挿入を行うことはできない。
なので術式は具体的に内部の様子を調べてからその結果次第で変わるが外科的な方法で膣を拡張する手術を学校を卒業したら考えている。
トシユキは今、アヤノに負担がかかる方法でセックスしなくても可能な身体になってからという選択肢もあるという事を言っている。
「わたしはね、今がいいの。確かに、トシユキくんからしたら女の子とエッチしたように思えないかもしれないけど、わたしはトシユキくんの初めての人になりたい。それって一生に一回のことでしょ? 初めての彼女としてエッチでも初めてになりたいの」
「卒業しても一緒じゃないのか、俺達」
アヤノの言葉にトシユキは俯いた。
「一緒だよ。わたしはトシユキくんを好きだもん。でも、周りより早く彼女が出来たんだから初エッチも同じくらい早く経験してほしいの。わたしもしたいし。別に友達と競争してるわけじゃないけど、付き合ってるんだから経験したいよ」
アヤノは真剣な口調で言う。
だが、アヤノはその言葉の奥に本当の気持ちを隠していた。
アヤノには恐れている事がある。
それはトシユキが普通の身体の女の子のところに行ってしまうことだ。
これからするセックスは男同士でするのと同じ方法だ。今のアヤノはその方法でしか男性とセックスが出来ない。
手術をしても普通の女の子と同じに出来るとは限らない。
いずれ、ちゃんとした膣でのセックスが出来る相手にトシユキを取られてしまう。そして、自分は次の恋愛が出来る分からない。アヤノはそれが不安だった。
だから今が自分が好きな人とエッチをするラストチャンスかもしれないと思ったから、今日、初めてを捧げたいし初めてをもらいたいと思っていたのだ。
「わたしで卒業して欲しい」
「卒業って童貞をか?」
「うん。ちゃんとした初エッチじゃないかもしれないけど、今日、童貞を卒業して。トシユキくんが嫌じゃなければ」
「それは話し合ったろ?」
「わたしの処女ももらってくれる?」
「当たり前だ」
「お尻の穴だよ。それでも?」
「俺はお前の処女を二回もらうんだ。今日とそれから手術してからと」
トシユキの言葉にアヤノはときめいた。
手術してから、つまり学校を卒業してから多分数年後になるであろう手術とその傷の回復まで一緒に居てくれるという宣言だった。
「好き」
「俺も」
トシユキはアヤノをベッドに押し倒した。
そこからはネットで調べた知識を総動員してトシユキはアヤノを愛撫していく。
身体に柔らかく広がる性感に絆されながらアヤノは幸せを噛み締めていた。
「トシユキくん、わたし、濡れなくてもエッチできるんだから、お尻の準備だけでいいんだよ」
「それだとお前が気持ちよく無いだろ? 女は気持ちを盛り上げないと気持ちよくないんだろ?」
「でも、トシユキくんちんちんが苦しそうに勃ってる。わたしにも不完全だけどちんちんがあるんだからそんなに勃ってたら苦しいの分かるよ」
「本当だ。お前もちんこ硬くなってるな」
「だからいいんだよ」
「でも、ここも触らせて欲しい」
そう言ってトシユキはアヤノのちんちんの後ろを指でなぞり始めた。
そこはトシユキの愛撫とアヤノがこれからの行為とトシユキへの気持ちで興奮した事によりヌルヌルしている。
少しずつなぞりながら指をゆっくり埋めていく。
トシユキの指はすぐに第一関節よりも浅い所で行き止まりに当たった。
どうやらアヤノの膣で挿入可能な深さの限界のようだ。
「トシユキくん」
「お前、こっちで出来ない事を気にしてただろ」
アヤノはトシユキに気持ちを見透かされた事に驚いた。
これまでアヤノはお尻でエッチする事に納得していて膣でのセックスが出来ないことは気にしてないように振る舞ってきた。
「そんなこと……ううん、正直、他の友だちに悔しいって思ってた」
「せめて挿れる前にここで感じさせてやりたいんだ。いいだろ」
「嬉しい……」
アヤノの目からは自然と熱い涙が流れてきた。
身体の事を知って自分は女の子である事を実感できるようになっても他の女の子と違うし出来ないこともある事は変わらない。
だからこそ女の子にしかない部分をこうしてトシユキが触れてくれることは嬉しかった。
ちんちんが付いてる、しかもそのちんちんも今トシユキが触ってくれている膣も不完全できちんと機能しないものだ。
でも、女の子である事をトシユキは実感させてくれる。
病院で検査器具をこの場所に入れられたことはあるが男子の指が入るのは初めてだ。
自分で触れたこともない。
アヤノの膣からクチュクチュと液体とトシユキの指が立てるいやらしい音が聞こえてくる。
正直言うと気持ちよくない。
それはまだ身体が慣れていないからなのかそれとも感じる事が出来るだけの神経構造になっていないのかは分からない。
それでもアヤノは股に感じる異物感といやらしい音は心地よかった。
「そろそろいいか? 俺もしたい」
どれだけトシユキに膣を触られていただろうか。
トシユキは見たことのない興奮した様子でアヤノの顔を覗き込んだ。
大事な所を触られて恥ずかしかったのでアヤノは声を出せずに頷いた。
トシユキは器具とローションを出してアヤノの肛門をほぐし始めた。
アヤノがトシユキのペニスを受け入れるのは膣ではなくて肛門になるが、肛門はセックスをするための器官ではない。
ペニスを入れられるだけ広がるとのことだが一般的な女性の膣のように柔軟に広がらない。だからしっかりとほぐす為に一種の準備運動をしなければならない。
アヤノはトシユキに待っていてもらって自分でするつもりだったがトシユキは膣の愛撫からスムーズにこちらの行為に移ってくれたので申し出る隙がなかった。
しばらく器具でほぐした後、トシユキはアヤノの肛門に自分の指を挿れた。
そして膝立ちになりコンドームを手に取った。
これから本番に入るのだ。
アヤノはそれに気づくとトシユキの手を掴んだ。
「ねぇ、コンドームいらないよ。お尻じゃ妊娠しないから。わたし、中出しして欲しい」
「駄目だ」
「どうして? 男の子はその方が気持ちいいんでしょ?」
「らしいけど、俺はまだ童貞だから分からない」
「いいんだよ。付ける必要ないんだから」
「ある。あのな、付けないで尻に挿れるのってお互いの身体にとって良くないんだよ」
「どうして?」
トシユキはアヤノの反応に驚いた顔を一瞬した。
アヤノはトシユキの為にやせ我慢をしてると思ったがどうやら本気で中出しを望んでいたのだと思った。
「まず、腸にいる菌で俺の尿道が病気になる。その上、お前の腸が俺の精子で病気になる。俺等の身体にとってリスクがデカすぎる。だからちゃんとお前は自分の身体を守れ」
「トシユキくん……」
アヤノはトシユキが厳しい口調で言ったあと自分が軽率な考えをして不勉強だったと痛感した。
どうやってするか話し合ったし調べたがどこかトシユキ任せにしてたのだ。
「ごめんなさい。そうだよね。せっかくエッチするのに病気になったら楽しくないよね」
「だから付けるからな」
「うん。ありがとう」
「あと、これから挿れるけど、痛かったら言うんだぞ」
「わかった」
そう言うとトシユキは淡々とした態度でコンドームを自分のペニスに付けた。
アヤノはその様子を見ながら自分のちんちんがムズムズする感じを覚えた。
やっぱりアヤノのちんちんは男子についているものと違うと思った。だからこそ異性の大事な所に興奮を覚えた。
アヤノにはちんちんがあると言っても小さすぎてコンドームを付ける事ができない。
仮に付けられたとしてもコンドームの先端にある液溜まりは意味を成さない。
アヤノのちんちんには尿道口がないので出す液体がないからだ。
(わたし、ちゃんと女の子だったんだな。ちゃんと男の子と違う)
天井を仰いでアヤノは心の中で呟いた。
「行くぞ」
トシユキはそう言うとアヤノの太ももを掴んで持ち上げた。
「うん」
アヤノは嬉しそうな顔で頷いた。
次の瞬間、アヤノのお尻を裂けるかと思うような痛みが貫いた。
「痛ぁっ!」
「大丈夫か?」
「うん。そのまま……!」
トシユキはアヤノの悲鳴に怯んだがアヤノが覚悟を決めた表情をしたのを見ると腰を上下に動かし始めた。
「んっ……!」
アヤノは下唇を噛んで痛みに耐えた。
トシユキは慣れない様子で腰を慎重に前後に動かす。
お互いに処女と童貞だ。
挿れるのも挿れられるのも経験がない。
トシユキは苦戦しながら腰を動かしアヤノの肛門にペニスを出し入れした。
アヤノの肛門はきつく締め付けトシユキはすぐに気持ちよくなった。
一方、アヤノは痛みになかなか慣れることが出来ず先ほどとは違う痛みによる涙を少しだが出していく。
ずっと続くかと思った肛門の痛みだがそれは長く続かなかった。
すぐにトシユキの腰の動きは止まった。
「はぁ……」
アヤノはその事にすぐに気が付きトシユキの顔をじっと見た。
トシユキは脱力した表情をしていた。
痛みと恋人の表情に戸惑いつつトシユキの状況をアヤノは見守っていた。
トシユキはアヤノの肛門からペニスを引き抜く。
アヤノはすぐにその意味を理解した。
トシユキは絶頂に達したのだ。
「イッたの?」
アヤノが尋ねるとトシユキは無言で頷いた。
射精で疲れたトシユキは普段見せているどこか険しい雰囲気が抜けて弱々しさを感じた。
アヤノはトシユキが今、どんな気持ちでいるのか興味を持つと同時にそれを知ることが出来ない事にどこか寂しさを感じた。
女子だからアヤノは射精がどんな感覚なのかは知りようがない。
オナニーもした事がなかったのでイクという感覚も分からないし、トシユキとのセックスでそれを経験できるのかも分からなかった。
女子の中でオナニーについての話題は時々出る。どうやってやるかという話も出てくる。
そういった話を聞くと女子のオナニーはアヤノも同じようにする事が出来るようだった。
だが、アヤノはオナニーをしたいとは思わなかった。
気持ちいいっていう感覚はトシユキに抱かれた時に経験したかったからだ。
いざ経験してみると気持ちよくなれる日が来るのかは不安に思った。
「痛くなかったか?」
アヤノが起き上がろうとするとトシユキはアヤノの顔を覗き込んで言った。
その言葉をかけたトシユキのちんちんはアヤノのちんちんより少し小さいくらいかと思うくらいに縮んでいた。
「イクとこんなに小さくなるんだ」
「アヤノはどうなんだよ?」
「わたし、ひとりエッチしたことないから分からない」
「女子ってしないのか?」
「する子もいるみたいだけど。なんか……」
アヤノはトシユキの言ったことにどう答えるか悩んで言葉を濁した。
恋人とは言え女子としては男子にオナニーの話をするのは恥ずかしいし、気持ちよくなるのはトシユキに抱かれる時だけでいいと思っていることは照れくさくて言いづらかった。
「アヤノのちんこが勃ってるときとイッた後でどのくらい大きさ変わるのかなと思ってな」
「トシユキくんのエッチ……」
「ヤッった後で言うことか、それ?」
トシユキは笑った。
アヤノも釣られて笑ったが肛門の痛みを強く感じた。
痛みというのは辛いものだがそれでもその痛みにはどこか幸せを感じた。
それは好きな人に愛された事の証拠だからだ。
肛門の痛みでそれを経験したというのは自分が普通の女性と違うという事を突きつけられることではあるがそれでも叶わなかった。
女の子にとって初めての性行為は痛いものだ。だから確かに女の子としての通過儀礼を経験できたと実感できたのだ。
そしてアヤノにはもう一度、初めてのセックスを経験することが出来る。それは膣の拡張手術をするときだ。
それにはちんちんを普通の女性のクリトリスと同じくらいに小さくするという選択肢もある。
だが、アヤノはそれを望んでいなかった。
きちんと男性のペニスを受け入れられる膣は欲しいがちんちんは自分が小さな頃から付き合ってきた自分のアイデンティティと言えるものに思えたからだ。
「トシユキくん……」
「何だ?」
「卒業したら、もう一度、わたしの処女をもらってくれる?」
「手術してって事か?」
「そう。今度はわたしのおまんこの処女」
「うん。その時はコンドームなしでしような」
「トシユキくんのちんちんの感触、楽しみにしてるね」
アヤノがそう言うとトシユキはアヤノを抱き寄せた。
お尻は痛いままだがアヤノは幸せ気分だった。
その証拠にアヤノのちんちんはカチカチに硬くなっていたからだ。