※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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104 支配の残滓

 夕闇に沈みかけている路地裏に、板造りの廃屋がひっそりと口を閉ざしていた。

 一郎は壁に背を預け、短銃を握る手の汗を拭うこともせず、じっと前を見据えていた。

 

 魔眼が告げている。

 この奥に、ガリオンとエリカがいる。

 防音の結界でも張られているのか、声は一切聞こえない。だが、浮かび上がる数値がすべてを物語っていた。

 

 ガリオン──洗脳師〈レベル65〉。

 

 図抜けた数字に、背筋が冷える。

 一郎も淫魔師としては〈レベル65〉とかなり高いと自負しているが、それと同じということだ。

 

 そして、エリカ……。

 「快感値」が急速に減少していた。声も仕草も見えはしないのに、数値だけが確かに告げてくる。

 いま彼女は、激しい快楽に呑まされているのだ。

 自分の女が、他の男の手で奪われている。その事実に、はらわたが煮えくり返った。

 

 だが、冷静になれと自分に言い聞かせ、仲間のステータスを思い返す。

 一郎に支配された女たちは、なぜか能力値のレベルが上昇することは前から薄々は気づいていた。

 だが、はっきりとそれを認識したのは、ミランダを支配したときだ。

 戦士レベル〈40〉だった彼女は、支配ののち〈65〉へ跳ね上がり、ステータスには新たに「淫魔師の恩恵」と刻まれていた。

 

 淫魔師の恩恵──。

 

 自分に隷属した女たちが、性と快楽を媒介にして本来以上の潜在力を引き出す現象だ。それもまた、淫魔師としての能力なのだろうか……。

 その証拠に、ミランダだけでなく、シャングリアも〈戦士25〉へ、コゼも〈アサシン20〉へと押し上げられている。いずれもステータスには「淫魔師の恩恵」と刻まれていた。

 それでも、ガリオンの〈65〉には遠く及ばない。

 

 レベルという能力値の差が、支配系の術のかかり具合に影響したはずだ。つまりは、一郎とミランダはガリオンという男の洗脳術にはかからないと思うが、シャングリアとコゼはかかる可能性が高い。

 警戒しなければならない。正面から仕掛けていい相手ではない。

 一郎は短く息を吐き、仲間たちに視線を向ける。

 

「……ミランダだけは俺と一緒に前に。コゼとシャングリアは外で待機だ。あいつらは術に狙われる危険がある……。それと万が一、俺にかかったら……ミランダ、俺を殴って気絶させろ。多分、大丈夫と思うが……」

 

「……わかった。ミランダ、ロウを頼むぞ」

 

 影に潜んでいたシャングリアが、不安を隠せない声で囁いた。

 頷くミランダ。

 その横で、コゼがしゃがみ込み、扉前の罠の解除を続けている。

 やがて、彼女が顔を上げ、小声で告げた。

 

「終わりました……」

 

 一郎は短銃の感触を確かめ、呼吸を整えた。

 怒りはまだ胸の底で燃えている。それを鋭く研ぎ澄まし、ただ一点に収める。

 そして、扉を蹴り飛ばした。

 扉が轟音を立てて開いた。

 

 廃屋に飛び込んだ一郎の目に飛び込んできたのは、荒い息を吐きながら全裸で立ち塞がるエリカと、その背後でしゃがみ込む四十前後の平凡な顔立ちの男だった。

 その男こそが、洗脳師ガリオンに違いなかった。

 

 また、エリカの内腿を伝って光る滴が床に落ちるのが見え、胸の奥で怒りが爆ぜかける。身につけていた服着も、床に散乱していた。

 しかし、一郎は奥歯を噛んで怒りを呑み込んで、短銃をガリオンへ向けた。

 剣は全く上達しなかった自分だが、シャングリアが横流ししてくれた王軍の短銃だけは妙に馴染んだ。短い時間で射撃の勘を掴み、人並み以上に扱えるようになっていた。もっとも、人を撃ったことはまだない。

 

 狙いをつける。

 しかし、エリカの身体が邪魔をしている。万が一、彼女を撃ってしまう危険がある。

 指が震えそうになるのを抑え、一郎は呼吸を整え、時間を稼ぐように口を開いた。

 

「俺に剣を教えようとした女がいたんだがな……。俺には向いていないそうだ……。だから王軍の騎兵が使う短銃を持ってきてもらった」

 

「短銃……それが……?」

 

 ガリオンの声が震えている。

 一郎の短銃は黒く光り、撃鉄は起こされ、引き金には僅かな力がかかっていた。

 狙いは揺れず、すでに撃つ準備は整っている。

 

「まだ始めたばかりだが、この距離なら外しようがない。剣はだめだが、銃については意外に才能があったみたいでね」

 

 脅すようにガリオンに告げる。

 そして、改めて、魔眼でガリオンのステータスを読む。

 扉越しではわからなかった情報が入ってくる。

 

 

 

 ガリオン

  人間族、男

  年齢41歳

  ジョブ

   洗脳師(レベル65)

  生命力:50

  直接攻撃力:10

  現在の支配女(支配限界:1人)

   エリカ

 

 

 支配限界……1人?

 一郎は内心で首を傾げた。どういう意味なのか……?

 

「……ロウ様、撃たないでください……。そのまま、帰って……。お願いです」

 

 すると、エリカが剣を握りしめたまま口を挟んできた。全裸のまま、ガリオンを守るように立ちはだかったままだ。

 

「……俺のことはわかるんだな、エリカ……?」

 

「わ、わかります……。この人を撃たないで……」

 

 エリカの瞳が真っ直ぐに返ってきた。

その視線に、一郎は悟る。──記憶は残っている。一郎のことも理解している……と。

 共に過ごした時間を覚えていながら、それでもガリオンを選び、自分を拒んでいる。

 理不尽とわかっていても、腹の底で怒りが膨れ上がった。

 

 いや、怒りの対象はガリオンだ。

 間違えるな──。

 自分に言い聞かせる。

 

「ガリオン。半歩でも動けば、脳天を撃ち抜く。エリカを盾にしようともだ」

 

 一郎は低く言い放つ。

 

「ガリオン様……。ロウ様は銃の名手です。一緒に訓練をしましたが、かなりの腕前です……。それと、あの短銃は二連発です」

 

 エリカが小声で告げた。

 その言葉はガリオンを守るための助言であり、一郎の苛立ちはさらに増した。

 だが、一郎はガリオンが一郎の後ろにいるミランダに、幾度か視線を向けることに気がついた。

 〈レベル65〉と並んでいるので、ミランダにガリオンの洗脳術が効果はないと思っているが、魔眼のないガリオンにはわからないはずだ。

 しかし、ガリオンがミランダに術を掛けようとしている気配がない。

 一郎は、ガリオンのステータスにあった表示を思い出す。

 

「……お前って、洗脳術に関しては能力が図抜けているが、ひとり限定なんだな? つまりは、誰かを新たに操ったら、それまで掛けていた洗脳が解けてしまうということか?」

 

 一郎は吐き捨てるように言った。

 ガリオンの顔に驚愕が走る。

 どうやら、図星のようだ。

 ならば、ガリオンは、ほかの女を操ろうとすることはできない。そんなことをすれば、エリカの術が解けてしまい、間違いなく、エリカはガリオンを殺すだろう。

 一郎は、ガリオンの焦りを誘うために、さらに口を開く。

 

「……ところで、助かったよ。お前が間抜けで」

 

「間抜け?」

 

「男連れの美人のエルフがどこへ向かったか──知っている者を探すのに、全然苦労しなかったぞ」

 

 一郎は冷ややかに笑った。ガリオンの表情が強ばる。

 

「……ロウ様……戻ってください。さっきのことは謝ります。でも、ロウ様には、ユグドラの癒やしがありますもの……。多分、殺せないと思ってました……」

 

 エリカが割って入った。

 

「なるほど、だから、俺が死なないと思って刺したのか?」

 

 一郎は視線を細める。

 

「いえ、可能性があったと思っただけです。五分五分かと……」

 

「五分五分か……。それにしても、さっきから操られているとはいえ、記憶はあるんだな?」

 

「……記憶はあります……」

 

「そうか……?」

 

「そうです……。だから、ロウ様がわたしを撃てないことも知ってます……」

 

 一郎の喉奥で熱が弾ける。やはり記憶はある──そのうえで自分を拒んでいる。いや、あのとき、一郎が死んでもいいとさえ思ったのだ。

 怒りがさらに膨れあがった。

 

 次の瞬間、燭台の炎が一気に広がり、部屋中を白い閃光が呑み込んだ。

 

「ちっ」

 

 一郎は舌打ちした。

 エリカの魔道か──。

 視界が焼き切れ、瞼を閉じても光は止まらない。轟音と砂塵が襲い、壁が吹き飛ぶ音が耳を裂いた。

 鼻を突く焦げた匂いと、舞い上がる木屑のざらつきが肌に刺さる。耳鳴りが残り、足元の感覚も揺らいでいた。

 

「ガリオン様──」

 

 エリカの声──。影がガリオンを掴み、背後へ引きずるのが見えた。

 

「走って──」

 

 耳元に響いたのは、エリカの叫びだった。

 

「待ちなさい──」

 

 ミランダが一郎の横を抜いて、壁に空いた穴から外に飛び出す。

 一郎も後を追った。

 吹き飛んだ壁の穴を抜け、冷たい夜気の路地へ踏み込む。

 

 外は狭い路地だ。

 エリカとガリオンの行く手を遮る二つの影があった。コゼとシャングリアだ。

 

「洗脳だか操りだか知らないけど……エリカ、あたしは今日のことを絶対に許さない」

 

 コゼの声は震えていなかった。

 怒りの熱に裏打ちされた声音で、短剣を構える姿は冗談や芝居ではない。刃が唸りを上げてエリカへと斬り込む。

 

「邪魔しないで──」

 

 エリカが細剣を抜いて、剣と鞘の両方で、コゼの二本の短剣を受ける。

 金属の音が散った。

 コゼは踊るように二本の短剣をエリカに向ける。エリカは裸身のまま剣を振るい、必死にコゼの攻撃を受け止める。

 だが、その腕はわずかに震えていた。

 

「エリカ、目を覚ませ。そんな男を守るな」

 

 シャングリアが剣を構えながら、苛立ちを隠さず声を投げた。

 

「冷静になりなさい、エリカ。あんたは洗脳にかかっているのよ──」

 

 ミランダの声は怒鳴りつけるように鋭かった。

 三人に囲まれたエリカは必死に剣を振るうが、シャングリアとミランダの動きには迷いが混じっている。

 だが、コゼの短剣だけは違った。

 振り下ろされる一撃一撃に容赦はなく、エリカを本気で斬り伏せようとする意思が宿っていた。

 

 しかし、そのとき、一郎の視線はその光景から逸れ、別の一点に吸い寄せられた。

 ガリオンだ──。

 混乱の隙を突き、這うように背を向けて逃げ出そうとしている。

 

 一郎は短銃を持ち直し、銃口をその背に据えた。

 呼吸を整える暇もなく、引き金を絞る。

 

 轟音が路地裏を揺らした。

 銃弾がガリオンの背中を貫く。

 ガリオンの身体が前につんのめり、呻き声が漏れる。

 

「ああ、ガリオン様──」

 

 エリカが悲鳴に近い声を上げ、剣を取り落とし、血に染まる男の身体にしがみついた。

 

「ううう……」

 

 ガリオンの喉から短い呻きが漏れた。

 背中の傷口から胸へと貫いた銃弾は、うつ伏せのガリオンの身体の下の地面に血を広げていく。

 赤い色が路地に滲み、じわりと輪郭を大きくしていく。

 エリカが崩れ落ちるように身を伏せ、ガリオンの背に覆い被さった。肩が大きく揺れ、喉が震えている。

 一郎たち四人は、そのガリオンをエリカを囲むかたちになった。

 

「お願いです……ガリオン様を助けて……」

 

 泣き声に濡れた言葉が、狭い路地に落ちた。

 

「エリカ、しっかりしなさい。あんたはこいつに操られていたのよ」

 

「そうだ、エリカ。もう大丈夫だ」

 

 コゼとシャングリアがエリカを諭すように声をかける。

 だが、エリカは狂乱したままだ。

 ガリオンの身体にしがみついて泣きじゃくっている。

 銃口を下ろしながら、一郎は息を整えた。胸の内で渦巻く怒りを押し込み、口を開く。

 

「……俺の目的は、エリカを取り戻すことだ。お前が俺のところに戻るなら、この男はどうでもいい」

 

 エリカは顔を上げ、一郎を見た。

 迷いが揺れて、視線が定まらない。しばしの沈黙ののち、血に濡れた唇が動いた。

 

「……わかりました。戻ります……。その代わり、治療をしてから、彼を解放して……」

 

 一郎は小さく顎を引き、エリカの言葉に応じることなく背後に視線を送った。

 

「コゼ、エリカを縛れ」

 

「……わかりました……。シャングリア、髪紐貸して」

 

 コゼがエリカに近づく。また、シャングリアは長い髪を束ねていた髪紐を二本解き、コゼに手渡した。

 コゼは不機嫌さを隠さず、エリカの背後へ回り込んで、エリカの腕を掴む。

 

「両手を後ろにして。親指を揃えるのよ」

 

 短く促し、エリカの両方の親指の根元に髪紐を回して固く締める。

 指縛りだ。

 次に足へ移り、同じように脚の親指を揃えさせて根元で縛り上げた。

 

「終わりました」

 

 コゼが一歩退き、拘束を確かめてから、エリカをガリオンから引き剥がした。

 シャングリアは剣を半身に構えたまま、周囲へ警戒を走らせている。ミランダは大斧を肩に乗せ、エリカとガリオンに視線を据えた。

 

「約束です……。ガリオン様を治療してください──」

 

 縛られたまま、エリカが叫んだ。

 そのとき一郎は、エリカの拘束を確かめたガリオンの視線が、にじむ血の中からこちらを探り、次の獲物を定めようとしていることに気がついた。

 根拠はないが勘だ、一郎の勘は当たる。

 一郎は銃を構え直すと、二発目の引き金を絞った。

 

 乾いた破裂が夜気に散り、ガリオンの頭がわずかに跳ねた。血の輪が新たに広がり、静けさが一瞬遅れて落ちてくる。

 視界の端で、魔眼の表示がふっと消えた。

 ガリオンのステータスが、跡形もなく途切れる。終わったと一郎は理解した。

 

「ああっ……ガリオン様……」

 

 エリカが喉を潰すような声を漏らし、拘束された腕で必死に身を寄せる。涙が血に落ち、細い肩が震え続けた。

 

 その震えに、違和が混じる。終わりの合図が訪れても、エリカの瞳からは洗脳の色が抜けない。恋い焦がれると刷り込まれた相手を、いまも見つめている。

 

 なぜ解けない──。

 

 一郎は息を詰めた。

 ガリオンの死と同時に解けるはずだと踏んでいた推測が、足元から崩れる気配がする。

 胸の奥に、焦げつくような焦りが生まれた。

 

 

 

 エリカ

  エルフ族、女

  年齢18歳

 ……

 状態

  一郎の性奴隷(ガリオンの洗脳)

 

 

 

 ステータスを確認した。やはり、消えていない。

 

「ミランダ、術者が死んでも術が残ることはあるのか?」

 

 慌てて問いかけると、ミランダが息を呑んで答えた。

 

「……いえ、大抵は術者が消えれば……。でも、そういう呪術もあるとは耳にしたことはあるわ……」

 

 困惑の色が彼女の顔に濃く浮かぶ。

 一郎は奥歯を噛んだ。しまった……殺さずに、先にエリカの洗脳を解かせるべきだったか──。

 

 そのとき──。

 

「ああ……ガリオン様……。どうして……どうして殺したの……。約束を破ったのね、ロウ様──」

 

 縛られた腕を振り乱し、エリカが血に濡れた路地に泣き叫んだ。

 涙と憎悪を宿した瞳が、一郎を真っ直ぐに射抜く。

 一郎は低く息を吐き、冷徹に決断した。

 

「シャングリア、コゼ。エリカを廃屋に戻せ」

 

「わかった」

 

「はい……」

 

 シャングリアが頷き、コゼが舌打ち混じりにエリカの腕を掴む。

 暴れるエリカの身体を二人がかりで引きずり、再び廃屋の奥へと押し戻す。

 荒い呼吸と悲鳴を繰り返しながら、やがてエリカは床に押し倒された。両膝と顔を床に押しつけられ、背を高く反らせられる形で組み伏せられる。

 エリカは悪態をつき続けている。

 

「なにをする気なの?」

 

 ミランダが怪訝な声を上げた。

 一郎は腰のベルトを緩めながら、短く答える。

 

「淫魔術を注ぎ直す」

 

「淫魔術?」

 

 ミランダが目を見張った。その言葉の意味を知らないのは当然だ。一郎が淫魔師であることを、ミランダにはまだ話していなかった。

 

「詳しいことは後で説明するよ」

 

 一郎はそれ以上語らず、組み伏せられたエリカの背後にしゃがみ込む。

 淫魔術は支配の術だ。

 もっとも、一郎はエリカであろうと、ほかの女であろうと、身体は支配しても、心を縛ったりはしてない。

 ただ、しようと思えば支配を強めることは簡単だ。

 緩んだ支配なら、もう一度淫魔術を刻み直してやる。

 

「いや……触らないで……ロウ、やめて……」

 

 エリカは必死の抵抗している。そのエリカに、コゼが低く言い放った。

 

「無駄よ、エリカ。大人しくして」

 

「いまは従え。お前のためだ、エリカ」

 

 シャングリアも押さえる腕に力を込める。

 

 エリカは縛られた腕を必死に振り、押さえ込むシャングリアとコゼに身を捩った。

 

「やめて……離して……」

 

 掠れた声が床に溶け、頬を涙が濡らす。だが、背を反らされたまま両膝と顔を床に押しつけられ、逃げ場はない。

 一郎は腰を下ろし、背後から彼女の腰へ掌を添えた。

 そこから流し込むように淫魔術を注ぐ。

 見えない熱が脈打ち、皮膚を這い、体の奥をかき混ぜていく。

 

「ん……っ、あ……やめて……ロウ……」

 

 呻くような声と共に、彼女の肩がびくりと跳ねた。

 拘束のなかで背筋が小さく波打ち、押さえつけられた尻がわずかに揺れる。

 

「ああ、やめてええ──、いやああっ」

 

 それでもエリカは必死に首を振り、腰を動かして一郎を避けようとしている。

 記憶はあるのだ。

 一郎がなにをしようとしているかくらいはわかっているだろう。

 

「なにをしても無駄だ。エリカの身体は自分の身体のように覚えている。あっという間に快感を引き出してやる」

 

 一郎は淫魔術により、容赦なく感覚を引き上げた。

 

「ふわっ、あああっ」

 

 エリカの声が甘いものに変わる。白い肌が赤く染まり、汗がにじみ出す。呼吸も荒いものになった。

 

「いやあ……どうして……」

 

 呟きながらも、エリカの下腹が小刻みに震えている。

 やがて、秘部から溢れる雫が腿を伝い、床に光る跡を描いた。

 後ろから手を差し入れて愛撫を始める。

 

「ひんっ、あああっ」

 

 エリカの悶えがあっという間に激しくなる。

 一郎は指先でその滴りを確かめ、さらに力を込める。

 エリカの腰が大きく跳ね、喉の奥から押し殺した吐息が洩れた。

 

「あああ…………とまらない……とまらない──。ああ、ああああっ、どうして、こんなに……いやあ、いやよお……」

 

 一郎の本格的な愛撫が始まると、エリカの抵抗はほぼなくなった。

 喘ぎ声も甘いものになり、床に押しつけられている顔の表情もとろんとなる。

全身から力が抜けていく

 洗脳術が残って心は抵抗しているが、身体は一郎の与える快感を覚えているようだ。

 それだけは安堵する。

 

「すごい濡らしようだな」

 

 一郎はクリトリスを責めながらわざと揶揄う。エリカは言葉責めに弱い。

 気は強くて羞恥心が高いのに、本質的にマゾなので、言葉に身体が反応してしまうのだ。

 

「ち、違う──。そ、そんなこと……あ、あああっ」

 

 エリカが優美な裸身を大きくくねらせ、腰が激しく揺れた。

 クリトリスを責めつつ、さらに指をすっかりと濡れている秘所に挿入する。二本だ。

 どこが快感の場所なのかは、淫魔術を使わなくても知っている。

 快感のつぼを激しく擦ってやる。

 

「あんっ、いやああ、やめてえ──もうやめてええ」

 

 衝きあげるような衝撃が襲ったはずだ。

 エリカは全身を硬直させた。

 片手で股間を刺激しつつ、反対の手は乳房に伸ばす。片側の実房を揉みながら、勃起している乳首を指で転がす。

 一郎は、さらに顔をエリカの突き出しているお尻に密着させ、舌でアナルを舐めてやった。

 クリトリスと膣、乳房と乳首、さらにアナルへの舌責めだ。

 

「ひいいいっ、そこはいやああっ」

 

 四箇所、いや壮絶な五箇所責めに、エリカはひとまたりもなく達してしまった。

 激しく痙攣をして全身を突っ張らせる。

 

「しっかり、押さえててくれ」

 

 一郎はシャングリアとコゼに声を掛けてから、一度身体を起こして、ズボンと下着を膝まで落とす。

 すぐに勃起している怒張を後ろからエリカに貫かせた。

 

「はああっ」

 

 エリカが声を張り上げた。

 律動を始める。

 一打一打を容赦なく快感の場所に抉り擦る。

 

「あああ、ああっ、ああっ」

 

 エリカか声をあげ続ける。

 慎みも羞恥も忘れた声だ。

 峻烈な歓喜に、すぐにエリカは二度目のオルガニズムに達した。

 だが、一郎は終わらない。

 変わらぬ律動を続け、さらにエリカを狂わせた。

 あっという間に、三度目の絶頂──。

 でも、終わらない。

 一郎が精を放ったのは、エリカの四度目の絶頂のときだ。

 

「はあううっ、はううっ、いやあああっ」

 

 エリカがしゃくり上げるような声をあげて、一郎も猛りきった欲情を注ぎ込んだ。

 

 一郎は荒い呼吸を押し殺しながら、ゆっくりと怒張を抜いた。

 濡れそぼった音がわずかに響き、エリカの身体が小さく震える。

 

「……どうだ。まだ、俺が憎いか?」

 

 一郎はエリカに声を掛けた。

 すると、床に押さえつけられたまま、エリカはゆっくりと顔を後ろに向けた。

 頬に張りついた髪を振り乱し、涙と汗に濡れた瞳で一郎を睨み据える。

 

「当たり前でしょう、この嘘つき……。助けると約束したくせに……」

 

 嗄れた声に、剥き出しの憎悪が宿っていた。

 コゼとシャングリアが腕と腰を押さえ込み、動けないまま、それでもエリカは顔だけを必死に一郎へと向ける。

 

 一郎は魔眼を開いた。

 

 

 

 エリカ

  エルフ族、女

   冒険者A(アルファ)

  年齢:18歳

  ……

  ……

  状態

   一郎の性奴隷(ガリオンの洗脳)

   淫魔師の恩恵

 

 

 

 変わらない。

 ガリオンの死後も、なお残る支配の刻印──。

 淫魔術で感覚を震わせても、心の奥に残った鎖は断ち切れない。

 もっとも、一郎の支配も残ってはいるが……。

 

「……なぜだ?」

 

 掠れた呟きが漏れる。

 一郎は途方に暮れた。

 

 

 

 

 

 15話『洗脳された筆頭女』終わり──

 16話『筆頭女の再調教』に続く──

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