【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「では、三番勝負の最後だ。勝った者には奪った服を返してやる。でも、負けた者は、ミランダが来るまで、そのままだ」
一郎が腰かけているのは、冒険者ギルドの地下牢の一室にある木製の長椅子だ。
地下牢は、灰色の石壁と重たい鉄扉に囲まれ、灯火は乏しく、冷えた空気が肌を刺していた。
家具らしいものもなく、唯一の例外がこの木製のベンチであり、寝台すらない。殺風景という言葉そのものの空間である。
もっとも、副ギルド長ミランダの気遣いで、毛布と水、そして質素な食事だけは十分に用意されていた。毛布など床に敷き詰めてもまだ余っていて、隅に積み重ねている。だが、牢獄であることに変わりはない。
そんな閉ざされた空間の中央で、いまはエリカとコゼが跪いて向かい合っていた。
互いの膝が触れそうなほど近くに身を寄せ、羞恥に赤らむ顔で脚を震わせながら開いている。
一郎が腰掛けるベンチには、女たちから剥ぎ取った布切れが無造作に置かれている。
エリカとシャングリアのスカート、コゼのズボン。そして一郎の手に握られているのは三人の下着だ。どれも、一郎の命令で脱がせたものである。
つまりは、女たちは、三人とも上半身は衣服で覆われているが、腰から下を履物以外なにもないという格好だ。
全裸よりも扇情的だと思っているし、女たちの羞恥心もより刺激するだろう。
実際、エリカたちは、剥き出しの股間を晒したまま、羞恥と昂ぶりの板挟みにされている。
一郎が課した「勝負」は単純だ。
互いの股を手で嬲り合い、先に果てた者が負け──。勝てば服を返され、負ければ丸裸のままということだ。
「ふふふ……負けないわ、エリカ。ご主人様からお許しをもらうのは、このあたしよ。そして、ご褒美もらうの」
「もう……どうでもいい……。勝って、とにかく服を返してもらうんだから。それと、見くびらないでよね。これでも百合については、それなりのものなんだから」
吐き出す声は震えていたが、頬は朱に染まり、瞳の奥には熱が滲む。
すでにふたりとも、先にシャングリアと組んだ勝負で身体を昂ぶらせていた。
快感値を読み取れる一郎には、余裕の差が一目瞭然だ。
敏感なエリカは、欲情の度合いを示す「快感値」が〈40〉にまで落ち、コゼはまだ〈100〉以上の余裕を保っている。
一郎にしか観察できないステータスなのだが、快感値が〈0〉になれば、絶頂するのであり、一郎だけはわかり安く状況を確認している。
一方で、一郎の腰掛けるベンチの横では、二度の勝負に連敗したシャングリアが、壁にもたれて荒い息をついていた。
「……っ、はあ……くっ……」
壁にもたれたシャングリアの呻きが、ひやりとした地下牢ににじむ。
女同士の遊戯で連敗した屈辱に眉を寄せながらも、昂ぶりきった身体は収められず、脚の付け根を小刻みに震わせている。
一郎はちらりとその姿を見やり、一郎の「罰」により、これだけ乱れる女騎士の様子にほくそ笑んでしまう。
このギルドの地下牢に閉じ込められたのは、ベルズとの騒ぎの直後だ。
冒険者ギルドの使者に囲まれ、副ギルド長ミランダの命でこの地下牢に放り込まれたのだ。
ただ、扱いは奇妙に緩やかだった。
武器だけは取り上げられたが、衣服や携行袋、旅の荷物までは没収されなかった。
牢に積まれた荷を見れば、完全な囚人として扱う意図はなく、あくまで“足止め”程度の処置だとわかる。
ミランダの温情だろう。
そのまま、外から施錠され、沙汰があるまで待てとだけ命じられた。
最初は、地下牢で大人しく従っていたが、誰も覗きに来ないと悟ったとき、一郎の悪戯心は火を吹いた。
女たちの下半身を裸に剥き、羞恥の勝負を命じたのである。
負けん気の強さゆえか、三人が「やるからには全力を出す」という顔つきになったのは、一郎にとって少し意外だった。
羞恥を失ったわけではない。
だが、その羞恥を抑えて抵抗する“たが”は、すでに外されてしまっているように見える。
それでも──命じられたことに一生懸命に向かう姿は、健気で、どこか可愛らしくさえあった。
まったくかなわない女傑であるはずの彼女たちが、自分の性癖に合わせ、しかもそれを悦びとして受け入れている。
その事実に、一郎は胸の奥でどうしようもなく嬉しさとありがたさを覚えていた。
とにかく、一郎の申し渡したくだらない勝負を三人は受け入れた。
順番はくじで決め、最初はシャングリアとエリカが向かい合うことになった。
一郎の予想では、敏感なエリカが不利だろうと思っていた。
なにしろ彼女の股間には、いじればすぐに愉悦を迸らせるクリピアスまである。
だが、勝ったのは意外にもエリカだった。
思えば、一郎と出逢う前からエリカには百合の性愛の嗜好があり、女同士で愛し合うことには長けていたのだ。
彼女は的確にシャングリアの急所を探り、執拗に責め立て──あっという間にシャングリアを昇天させてしまった。
二回戦は負け残りのシャングリアと、まだ余裕を残していたコゼ。
一度果てた女の身体は火照りが冷めず、次に襲われれば弱い。
案の定、エリカに昇天させられた余韻の残る股間を、コゼが巧みに責め立てると、シャングリアは抵抗も叶わず二度目の絶頂を迎えてしまった。
そしていよいよ、最後の勝者同士──エリカとコゼによる三回戦であり、優勝決定戦だ。
「始め──」
一郎が声をかけると、二人は同時に相手の股間へと手を伸ばした。
「あっ、ううっ」
「はああっ、くううっ」
エリカとコゼのふたりの口から甘い声がこぼれ出す。
それぞれの股間でねちゃねちゃという水音も響き始めた。
「ふうっ、ロウ……。こ、これ……ただの縄じゃないのだな……」
そのとき、一郎の椅子の横で下半身裸のまま横座りしているシャングリアが、つらそうに声を洩らした。
最下位の罰として施された股縄が股間に喰い込み、早くも本領を発揮し始めていたのだ。
「当然だ。罰なんだからな。その縄には、たっぷり媚薬を沁み込ませてある。思う存分、愉しんでくれ」
一郎は口端を吊り上げた。股縄に塗ったのは、怖ろしく強力な催淫剤だ。
痒みは伴わないが、ただ凄まじい疼きだけを生み、一郎に犯してほしいという渇望を際限なく煽り立てる。
さらに縄には結び目を仕込み、敏感な箇所を執拗に刺激するよう工夫してある。
両腕を背で組まされたシャングリアは、早くも腰を悶えさせていた。
「だ、だけど……これ……つらい……。股が熱くて……」
媚薬の影響で火照る頬、蕩けた瞳。その色香に、一郎はますます嗜虐の衝動をかき立てられる。
「そうだな。可哀想だが、罰は罰だ。そのまま腰を振って、縄瘤で疼くところを擦りつけろ。もし達することができたら──犯してやる……かもしれない」
「ほ、本当だな──。絶対だぞ──」
シャングリアは俄かに跪き、狂ったように腰を振り始めた。一郎はくくっと喉で笑う。
縄瘤の刺激だけでは簡単に絶頂できるはずもない。
だが、気丈な女騎士がこんな痴態を自分にだけ晒している──その事実が、一郎には愛おしく、そして苛めたい欲望を強く掻き立てた。
一郎は、悪戯心は芽生えてしまい、ひそかに淫魔術を施した。
感度を三倍に高めると同時に、昇り詰める寸前で快感を途切れさせる操りだ。
これでシャングリアは「いきそうでいけない」もどかしさに狂い喘ぐことになるだろう。
処置を終えた一郎は、ふたたび視線をエリカとコゼへ戻した。
「あっ、くうっ、ああっ」
「はあ、ああっ」
ふたりの喰い縛るような声が続く。声を抑えようとしても、洩れる響きはいやらしく牢に反響していた。
「だ、だめええっ……」
最初に音をあげたのはコゼだった。
快感値は、すでに〈10〉を切ろうとしている。
一方のエリカは〈20〉以上を保っていて、いつの間にか逆転だ。
しかもエリカの指は赤いもやで示される性感帯を的確に責め、コゼの愛撫は的を外しがちだった。
その差が勝敗を決めていく。
やがて──。
「んふううっ」
コゼが弓なりに反り、全身を震わせて果ててしまった。
「よし、終わりだ。エリカの勝ちだ。スカートと下着だ」
一郎が差し出した布を、エリカは受け取らなかった。
「ああ、あのう……ロウ様……」
代わりに、そのまま一郎の胸へと抱きついてきた。頬は朱に染まり、欲情に熟れきった艶を宿した表情だ。
「……エリカ。勝者のご褒美は、スカートを返すだけでいいのか?」
エリカを抱き返しながら、一郎は挑発するように問いかける。
「……ご褒美、欲しいです……」
吐息混じりに洩らされた声は、切実な熱を帯びていた。
二連勝ということは、結局、彼女は果てることなく愛撫だけを受け続けたということだ。敏感に仕立てあげてきた身体に、快楽を溜め込むばかり溜め込んだのだろう。かなりつらいはずだ。
一郎はゆっくりとズボンと下着を脱ぎ捨て、怒張を解き放った。
その場にエリカを仰向けにすると、熱を帯びた肉を彼女の膣へと沈め込んだ。
「はううっ」
エリカが甘く大きな声をあげた。
一郎は苦笑する。ここは幽霊屋敷と称される自宅ではなく、ギルド本部の地下牢だ。
職員がいつ来るかわからない状況で、さすがにその声量には口を塞ぎたくなる。
だが、もうエリカにとってはそんな理性を挟む余裕などない。
挿入しただけで、彼女の身体は震え、精耐久度数は一気に一桁まで落ち込んだ。
いくらなんでも感じすぎだ──と心の中で揶揄しながらも、両腿を抱え込んで律動を開始した。
「あっ、ああっ」
エリカは、突き下ろされるたびに吠えるような声をあげ、淫らに腰を使い始めた。ずぶずぶと粘膜の糸を引く音が牢内に反響する。
「ああ、ああっ、いくうっ、行きます、ロウ様──」
最初の快感の暴発は、まだ数えるほども律動していないうちに訪れた。
エリカは感極まった声を上げて全身を突っ張らせたが、一郎は構わず腰を動かし続ける。
「ひいっ、ひっ、ロ、ロウ様……ああ、ロウ様──」
絶頂しながら、エリカは両手で一郎の背にしがみつく。
「馬鹿、ちょっとは声を落とせよ──。いくらなんでもでかいぞ──」
さすがに一郎も苦笑交じりに釘を刺す。それほどまでに、エリカの声は大きかった。
もっとも、一郎もエリカに余裕がなくなるように、激しい律動を加え続けているのだが……。
「だ、だって……ピ、ピアスにロウ様のが、当たると……き、気持ちよくて……。ああっ、ああっ、ロ、ロウ様──エリカは一生懸命に──淫らに……ロウ様に……気に入られるように……淫らになります──。ロウ様に……気に入られるように──」
エリカが力強く一郎を抱きしめ、感情を迸らせるように叫んだ。
「いまの、ままで、いい……。いまのままで、俺は十分に、エリカを、気に入っている……」
一郎は腰を動かしながら、ささやくように言った。
「んんんんっ──う、嬉しい──。また、いきますうう──」
エリカがぶるぶると震えた。二度目の昇天だ。
思えば、一箇月ほど前の洗脳騒ぎの後から、エリカは一郎に対して怖ろしく積極的になったような気がする。
心を操られたとはいえ、一郎を憎むように縛られたことが余程の衝撃だったのかもしれない。
いずれにしても、あれ以来、彼女は性行為にも貪欲だ。
考えてみれば、こんな場所で狂ったような性交に耽るなど、以前のエリカなら真っ先に反対したはずだ。
だが今日は、一郎の申し渡しに反対するどころか、積極的に勝負に挑み、こうして愛を得る立場を手に入れている。
「いく、いく、またいきます、ロウ様──」
感極まった声がふたたび響いた。
「おう、いけ。俺もそれに合わせて達してやる」
一郎は息を与えぬ勢いで腰を突き続け、口を重ね、舌を絡める。
「んはああっ」
ついにエリカは三度目の絶頂に達し、一郎もまた精をたっぷりと注ぎ込んだ。
全身を震わせ、エリカは、三度目の昇天を果たして、完全に脱力した。
その様子に、一郎もようやく冷静さを取り戻した気がした。
呆けたように身じろぎもしない彼女から一物を抜くと、すぐさまコゼが這い寄ってきた。
「お、お掃除しますね……」
コゼが媚を売るような視線を送りながら、エリカの身体から出たばかりの一郎の性器を舐め出した。
その股間には、真っ赤に灼ける淫情の印が浮かんでいる。きっと彼女も一郎に抱かれたいのだろう。
だが、さきの勝負で敗れた以上、それを口にすることはできないと遠慮しているのかもしれない。
だからこそ、欲望を紛らわせるように、懸命に奉仕へと気持ちをぶつけているに違いなかった。
コゼもまた可愛い──。
一郎は股間に吸いつく舌を動かし続けるコゼの頭を撫ぜてやった。
「……んふうっ、だ、だめだ……い、いきそうなのに……いけない……も、もう少し……もう少しなのに……」
そのとき、横から悲痛な声がした。シャングリアだ。
ずっと股縄を擦りつけ続けていたが、達しそうで達しきれない苦しさに、泣き声のような呻きを洩らしたのだ。
一郎の悪戯で、淫魔術で絶頂を封じているのが、それを知らないシャングリアは、懸命に縄瘤自慰を続けている。
汗で濡れ、全身が火照りきっている。快感値は〈1〉と〈2〉をいったりきたり──これは確かに過酷だ。
「あ、あんた……なにやってんのよ?」
お掃除を終えたコゼが、シャングリアの狂態に気づいて声をあげた。
「な、なにって……こ、これで達すれば……ご、ご主人様が……お情けを……くれるのだ……。だ、だけど、もう少しなのに……ああっ」
シャングリアは涙目で、必死に腰を動かし続けている。
「なんですって──。なんで最下位のあんたにお情けがあるのよ。ずるいわよ」
コゼが抗議する。
「知らん……。ロウが……そう言った……のだ……」
それでもシャングリアは止まらない。
一郎が淫魔の力で快感を縛っていたため、絶頂には届かない。だが、可哀想になり、一郎はその縛りを解いてやった。
「いぐううっ」
その瞬間、三倍に高められた感度のまま、シャングリアは股縄で激しく果て、仰向けに倒れ込んだ。
「た、達した……ロウ、わたしは達したぞ……。はは、やった、達した。達してやった──」
まるで勝利したかのような笑顔を一郎に向けてくる。
「……そうだな。達したな」
一郎も苦笑しながら答えるしかなかった。
「狡いですご主人様──。不公平です。最下位のシャングリアにお情けがあるなら、あたしにもください」
コゼが頬を膨らませて抗議してきた。
「わかった、わかった。順番に可愛がってやる。まずはコゼからだ」
一郎は肩を竦めてそう言った。
そのとき、右腕に小さな疼きが走り、紋様が浮かびあがった。
クグルスだ──。
この部屋にやってきてすぐに呼び出し、魔界へ戻していたクグルスが、一郎に出現の合図を送っているのだ。
「ちょっと、待ってくれ」
一郎はコゼたちにそう声をかけ、布の下の紋章を指で擦った。
目の前の空間が歪み、翅のある小さな女妖精──魔妖精のクグルスが出現する。
「クグルスだよ──。わおっ、やっぱりえっちなことしてる。すっごい淫気──。いただきまーす」
目の前に現れた魔妖精クグルスが嬉しそうに叫び、ぶるぶると身体を震わせた。
男女の交わりから立ちのぼる淫らな気は、淫魔である彼女の大好物だ。
クグルスは部屋に満ちる淫気を一気に吸い込み、うっとりと浸っている。
ちなみに“えっち”という言葉はこの世界のものではない。一郎が元の世界の言葉だと教えたところ、語感が気に入ったらしく、クグルスは最近よく口にするようになっていた。
「それより、さっき頼んでおいた件はどうなった、クグルス?」
一郎が問いかけると、クグルスは宙を漂いながら答えた。
「うん、人間に憑依した魔瘴石の外し方だね? わかったよ」
「わ、わかったの、クグルス?」
床に寝そべっていたエリカが声をあげた。
激しい性交の疲れでまだ息は荒い。下半身を露わにしたまま、必死に這ってくる。
一郎は下着とスカートを彼女へ放った。
エリカはのそのそとそれを拾い上げ、身につけはじめる。
「うん。方法は簡単に言えばふたつだね……。それ以外では、憑依を仕掛けた術遣い本人でも外せないらしいよ」
クグルスが言うと、一郎は息を呑み、続きを促した。
「……ひとつは、憑依されている人間が命を失うこと。魔瘴石に憑かれるのは瘴気に身体を支配されることだから、死ねば支配から解放される。……ほら、前にウーズ遣いのオーヌを殺したとき、死んだ途端に魔瘴石が外へ弾け飛んだでしょ? あれと同じだよ」
クグルスの説明に、一郎は首を横に振った。
それはすでに知っている。
憑依された者が死ねば魔瘴石は砕ける──オーヌの時もそうだったし、魔獣の体内に宿った魔瘴石も、魔獣の死とともに壊れる。
そうやって瘴気溜まりを封じてきた。
だが、その方法はスクルズやベルズには使えない。
だからこそ調べさせたのだ。
「……もうひとつは?」
一郎が訊ねると、クグルスはにやりと笑った。
「もうひとつはね──魔瘴石を上回る力で、憑依されている相手に新たな“支配”を刻むことだよ。別の支配で覆ってしまえば、魔瘴石はその相手を保てなくなり、憑依が剥がれるんだ」
「別の支配?」
一郎は小さく呟いた。
「そう。つまり、ご主人様だね」
クグルスは宙を舞いながら、愉快そうに声を弾ませた。