【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「わ、わたしはこんなことまで要求しておらん。なんとかせよ、ノルズ──」
寝台を椅子代わりにして腰かけたウルズが怒鳴った。
ここは第一神殿の巫女に与えられる私室である。筆頭巫女ではない彼女にも、それなりに整った設備が備えられている。厚手の織物に覆われた床、磨かれた調度、香の漂う空気──ノルズからすれば十分に贅沢だ。
だが、かつて侯爵家の娘として育ったウルズにとっては、これすら不満なのだろう。力のあるブルア伯爵家という実家を持つベルズの部屋と比べれば格が落ちる。
ノルズはその苛立ちを聞き流しながら、卓上の葡萄酒を傾けた。濁りはなく香りもよい。実家の縁で届いた贈り物か、それとも神殿の配慮か。いずれにせよ、味のわからぬ女には惜しい代物だ。
「聞いているのか、ノルズ──? スクルズが王軍に逮捕されるなど、あってはならぬのだ。わたしが望んだのは、あのふたりの立場を失墜させるための醜聞だけだ。処刑など論外だ──。すぐになんとかせよ」
声はさらに大きくなる。
壁の向こうに漏れるかもしれないというのに、そんなことは気にも留めていない。
ノルズは内心で舌打ちした。
筆頭巫女候補と呼ばれながらも、その座に就けるのは十年先か、それ以上。すでに没落していて実家に後ろ盾のないこの女が、いつまで候補でいられるかもわからない。
だからこそ、先に出世したスクルズやベルズを蹴落とそうと躍起になっている。
「そもそも──どうして禁忌の小瘴石など持ち込んだのだ。わたしは知らなかったぞ。そんな恐ろしいものを仕込むなど……わたしを巻き込む気か。第一神殿の巫女が禁忌に手を染めたと知れたら、終わりなのだぞ──」
苛立ちと焦りが混じった声だった。
「いまさら口を閉ざしても遅いよ。一蓮托生なんだ。あんたも、あたしもね」
ノルズは杯を揺らし、唇の端を歪める。
「ふざけるな……。すべてお前の仕業ではないか。わたしは利用されたのだ……。どうすればいいのだ、あんなものに、わたしも関与していたことが露見したら、わたしは……」
ウルズの声は震え、吐き出す息が乱れていた。
この女は、いまでも少女時代の百合の関係が続いていると思い込んでいるのだろう。
だからこそ、ノルズの甘言を疑いもせずに受け入れ、愚かにも心を許してしまう。まあ、それは、スクルズもベルズも同じだったが……。どいつもこいつも、いまだに、ノルズのことを友人だと思っている甘ったれだ。
とりわけ、このウルズは図体だけ大きな子供だ。
改めてそう思った。
出世で先を進んだスクルズやベルズへの嫉妬心を、ほんの少し刺激してやればいい。
そうすれば、この女は、自分の立場を差し出して、ノルズを第二神殿にも第三神殿にも入り込ませてくれる。
実際、そうだった。
……まったく、実に愚かな女だ。
少女だった頃──。
ウルズ、ベルズ、スクルズ、そしてノルズは、小さな地方都市にある神学校の同窓で、寮の部屋も同じだった。
神学校は単なる学術機関ではない。
神殿に伝わる秘技によって、高位の魔道師を養成する場でもある。
その中で、古くから知られていたのは、人が強く欲望を解放するほど魔道力が増すという事実だった。
これは秘伝として外部に明かされることはなかったが、上級クラスでは特に重視され、修行の一環として、自慰や同性愛が奨励されることすらあった。
四人が同じ部屋に組まされたのも偶然ではない。
神学校が少女愛を交わしながら心身を解放することで魔道力を伸ばすよう仕向けたのだ。
事実、幼い頃から修行を続けてきた四人は、初潮を迎え、身体が童女から大人へと変わり始めるにつれ、自然と同性愛を通じて、少女同士の親密な関係を深めていった。
魔道は心の平静がなければ力を発揮できない。欲望や感情を統御することが肝要であり、とりわけ淫欲の処し方は最大の課題とされた。
抑え込むのではなく、必要に応じて解き放つ──それが魔道の成長に繋がることは、経験的に知られていた。
欲望や感情の統御という点で、このウルズは四人の中でもっとも下手だった。だが、相互愛の関係においては、いつも中心に立ちたがる女だった。
四人の関係は、いつしか役割を分け合うようになった。
責める側は、決まってウルズとノルズ。
受けるのは、いつもスクルズとベルズ。
だが、ウルズは加減を知らず、寝室での遊戯を外にまで持ち込もうとすることがあった。
そのたびに、ノルズが押しとどめねばならなかった──。
その関係は、ノルズが禁忌に手を伸ばそうとして追放され、三人の前から姿を消したことで自然に解消した。
さらに、ウルズたち三人が揃って王都の三大神殿に務めるようになってからは、過去の出来事に過ぎなくなったようだ。それは、三人に接触する前に、しっかりと調査したから知っている。
あの少女時代の関係をそのまま心に引きずっているのは、ウルズだけだ。だからこそ、神学校の寝室で自分が奴隷のように扱っていたスクルズとベルズに出世で遅れたことに苛立ったのだろう。
だから、ノルズはウルズを利用することにした。
零落して神殿を頼ってきた振りをしたノルズを、昔のよしみで助けてやろうと思い込んだのだ。
もっとも、ノルズは最初から計算づくでやってきていた。
「昔のよしみで助けてほしい」と口にし、元侯爵家の娘としての自尊心をくすぐり、さらに、神学校で従えていたと思っていたスクルズとベルズへの嫉妬を巧みに焚きつけた。
スクルズたちの醜聞を作れば、ウルズが上に立てる、と……。
そのときウルズにささやいて利用したのは、神学校時代にノルズが退学となったときのことだった。──禁忌に近づこうとしたノルズを、信頼していた神官に告げ口したのがスクルズとベルズであるのは知っていて。スクルズたちに復讐をしたいとも持ちかけたのである。
ノルズにしっかりとした動機があることを認識したウルズは、スクルズとベルズを追い落とすのに、ノルズが利用できると思ってくれた。
実際には、ノルズにとって退学は潮時でしかなかった。
神官になるつもりなど毛頭なく、神学校はただ魔道を研鑽するための足場にすぎなかったのだからだ。
スクルズに悪意がなかったことも、ベルズが無関係であることも、ノルズは承知している。
とにかく、かたちの上では、ノルズが命じられ、ウルズが指示を下したということになっている。
だが実際は逆だ。ノルズが嫉妬心を利用して、ウルズを自分の工作に協力させただけに過ぎない。
そして──本来の狙いは、三巫女そのものではない。
高位の魔道遣いを“器”として用い、瘴気を人為的に集める実験を行うこと。
その果てに、王都ハロンドールを混乱へと沈めること。
これが、ノルズが属する組織の指示によるものだ。
ハロンドールで名を馳せる高位魔道遣いの三巫女──スクルズ、ベルズ、ウルズと親しくしていたノルズが、工作員に選ばれるのは必然だった。
つまり──この女は、自分の嫉妬心に呑まれて踊らされただけの馬鹿女でしかない。
「ノルズ、返事をなさいよ。どうするつもりなのよ──。スクルズは、禁忌の術に関与した罪で、今日か明日にも王軍が身柄を拘束すると聞いているわ。その前になんとかしなさい。いいから、すぐに動くのよ」
ウルズが金切り声をあげた。
そろそろうんざりだ。
馬耳東風を装ってきたが、潮時というやつだ。
王都ハロンドールの神殿界に対する工作は一歩進めろ──「あのお方」からの指示も届いていた。
馬鹿女には、馬鹿女にふさわしい段取りをか……。
利用しているつもりで、実のところは、組織に使われる道具でしかないと、そろそろ教えてやる頃合いだ。
ノルズは、手にしていた葡萄酒の杯を卓に置き、ウルズへ真っ直ぐに顔を向ける。
たっぷりと威圧感を向けて。
すると、いつもと違うノルズの視線に、ウルズがわずかにたじろいだ。
「はっきりさせておこう。スクルズは助からないよ。あたしとしては、いまさらどうするつもりないさ。あたしとしては、小瘴石くらいで、あれほど大騒ぎするとは思わなかったけどね。本物の魔瘴石ではあるまいし」
鼻で笑うと、ウルズの顔から血の気が引いた。
「本物の魔瘴石? なんてことを言うのよ」
スクルズとベルズに醜聞を作って出世から蹴り落とす──約束はそれだけだ。
手段の細部も、ノルズがどこに属しているかも、ウルズは知らない。訊ねられもしなかった。
昔馴染みが零落して頼ってきて、出世の遅れを取り返す提案を持ってきた。ウルズにとってのノルズは、せいぜいその程度の便利な女だ。
こちらは二重三重に言い訳も迂回路も用意していたのに、スクルズたちとの出世争いに勝たせてやると囁いただけで、三大神殿すべてに自由に出入りする権限を与えてくれた。
本当に、筋金入りのおめでたさだ。
しかも、自分の身体に魔瘴石を憑依されたことも、まだ気がついてないみたいだ。スクルズとベルズに仕込んだのは、女同士の百合愛に持ち込んだときだったが、さすがにふたりとも、翌朝に我に返ったときには気がついた。
ところが、ウルズは、すでに仕込んでから、かなり経つのにいまだに気がついてない。
「魔瘴石だって悪いものじゃないさ。あれは実に効率よく、魔力の代わりに瘴気を補完してくれる。三人の中で一番魔力が低く、スクルズやベルズという高みに届かないあんたにとって、いいことしかないさ」
「なにを言っているのよ。魔瘴石ですって。わたしに死ねというの?」
ウルズが怒りで真っ赤になる。
ノルズはくすくすと笑った。
「死にはしないよ。あたしが保証する。これから、あんたの魔力は飛躍的に上がる。途方もないところまでね……。実際には瘴気だけど、ばれなきゃ大丈夫さ。ただし、表で栄華を取る代わりに、裏ではわたしたちの道具になる。等価交換ってやつだよ」
「等価交換……? お前、なにを言っているのよ──?」
「当然だろう? スクルズとベルズには失脚してもらう。あいつらは、高位魔道遣いとしていい器になりそうだから、失脚したあとは、家畜として監禁して、しっかりと魔瘴石の牧場として育てる。あいつらの失脚は、あんたの望みのとおりさ」
「家畜とか、牧場とか、全く意味がわからないわ」
ウルズは唖然としている。
「だから問題はないのさ。処刑されることになっても、寸前で身代わりと入れ替える手段は、複数準備してる。あんたは、ただ、ふたりがいなくなったあとで、出世を愉しめばいい。簡単だよ。ライバルになりそうなのは、わからないように暗殺してやるから」
「はあ? 冗談じゃないわ。もうやめよ。これ以上、勝手なことをするのは承知しないわ。スクルズとベルズになにをしたのかわからないけど、全てをなかったことにしなさい。無論、神官の暗殺なんて許さないわ」
「じゃあ、そろそろ教えておくよ。あんたの身体の中には、封印した魔瘴石が埋まっている。魔力が低いあんたには気づけなかったろうけどね……。これから少しだけ封印を解いてやる。言葉より早い。自分がただの家畜だってことが嫌でもわかるさ」
魔力を指先から染み込ませ、封じた魔瘴石を、ほんのわずかに活性化させてやる。
「こ、これは……」
ウルズの目が見開かれる。
ようやく、自分の内にあるそれの存在に触れたのだろう。
顔色が、紙のように白くなる。
「理解できたかい? スクルズとベルズにも、同じ細工をしてある。どれほどの高位であろうと、人は無防備になる時がある。絶頂で欲望を解放されたときだ──近くに侍ることができたおかげで、隙を見つけられた。……礼を言うよ、ウルズ」
ウルズは小刻みに震えている。ノルズの話を聞いているのかどうかもわからない。
無理もない。
わずかだが活性化したことで、さすがに、自分の身体に魔瘴石を憑依されていることが認識できただろう。スクルズとベルズほどではないが、この女のそれなりの魔道遣いなのだ。
「魔瘴石は制御しさえすれば、魔石などよりもずっと効率よく魔力を作れるし、術を操りやすくなる。だが、制御を失わせれば大爆発を起こす、お前らに仕込んだ魔瘴石には、あたしの術ひとつで制御不能になるように術式を組み込んでいる。つまりは、お前らの命は、あたしの胸先三寸ということだ。自分の立場がわかったかい──」
「ノルズ……」
ウルズが顔色を変えたまま愕然として、胸もとを押さえる。
「……心配ない。スクルズとベルズには、別の目的があるから、監禁して飼育するけど、あんたには、そんなことはしない。魔瘴石をうまく使うんだ。隠しておけばばれないよ。これは、見た目の魔力を引きあげる宝石なんだ。いまのスクルズも及びもつかない高位魔道遣いになれるよ」
ノルズは、ウルズの体内にある魔瘴石を調整する。魔力が引きあがった状態になるように……。実際には瘴気だが、瘴気も魔力も同じだ。魔術に使う根源として問題ない。
「これは……」
ウルズの目が見開かれる。
一転して、自分の中に感じる「魔力」が引きあがり、感覚が研ぎ澄まされ、瘴気のざわめきと、膨れ上がった魔力の重みがわかったはずだ。
長年の劣等感を薙ぎ払うだけの上昇を一息で与えられたのだ。ウルズの顔に恐怖と魅惑が同時に宿った。
「あたしたちに従いな、ウルズ……。望むものは手に入る。内なる瘴気は、制御された状態でさらに活性化させてあげる。偉大な魔道遣いになれるよ。その力があれば、誰もが、お前が神官の頂に立つのを当然だと思うよ」
「で、でも、身体に魔瘴石の存在など……」
ウルズはまだ困惑している。
だが、やはり愚かだ。
迷うのだから……。
しかし、それでいい。
ウルズは、本気でこの愚かな女を王都一の巫女に仕立てるつもりだ。体内に魔瘴石を宿し、随時活性化できる、生きた瘴気溜まりとして。そして、ノルズに逆らえない「奴隷」として……。
──「あのお方」が思い描く、その時のために……。
「誰にもわかりはしないわ。隠しおおせるだけの魔道遣いになるんだから。世間から見れば、あんたの魔力が急に向上して、魔道遣いとしての能力に開眼したとしか考えないでしょうね」
「わたしは能力の高い魔道遣いになれるのか……?」
ウルズが小さな声で言った。
ノルズはほくそ笑んだ。
「なれるよ……。あたしたちに従いなさい」
ノルズは言った。
ウルズは考え込む様子になった。
まあ、ウルズがどういう選択をしようとも、もはや関係ない。
ウルズが、ノルズたち組織の「道具」になる運命は決まっている。
ただ、それを自ら望むか、無理矢理にさせられるかの違いだけだ。
「もしも、わたしが従わなければ……?」
「従わないなんて、選択があると思っているのかい? あんたは死ぬだけだ。木っ端みじんにね。憑依した魔瘴石を身体から外す方法なんて、あたしにもわからないよ」
ノルズはげらげらと笑った。
ウルズの顔色はますます蒼くなる。
「……わかったわ。でも、スクルズはどうなるの? さっきから、家畜とか言っているけど」
すると、ウルズが小さく問い掛けてきた。
ここで、スクルズの心配をするというのは意外だったが、ノルズは肩を竦めた。
「スクルズもベルズも問題ない。処刑されることになったとしても、その身柄はさらう……。その手筈は整ってるんだ」
「本当ね?」
「ああ……。でも、そうだね。あんたがあたしたちの組織に加わると誓えば、神官でなくなり、魔道力も封印されたあいつらで遊ばせてやってもいいよ。あんた、神学校の頃から、あいつらを苛めるのが好きだったしね」
「そういえば、“わたしたち”って……。あんたって、なにかの組織のひとりなの? もしかして、わたしをなにかの組織に加えようとしているの?」
ウルズは怯えながらも問いかけた。
ノルズは爆笑した。
「あたしがなにかに属しているんじゃないかと、やっと疑問に思ったのかい? そうだね──。その通り、あたしはなにかの“組織”のひとりに違いないさ」
ノルズは椅子から立ちあがり、寝台に座るウルズへ歩み寄った。
ウルズがぎょっと目を見開く。
「な、なにを……?」
大声を上げる気配を見せたウルズの喉を、ノルズは魔力で封じた。
瘴気で活性化した“似非の魔道遣い”は、瘴気を扱うノルズのような魔獣遣いに対しては無力だ。
こちらからの術は容易に通る。
「んんん?」
声を奪われたウルズが目を白黒させる。
ノルズはその全身を金縛りにし、そのまま仰向けで寝台へ突き倒した。
「んんっ?」
唇を封じられたウルズの喉から、押し殺した呻きが漏れる。
「……あたしたちが何者かなんて気にする必要はない……。あんたは、あたしたちの奴隷──それだけ覚えていればいい。その代わりに、力を与え、出世も用意してやる。それでいいだろう?」
ノルズは、高位巫女に許された白地の長衣の裾を乱暴に掴み、腰の上まで押し上げた。厚手の布に金糸の縁取りが揺れ、床にだらしなく崩れ落ちた。
さらに下着も引き下ろして足首から抜く。
ウルズの秘部が露わになった。
ちょうどその時、扉が定められた合図で規則的に叩かれた。
「……いい頃合いだね」
ノルズは口端を上げ、魔道で施していた施錠を解く。
入ってきたのは、この神殿の神官のひとりリーナス──。
もちろん、ノルズの属する組織に繋がる男だ。
「始まってますね、ノルズ殿」
リーナスが寝台のウルズを一瞥し、口元を歪めた。
「……引導を渡すところよ。これからは、あんたがこの女を管理しなさい……」
ノルズは言った。そして、視線を寝台で仰向けの体勢で動けないウルズに向ける。
「ウルズ、こいつは神殿の神官──そして、あたしの部下だよ。以後、お前への命令はリーナスから与える。リーナスの命令には絶対服従。いいね。それさえ、約束すれば、お前は死なないですむし、出世は約束される」
リーナスが相好を崩した。
「ほう……私がウルズ様の管理を?」
「ただ、ちょっとばかりおつむが弱い。躾には手間がかかるかもね」
「承知しました。躾けるのは得意ですので」
ウルズは目を見開き、必死に金縛りから逃れようと身をよじる。
だが無駄だ。術は完全にかかっている。ノルズが解かぬ限り、身動きはかなわない。
「……ところで、第三神殿のスクルズ様ですが」
リーナスが急に顔を引き締め、ノルズへ耳打ちした。
「スクルズが──?」
内容を聞いたノルズは、瞠目した。
リーナスからの報告は、スクルズ行方不明になったということだった。
王軍を装った何者かに、本日午前中に連れ去られたらしい。王軍と神殿が血眼で捜索中だが、依然として手掛かりなしらしい。
「……おかしなこともあるものだね。まあいいよ。王軍と神殿が出張ってんなら、そのうち見つかるさ。魔瘴石を入れたまま消えられるわけがない。そっちはあたしが動く」
「承知しました」
「それより──リーナス、早速この女に思い知らせな。自分があたしたちの奴隷だという事実をね」
「本当に、よろしいのですか?」
「かまわない。あたしは忙しくなる。いつまでもこの馬鹿女に構っていられない。それに──この美貌と肢体だ。興味はあるだろう?」
「ええ、もちろん」
「なら、始めな。言っておくけど、ただ犯すだけじゃないよ。自分があたしたちの奴隷だと、身体に染みつくまでしっかりと調教するんだ──。身体が壊れない限り、なにをしてもいい」
「わかりました。しかし、ウルズ様……いや、ウルズの美しさは、この王都でも有名ですからね。それを遠慮なく調教できるというのは、光栄です」
リーナスはすぐに、下半身を剥き出しにして、ウルズのいる寝台にあがった。
一方で、ノルズは卓へ戻り、葡萄酒を静かに傾けた。
香りは澄み、舌に滑らかだ。
やがて、室内の気配に、淫靡な男女の息づかいと匂いが漂いだす。
ノルズは一度だけ顔を上げ、短く観察したのち、視線を杯へ戻した。
すると、ウルズの女陰にリーナスが早くも怒張をめり込ませようとしていた。碌な前戯もなかった気もするが、それでも、ウルズは快感によがっている雰囲気だったので、まあいいのだろう。
「んおっ」
ウルズが泣くような声をあげた。術で喉の声を封じているので、喘ぎ声というよりは、喉が鳴ったという感じだ。
「さすがは、筆頭巫女の高級まんこですね。締まりが随分といいですよ」
リーナスが下品な言葉を口にしながら、本格的な抽送を開始する。
ノルズは立ちあがると、部屋の隅に置いていた荷から革製の貞操帯を取り出した。
内側には大小の二本の男根をかたどった張形が着いていて、鍵で閉じ合せるようになっている。
「気が済むまで犯したら、これで管理しな。発情用の薬剤はしっかりとディルドに塗布してね……。以後、こいつの欲動はこれで管理するんだ。排泄も必ず監督下でやらせること……。なあに、数日もすれば、身も心も奴隷に堕ちるよ」
革の束を寝台へ放ってよこし、ノルズは杯に葡萄酒を注ぎ足す。
しばらくして、リーナスの息が荒くなる気配がしたが、ノルズは興味を失い、静かに目を閉じた。
この男を選んだのは、女への素行の悪さだ。
弱みを握るのは容易かった。
神殿や宮廷にも、同様に“飼い犬”を何人か作っている。
まだまだ増やせるだろう。
いまのところ、組織から命じられているハロンドール工作は順調だ。
まあ、退屈凌ぎにはちょうどいい。
やがて、リーナスがまるでサルのような奇声をあげた。
ウルズの股に精でも放ったのだろう。
しかし、リーナスによるウルズのレイプはまだまだ続きそうだ。
身体を動かせないウルズから、さらに上衣を剥ぎ取って服を脱がそうとしている。
ノルズは大きく背伸びをし、長丁場に備えて姿勢を整えた。
17話『淫魔師と三巫女』終わり──
18話『女神の娘たち』に続く──