【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
ベルズは、厠に行くと告げて、礼拝堂から一緒に戻っていたほかの巫女たちを先に行かせた。
誰もついてくる者はいない。
その瞬間、胸の奥にかすかな解放感が走った。
いつもなら、護衛巫女の列に紛れてノルズの目が光っている。だが今日は、その姿が見えない。
たとえ一時のことにすぎぬとしても、監視が緩んだのは確かだった。
誰からも同行を主張されず、ひとりで厠へ向かうことを許されたのは、本当に久しぶりだった。
もちろん、油断はできない。
ノルズは、第二神殿に籍を置きながら、第一神殿にも第三神殿にも名を変えて出入りしている。
その手の者が常に神殿に紛れ、絶えずベルズを監視しているのだと、あの女は自ら脅しをかけてきた。
だが、今朝は……もしかすると偶然、目が届かぬ一瞬なのかもしれない。
いずれにしても、魔瘴石を体内に仕込まれた自分には抗うすべがない。
それでも──ノルズが傍らにいないというだけで、胸の底にひとときの安堵が広がった。
寝床にさえ誰かが侍る日々──。
誰の目もないのは、いつ以来だろう……。
そんな些細な自由すら嬉しい。
だが、その反面、厠にまで付けられる監視のせいで、ここ数日はぎりぎりまで尿を我慢するのが習いになっていた。
すでに下腹は張りつめており、いまにも零れそうだ。
渡り廊下を離れ、ひとりで厠に向かう。
礼拝を終えたばかりの早朝だ。
庭にはまだ朝もやが垂れこめ、薄暗い空気が漂っている。
巫女たちはこれから朝食の支度にかかるが、筆頭巫女のベルズは、準備が整うのを待つだけ──だから、少しばかりの余裕がある。
厠の個室に入り、内側から鍵を下ろした。
庭の小川の流れを利用した構造で、流れる水の上に穴を穿ち、壁で仕切って個室にしてある。
腰を落とせば、すぐに水流が汚物をさらい、やがて王都の下水へ繋がる仕組みだ。
下着をおろし、巫女服の裾を腰まで捲り上げて、穴に跨がる。
張りつめた下腹を解き放つように、股間の力を抜いた。
しゅっと勢いよく、溜まっていた放尿が迸る。
途端に熱いものが腿をかすめ、耳に水音が響いた。
羞恥に頬が火照る。だが、いまは耐え切れない。
──そのときだった。
鍵を下ろしていたはずの扉が、外から音もなく押し開けられた。
まさか、と思う間もなく、影がすっと入り込み、視界の前に立ちふさがる。
「ひっ──」
声が裏返った。
放尿の姿を晒したまま、見知らぬ男に見下ろされる。
羞恥と恐怖が一気にせりあがり、ベルズは声を失った。
「お、お前は──」
声を振り絞った。
扉の前に立っていたのは、二日前に神殿に現れた冒険者だった。
確か、名はロウ……。
──二日前のことを、思い出す。
こいつは冒険者を名乗り、ベルズの前に現れて「護衛の依頼を受けた」と称し、唐突に神殿へ押しかけてきた。
だが、その場には監視のノルズ自身がいた。ベルズはすでに魔瘴石を埋め込まれ、抗議も訴えも口にできぬ状態だった。
仕方なく、辛辣な言葉を投げつけて男を追い払った。
──しかし、突然の口づけ。
気が動転したが、なぜか怒りは湧かず、思わず庇うようにして立ち去らせてしまった。
いま振り返れば、どうしてあんな行動に出たのか自分でもわからない。
だが、あのとき、どうしても教団兵に捕縛させる気にはなれなかったのだ。
もちろん、後に神殿を通じてミランダのいる冒険者ギルドには抗議を送った。
だが、そもそも、どうして彼がここに現れたのか。
いや──どうやって神殿に潜り込んできたのか。
「な、な、なん──」
やっと我に返って立ちあがろうとしたが、すぐにまた膝を折った。
──まだ、放尿が続いているのだ。
一度始まった流れは、自分の意思では止めようがない。
「こんなところで申し訳ありません。でも、あなたの周りにはいつも護衛がいて、隙がなかったもので……。やっとひとりになったのを追いかけたら、その先が厠だっただけです」
「な、なにをくだらぬことを……」
やっと、まともに口をきけた。
そして、咄嗟に懐から魔道の杖を取り出す。
けれど、ノルズの魔瘴石によって、魔道を封じられていたことを思い出す──。そう思い至った瞬間、ロウの手が懐に伸び、あっさりと杖を奪われた。
「魔道は使えないようですが、念のため……。もっとも、あなたほどの高位魔道遣いになれば、杖も要らないらしいですね。スクルズもそう言ってました」
にやりと笑うその顔が、羞恥に赤らんだ頬を突き刺す。
「と、とにかく……わ、わたしをこんな姿で見下ろすな……。出ていけ……いや、見ないで……」
強がりの言葉を吐きながらも、震える声が裏返った。
羞恥に頬が灼け、脚の付け根まで熱が走る。しかも、まだ終わらない。
動転して涙が出そうになり、助けを呼ぼうと息を吸った、その刹那──。
「大声は駄目ですよ。命令です……」
ロウの低い声が落ちた途端、喉の奥に言葉が詰まり、叫ぶ意思そのものが掻き消えていく。
とにかく、放尿が終わらない。溜め込んでいた分だけに長い。
「まあ、声を出しても無駄ですけどね。この部屋は防音の結界で包んでもらいました。どうせ誰にも聞こえません。俺のことは気にせず、続けてください……」
「は、はっ?」
防音の結界──?
そう言った?
いや、本当だ。なにかの結界が包んでいる。
背中に冷たいものが流れた。
「実は、以前、俺の女が厠で放尿中に襲われたことがありましてね。同じ襲撃を一度やってみたかったんですよ」
ロウは、わけのわからないことを言いながら、膝を折って視線を低くし、ベルズの股間を覗き込んだ。
「や、やめてっ──」
反射的に捲りあげていたスカートの裾を掴む。
必死に股に力を入れて、やっと放尿を中断できた。
雫はぽつぽつと落ちているが、構わずに腰を浮かせた。
「まだ、途中でしょう」
凝視をやめぬロウが薄笑いを浮かべた。
羞恥に震えながらも、ベルズは無視して、巫女服のスカートを下ろした。
だが、膝までさげたままの下着を手にした瞬間、手首をがっしりと掴まれた。
「わっ」
「抵抗をしてはいけません……。あなたはすでに俺の唾液を飲んでます……。支配に半ば呑み込まれてるんです……。下手に逆らえば、憑依されている魔瘴石と反撥して、心が分裂し取り返しのつかない損傷が起きます。俺に身を委ねて」
「な、なにを血迷い事を──」
後ずさろうとしたが、掴む手は鉄のように強く、振りほどけない。
しかも膝までおろした下着が足に絡み、蹴ることすらできない。
「い、いやっ──、誰か──。誰か助けてええ──」
恐怖が再びこみあげ、助けを呼ぼうと喉を震わせる。
結界に包まれているのは感じている。
だが、ここは神殿だ──誰かが異常を察してくれるはず、とわずかな望みに縋った。
「静かにして、ベルズ──。このロウ様に任せるのよ。ロウ様は、わたしたちを助けてくれるのよ」
聞き慣れた声に息が凍った。
厠の個室の扉が再び開いて、新たな「襲撃者」が入ってくる。黒いマントとフードの影が現れた。覗いた顔を──ベルズは見間違えようがなかった。
「スクルズ?」
昨日、偽の王軍兵に連行されて行方知れずとなっていたはずの彼女が、目の前にいた。
もっとも、この冒険者のロウに一昨日会ったとき、スクルズが王軍に捕えられる可能性が高く、もしも、そうなれば、かなりの高い確率で死罪になることは間違いないと告げられた。
だから、すぐに手を回して調べたところ、それが事実であることもわかった。
だから、なにがあったかわからないが、スクルズが逃亡したということについては、ほっとしていた。
そのスクルズが目の前にいる。ここは第二神殿だ。
ベルズは混乱した。
「……ごめんね、ベルズ……。だけど、すぐにあなたにもわかるわ。だから、このロウ様に屈服してね──」
スクルズがベルズに微笑みかけた。
次の瞬間、ベルズの全身は金縛りにかけられたように動かなくなった。
魔道──。
杖もなしに無詠唱──?
そう思ったが、どうしようもない。
ベルズの身体はまるで棒切れのように真っ直ぐに伸びたまま、厠の壁に倒れていく。
その身体をロウが手を伸ばして支えた。
悲鳴をあげることもできない。声さえもスクルズの魔力で凍結されている。
どうして、スクルズがこんなことを……?
しかし、ベルズは、動顚して考えをまとめることもできなかった。
「お前たちも、手伝え」
硬直したままのベルズを抱えているロウが外に声をかけた。
すると、三人の女がすぐに入ってきた。
ベルズは、その女たちを見て、さらに驚いてしまった。
そのうちのひとりがベルズと瓜二つの顔をしていたのだ。
すぐに、変身の魔道具を使っているのだと悟った。しかし、その目的まではわからない。
考えてみれば、一昨日にこのロウが来たとき、三人の女冒険者が同行していた。別室にいたので騒動の直後日本の少し見ただけだが、変身していないふたりには、そのときに会った。
王都でも有名なお転婆騎士のシャングリアと、名前はわからないが小柄の人間族の女だ。ならば、ベルズに変身しているのは、もうひとりいたエルフ族の美女か?
その女たちとロウによって、ベルズは厠の個室の外に出された。
厠の外の床には大きな毛布が敷かれている。
ベルズは、その毛布の上に横たえられた。
すると、ベルズそっくりの顔をした女が、ためらいもなく衣を脱ぎ始めた。
同時に残りふたりの女がベルズに取りつき、装束を剥ぎ取っていく。
──動けない。
全身は金縛りに縛られ、わずかに動かせるのは視線だけだった。
必死に向けた眼差しの先で、下着姿になった“もうひとりのベルズ”の指に、魔道の指輪が輝いている。
そこからははっきりと強い魔力の波が放たれていた。──あれが変身具であることは間違いない。
一方で、シャングリアと小柄な女がベルズから巫女装束を剥ぎ取り、それをそっくりの女が次々に身にまとっていく。
「……手伝いますね、エリカさん……。ベルズには着こなしにこつがあります。それをちゃんとしてないと、違和感を覚える巫女もいつかもしれません」
驚愕することに、慣れない巫女服を着るのに手間取っている女の着付けをスクルズが手伝いだした。
エリカ──か。
その女の名なのだろう。
とにかく、一体全体どういうことになっているのだろう?
スクルズには、このロウたちに脅されたりしているという雰囲気はない。
むしろ、進んで加担している感じだ。
やがて、ベルズは完全に巫女服を剥がされてしまった。膝に絡まっていただけの下着も呆気なく脱がされる。
さらに、ベルズにそっくりの女は、ベルズから脱がせた巫女服を着終わっている。
「エリカ、なんとか半日だけ頼む。それで、このベルズ様を落とす。そのあいだ、なんとか時間を稼いでくれ」
ロウが言った。
「わかっています、ロウ様。誰にも悟られずに、身代わりをしてみせます」
女が言った。
やはり、このベルズと同じ顔の女は、このロウの仲間の女だ。
ベルズは悟った。
「コゼも頼むぞ。コゼは、エリカに万が一のことがないように、隠れて見張ってるんだ。このベルズ様には、ノルズの手の者が見張ってるはずだ。その連中に気がつかれる前に、ベルズ様から魔瘴石を剥がしたい」
「わかってます」
「でも、エリカの身が第一優先だ。もしも、ばれそうになったら、ふたりで暴れて逃げて来い。お前たち二人の命が優先だ」
「それも、わかりました、ご主人様」
黒髪の小柄の女──多分、コゼ──が真剣な表情で応じた。
「しばらく我慢してね、ベルズ。でも、あなたにもわかるわ。ロウ様に身を委ねるのよ」
スクルズがにこにこしながら言った。
毛布でベルズをすっぽりと全身を包まれる。
ベルズの視界は完全に失われた。
それにしても……。
ベルズは驚いてもいた。
このロウがすべてを承知していることにだ。
ロウは、完全にベルズとノルズの関係、そして、魔瘴石のことを認識している。
ノルズの手の者がベルズをずっと監視していたことまで見抜いて動いている……。
そのうえで、女たちに指図している。
しかし、思考はそれで終わりだった。
毛布に包まれたベルズの身体にはらわたがねじれるような感覚が襲った。
これは、『移動術』──。
瞬間移動の魔道だ──。
それを遣えるのは、この王都ではただふたりだけのはずだ──。
ひとりは、ベルズ自身──。
もうひとりは、スクルズ──。
ベルズやスクルズよりも神学校の成績がよかったウルズでさえ不可能であり、王軍の魔道師たちにも遣える者のない高位魔道だ。
しかも、移動術は万能ではない。
王都のあちこち、もちろん第二神殿の敷地内にも、術を封じる封印石が埋められている。
それを無効化し、なお移動術を駆使するには、ただ習得しているだけでは足りない。
圧倒的な魔力と、緻密に術を刻む巧みさが必要なのだ。
ベルズの知る限り、スクルズはそこまでの魔道遣いではなかったはずだ。
どうして……?
毛布に包まれたまま、ベルズの身体はふわりと浮いた。
視界は暗く、ただはらわたを捻じ切られるような感覚だけが全身を苛む。
吐き気と恐怖に喘ぎながら、ベルズは悟った。
──自分はいま、この神殿からどこかへ連れ去られようとしている。
「まあまあ、落ち着いてくださいよ、ベルズ殿」
一郎は全裸で縛りつけたベルズの前に腰をおろした。
「そうよ、ベルズ。そんなに興奮しないでね」
反対側に立つスクルズも、にこにこと声をかけている。
そのスクルズも全裸だ。ベルズが寝台に拘束されているあいだに、自ら身につけているものを全部脱ぎ捨てていた。
「ふざけるな……。なにをするつもりだ、スクルズ……。冗談はやめよ」
羞恥に顔を紅潮させながら、ベルズは精いっぱい虚勢を張る。
だが、後ろ手を革紐で縛られ、足首の枷は寝台の両端に繋がれ、脚を閉じることすら許されない。
全裸のまま強制的に脚を開かされ、寝台の中央に座らされていた。
ここは一郎たちが暮らす「幽霊屋敷」と呼ばれる建物の地下──。
第二神殿からベルズを拉致した一郎は、この部屋に彼女を監禁し、スクルズとふたりがかりで屈服させようとしている。
地下室にいるのは三人だけだ。
シャングリアと屋敷妖精のシルキーは一階に控えているが、変身リングでベルズに化けたエリカと護衛のコゼは、第二神殿に残って時間を稼いでいる。
だが、その時間伸ばしも、日没までが限界だろう。
それまでにベルズを屈服させ、精を刻んで性奴隷とし、魔瘴石を安全に外さなければならない。
ノルズが魔瘴石をどのくらい遠隔で操作できるのか未知数だ。もしも、ベルズの入れ替えに気がついて、魔瘴石の活性化されれば、ベルズの身体が肉片となって、この屋敷ごと破壊される可能性もある。
爆死させるくらいなら、強引に剥がすという選択もあり得るが、いずれにしても時間は迫っていた。
「ねえ、何度も説明したでしょう、ベルズ。このロウ様はわたしたちを助けてくれるのよ。ウルズのことも……。だから、このロウ様の性奴隷になると誓って」
スクルズは寝台にあがり、拘束されたベルズの背後に腰をおろして囁く。
彼女はここに来るまで、ずっとベルズに一郎の意図を説明し、なだめすかしてきたのだ。
ベルズも頭では理解しているのかもしれない。
だが、納得はしてないだろう。淫魔師としての一郎の勘がまだ早いと言うことを告げている。
まだ完全に屈服していない以上、精を刻むことはできない。無理に犯せば、魔瘴石の分離と同時に心が壊れ、精神を損なう危険があるからだ。
「なにを言っているのかわかっているのか、スクルズ。魔瘴石を抜くために性交が必要なのは理解した。抵抗はせん。この冒険者がわたしを犯すのも許す。だが、性奴隷になど……」
「まあ、許すだなんて……。なんてことを言うの、ベルズ。ロウ様に失礼よ。この方は本当に親切心で助けてくださっているのに」
「親切心だと? さっきから、色狂いの男そのものの目で見ているぞ──。それにしても、スクルズ。なぜお前はこんな冒険者に諾々と従っているのだ……。どうかしているぞ……」
「まあ、そんなことを言って。とにかく、このロウ様に性奴隷にしてって、お願いするのよ」
「スクルズはもう黙れ──。まあいい──。と、とにかく、お前、わたしを抱いても構わない。だからこの拘束を解け」
ベルズは一郎に向かって声を荒らげた。
だが、その強気の口調とは裏腹に、表情には怯えが滲んでいる。
無理もなかった。
これが初めての男との交わりだ。
スクルズに白状させたところ、女同士で戯れるときには張形も使ったと聞くから、女の穴になにかを受け入れること自体は初めてではない。
だが、やはり男に抱かれるのは恐怖なのだろう。ベルズの顔には、はっきりと怯えの色が浮かんでいた。
その証拠に、羞恥に震えながらも、無意識に開かされた脚のあいだからは愛液がじわりと滲み、雫となって滴っていた。
──やはり、スクルズの言葉どおりだ。
気の強い口調とは裏腹に、ベルズの本質は「受け」。縛られ、辱められるときほど、女の身体は素直に応じてしまうことだ。
「まあ、そんなことを言わないでくださいよ、ベルズ様。もちろん、あなたのことはおいしく頂くつもりですよ……。でも何度も説明するとおりに、魔瘴石を安全に外すためには、ちゃんと心から屈服してもらわないと犯せないんです」
一郎は立ちあがり、ゆっくりと身につけているものを脱ぎ始めた。
「うわっ」
その仕草を見た瞬間、ベルズの肩がびくりと震え、腰を寝台につけたまま、後退ろうとするが──。だが、両足首が寝台の左右の端に繋がっているし、背後にいたスクルズがぴたりと身体を密着させ、退路を塞いだ。
「わっ、ス、スクルズ──」
慌てふためいたベルズが振り返る。
「いいから、ベルズ。ロウ殿に“性奴隷にして欲しい”って言うのよ。魔瘴石を取り去ってもらうには、それしかないの。わたしを見て。わたしもノルズに脅されて魔瘴石を埋め込まれていたのよ。でも、もうないでしょう?」
諭すように告げるスクルズの声音は柔らかいのに、その裸身は熱を帯び、説得というより誘惑に近い。
「そ、それはわかっている……だが、わ、わっ、まだ来るな、お前──」
ふたりと同じように全裸になった一郎が寝台にあがる。
胡坐をかき、ベルズと向かい合うと、その表情に怯えが走った。
男の全裸を目の当たりにするのは初めてのようだ。
強がりを崩すベルズの狼狽ぶりが、一郎にはどこか可笑しくて、思わず口端をつり上げてしまう。
「思ったよりも可愛らしい筆頭巫女様だ。とにかく、緊張する必要はないですよ」
「……な、なにがおかしい、お前──。わ、わかった。お前に抱かれる。性奴隷にもなる。だから、さっさとやれ。もう観念する。どうか、魔瘴石を外してくれ──。だが、もし嘘なら……あとで八つ裂きにしてやるぞ──」
怒鳴り声は虚勢にすぎなかった。
性奴隷の誓いを口にしたものの、淫魔師としての一郎の目には、まだ屈服は足りないと見える。
スクルズがちらりと一郎を見た。
一郎はスクルズに小さく首を振る。
即座に意味を理解したスクルズが、静かに肯いた。
スクルズの場合は「性奴隷になる」と言葉にした時点で心が折れ、屈服度が跳ね上がった。
だが、ベルズは違う。
口にするだけでは足りないようだ。
心の芯から堕ちる瞬間を引きずり出さねばならないらしい。
──まあ、いいか。
あとは肌を重ね、少しずつ感情を解きほぐしてやればいい。
「……怖いことは言わないでくださいよ、ベルズ殿。スクルズから聞いています。普段は気の強いあなたも、女同士のときには“責められる側”に回っていたとか……」
一郎はくすぶる太腿に軽く指を滑らせた。
「うわっ──、や、やめて──」
ベルズの身体が硬直する。次いで、鋭い視線が横にいるスクルズに向けられた。
「ス、スクルズ……。お、お前、わたしたちの秘密を、この男に漏らしたのか──」
羞恥のにじむ怒鳴り声。
「だって、本当のことじゃない、ベルズ。意地を張るのはやめなさい。あなたがもう熱くなって、お股を濡らしているのなんて、わたしには丸わかりよ。ほら──ロウ様、見てください。ベルズは、もうこんなに……」
スクルズが悪戯っぽく微笑み、ベルズの股間に指を這わせた。その指がすっと敏感な肉芽をかすめる──。
「んふうっ」
ベルズの口から、抑えきれぬ声が洩れた。身体がびくりと跳ねる。
気の強さは崩れ、マゾの本能が顔を出した瞬間だ。
その激しい反応に、一郎の欲望もさらに昂ぶっていった。
ベルズ=ブロア
人間族、女
第2神殿筆頭巫女
ブロア伯家令嬢
年齢26歳
ジョブ
魔道遣い(レベル25)
魔道研究(レベル20)
生命力:50
攻撃力:1(拘束中)
魔道力:200(凍結)
経験人数:女3
淫乱レベル:S
快感値:50/300↓
状態
魔瘴石(封印状態)の憑依
まだ、まともな愛撫も受けていないはずのベルズの快感値が、すでに大きく下がっている。
──これはつまり、彼女自身がこの状況に強烈に欲情しているなによりの証だ。
気の強い女が、閨ではマゾに変わるのは、珍しいことではないのかもしれない。
エリカ、コゼ、シャングリア、ミランダ──一郎が抱いてきた女傑たちは、皆そろって気丈で傲慢なくせに、ひとたび交われば徹底して被虐を望んだ。
それは淫魔術の効果もあるのだろう。
だが、ベルズの場合は明らかに違う。
彼女がマゾであるのは、ステータスを覗くまでもなく、今この股間に滴る愛液の輝きが何よりの証拠だった。
「お、お前……さっきから、わたしをじろじろと見るな──」
羞恥を隠そうと大声を張るベルズ。
「いいえ、しっかり見せてもらいますよ。スクルズの言った通りでしたね。縛られただけで、ここまで濡れる女は初めてです。まさにマゾそのものじゃないですか」
一郎は意地悪く言い放ちながら、太腿に置いていた手をさらに股の付け根へと滑らせた。
同時に、背後のスクルズも反対側の腿に指を這わせ、さわさわとくすぐるように撫でる。
スクルズには強制の支配などすでに掛けていない。
それでも進んで協力してくれるのは、彼女が本来からして性愛に積極的な女だからだ──そのことは支配して知った。
「くっ……」
ベルズは歯を食いしばり、顔をしかめて耐える。
だが、必死に耐えようとするその姿が、かえって淫らな可愛さを際立たせていた。
「ベルズ、もっと気を楽にして……。ほら、このロウ様に身を委ねましょうよ。わたしも一緒に愛していただくんだから。ロウ様はとても上手よ……安心して心を開いて」
スクルズは楽しげに笑いながら囁き、指を這わせる手にますます熱をこめる。
「ス、スクルズ……。お前、なぜこんな男に……。と、とにかく、スクルズ、お前になら屈する。屈するから、この男をどこかに追い払ってくれ。魔道で金縛りにして……頼む──」
強気の響きを残しながらも、声はかすれ、すがるような響きに変わっていた。
「ロウ様を追い払って、どうするつもりなの? ベルズ。あなたの身体に巣食った魔瘴石を取り去るには、ロウ様の精が必要なのに……。ほんと、変なベルズね」
くすくすと笑ったスクルズの手が、今度は乳房を包み込むように揉みしだいた。
「ひっ……ああっ──」
憐れなほどの声をあげて、ベルズの全身が跳ねる。
羞恥と恐怖のはずが、どうしようもなく快感に変わってしまっている──。
一郎はその反応を眺めながら、胸の奥で深い欲情を昂ぶらせていった。