※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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125 反撃の瘴気

「なんだ、お前──?」

 

 ノルズが声をあげ、後ろで愛撫していた手を引いた。

 寝台に両手を突いたまま、エリカの身体は金縛りに縫いつけられている。

 だが、首だけは辛うじて動いた。

 すぐに振り返る。

 ノルズの眼が股間に釘付けになっていた。

 ぞっとした。まくり上げられたスカートの奥に隠していた小さな異物──クリリングを完全に見られていたのだ。

 

 だが、振り返った視界に飛び込んできたのはコゼだった。

 すでに短剣を握り、音もなくノルズの背へと忍び寄っている。

 風を切る音もなく、コゼが無造作に短剣をノルズの首に向けて払った。

 

「うわっ」

 

 ノルズがわずかに身をひねった刹那、短剣の切っ先が閃き、首筋をかすめた。

 浅い。

 だが、血が弧を描いて噴いた。

 

「ちっ」

 

 押し殺したノルズの声──。ノルズの集中が揺れた。

 エリカへの魔道拘束の重さが一段、薄れたのだ。

 

「こなくそっ」

 

 エリカは即座に腰を切り、突き出した踵を後ろへ叩き込む。

 

「あぐっ」

 

 寝台からノルズが後ろに飛ぶとともに、膝頭が砕けて崩れ落ちた。

 拘束がさらに緩む。

 エリカは抵抗魔道で術の回路を断ち、手のひらに魔道を載せて腹へ衝撃波を撃つ。

 鈍い衝撃音とともに、ノルズの身体がさらに吹き飛んだ。

 金縛りが解ける。全身の感覚が完全に戻った。

 

 コゼがうずくまったノルズに飛び掛かる。背から短剣を貫く軌道だ。

 

「殺してはだめ。ロウ様に引き渡すのよ」

 

 エリカは咄嗟に叫んだ。

 

 一拍。刃が止まる。

 次の瞬間、コゼは短剣の腹でノルズの頬を横殴りにし、床へ叩き伏せた。

 

「うぐうっ」

 

 ノルズが口から血を飛ばしながら、床に転がった。

 

「きゃあああ──ノルズ──」

 

 部屋の隅から悲鳴があがる。淫具に翻弄されていたウルズだ。

 エリカは身を翻し、ウルズを背に庇うように立ちはだかった。

 

「もう大丈夫よ。スクルズ様も、ベルズ様も、わたしたちが保護している。安心して」

 

 ウルズは呆然となっていた。

 

 その一方で、コゼは短剣の刃先をうつ伏せにしたノルズの首筋に押しつけながら、横目でエリカを見た。

 

「殺さないの?」

 

「ロウ様に判断してもらうわ。連れていきましょう」

 

 エリカが即答すると、ノルズが呻き声を洩らした。

 

「だ……誰だ、お前ら……? ベルズ……じゃないね」

 

「そうね。違うわ」

 

 エリカが短く返し、同時にコゼへ視線を送る。合図を受けたコゼは懐から紐を取り出し、ノルズの四肢を背中にねじるように折り曲げ、ひとつにまとめて縛り上げていく。

 

「……刃先に毒かい……。身体が……」

 

 ノルズが痺れた声を洩らす。

 

「心配しないで。死にはしないわ。しばらく痺れる程度ね」

 

 コゼが冷ややかに応じた。

 

 エリカはすかさずノルズの服へ手を伸ばし、隠されていた魔道の杖を奪い取る。

 

「エリカ、魔道封じの首環を──」

 

 コゼの声が飛んだ。

 エリカは寝台脇に忍ばせていた首環を取り出すと、ためらいなくノルズの首に嵌め込んだ。

 

 ノルズの首に首環が嵌まった瞬間、淡い光が走った。

 これはロウの指示でスクルズに刻ませた魔道封じの首環だ。ロウによれば、どんな術者であっても確実に力を封じられるという。

 エリカの目の前で、ノルズの動きがたちまち鈍り、まとっていた魔の気配が霧散していくのがはっきりと見えた。

 

「……あ、あんたたち……」

 

 そのとき、エリカの背後から、ウルズがやっと声を絞った。

 どうやら、淫具の気配は途絶えている。

 

「ああ、ウルズ様、大丈夫ですか?」

 

 エリカは振り返った。

 

「……あなた……ベルズじゃないのね?」

 

 ウルズの口からかすれた声が出た。

 振り返って視界に映ったウルズは、人間族の女にしては背が高く、ひと目でわかるほどの妖艶な美女だった。

 白の上衣に紺の下袍という巫女服は、筆頭巫女ではないにせよ上級巫女らしい威厳を帯びている。

 腰まで流れる栗毛がその容貌をいっそう引き立て、気の強さが表情にありありと浮かんでいた。

 淫具の震えが止まってなお、呆然と立ち尽くす姿には迫力があった。

 

「ええ、違いますね。わたしたちはあなたを助けるため、クエストを受けて行動している冒険者です」

 

 エリカは即座に答え、指のリングを操作して変身を解いた。ウルズの瞳が驚きに揺れる。

 一方で、エリカは横目で様子を確かめた。ノルズの四肢は背中でねじられるように折り曲げられ、紐でしっかりとまとめ上げられている。逆海老を思わせる苦しい体勢で、もはや自力で動ける余地はなかった。

 

「止血は?」

 

「必要ないわ。掠り傷だから、すぐ止まるわよ」

 

 コゼが冷淡に言い、刃先を首筋に押しつけ続ける。

 だがその刹那、ノルズが身を捻って逃れようとした。

 

「ぐあっ」

 

 次の瞬間、短剣の柄が横から叩きつけられ、ノルズの顔が跳ねた。

 

「面倒かけると殺すわよ」

 

 コゼの吐き捨てるような声と同時に、ノルズの鼻から血が噴き出し、床に赤いしぶきを散らした。

 

「……お前ら……確か、エリカとコゼだね……。変身道具で誤魔化してたのかい……。ああたしとしたことが迂闊だったね……」

 

 荒い息を吐きながらノルズが吐き捨てる。

 

「さて、どうするの、これ? 神殿に引き渡すの?」

 

 コゼがエリカを見た。

 

「いいえ。ロウ様の判断を待ちましょう」

 

 エリカはそう告げた。

 そのときだった……。

 

「……ノルズを引き渡す……?」

 

 ウルズの声が、妙な抑揚を帯びて響いた。

 もう一度、振り返ろうとした瞬間、稲妻の閃光が走る。部屋中に白い閃光が迸る。

 

「がっ……」

 

 エリカの全身を激痛が駆け抜け、視界が真白に塗りつぶされた。

 

「うわっ」

 

 コゼの呻き声も重なる。

 気づけば、エリカは床にうつ伏せに投げ出されていた。手足は痺れ、指一本も動かない。

 コゼもまた、少し離れた場所で横倒しになったまま呻いている。

 

「……ああ、大丈夫、ノルズ……? いま助けるわね」

 

 ウルズが杖を掲げ、ノルズを起こし上げる。

 縛めが瞬時に解けた。

 だが──首環は外れていない。

 ノルズの魔道は封じられたままだ。

 

「な、なんで……ウルズ……」

 

 コゼが呻く。次の瞬間、杖先がコゼに向けられた。

 

「ふぐあああっ」

 

 雷撃がコゼに叩きつけられ、コゼは床をのたうつ。

 

「お前もだよ──」

 

 ウルズの杖がエリカに向く。

 

「あぎゃああ」

 

 全身に走った凄絶な衝撃にエリカの声が裂ける。

 放たれた衝撃波は、エリカとコゼに放たれただけでなく、ベルズの部屋のあちこちが無残に打ち砕かれている。

 テーブルは裂け、椅子は弾け飛び、壁に掛けられた織物も焦げて燃え上がった。

 それくらいの凄まじい波動だ。

 

「この部屋は防音済みよ。いくらでも叫びなさい──。それで、ノルズ、こいつらはこのまま殺す?」

 

 ウルズが恍惚を帯びた顔で問う。

 すでに、ノルズは立ちあがっていた。まだ血が滴っている魔道封じの首環の嵌まった首に手を当て、エリカとコゼを憎悪の視線で睨んでいる。

 

「まだだ。ロウって男を釣る餌に使うさ……」

 

 そのノルズの嗤い声が響く。

 

「餌?」

 

 ウルズがエリカとコゼに交互に杖を向けたまま、小首を傾げている。

 

「……ふふ、いずれにしても、よくやったわ、ウルズ……。ご褒美をあげないとね」

 

「はあんっ、はっ、ああっ」

 

 ノルズの声の直後、ウルズが嬌声をあげて膝を折った。

 そして、跪いたまま両手で股間を押さえて、全身を突っ張らせる。

 

「ああ……気持ちいい……気持ちいい……っ」

 

 エリカは唖然として、その光景を見ていた。

 ウルズがウルズの股間に装着させている貞操帯の内側のディルドを振動させたのだろう。

 

 でも。どうやって──?

 ノルズの首には、いまだに魔道封じの首環が嵌まっている。どうして、魔道が遣えるのだろう?

 エリカは、うつ伏せに倒れたまま目を丸くした。

 

 また、ウルズは悶え狂っている。

 貞操帯の奥の淫具の振動は、ウルズの巫女服の下袍の上からでもわかるほどの激しさだ。

 全身を突っ張らせ、巫女服の下の乳房を大きく揺らしながら、嬌声を洩らしている。

 

「……どうして、術が……?」

 

 エリカは呆然と呟いた。

 首環が嵌まっているはずのノルズが術を操っているのだ。

 

「はっ、当たり前だろ。魔道封じが効くのは魔道の流れだけだよ。あたしの術は瘴気を使ってんだ。そんなもんじゃ封印できないさ」

 

 ノルズが血に濡れた口元で嘲った。

 そのとき、ウルズの身体ががくりと脱力した。貞操帯の振動がとまったのだろう。

 すかさず、エリカは口を開いた。

 

「ウルズ様──必ず魔瘴石は安全に抜けます。ノルズの脅迫なんかに屈する必要はないんです」

 

 エリカは必死に叫んだ。

 だが、ウルズは股間の震えが止まった余韻に酔いしれるかのように、妖艶な顔を上げた。

 白と紺の巫女服がはだけ、腰までの髪の毛が揺れている。

 表情には快感の残滓が濃く刻まれ、瞳は艶を帯びて輝いていた。

 

「必要ないわ……魔瘴石は抜くなんてとんでもない……。これさえあれば、スクルズにもベルズにも負けない魔道遣いになれる……。いえ、なれたわ。余計なことはしないで……」

 

 吐息まじりに言い切るウルズ──。

 その声音は確信と陶酔に満ちていた。

 エリカの胸を絶望が突き抜ける。

 

「さて、どうしてやろうかね、お前ら……。とりあえず、まずは、このあたしに刃物を突き刺したコゼに仕返しをしないとね……」

 

 ノルズの声に強い憎悪が混じった。

 

「ぎゃああああ──」

 

 次の瞬間、コゼの全身が飛び跳ね、凄まじい痙攣に襲われる。

 服がみるみる裂け、露わになった肌が血に濡れていった。

 

「コゼ──」

 

 エリカは絶叫した。

 半透明な粘性体が服の上にまとわりつき、次の瞬間には布の隙間へ潜り込んだ。

 

「ひいいい、いぎいいい──」

 

 絶叫とともに、布の下から血が全身にわたって滲み出す。

 裂け始めた衣服の隙間から、肌を粘性体が内側から削り裂いているのが見えた。やすりのような細かな動きで、布も皮膚も無惨に砕かれていく。

 削られた痕から真っ赤な鮮血が広がり、コゼの身体をさらに血で染め上げていった。

 

「やめて──やめてあげて──」

 

 まだエリカの身体は電撃の影響で痺れている。

 力を振り絞って這い進むと、コゼに取りついた。手に触れたのは、ぬるりとした感触だけだった。

 

「こ、これは……ウーズ──?」

 

 だが、それでコゼの全身を包んだ半透明の粘性体の正体がわかった。

 あのウーズだ。

 シャングリアと組んだ最初のクエストのとき、かつてジーロップ山で遭遇した魔獣体と同じものに違いない、

 

 だが、どうして、それがここに──?

 もしかして、この粘性生物をノルズが召喚した?

 そういえば、ロウは事前の情報で、ノルズのことを魔獣遣いでもあると言っていたか……。

 

「へえ、ウーズを知っているのかい」

 

「あ、あなたが召喚したの? もうやめて──。コゼが死んでしまうわ」

 

 エリカは絶叫した。

 いまだにウーズはコゼの肌の上で暴れ続けている。すでにコゼはほとんど全裸であり、 全身の肌を削られて血まみれになっている。

 ノルズの操るウーズは、あのときに見たものより、遙かに繊細で複雑に動いている。

 エリカは戦慄した。

 

 とにかく杖を取る。ウーズの弱点は火──。

 杖先に炎を灯すと、コゼの身体を覆っていたウーズが潮が引くように離れていった。

 

「コゼ、しっかり──」

 

 エリカはコゼを抱き起こそうと身を屈めた。

 ウーズはもうコゼの上にはいない。コゼは、服をずたずたに裂かれて血に濡れており、息も浅い。

 エリカが腕を回した瞬間、横合いから強い力が走り、杖が弾き飛んだ。

 

「くっ」

 

 指の衝撃にエリカは顔をしかめた。

 ウルズに握る魔道の杖が真っ直ぐに向けていた。どうやら、魔道で杖を飛ばしたのはウルズのようだ。

 杖なしでも魔道は放てるが、どうしても威力と精度は落ちる。

 

「ジーロップ山の件を思い出したよ。オーヌのばかを殺したのは、あんたらかい?」

 

 振り返る。

 声はノルズだ。

 手には透明に近い鞭がしなっていた。エリカは目を細めた。

 もしかして、さっきの粘性魔獣体のウーズを鞭状にしている?

 

「オーヌを知っているの?」

 

 エリカはノルズに語りかけた。

 

「知ってるさ。あたしが最初に選んだ駒があいつだよ。力を欲しがってたから、魔瘴石を入れてやって、少しばかり力を分けて魔獣遣いにしてやったのさ。それなのに王都を出て、なんとかいう女騎士に復讐だのと盗賊団を乗っ取る始末さ」

 

「……はは、あの間抜け、あんたの手下。世間は狭いわね……」

 

 はっとした。

 コゼだ。

 血の味を噛みながらも嘲るように笑っている。

 

「コゼ、大丈夫──?」

 

「さ、さあ……」

 

 コゼの顔は微笑んでいる。

 しかし、息は弱い。

 かなり、消耗している。

 

「あれは部下じゃないよ……。勝手したから殺すつもりだったけど、先に冒険者に退治されてたってわけ。なるほどね──。あれを殺したのがあんたらかい。こりゃあ因縁だねえ」

 

 ノルズの視線が滑る。ノルズが鞭状にしている粘性生物とは別のウーズが床を這いながら、再びコゼへと寄るのをエリカは見た。

 

「やめて。これ以上は駄目。コゼが死んでしまうわ」

 

 ウーズはコゼの目前で止まった。

 

「じゃあ、あたしに嵌めた魔道封じの首環を外しな。魔道は封じられても、瘴気は動かせる。関係ないけど、邪魔なんでね.お前が嵌めたんだから、解錠もできるだろう?」

 

 ノルズが嘲る。

 

「くっ……」

 

 エリカは震える指先に魔道を乗せ、拘束を解く術を飛ばした。首環がカチリと音を立て、ノルズの首から外れる。

 ノルズはその金具をつまみ上げると、にやりと笑いながら投げ返した。

 

「さあ、今度はお前が嵌めな。自分の首にね」

 

「……わたしが……?」

 

「ああ、そうだ……。ウルズ、こいつが嵌めたら、施錠しな。いまのお前の魔道力なら、このエルフの魔道よりも上だろう。絶対に外せない」

 

「わかったわ」

 

 エリカの心臓が跳ねる。

 いまでも抵抗は絶望的だが、魔道封じを嵌めてしまったら、反撃の手段はなくなる。

 どうすれば……。

 だが、躊躇したのは一瞬だ。

 床を這っていたウーズが再びコゼの腹へ覆いかぶさろうとしているのに気がつき、慌てて首環を拾う。

 

「ま、待って。嵌める。嵌めるから──」

 

 悲鳴のように叫び、エリカは慌てて首環を拾い上げると、自分の首に押し嵌めた。

 その瞬間、淡い光が走り、全身の内側で魔道の流れが断ち切られる感覚が襲った。

 力が封じられたのを、嫌でも理解させられる。

 

「次はお前も服を脱ぎな。抵抗しないって証拠にね。そうすりゃ、命だけは取らないでおいてやるさ。とりあえず、コゼに治療術もかけてやる」

 

 ノルズの声が響く。

 

「ほ、本当ね?」

 

 コゼはほとんど虫の息だ。

 破けた肌からは、いまだに血が流れ続けている。

 

「ああ、約束するよ。命はとらない……。まだね」

 

「脱ぐわ……」

 

 エリカは巫女服に手をかける。

 

「その便利な魔道具も寄越しな。使い道がありそうだ」

 

 エリカは変身リングを外して、手の上に載せた。ノルズの手元の鞭──ウーズを鞭状にしたものが音もなく伸びて指輪をさらう。

 

「ほら、手が止まったよ」

 

 鞭状のウーズが翻り、エリカの腿を叩いた。布が裂け、熱い痛みが走る。

 

「ひぎいっ」

 

 思わず押さえた掌の下でもう一打──。スカートの裏から打ち上げられ、布が裂け、皮膚が割けた。

 打たれた手が裂けて、血が流れている。

 

「や、やめてぇ──」

 

 抗議より早く、横腹へしなる。

 

「んぎいっ」

 

 呼吸が詰まり、巫女服が裂けて血が噴き出した。

 

「ほら、ほら、早くしな。血だらけになっちまうよ」

 

 ノルズの放つ鞭が全身のあちこち飛ぶ。服が裂け、肌が破れて血が迸る。

 

「やめて──」

 

 エリカは悲鳴をあげた。

 だが、ノルズの身体の横から伸びる鞭状のウーズによる攻撃は止まらなかった。

 

「ひぎゃあ」

 

 エリカは悲鳴をあげた。

 次々にエリカの全身へ飛んできては、服と肌を容赦なく切り裂いていく。

 

「やめてえ、脱ぐわ──脱ぐから──」

 

 エリカは叫んで、慌てて服を脱いでいく。

 それにしても──。

 あの粘性体をここまで自在に変形させ、しかも固さまで操れるとは。ノルズの「魔獣遣い」としての力は想像以上だ。

 

「遅いよ──」

 

 さらに一撃が横腹を打ち抜いた。

 

「ぎゃあっ──」

 

 肌が裂け、鮮血が迸る。

 激痛に息が詰まる、それに耐えて、エリカは必死に服を脱ぎ捨てていく。

 だが、巫女服はあちこちに紐や留め具があり、脱ぐには手間がかかった。しかも、ノルズの鞭が邪魔をする。

 やっと下着姿になったときには、すでにエリカも血だらけになっていた。

 

「ほらほら、さっさと下着も取らないかい」

 

またしても腿に打撃──。

 

「ひいっ」

 

 布越しの痛みとは比べものにならない。肌に直撃した衝撃で、皮膚が切り裂かれ、赤い滴が肌と床に散った。

 

「い、いま、脱いでるじゃないのよ……」

 

 腰の両側に手を伸ばす。

 

「いまって、いつだい? いまってのは、すぐだろうが」

 

 ノルズが酷薄に笑い、鞭状のウーズがエリカの指を弾いた。

 

「ひうっ──やめてっ」

 

 思わず飛び上がる。打たれた指先が痺れて動かない。

 

「ほらっ、早くしな。脱がないと、いつまでも鞭が飛ぶよ」

 

 愉悦に満ちた声とともに、さらに鞭が迫る。

 歯を食い縛り、エリカは、改めて下着に手をかけた。

 その瞬間を狙ったかのように、股間めがけてウーズの鞭が襲う。

 

「いがああっ──」

 

 絶叫を洩らし、もんどり打って、下着を脱ぎかけた体勢のままひっくり返った。

 鞭先がクリピアスに当たったのだ。

 

 ノルズの嘲笑が響く。

 やっと全裸になった。

 すると、今度はウーズの鞭が突然に大きな薄い布状に形を変え、エリカの身体をすっぽりと包み込んできた。

 

「ひっ……やめてぇ──」

 

 全身を冷たい粘性体に覆われる気色悪さに、エリカは悲鳴をあげる。

 だが、逃れようがない。

 首から下のすべてを粘液が覆ってしまった。

 

「ほら、遊んでやるよ、しっかりと悶え狂いな」

 

ノルズの声が冷たく響く。

 

「いやあっ──あああっ」

 

 エリカは悲鳴をあげた。

 膣の内側に入り込んだウーズが、小刻みに震えだしたのだ。全身がウーズによって愛撫される。

 快感が刻まれていき、抗うほどに込み上がってくる。

 

 すると、急に股間に違和感が襲った。

 膣の内側でなにかが膨らんでいるのだ。

 これもウーズだ──。

 いつの間にか、股間の内部にウーズが侵入していて、それが張形状に変わったのだ。

 しかも、いきなり小刻みな振動を開始した。

 

「ひいいっ」

 

 エリカは声をあげてしまった。

 得体の知れない魔界生物に犯されるのは、血も凍るような恥辱であり、屈辱であったが、

 しかし、その一方でウーズの張形は、確実にエリカが感じるように刺激を加えてきて、どうしても込みあがる快感を我慢できなかったのだ。

 

「ひああ、あああ、ああっ」

 

 淫らな声が口から迸る。

 

「ははは、愉快な反応ね。……じゃあ、後ろはどうだい? こっちも試してやるさ」

 

 肛門部分に張り付いていた粘性物がお尻の中に入ってきた。抵抗のしようもない。次いで、お尻の中で張形状に変形して蠕動が始まる。

 

「あああっ──いやっ……」

 

 前後ふたつの穴を同時に責め立てられ、エリカの嬌声が部屋の中に迸る。

 

「へえ、なるほどねえ……、後ろも開発済みかい。調教の成果だねえ」

 

 ノルズが嗤う。

 口惜しさに歯噛みする。

 しかしエリカは甘い声をあげながら、粘性体の中で全身をのたうち回るしかなかった。

 

「さあて──。いつまでも遊んでるわけにはいかないね。ロウって男を捕らえる罠を仕掛けなきゃ。……ウルズ、行くよ。王都の城壁の外に跳躍しな、人のいない場所がいいね」

 

 ノルズの命令がウルズに飛ぶ。

 だが、いきなり王都の外に?

 魔道を封じる仕掛けがあちこちに設置してある王都から、しかも、魔道返しの埋められている城壁まで越えて、一気に跳躍するのは、並大抵の術ではない。

 魔瘴石により力を増幅されている気配だが、ウルズはそこまでの魔道遣いなのか──?

 

「わかった、ノルズ」

 

 その刹那、戸惑うエリカに腹を捻じるような感覚が走った。

 

「ひっ──なに……?」

 

 視界がぐるりと反転し、次に見たのは──冷たい風が吹きつける野外の光景だった。

 エリカの横には、いまだに血だらけのコゼが苦しそうに横たわっている。

 

「それにしても、お前らの主人って、何者なんだい?」

 

 ノルズの声に、ぞっとするような含みがあった。エリカはただ、冷たい風とともに背筋を冷やした。

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