【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「……おはようございます、ご主人様」
まどろみの縁で、柔らかいものが唇に触れた。
いつもの屋敷の寝室だ。うっすらと眼を開けると、顔に覆い被さっている女の頭越しに、天井近くの小さな天窓が見えた。
まだ外は暗いようだ。部屋の中にも夜の気配がうっすらと残っている。
唇を這う舌の感触に、軽く息が漏れた。いまも夢の続きのように甘く、けれど確かな熱を帯びている。
まだ夜明け前のはずのようだが、どうしてこんなに早いのかと思いながら、ゆっくりと目を開ける。
口づけをしているのはコゼだった。
頬にかかる黒髪が、かすかに湿っている。きっと、目覚めと同時に抱きしめてきたのだろう。
一郎は小さく笑みを浮かべ、まだ眠気の残る声で囁いた。
「おはよう、コゼ。ずいぶん早い挨拶だな」
闇の中で、コゼが嬉しそうに頷いた。
いまも夢の余韻に沈む一郎の口内へ、舌が差し入れられてくるのがわかる。
その舌が一郎の舌に絡み、唇ごと挟み上げるように吸いあげてきた。
この積極的な口づけも、甘えん坊のコゼらしくあり、また、夜明けを待たずに「朝の挨拶」をするのも、コゼにはよくあることだ。
そうやって挨拶の後に、一郎に抱かれるのを強請るのである。
「ロウ……。次はわたしだ……。目が覚めたならいいだろう?」
コゼが口を離すや、割り込むようにシャングリアが一郎に抱きつく。豊かな乳房が胸に乗り、その唇が一郎の唇に重なった。
どうやら、口づけによる挨拶は、コゼ、シャングリア、エリカの順らしい。
四人で重なり合って眠る日々のうちに、いつの間にか三人の女たちの間で決まりごとのように定まったのが、この「挨拶」の順番だ。
三人で誰が最初に口づけをするかを日替わりで決めているらしく、毎日かならず異なる順で口づけがくる。
ただ、その規則は不規則で、一郎にも覚えきれない。
いつもよりも、かなり早い刻限だが、いつもと同じ挨拶がまた始まった。
一郎は今度は、自らシャングリアの口内へ舌を差し入れた。
コゼもそうだったが、シャングリアも完全な素裸だ。
昨夜は、四人で遅くまで交合を重ね、三人の女たちはひとりずつ力尽きるように失神した。
三人が完全に意識を手放し、寝息を立てるのを見届けてから、一郎も、この寝台で三人の裸身に包まれて休んだので、一郎も裸だ。
もっとも、屋敷一階奥のこの寝室の寝台は特別製で、十人が同時に寝ても余るほどに広い。四人で休んでも、余裕は十分だ。
「あ、ああ……」
一郎がシャングリアの口の中に漂う桃色のもや──淫魔師の一郎にだけ映る快感の色──を余すことなく舐めまわすと、シャングリアが堪えきれずに声を洩らす。
「次はエリカだな」
しばらく口腔を愛撫してから、一郎はシャングリアの後ろで遠慮がちに待っているエルフの美女に声をかけた。
三人の中でいちばん感度がよく、ひとたび抱けばたやすく淫らに蕩けるくせに、エリカはなぜか自分から求めるのが少し苦手らしい。
いまも、ふたりが一郎と口づけするのを物欲しそうに、少し距離を置いて見守っていた。
「あっ、はい」
一郎に呼ばれると、エリカの顔がぱっと明るむ。
いそいそと裸身を近づけてきて、一郎の顔に頬を重ねた。
一郎は、エリカとも、たっぷりと口づけを愉しむ。
「さて、今日は、まずは第三神殿に行こう。スクルズとベルズがノルズをどう扱うかは知らんが、王軍に身柄を引き渡される前に、アスカとの関係は聞き出しておかないとな」
「挨拶」を終えると、一郎は寝そべったまま、座って一郎を取り囲む裸身の三人に告げた。
昨日、捕まえたノルズの身柄は、第三神殿のスクルズに預けてある。
三人の女が頷き、一郎はさらに続けた。
「……それが終われば、ギルドだ。一応は事件は解決した。ミランダに正式に報告だな……。果たして、クエストが成功扱いになるのかどうかわからないけどね」
すると、今度は三人が揃って怪訝な顔になる。
「クエストは成功だろう、ロウ……。騒動の張本人ノルズは捕らえた。スクルズ殿とベルズ殿、そしてウルズ殿の身体に植えつけられていた魔瘴石も取り除いた。ギルドのミランダもロウを絶賛していたじゃないか」
三人を代表するように、シャングリアが疑問を口にする。
「いや、事件は解決したということと、クエストの成功は別のことだろう」
一郎は言った。
事件はすでに解決している。
一連の黒幕が三人の幼馴染である見習い巫女ノルズであり、そのノルズが三巫女──ウルズ、ベルズ、スクルズ──に魔瘴石を埋め込み、脅迫していた事実については、すでに昨日のうちに冒険者ギルドのミランダへ報告してある。
それは、スクルズの魔瘴石を抜き、まだベルズを神殿の厠から連れ出す前の段階だった。
魔瘴石が肉体に癒着させられていた証拠として、取り出した魔瘴石も手渡していた。
同時に、ベルズにはまだ魔瘴石が残されたままで、多数の工作員が張りついていること、第一神殿のウルズも同じように埋められている可能性が高いこと、そして第一神殿では神官リーナスが不審な動きを見せていること──一郎たちが限られた時間で掴んだ情報も、同時に伝えていた。
あの時点では、十分な確証があったわけではないが、振り返ってみれば、一郎たちの独自調査はかなり正鵠を射ていたのだとわかる。
とにかく、その報を受けたミランダは、事態の大きさに驚き、すぐに第三神殿の女神殿グランに通報した。
グランもまた重大さに驚愕し、王都の混乱を避けるため、第一神殿と第二神殿、さらに王軍へも秘密裏に連絡を回すことにした。
もっとも、この段階では、一般の神官や巫女には伏せられ、事態を知っていたのは神殿長クラスに限られていたはずだ。
なにしろ、そのときにはまだベルズの魔瘴石は処置前であり、内偵が動いていることを知られれば、ベルズやウルズの体内の魔瘴石を王都内で爆破される可能性があったからだ。
だから、一郎としては、神殿や王軍が動くのは自分の手で処置を終えたあとにしてほしいと、ミランダに頼んでいた。
ミランダは王都ギルドの事実上の総帥としての立場と政治力を使い、ベルズたちの救済を一郎に託すよう各所を説得し、神殿と王軍が摘発に動くのを遅らせてくれたのだ。
実際、第二神殿の神殿長へ連絡が入ったのも、すでにベルズを一郎が連れ出した後のことだったらしい。
やがて、ベルズから魔瘴石を取り除いた直後に状況が動く。
ウルズがミランダに変身して屋敷を襲撃し、同時にエリカたちが連れ去られた。
一郎は、屋敷内でウルズから魔瘴石を抜いたのち、エリカを救いに動きながら、スクルズの移動術を使ってミランダに連絡を取り、三大神殿に潜り込んでいた工作員の一斉摘発を依頼した。
ノルズとの決戦と、神殿に潜んでいた部下たちの捕縛は、結局のところ同時に行われたのである。
とにかく、これにより、事件は概ね収束したのだ。
ノルズの身柄についてはスクルズによる魔道封じが施されていたため、第三神殿で預かられることになった。
訊問を経て、やがて王軍へと身柄を引き渡される──そこまでが、一郎がいま振り返っている状況だ。
いずれにしても、すべての真相は政治的な判断によって隠されることになるだろう。
また、スクルズを救出するために一郎たちが王軍を装ったことも、お咎めなしとなった。
そもそも、そんな「事実」は、最初から存在しなかったことにされるのだ。
ついでに、もうひとつの一郎の「処置」も、どうやらうまくいったようだ。
ノルズとともに、もうひとりの騒動の張本人──第一神殿のウルズ──には、筆頭巫女スクルズの名誉回復のために一役買ってもらった。
露出遊びをしていたのは、変身の魔道でスクルズに化けていたウルズだった──そういう筋書きにすることにしたのだ。
第三神殿長のグランは、「事実」について否定し、箝口令を敷いていたが、実際にはかなり噂が広まってしまっていたのである。
そのために、ミランダが王都じゅうに偽情報を流す段取りを引き受けてくれた。
世論操作は冒険者ギルドを統括する彼女の得意分野であり、ミランダは自信たっぷりに請け負ってくれた。
スクルズの醜聞を知る者は多くはなかったが、やがて王都の噂は「あれはウルズが変身して行った「遊び」だった」というところに落ち着くだろう。
悪いが、ウルズにはスクルズの“身代わり”になってもらう。
そして、すでに、ミランダの情報操作は動き出している。
王都の市民にとっては、三大神殿に王軍の手入れが入ったという事実よりも、第一神殿の筆頭巫女ウルズが実は「色狂い」だったという噂の方が、よほど大きな話題になっているらしい。
それは、夜になってミランダが届けてきた伝言の手紙で知ったことだ。
彼女によれば、市民の間では──スクルズはあくまでウルズを庇うために沈黙していた、最初の破廉恥事件も実はウルズの仕業──という結論に落ち着きつつあるという。
神殿と王軍で問題になった、スクルズが身に着けていた瘴気のこもった淫具についても、もはや問題にはならない。
市民はその存在を詳しくは知らないし、事件そのものが内密に処理された以上、神殿側と王軍の間でそれなりの辻褄合わせが行われるに違いない。
──まあ、それはもう、一郎の関心の外だった。
スクルズの代わりに「汚れた女」の烙印を押されることになったウルズには気の毒だが、そもそもノルズを神殿に引き入れた責任はウルズ自身にもある。
このくらいの“お仕置き”は、むしろ当然の報いといえるだろう。
いずれにしても、すべてはうまく収まった。
それにもかかわらず、一郎が「クエストの成功はまだわからない」と口にしたことで、三人は思わず怪訝な顔を見合わせた。
「だから、事件の解決と、クエスト解決が違うとはどういうことなのだ? 説明してくれ、ロウ」
シャングリアがなおも言う。
「だから忘れたのか、シャングリア? 俺たちのクエストは、王都に迫っていた危険を回避することじゃないぞ。依頼人は第三神殿長のグラン様であり、内容はスクルズの破廉恥事件の真相究明だ。だが、あれは、俺がベルズ様に強引にキスしたことでクエスト取消になった。そこから後は、クエストとして動いたわけじゃないぞ」
一郎が言うと、三人の表情に同時に気づきの色が走った。
「あっ、そういえば……」
「確かに、あのギルドの地下牢の中で、ミランダがそう騒いでたわね。でも、これがただ働きってことはないでしょう」
エリカとコゼがそれぞれに呟く。
そうなのだ──。
実のところ、そもそも、クエストは真相究明であり、しかも、秘密裏に動くことだった。
ところが、一郎はベルズに公然と口づけするわ、スクルズをさらうは、さらにベルズさえも連れ出している。
「救出」がクエスト内容ではないことを考えると、一郎にしかできないことだから動いたが、実は、依頼とは違うことになるのだ。
そして、ベルズとの口づけ騒動で、ミランダがクエスト中止を宣言した。
あの扱いはどうなるのだろう。
「まあ、交渉かな……。秘密裏に扱うことになるらしいから、少なくとも口止め料は渡すだろう。それを誰が払うのかはわからんけどね……」
一郎は小さく笑う。
だが、すぐに笑みを鎮めて、真剣な表情を三人に向ける。
「……ただ、幾ら支払われるかわからないけど、それで得たものは、ウルズに渡したい。どうだろう?」
一郎は三人を見る。
「ウルズ様か……」
「まあ、ご主人様が気に病む必要はないと思いますが、ご主人様がそうしたいのであれば、クエスト達成料を渡す事に問題はありません」
「だが、そもそも、あのウルズ殿を誰が面倒を看るかだな」
エリカ、コゼ、シャングリアが順番に応じる。
一郎は頷いた。
──ウルズ……。
実は彼女については、ちょっと困ったことになっていた。
屋敷を襲撃され、魔道で大暴れをされたことで、一郎はあのとき、無理やり魔瘴石を剥がすことにした。
その反動で、精神が壊れる可能性を承知しながらだ。
その結果、ウルズの心は毀れて崩れ落ち、いまは幼児のように心だけが退行してしまっていたのである。
仮説としては、癒着していた魔瘴石を本人の同意なしに強引に剥がしたことで、心の表層部分が完全に毀れてしまい、人としての無垢な部分の中心だけが残ったのではないかと思う。
実際になにが起こったかはわからないのだが、結果として、いまのウルズは完全に「赤ん坊」状態だ。
言葉を理解できるのかどうかもわからないし、自分から何かを話すこともできない。
まるで、美貌の大人の身体に幼女の魂を宿したような──そんな奇妙な状態なのである。
時間が経てば、いずれ少しずつ戻るのかもしれないが、一郎の目にも、もはやウルズが筆頭巫女の務めを果たせるようには思えなかった。
それどころか、人として生活するのも無理だ。
当面はどこかに引きこもって静養するしかないだろう。
ゆえに、一郎は彼女にスクルズの“代役”として醜聞を負わせることにしたのだ。
ともあれ、スクルズとベルズが責任をもってウルズの面倒を見るとは言ってくれている。一郎に責任はないとも……。
だが──せめて、世話をするために必要なお金の一部は負担したい。
それが一郎の率直な気持ちだ。
「ご主人様、ウルズのことは間違いなくご主人様に責任はありません。あれは自業自得です。それと、王都の危機を冒険者ギルドが事前に防いだというギルドとしても、これは大きな手柄になるはずです。きっと特別報酬も出ますよ」
コゼが明るい声で言った。
「そうだろうか?」
「そうです」
きっぱりと言い切るコゼに、一郎は小さく笑った。
彼女の楽天的な物言いが、妙に救いになることもある。
「それと、ウルズのことは、スクルズ殿とベルズ殿に相談することだ。ここでシルキーに頼んで、面倒を見るということもできないことはないしな」
シャングリアだ。
「まあな」
一郎も頷いた。
そのとき、エリカが空気を少しだけ曇らせるように口を開いた。
「……それにしても、ノルズのことは気になります。あのアスカ様は、今回のことをどのくらい把握しておられるのでしょうか……?」
その問いに、一郎も視線を落とした。
胸の奥に、同じ懸念があったからだ。
「そうだな。それがいちばんの問題かもしれん……。ノルズの精神は、ほとんど完全支配に近いほど制御してある。だから、今後はアスカに俺たちの不利になるようなことを知らせることはできないはずだ。だが……」
ただ、問題は、すでにアスカに、なにかを伝えている可能性だ。
もし一郎とエリカの居場所が知られてしまっているのなら、再び逃避行を余儀なくされるかもしれない。
昨日は細かく訊問できる状況ではなかったし、今日こそ、その真意を確かめなければならない。
アスカのことを「女奴隷」だと評した言葉も気にかかる。
“パリス”という男の名前のことはもっとわからない。
エリカが、そういう少年従者がアスカの近くにいたことはいたが、ほぼ面識はなく、記憶に残るものはないという。
「アスカという魔女のことだけじゃなく、冥王の名前をノルズが口走ったことも気になりますね」
コゼが口を挟む。
「そうだな」
一郎は頷いた。
ノルズが口にした“冥王”のことも、聞いてみなければならない。あれはいったい、どういう意味なのだろうか?
“冥王”──あの言葉は、まだ胸に残っている。
冥王とは、この世界では伝承の存在ではなく、実際にあった大きな災厄だ、
かつて人族と魔族が争った時代、人の世界を征服しようとした魔族の王のことらしい。そのとき、分裂していた人族は、ロムルスという英雄のもとに結束し、魔族軍を退け、冥王とその配下を異界へ封じた──という「歴史」だ。
知らぬ者のいない古い物語である。
ノルズの言葉はどういう意味なのか……。
「……どうなるかな……。この屋敷もハロンドール王都の冒険者生活も気に入っているんだがな」
一郎がぼそりと呟いた。
「とにかく、ノルズに問いただせばわかることだろう。淫魔術を刻んだのだから、真実を喋らせるのは簡単なはずだ……。それと、もし旅をすることになっても、それはそれで悪くない。もちろん、わたしもついていくぞ」
シャングリアが明るく口を挟んできた。
「王軍の女騎士様がか? そもそも、実家のモーリア家が怒るだろう」
一郎はシャングリアに笑みを向けた。
王都を離脱することになったとしても、もはやシャングリアがついて来ない可能性などないとわかっている。
ついてこないことを許すつもりもない。
あえて口に出したのは、戯れだ。
「もう諦めているだろう。わたしは、お転婆騎士で通っているしな」
シャングリアが白い歯を見せた。
「そうだな。まだ情報がないのに、心配しても仕方がないか……。じゃあ、挨拶の続きといくか……。エリカ、背中で腕を組め。淫魔術で離せないようにしてやる。俺の性器を舐めてくれ。お前たちを犯したまま寝たから、昨夜のまま汚れているぞ。舌で掃除するんだ」
一郎は言った。
わざと意地悪な物言いをするのは、これもまた身内だけの言葉遊びだ。
その証拠に言われたエリカは、嫌な表情を浮かべるどころか、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。
「は、はい」
エリカが腕を背中に回した。
一郎はすかさず、淫魔術でエリカの両手を拘束する。
支配している「性奴隷」に施す淫魔術の縛りは、縄や革紐で拘束する以上の絶対の緊縛だ。
これで、一郎が解除するまで、エリカの腕が自由になることはない。
「あっ、エリカだけずるいぞ。わたしもする──」
シャングリアが自ら両手を背中に回して不満そうに言った。一郎は苦笑しながら、シャングリアの両手も淫魔術で拘束する。
すぐに、エリカとシャングリアのふたりが左右から一郎の股間に顔を伏せ、舌を這わせ始めた。
「じゃあ、コゼは俺の身体を洗え。ただし、乳房でな。乳房を布代わりにして、俺の身体を擦りながら洗うんだ」
一郎は寝台の頭側に置かれた水差しを手に取り、自分の胸から腹にかけて水をこぼした。
そして、コゼについてもエリカとシャングリアと同じように後ろ手に拘束する。
「あん、わかりました、ご主人様……。では、洗いますね……」
コゼが真っ赤な顔になり、身体を押し倒して乳首を一郎の胸に押しつけた。
一郎はすかさず淫魔術で、コゼの乳房の感度を数倍にまで高める。
「んんんっ……」
コゼの身体が弓なりになり、その端正な鼻先から震えを帯びた溜息が洩れた。
「休むなよ、コゼ。もっと強く擦るんだ。エリカとシャングリアも続けろ」
一郎は今度は、エリカとシャングリアの舌を、それぞれのクリトリスの感覚と結びつける。
「あああっ……」
「はううっ……」
たちまち、ふたりの喉から歓喜の悲鳴が洩れた。
肉芽の感覚と舌の感覚を繋げられたことで、彼女たちにとっては、一郎の怒張を舐める行為が、そのままクリトリスを自らの性器に擦りつけるのと同じになったのだ。
今回の事件が終わったことで、いつの間にか一郎の淫魔師レベルは〈レベル75〉にまで上がっていた。
もはや、支配下の女たちの身体を操ることなど、自在そのものだ。
胸で一郎の肌を擦っているコゼとともに、三人から濃密な雌の香りが立ちのぼっていく。
それにしても……と思う。
淫魔師としてのジョブレベルのことだ。
そもそも、一郎の淫魔師のジョブレベルは、〈レベル55〉だった。初期値はわからないが、エリカを支配したときに、その数字だったのを覚えている。
次いで、ユグドラと愛し合い、淫魔師として能力が解放された感じになったとき〈レベル60〉になった。
その後、幾人もの女性を抱いたし、コゼも支配したりもしたが、そのときのレベルの変動はなかった。
変動がなかったのは、シャングリアやミランダを支配したときもだ。
一方で、屋敷妖精のシルキーに淫魔師の刻みをしたときには、〈レベル65〉になり、今回の四人の高位魔道遣いの女たちの支配に及ぶと一気に〈レベル75〉だ。
女を支配することで、レベルがあがるというのはわかってきたが、レベルが上昇するときと、しないときにはどんな違いがあるのだろう。
また、一郎は女を支配することで、支配される側の女性にも、「淫魔師の恩恵」というレベル上昇があることもわかってきた。
これもまた、今回が一番顕著だった。
魔道遣いのジョブレベル〈レベル35〉だったスクルズは〈レベル60〉に……。
ベルズの〈レベル25〉の魔道遣いレベルは〈レベル50〉にもなっている。
ノルズはまだ確認しておらず、ウルズは幼児退行状態なので、ジョブそのものが消滅していたが、少なくともスクルズとベルズについては、上昇度が大きい。
これでわかるのは、高位魔道遣いや魔族と、淫魔師の相性がいいのではないかという仮説だが、まあ、現段階では検証の材料に乏しく、推論の域を出るものではない。
一方で、三人の女たちによる一郎への奉仕は続いている。
三人の呼吸が重なり、寝室の空気がゆっくりと熱を帯びていた。
肌に触れる風すら、どこか甘く湿っていた。
一郎の目に映るのは、支配の印を宿した女たちの、陶然とした表情だ。
その姿を見つめながら、一郎はふと、自分に刻まれた力の意味を考えていた。
そのときだった──。
不意に、屋敷妖精のシルキーが出現した。
「旦那様、お客様です。スクルズ様が屋敷におみえです……。少し、慌てておられるようです」
「スクルズが?」
一郎は訝しんだ。
巫女の朝が早いことは知っているが、まだ夜明けにもなっていない。
他人の屋敷を訪ねるには、非常識な刻限である。
なんだろう──?
「ここに通してくれ」
少し考えてから、シルキーにそう告げた。
まあ、いいだろう。
スクルズには、もう自分の好色は知られているし、数日間、この屋敷で暮らしたので、いまさらだ。
一方で、一郎の言葉に、奉仕を続けていた三人の女たちがびくりと肩を震わせた。
「お前たちは、そのまま仕事を続けろ。これは命令だ」
一郎はほくそ笑みながら、静かながらも強い声でそう言った。
支配者である淫魔師の命令には逆らえない。
スクルズが訪れるというのに、卑猥な奉仕をやめることができなくなった三人が、それぞれにか細い抵抗の声を洩らした。
特にエリカは、泣き出しそうな声で息を震わせている。
だが、一郎はもう一度、同じ命令を繰り返した。
これで三人は完全に従うしかない。
やがて、寝室の扉が外から叩かれた。
「どうぞ」
一郎が応じると、扉が開き、屋敷妖精のシルキーに導かれて、巫女服のスクルズが部屋に入ってきた。
「こ、これは……」
シルキーはいつもどおりの無表情だったが、スクルズは部屋の中を見て絶句している。
無理もないか……。
寝台に横たわる一郎の裸身に、三人の裸の女が絡みついている。
ふたりが股間に、ひとりが胸に寄り添い、絡みながら身をくねらせているという、見る者の頬を染めさせる光景だった。
この屋敷にいた数日間は、淫らな姿も見せてくれたが、もともと敬虔な巫女だ。友人間の女同士の経験はあるが、男女の交わりなど、一郎との関係限定だ。
衝撃は大きかったのか、束の間硬直して、さらに頬を染めて、視線を逸らすように彷徨わせる。
「スクルズ、こちらのことは気にしないでください。それよりも、ご用件ですか?」
一郎はスクルズに視線を向ける。
恥じらう高位巫女の姿を見るのもまた、妙な愉しみだが、用事があるのは確かだろう。
移動術で訪れたのだろうが、用事がなければ、日の出前に他人の屋敷を訪問したりはしない。
それにしても、スクルズの訪問に三人娘に奉仕を強要するのは、我ながら鬼畜だと思う。
だが、どうにも歯止めが効かないのだ。
もしかすると、淫魔師としてのレベルが上がるにつれて、理性よりも支配欲の方が勝つようになっているのかもしれない。
まあ、自覚はあるが、抑える気はなかった。
また、スクルズを呼び捨てにするのは、成り行きだ。もう事件も保護も終わったのだから、スクルズのような王都大神殿の筆頭巫女ほどの女性を呼び捨てにするのは、礼儀知らずもいいところとは考えるが、スクルズ自身がそう強く望んだのと、なんとなくの成り行きだ。
スクルズ自身にも、立場の高さを一郎たちに感じさせない気安さがある。
「スクルズ?」
一郎は、まだ呆然と立ち尽くしている彼女に声をかけた。
スクルズがはっとして、慌てて姿勢を正す。
「そうでした……。その、申しわけありません、ロウ様……。ノルズが──いなくなってしまいました。しかも、ギルドから預かっていた証拠品扱いの変身の魔道具リングも一緒に……」
そう言って、スクルズは深く頭を下げた。
「いなくなった?」
一郎は眉をひそめた。
淫魔術の拘束命令で奉仕を中断できない三人も、行為を止めぬまま、驚いたように息を呑んだ。
「夜のあいだに姿を消しました。探しましたが、神殿には見当たりません。どうやって見張りをかいくぐったのか……」
スクルズは顔を伏せ、声を震わせた。
「えっ、追跡は?」
一郎は驚いた。
「……しています。でも、記憶している人物に好きなように変身できる“変身の指輪”を持ち出されたとなれば、追跡は容易ではありません。本当に、申し訳ありません……」
スクルズの謝罪に一郎は静かに嘆息した。
だが、疑念も浮かぶ。
ノルズはスクルズが逃亡防止の魔道拘束をしていたはずだ。それをどうやって逃げたというのだ。
そもそもノルズは、スクルズの神学校時代の友人である。しかも、百合の関係だったくらいの親密な関係だ。
だから、王軍に引き渡されて処刑されるくらいならと、スクルズが情に流されて逃がした可能性はないだろうか……?
目の前のスクルズにその気配はないが、ステータスは読めるが、嘘をついているかどうかまで、一郎に判断できるわけじゃない。
でも、まあいいか……。
逃げたものは、仕方がない。
一郎は、ノルズの逃亡について深く追求しないことに決めた。
ノルズは完全支配に近いほどに精神を縛ってある。
一郎の不利になるような行動をとることはありえない。
ただ、気になるのは、アスカへの情報漏れだ。
もしも一郎とエリカの居場所が知られていれば、再び逃避行ということになるかもしれない。
とはいえ、それも成り行きで対処するしかない。
「……わかりました、スクルズ。ノルズの件は、こちらで考えます。お前たち──そういうことらしい」
一郎は淫魔術の縛りを解いた。
破廉恥な行為を強要されていた三人が、糸の切れた人形のように脱力して座り込む。
「ロウ様、ノルズが逃亡したなら……もしや、アスカ様にここが──」
エリカが息を整えながら、心配そうに言った。
しかし、一郎は首を横に振り、ノルズが逃げたのは処刑を恐れたからであって、自分を裏切ることはないと断言した。
エリカだけでなく、ほかのふたりも不審な顔をしたが、一郎がもう一度「問題はない」と強い口調で告げると、それ以上は誰も何も言わなかった。
「とりあえず、状況はわかりました。スクルズ、もういいですよ」
一郎が言うと、スクルズは顔を赤らめ、もじもじと落ち着かない仕草を見せた。
なにか言いたいことがあるらしい。
一郎は首を傾げた。
「どうかしましたか、スクルズ?」
「そ、そのう……。そのですね、ロウ様……。つ、つまり……わ、わたしとしては、ノルズを逃がしてしまったことを大変申し訳なく思っております……。やはり、ば、罰を受けるべきかと……」
スクルズが真っ赤な顔で、おずおずと告げた。
一郎は思わず眉を上げた。どうやら、彼女は“罰を受けたい”らしい。
ベルズもそうだし、スクルズもそうなのだが、彼女たちへの淫魔術の縛りは解除もしてないが、強化もしていない。
少なくとも、心を縛る支配は一切やってない。
だから、この申し出は、正真正銘、スクルズ自身の意思によるものだ。
「えっ、罰だと?」
シャングリアが目を丸くした。
「はあ? なにこの巫女様。ノルズを逃がしたうえに、ご主人様のお情けまでもらいたいの?」
コゼも呆れたように口を挟む。
一郎は苦笑した。
「やめなさいよ、コゼ。失礼よ……」
エリカがたしなめたが、ちらりとスクルズに視線を向けている。どことなく不審そうな表情だ。
それを見ながら、一郎はにやりとした。
最初に会ったときから感じていたことなのだが──このスクルズ、意外に……いや、かなり好色だ。
外見は清楚で、誰もが敬う筆頭巫女だというのに、内側には熱のようなものが隠れている。
「なるほど、それもそうですね。責任を果たせなかった巫女様には罰が必要でしょう。だったら──すぐに服を脱いでもらいましょうか。そこでどうぞ」
「すぐ……? あっ、ここで、いま? いえ……は、はい。も、もちろん、すぐに……」
スクルズは一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに破顔した。
その笑みには、奇妙な安堵と、どこか嬉しさが混じっている。
一郎はつい笑ってしまった。
「俺たちの秘密を知っているノルズを逃がした無能の巫女様には、まずは俺の足の指でも舐めてもらいましょう。素っ裸になって、寝台に上がってくるんです。……みんなも再開だ」
一郎は軽く笑った。
第三神殿の筆頭巫女に、自分の足の指を舐めさせる。
考えるだけで、鬼畜な愉悦が背を走る。
想像するほどに、一郎の昂ぶりはさらに熱を帯びた。
「は、はい……」
スクルズは迷いのない声で答え、その場で巫女服を脱ぎはじめた。
背後のシルキーが当然のように服を受け取り、静かに片付けていく。
一方で、そのあいだ、三人娘は奉仕を再開した。
淫魔術による強制はもうない。
だが、不思議なことに、さっきよりも熱がこもっている気がした。
「シルキーはスクルズの服を片付けたら、いつもの調教用の媚薬の壺を持って来い。ディルド付きの貞操帯もな──スクルズ、今日は少しつらい責めになるぞ。でも、仕方ないな。罰だからな」
「は、はい。ロウ殿の気の済むようにおなぶりください。どうか、よろしくお願いします……。でも、ちなみに……どんな罰を……?」
すでに最後の一枚になっていたスクルズが、その布を腰からおろしながら訊ねていた。
「そうだな。奉仕のあとで、まずは三人と一緒にスクルズを犯す。そして、スクルズには、俺の精を股間に溢れさせたまま、今日一日、貞操帯をしてもらう。ディルドに強い発情剤を塗ってね。用便もできないぞ。ずっと我慢して、一日神殿で務めをしろ。終わったら、外してやるから、夜に来い」
「ああ、酷い罰ですわ。でも仕方ありませんね。罰ですもの」
スクルズが顔をしかめながら言った。
だが、その顔には──期待するような、妖しい笑みが浮かんでいた。
一郎はそれを見て、ふっとほくそ笑んだ。