【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
一郎の目の前から、女たちがさっと散っていく。
エリカは小弓、シャングリアは剣、コゼは腰の二本の短剣のうち一本を左手に抜いた。
スクルズは瞬時に姿を掻き消し、離れた地点に現れる。移動術だ。
「手筈通りよ。シャングリア、コゼ、頼むわよ」
エリカが弓を構えたまま声をかける。
「任せろ──」
シャングリアが剣を振りかざし、スクルズへ一直線に駆ける。
コゼは別角度から走る。ふたりとも呆れるほど速い。まずはスクルズを切り離す算段だろう。
一方でスクルズは、にこにこと微笑んだままだ。
「負けませんわ、皆さん。わたしもロウ様のご褒美が欲しいですから。連携の練習相手は、その後でお相手します」
スクルズが軽く手を上げる。
直後、凄烈な暴風が巻き起こり、周囲一帯が竜巻に包まれた。土煙が立ちのぼり、中心のスクルズは視界から消える。
「くわっ」
シャングリアがたじろいで速度を落とす。吸い込む回転に抗うよう、足を踏ん張って巻き込みを避ける動きへと切り替えた。
「落ちついて、みんな。防護魔道よ──攻撃を目的にした術じゃないわ」
エリカが拳大の火炎玉を十数個、身体の周りに浮かせる。
散弾のように火球が竜巻へ触れ、回転に絡め取られて内側へ運ばれていく。
竜巻は外気を吸い込み続ける。風で消えない火炎玉は、その流れに乗って中心へ届くはずだ。
突然、竜巻だけが霧散した。
土煙は残り、スクルズの姿は見えない。
「なにっ」
「どこ?」
シャングリアが剣を構え、エリカが弓を引き絞ったまま周囲を探る。
「上よ──」
コゼが声を上げ、右手でなにか小さなものを弾いた。
シャングリアの頭上で微かな光が走るが、コゼの投げたなにかが当たり、光は拡散して消える。
魔道紋を割ったのだと思うが、起きたことのすべては読み切れない。
「魔道紋を消しましたのね。惜しいですわ。もう少しでしたのに……」
声に顔を上げる。
遥か上空、頭を下にしたスクルズが落下している。竜巻の中心から上へ転移していたのだ。
地面に叩きつけられる寸前、スクルズの輪郭がふっと消える。再転移だ。
「すごい……」
一郎は思わず声を漏らす。
縦横無尽の移動術──。やはり、スクルズは途轍もない魔道遣いだ。
「そこね──」
エリカが矢を空へ放つ。
なにもない空間に矢が触れ、ぱんと弾けた。さきほどスクルズが消えた位置の近くに、再びスクルズが顕れる。
術の発動前を狙って、コゼとエリカが妨害を入れているのだろう。そうとしか思えない。
「きゃああああ」
どさり。
消えた位置から再出現したスクルズが体勢を崩し、そのまま地面に転がる。
「そこだ──」
遮二無二追っていたシャングリアが踏み込み、剣を振り下ろす。
倒れているはずのスクルズが、にっこりと微笑んだのが一郎には見えた。
「降参しろ、スクルズ──」
シャングリアの刃が落ちる。
「いいえ、しませんわ」
次の瞬間、スクルズの姿が消えた。
シャングリアの剣が空を切り、地面の石に当たって火花が散った。
スクルズが現れたのは、シャングリアの背後だ。
「ぐあああっ」
至近からの電撃に打たれ、シャングリアの身体が弾かれる。
この距離では、エリカやコゼの妨害はさすがに間に合わない。
「シャングリアは脱落だ」
一郎は声を張った。
「くそうっ」
幸い、致命の一撃ではない。
シャングリアはすぐ起き上がり、その場に胡坐をかいて肩で息をつく。
「あんたねえ、大魔道師らしく大技で来なさいよ──さっきから、ちょこまか、ちょこまかと──」
コゼが全力疾走のまま、指先から小さな
遠間からはエリカの矢。
スクルズが手を上げた瞬間、エリカの矢は目の前で急に減速し、そのまま力なく落ちた。
同時に、ぱらぱらと小石が散る音──。
スクルズによる力場の操作か──。
コゼの飛礫も同様に見えない力場に捕まって地へ吸い込まれた。
「大技は何度も連発できませんのよ。それに、わたしは攻撃魔道は得手ではありませんの。ひとたび放てば隙が生じますでしょう。そこを狙っておられるのでしょうね。移動術も、短距離なら魔力の消費は軽いのですわ。ご存じでした?」
「知っているわよ──」
コゼが懐へ飛び込む。
スクルズは魔道を構えず、ふっと掻き消えた。
“コゼ
…………
直接攻撃力:300(短剣、魔女殺し)
…………”
魔女殺し──?
一郎の魔眼に、コゼの携行武器が浮かぶ。
また、コゼが右手に構える短剣に加え、左手に白い拳大の玉を持っていることに気がついた。
スクルズが消えるのと同時に、コゼがそれを投げつけた。
白玉は、転移したスクルズと同じ方向へ消える。
いまのが、それか……。
「うわっ」
エリカの声──。
片膝をついたスクルズが、エリカの目の前へ出現する。
すでに術を解き放つ構えだ。
「ちっ」
エリカは弓ではなく矢を逆手に取った。
「きゃああ」
その刹那、スクルズの背へ白玉が当たり、ぱっと液体がはじけた。コゼの投擲だ。
スクルズの表情が揺れる。
「こ、これは……魔力を一時的に拡散させる液薬……」
我に返り、スクルズは濡れた上衣を慌てて脱ごうとする。魔力を散らす“魔女殺し”か──。
それより早く、エリカの矢先がスクルズの喉元に触れた。
「ま、参りました……」
スクルズは両手を上げた。
「スクルズ、負けだ」
一郎は声をかけた。
「あとは、あんたね──」
雄叫びが走る。コゼだ。
猛然とエリカへ突っ込んでいく。
「望むところよ──」
エリカが弓を放つ。
きんと音がし、コゼが短剣で矢を弾いた。
すでに間合いは半分以下だ。
「ちっ」
エリカの二射目──。
コゼはそれも弾き、距離はさらに詰まる。
エリカが弓を捨てて、剣を抜いた。
ふたりの間がほとんどなくなる。
「うりゃああ」
先に踏み込んだのはエリカ。横薙ぎの刃がコゼの胴を払う。
コゼは身を回して短剣で受け、その勢いを殺しきらず横へ跳んで距離を切った。
だが、次の瞬間、エリカが片膝を地につく。
「くっ、しまった……」
エリカの首筋に小さな針が刺さっている。
毒針だ。
そして、弛緩剤だ。
一瞬だけだが、魔眼に直前のコゼのステータスを見ることができたのだ。
“毒針(弛緩剤)”──とあった。
四人の女傑たちの模擬戦だったが、一郎としても、自分の魔眼の能力を確認できた。
刹那とはいえ、コゼほどの猛者の手の内がわかるのであれば、やりようによっては、彼女たちの戦闘で一郎も援護できるかもしれない──そう思った。
「まだよ──」
エリカはすぐに針を抜こうと手を伸ばしたが、指先は首に届かず、中途で力が抜けてだらりと落ちた。
「はい、おしまい。さっき言ったでしょ、エリカ。投げ刃も投げ飛礫もアサシンの得意技よ。投げ針もね」
コゼがけらけら笑い、離れた位置からもう一本、細針を跳ばす。
「やられたわ……」
二本目が首に刺さり、エリカは口惜しげに崩れ落ちた。
「コゼの勝ちだな……。おめでとう、来いよ」
一郎が立ち上がり、腕を広げる。
「やったね」
コゼが一郎に走り込み、その勢いのまま胸へ飛び込んできた。
一郎は目の前に薄い粘性体の膜を張り、ふわりと受け止める。
そして、網のようにすくい上げると、膜はすぐに消え、両手首だけがやわらかく束ねられた。
「……うわっ、なんですか、これ?」
コゼは目をぱちぱちさせている。一郎を抱きしめるつもりが、逆に捕まったのだ。
「コゼ、俺の技も悪くないだろう? 勝者へのご褒美だ……」
「うん……可愛がってくださいね、ご主人様」
一郎は胡坐になり、コゼを膝へ乗せて向かい合わせに座らせた。
コゼの両脚で一郎の胴体を挟むようにさせる対面座位だ。また、コゼの両手首は身体の前で粘性体で手首を縛っている。
「勝者の特権だしな」
手に触れると、肌の温度が意外なほど冷たい。
戦いの最中に張り詰めていた身体が、まだ解けきっていないのだとわかる。
指先で肩口から鎖骨をゆっくりとなぞると、硬さが少しずつ溶け、呼吸が深くなる。
「……んん。ご主人様の手、あったかいです……」
コゼが胸に頬を寄せてきて、猫のように何度か擦りつけ、小さく喉を鳴らした。
髪には焚き火の匂いが残っていて、汗はうっすら甘い。
粘性体でコゼの身体をくるむようにして、ぎゅっと締めつける。
一郎とコゼが完全に密着していく。
コゼの腕の鼓動が、さっきより穏やかになっていくのがわかる。
「さっきまで、随分と冷えていたが。もう、いまは俺の温度だな」
「はい……撫でられると、身体が溶けるみたいに気持ちよくなります……」
ひと撫で、ひと呼吸。手のひらで肩甲骨のふちを確かめるたび、緊張の筋がほどけていく。
戦場のあんなにコゼは鋭く怖いが、一郎の抱かれるときのコゼは心の底から甘えてくる。
それが、とても愛おしく思う。
「約束どおりに今夜はコゼが主役だ……。悪いが、みんなは先に食べていてくれ」
一郎が声をかけると、焚き火の向こうでシャングリアが肩をすくめ、スクルズが微笑し、エリカが小さく頷いた。
「まあ、仕方ないか……」
「コゼさん、今日は見事でした」
「隠し技にしてやられたのは認めるわ」
ふたりでいる輪の中だけ、時間がゆっくりになる。
「ご主人様……大好きです」
「俺の大好きだよ。これからも、俺を守ってくれ」
「はいっ」
コゼが顔を上げ、嬉しそうに笑う。
一郎は、手首を束ねていた粘性体の輪を解く。物質は切れず、細い紐が残ったままだ。距離を取れば伸びるだけで繋がりは切れない。
念じるだけで紐がぴんと張り、胸の前で揃っていた両手首を背へ引っ張って運ぶ。紐は肌を滑り、肩越しに後ろへ導かれる。背に回ったところでふわりと帯に広がり、背の中央で手首をそろえて包み込む。同時に薄膜を伸ばして一郎の背へ吸い付け、抱く形のまま固定した。
「……ご主人様、口づけ、欲しいです」
コゼが熱のこもった視線で顔を上に向ける。
一郎は視線を絡めたまま、唇を浅く触れさせる。二度、三度。四度目は深く合わせ、角度と圧をわずかに変える。触れて離れ、また触れるたび、膝の締めが強くなる。
「……ん、もっと」
望みに従い、呼吸の合図に合わせて深さを変える。間合いを半歩ずらし、上唇の山、下唇の縁をゆっくり撫でる。喉がひとつ鳴り、腰の力が抜け、体温が上がっていく。
口づけを重ねながら、コゼの半ズボンの留め具に意識を留める。
粘性体を薄く帯にして走らせて、半ズボンの前を緩ませた。
次いで、片脚を抱えて下着ごと片脚だけをするりと導いていく。最後はコゼが自分で足先を抜いた。
すぐに、一郎も一度胡坐を解き、同じようにズボンと下着を片側だけ抜いて怒張を露出させた。
再び向かい合わせに腰を据えた。
ふたりを包む粘性体が密着を深め直し、余計な隙間を消していく。
「ああ……」
やっと口づけを終わらせる。
顔を見ればわかる。
すでに、コゼができあがっていた。
手のひらで太腿の内側から付け根へと確かめる。指先に、熱とねっとりとなっている蜜の潤いがやわらかく触れる。
「あんっ」
コゼの身体がびくんと揺れる。
……準備は完全にできあがっていた。
「いくぞ、コゼ……」
一郎はコゼの腰を抱え込んだ。
粘性体が背で束ねた手首を支点に、胴と胴を近づける角度をつくる。
粘性体と腕で支えて腰を浮かせ、コゼの股間に、ほんの少しだけ怒張の先端を当てた。
コゼがぶるりと身体を震わせ、前腕ごと抱きつくように一郎の胴へ密着する一郎を抱き締める手にぎゅっと力を加える。
「ああ、ご主人様、いっぱい、いっぱい愛してください……。コゼは、ご主人様に会って幸せになれました。もっともっと早くご主人様に会いたかったです。そうしたら、もっと早く幸せになれたのに──」
コゼが悶えながらささやくように言った。
「また、思い出したのか、コゼ……。前にも言ったはずだぞ。コゼの人生は俺たちと出逢ったところから始まったんだ……」
一郎は手を緩めて、すとんと滑り落とすようにコゼの腰を怒張に沈めた。
「んふううっ、あああああっ」
コゼが鼻の奥から崩れ落ちるような溜息を放って、腰を中心に半裸の身体を打ち震わせた。
「……コゼは、あの山の中の温泉で初めてを捧げ、俺に愛され、エリカという仲間を作り、シャングリア、そしてスクルズも……。それ以外の人生なんてないぞ。それよりも前のことなんてな」
対面で抱き合ったまま、ゆっくりと律動を始める。
やがて少しずつ速めて、腰の律動を刻んでいく。
「あっ、ああっ、き、気持ちいいです──。ああっ」
コゼが感極まった声をあげた。
何度も口にするように、おそらくコゼはいまは幸せなのだろう。
その感情は十分過ぎるほどに伝わってくる。
だが同時に、心の奥底に潜む恐怖の気配もわかる。
幸福が大きいぶん、昔の記憶が呼び起こされて身を竦ませるのだ。
わかりやすく甘えてくるのは、その裏返しだ。
依存といえば、その通りだが、コゼの過去を考えれば仕方がないと思う。
できることなら、そんな奥底の嫌な記憶は全部、消してやりたい。
心の底から嫌な男たちの性処理用の女として扱われ、したくもない暗殺を奴隷の首輪に強要されてさせられていた──そんな過去など、消滅させてやりたい。
「ああ、ああ……いい、気持ち……いきます……いきます、ご主人様……」
「まだだ。我慢しろ」
一郎はコゼの腰を下から支えるようにした向かい合わせで律動を続けたまま、上衣の内側に薄い粘性体をするりと忍び込ませた。
布と肌の隙間を満たし、一郎の手のかたちに変わった膜が、コゼの小ぶりの胸をやわらかく包む。温度と重み、指先の間隔まで、一郎の手と同じ精度にしてやる。
「ひゃああっ」
またもやコゼがぶるぶると全身を震わせた。
本来であれば、対面座位では胸を責めるのは難しいのだが、粘性体を使えば、こうやって、腕を四本あるかのように愛撫をすることもできるのだと悟った。
しかも、粘性体越しではあるが、一郎が念じることで、実際に自分の手で触っているかのように、粘性体で触れた熱と感触が一郎に伝わってくる。
「ああっ、も、もう無理です──。いくうっ、いっちゃいます──いぐううっ」
「わかった──いけっ」
一郎は股間の律動と、粘性体の「手」による胸の愛撫を激しくした。
「ああ、ご主人様ああ──」
すぐにコゼは快感を飛翔させていった。
一郎は、そのコゼの絶頂に合わせて精を放った。
激しく膣が締まり、コゼは一郎にしがみつきながら、全身を突っ張らせる。
しばらくのあいだ、コゼはがくがくと身体を痙攣させたようにして、全身を突っ張らせていたが、しばらくしてがっくりと脱力した。
一郎はコゼの股間から怒張を抜くことなく、一郎に向かってぴったりとコゼを密着させた。
さらに、離れられなくなるように、粘性体の膜を出して、ぴったりとふたりの身体を包ませる。
「さあ、食事にするか。コゼ……。勝者のご褒美だ。コゼの食事は俺が食べさせてやるぞ」
片脚だけ外していた衣服は、そのまま足先から抜き落とし、地面に置いてきた。
また、ふたりの腰を包む粘性体には色を加え、透明さを消して、外からは薄い幕しか見えないようにする。
だが、内側の結びつきは解かない。一郎の男根は勃起させたまま、両手と両脚で一郎の胴体にしがみつくような体勢のコゼの股間に挿入されたままである。
一郎はコゼを密着させたまま、腰の下から抱え上げて焚き火の方へ歩いていく。
粘性体がふたりをぴたりと包んでいるので、力を込めなくてもコゼは落ちない。
「ひんっ、んふっ、あふうっ……ご主人様、ああ……こ、これ、ききます──」
歩みを進めるたびに、挿入している一郎の怒張がコゼの中で揺れる。
コゼは一郎の腕の中で小さく身を震わせる。
いつの間にか夜はすっかり落ちていた。焚き火の明かりが、エリカとシャングリアとスクルズの頬を照らし、揺れる橙が美貌の輪郭をなぞっている。
「わっ、ロウ様」
「ロウ──」
「ロウ様──」
ふたりでやって来た一郎たちに、エリカとシャングリアとスクルズが目を丸くした。
「じゃあ、美味しそうなスクルズの料理をもらおうかな……。だが、最初は口移しがいいかな……。誰かご馳走してくれるんだ?」
一郎が軽口を言うと、三人の美しい女傑が顔を真っ赤にし、競うようにさじでシチューを自分の口に含む。
そして、一斉に一郎の座る場所へ寄って口を寄せてきた。
まだまだ、愉しい夜は始まったばかりだ。