※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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147 漆黒の封印書

「……行こうか、エリカ」

 

「はい……」

 

 一郎が静かに告げると、エリカは肩を小さく震わせた。

 シルキーを含めて五人で屋敷の裏庭を抜ける。

 屋敷の敷地内とはいえ、夜気を避けるため三人にはガウンを羽織らせている。

 ただし、エリカは懲罰受けが待っているので、後手縛りのままガウンを被せた。さらに、首環に鎖をつけて、一郎はそれを引いているという格好だ。

 夜気が肌にまとわりつく。虫の声だけがかすかに響き、草の露が足もとを濡らした。

 

 やがて一行の前に、月光を受けて鈍く光る石造りの建物が見えてきた。

 それが霊廟──そう呼ばれてはいるが、実のところ墓ではない。

 かつてこの屋敷の主が、珍しい道具や書物を保管するために建てた私的な納屋である。

 外壁は蔦に覆われてはいるものの、石肌はまだ新しく、丁寧に手入れされているのがわかる。

 

 屋敷妖精のシルキーが扉に手をかざすと、静かな音を立てて開いた。

 中は、木と革の混じった柔らかな香りに、ほのかに焚き込めた香の気配が混じっていた。

 

「……思ったより、きれいですね」

 

 エリカが小さく呟くのが聞こえた。

 一郎とシルキーは何度も入っているが、そういえば、エリカ、コゼ、シャングリアにとって、この霊廟に入るのは初めてだ。

 外観とは異なり、建物内には明るく整理された空間が広がっていた。整然と並んだ棚は磨かれ、光沢を帯びた金属や革が月光を受けて静かに輝いていた。

 

「へえ、なんだか拍子抜け。もっと怪しい場所を想像してたわ」

 

 コゼが肩をすくめる。

 

「整理が行き届いているな。まるで展示室のようだ。埃ひとつない」

 

 シャングリアも感心したように周囲を見回している。

 

「お褒めにあずかり光栄でございます。清掃は毎日しておりますので」

 

 シルキーが控えめに微笑んだ。

 さらに、内部に足を踏み入れると、静謐な空気が肌を撫でた。

 壁一面に棚が張り巡らされ、淫具や艶本が種類ごとにきちんと分類されている。

 確かに、どの棚も磨かれ、どの器具も新品同様に光を放っていた。

 

「この辺りが、浣腸用の責め具が集められている棚でございます」

 

 シルキーが奥の一画を指し示した。

 

「……ああ……やっぱり、本当にするんですよね……」

 

 エリカが半ば諦めたようにため息をつく。

 

「観念するのは、いい心掛けよ、エリカ」

 

 コゼが笑う。

 

「うるさいわねえ。あんたのときには容赦なく仕返ししてあげるから」

 

 エリカが小声で言い返した。

 

「いい勝負だったな。紙一重だった」

 

 シャングリアも笑って口を挟む。

 

「いや、あれは公平じゃないわよ。わたしが最初にくすぐられるなんて……」

 

 エリカがむっとして、一郎に向かって唇を尖らせる。

 

「しょうがないわよ。一番奴隷様……。それよりも、準備しましょうね」

 

 コゼがエリカのガウンに手を伸ばして、腰帯をさっと解いて、ガウンをその場に落としてしまう。

 

「ちょ、ちょっとなにするのよ──」

 

 ガウンの下は当然に、後手縛りの裸身だ。

 隠す手段のないエリカが膝を曲げるようにして裸身を隠すようにしながら悲鳴をあげた。

 一郎はそんな三人のやりとりに笑みを浮かべながら、棚へと視線を移す。

 確かに、そこにはさまざまな形状の浣腸器が整然と並んでいる。

 シリンダー式のものだけでもいくつもあり、一郎の元の世界で“イルリガートル”や“エネマシリンジ”と呼ばれていた器具に酷似したものもあった。

 隣の棚には栓状の器具や管状の留め具などが整然と並び、淡く光を返している。

 

「これは、なんだ?」

 

 一郎はその中のひとつ、肛門栓だと思うものを手に取った。

 先端がしずく形にふくらみ、中央がくびれて根元が円盤状に広がっている。

 そこに小さな房尾が取りつけられ、まるで尻尾のように揺れていた。

 軽く力をこめた瞬間、それがぶるぶると震え出す。

 

「魔道紋の刻まれております肛門栓でございます。内部を締めつければ、肛門内の部分だけでなく、尻尾も揺れる構造でございます」

 

「なるほど……。排泄を堪えようと尻を締めると、振動が返り、さらに尻尾が動く仕掛けか。面白いな。これも試してみるか、エリカ」

 

「……もう、なんでもします。お好きになさってください」

 

 エリカが嘆息した。

 

「だったら、いっそ、全部を片っ端から試してみましょうよ、ご主人様。これ幾つあるんですか」

 

 コゼがわざとらしく言う。

 

「ふざけないでよ。全部、試すなら、交代交代よ──」

 エリカが赤い顔で睨む。

 

「だって、負けたのは、あんたじゃないのよ」

 

 コゼがけらけらと笑う。

 

「まあまあ……。浣腸遊びなんて一回だけだ。でも、ほかのものは試してもいいかもな。そういえば、折角の蒐集品なのに試したことなんてないしな」

 

 一郎も言った。

 

「じゃあ、試してみましょうよ。エリカが全部受けますから」

 

 コゼが一郎に阿るように言う。

 

「全部はいやよ──」

 

 エリカが真っ赤な顔をして怒鳴った。

 そのとき、一郎はふと、浣腸器の棚の隣にある異様な空間に気づいた。

 他の棚は物で埋め尽くされているのに、そこだけは一冊の本しか置かれていない。

 そのために丸々一段を使っているのだ。

 それだけで、前の主人にとってどれほど特別なものだったのかがわかる。

 

 書籍の装丁は漆黒だ。表題はない。

 一郎は手に取り、何気なく開こうとした。

 だが──開かない。

 

「なんだ、これ……? 開かないぞ」

 

 一郎は力をこめながら言った。

 鍵が掛かっているわけでもないのに、まるで見えない力に封じられているかのようだった。

 

「ああ、それは……。わたくしも不思議に思っておりました。なにか不思議な力が加えられているようでございますが……」

 

 シルキーが答える。

 

「魔道で封じられた書なのか、ロウ?」

 

 シャングリアが一郎の手元に顔を寄せた。

 そのとき、エリカが身体を寄せて書籍をじっと覗いてきた。

 

「なにかわかるか、エリカ?」

 

「魔道……ではない気がします。でも、非常に強い力で封印されているのは、確かだと思います……」

 

「魔道じゃない力で封印?」

 

 首を傾げかけたが、すぐにはっとした。

 この不思議な書物にかけられている力の正体がわかったのだ。

 

「淫気だ。これは、淫魔力で封印されている」

 

 一郎は低くつぶやいた。

 目の前の漆黒の本から、確かに自分の内に満ちる“淫魔師の波動”と同じ震えを感じ取る。

 間違いない──。

 

「えっ、淫気?」

 

「本当か?」

 

 コゼとシャングリアは怪訝な口調で言った。

 

「多分な」

 

 一郎は頷く。

 淫魔師として覚醒した一郎は、淫気──すなわち淫魔力を源に、女体を支配し、心や身体を自在に操る力を得ている。

 最初は不慣れだったが、いまでは次第にそれを思うままに扱えるようになっている。

 淫気をうまく駆使すれば、女を操るだけでなく、この世界の魔道遣いと同様に、さまざまな技を繰り出すことができるのだ。

 この書物は、その淫気の力によって封印されたものに違いない。

 

「淫気ですか……? だ、だったら、ロウ様の力で封印を解けるのでは? すぐにやってみませんか? いえ、やるべきです──」

 

 エリカが懸命な感じで言い募った。

 一郎はその必死な様子に、思わず苦笑する。

 淫気で封印された本など、得体の知れない代物に決まっている。

 しかも、嗜虐趣味の前の屋敷主が、夥しい淫具の蒐集の中で最も大切にしていた一冊だ。

 開かずとも内容は察しがつく。

 おそらく、艶本──それも嗜虐の極みに至る書に決まっている。

 いつものエリカなら、そんな書物に自分から関心を示すような態度をとることはない。

 

 それにもかかわらず、いまエリカが艶本に対して積極的な態度をとっているのは、思わぬ品物を見つけたことで一郎の興味がそれに向きそうなことを悟り、懸命に一郎の関心を自分への浣腸責めからそちらへ逸らそうとしているのだろう。

 その魂胆は、あまりにも見え見えだった。

 

 もっとも、そんなエリカがかわいらしくて、たまらなく愛おしくもあった。

 一郎はエリカの胸に片手を伸ばし、ぎゅっと乳房を鷲掴みにした。

 

「わっ、あんっ、んんっ……」

 

 エリカが真っ赤な顔で身体をのけぞらせる。

 この霊廟に集まっている者の中で、服を身につけることを許されず、後手を革帯で拘束されているのは彼女だけだ。

 一郎の蹂躙に抗う術もなく、ただ身をよじらせて震えるしかない。

 

「そんなに浣腸がいやか、エリカ? だったら、俺の愛撫に耐えてみろ。もし耐えきったら、浣腸を勘弁してやってもいい」

 

「えっ、耐えきったらって……」

 

 エリカがきょとんとなった。

 

「簡単だ。達してもいい。その代わり、声を出さない。無言で達することができれば、許してやる」

 

「本当ですね──? わかりました」

 

 エリカが小さく頷く。

 歯を食い縛り、視線を逸らさない。

 一郎は薄く笑みを浮かべ、本を棚に戻して後手縛りのエリカを引き寄せた。

 

 右手で乳房をすくいあげるように撫で、左手で股間をゆっくりと探る。

 さらに顎を指先で持ち上げ、唇をこじ開けて舌を差し入れた。

 

「んっ……んんっ……」

 

 堪えるように唇を結んでいる。

 身体の内側に熱が満ちていくのが、掌越しにも伝わった。

 一郎はわざと動きを緩め、撫でては止め、舌を離しては息を吹きかける。

 焦らすような刺激に、エリカの肩が小さく跳ねた。

 

「いまのは大目に見てやる……だが、次はだめだ」

 

 囁くように言って、もう一度胸を撫で上げる。

 硬くなった乳首が指先を弾く。

 下腹にまわした左手が濡れた粘膜をかすめた瞬間、エリカの喉がぴくりと動いた。

 

 息が乱れはじめている。

 それでも声は出さない。

 首筋に唇を寄せ、軽く吸い上げると、細い身体がぴくりと跳ねた。

 その動きを確かめるように、指をもう一度奥へ滑らせる。

 

「ふ……強情な女だ」

 

 一郎は笑みを浮かべ、手の動きを速めた。

 それでもエリカは声を押し殺し、喉を震わせるだけだ。

 唇の端が微かに開き、息だけが漏れる。

 

「んんっ……」

 

 わずかに洩れた音が耳に届く。

 一郎はそのまま指の角度を変え、快感の芯を突いた。

 エリカの腰が反り、背がぴんと伸びる。

 限界まで引き延ばしてから、動きを一気に強める。

 

「……あっ──あああっ……」

 

 甲高い声が迸った。

 全身が弓なりに反り、手の中でびくびくと痙攣する。

 快感の奔流が抜けきるまで、一郎はただその震えを見つめていた。

 

「残念だったな、エリカ。もう少しだったが、声が出た。やっぱり、罰受けは決まりだ」

 

「うう……」

 

 膝を折り、力の抜けた身体が床に沈む。

 汗の光を帯びた肩が、かすかに震えていた。

 

「馬鹿だな、エリカ。ロウの手管に耐えられるわけがないだろう」

 

「それでも頑張ろうとするのがエリカなのよ。でも、浣腸は受けようね。これで二重の罰だもの」

 

 一郎がエリカをいたぶるのを見守っていたシャングリアとコゼが、それぞれに言った。

 エリカは荒い息をつき、項垂れたままだ。

 

「さて──この黒い本だな。とりあえず、どんなことが書かれているのか覗いてみるか。もしかしたら愉快な責めの方法が書かれているかもしれない」

 

 一郎は再び、漆黒の書物の前に立った。

 そして、自分の手首に指を触れる。

 魔妖精クグルスを呼び出す魔道紋を解放する動作だ。紋様が浮き出し、異界との出入口が解放された。

 

 淫魔力のことなら、やはりクグルスに頼るしかない。

 魔妖精のクグルスは、淫気そのものを力の源にする存在だ。

 この世界の魔道遣いが魔力で術を行うように、クグルスは淫気を使ってそれと同等の現象を起こす。

 一郎にはまだそこまでの制御はできないが、淫魔力で封印された書を解くなど、クグルスにとっては造作もないだろう。

 

「じゃじゃじゃーん。クグルスだよ、ご主人様。お久しぶり──。わおっ、すごい淫気。これはエリカの分だね。じゃあ、いただきまーす」

 

 光の粒が弾け、小さなクグルスが姿を現した。

 羽を震わせながら空中をくるくる回り、漂う淫気を吸い込むようにして息を吐いた。

 

「魔妖精さん、ごきげんよう。お変わりなく」

 

 屋敷妖精のシルキーが声をかける。

 

「屋敷妖精か。相変わらず、ご主人様に愛されてるか?」

 

「はい、時折」

 

 ふたりの妖精が穏やかに微笑み合う。

 同じ妖精族でも、魔族に属するクグルスと、屋敷に仕えるシルキーとでは在り方が正反対だが、なぜかこのふたりは気が合う。

 

「ところで、クグルス。この本を見てくれ」

 

 一郎は棚の漆黒の書物を指した。

 クグルスはふわりと飛び、書に近づいて目を凝らす。

 

「ふうん……。淫気封印だね。誰の仕業か知らないけど、けっこう古い力だよ」

 

「この屋敷の前の主人のものらしい。中身を見たいんだが、封印を解けるか?」

 

「もちろん。だけど、ご主人様なら自分でできるはずだよ」

 

「俺が?」

 

「うん。ご主人様の淫魔力はもう十分だよ。あとは外へどう扱うかだけ。これはたいした封印じゃないし、淫気を少し注げばすぐに開くよ」

 

 あっけらかんとした口ぶりに、一郎は苦笑した。

 

「俺を買いかぶるな。そんな器用なこと、できる気がしない」

 

「なに言ってんのさ。ご主人様は、もうすでに淫気を使って、いろいろな術を使えているじゃないのさ」

 

「エロいこと限定でな。いやらしいことをしようと考えたときには自然にできるだけだ」

 

 “エロい”とか“エッチ”とかの言い回しは、本来、こっちにはない表現だが、一郎が使っているとクグルスが気に入り、真似して使うようになった。だから意味は通じる。

 

「エロいことと一緒だよ……。じゃあ、ぼくを一度、身体に入れてみて。感じ方を教えてあげる」

 

 クグルスが言うやいなや、光となって一郎の胸に飛び込んだ。

 一瞬、熱い風が体内を駆け抜け、意識の底に何かが繋がる。

 

 ──わかる。

 

 淫魔力の流れが、手足の神経のように明確に感じられる。

 無秩序に漂っていた力が、今は手のひらの動きに呼応する。

 一郎はためしに意識を漆黒の書へ向けた。

 途端に本が、ふわりと宙に浮いた。

 

「……おおっ」

 

 声が漏れる。

 まさに魔道遣いだ。

 

「さすがご主人様だね。勘が早いね」

 

 クグルスの声が胸の奥で響いた。

 宙に浮かぶ書物を見つめながら、一郎は息を吐く。

 

「魔道遣いになったのか、ロウ?」

 

 シャングリアが驚いたように声をあげた。

 

「いや……たぶん、似たようなものだ」

 

「これ、ご主人様がやってるの?」

 

 コゼが目を丸くする。

 

「ロウ様の身体から魔力のような気配が……。でも、こんなに急に……」

 

 エリカも呆然としている。

 

「訓練すれば、もっとすごいことができるよ。淫気も魔力も、もとをたどれば同じようなものだしね」

 

 クグルスが軽く笑った。

 一郎の胸の内は静かな高鳴りに満ちていた。

 抑えきれない興奮と、なにかが開かれる手応えを感じる。

 

「試しに、その本へ淫魔力を注いでごらんよ。封印なんてすぐ外れるから」

 

 クグルスの明るい声。

 一郎は深く息を吸い、漆黒の書を見据えた。

 

「……やってみる」

 

 手をかざし、力を送り込む。

 体内の淫気が流れ出し、指先を通って本へと注ぎ込まれていく。

 いや、注ぎ過ぎた──。

 明らかに、一郎から流れて出ていく力が巨大すぎる。

 一郎は焦った。

 

「うわっ、ご主人様、待って──。そんなに注いだら、暴発するよ──」

 

 クグルスの警告が聞こえた瞬間、強烈な衝撃が腹に走った。

 

「な、なんだ……っ」

 

 光が弾け、風が巻き起こる。

 

「うああっ」

 

「きゃあっ」

 

「ひゃあっ」

 

 エリカたちの悲鳴が混ざる。

 次の瞬間、霊廟の景色が消え、視界を白い光が覆い尽くした。

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