※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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149 コゼの世界─奴隷市の童女

「金貨一枚に銀貨二十枚」

 

「金貨一枚と銀貨を三十枚だ」

 

「じゃあ、それに銀貨五十枚追加──」

 

 乾いた掛け声が、薄暗い地下の空気に響いた。

 灯油の焦げた匂いが鼻を刺し、奥の方では酒と汗の臭気が入り混じっている。壁は煤で黒ずみ、天井の梁には古い鎖がぶら下がっていた。

 

 ここは代官の監督を受けた公の奴隷市ではない。

 国境沿いの城塞都市、その外れにある廃倉庫を改装した闇市だ。

 表向きは出荷用の商品の集荷所を装っているが、実際には誘拐や借金奴隷の取引が行われている。

 公の市場では扱えない“品”が、ここでは金さえ出せば誰の手にも渡る。

 

 順番がやってきて、いま競り台に立たされているのはコゼだった。

 手枷は後ろ手にかけられ、足には短い鎖がつながれている。

 さっきまで肩を覆っていた麻布は、競りが始まる直前に引き剥がされた。

 

 薄暗い灯火の下で、隠すことのできない全裸が冷気に晒され、油煙の灯がわずかに揺れるたび、光と影が肌をなぞる。

 冷えた空気の中で、体が小さく震える。

 まだ、十歳の童女のコゼでも、こうやって裸を見世物のように晒されては羞恥も感じる。

 でもいまの身体の震えが、肌を風に晒される寒さのせいなのか、恥ずかしさのせいなのか、自分でもよくわからなかった。

 

 まだ幼いコゼの身体の線は細く骨ばっていた。

 貧しい農村の出身であり、長いあいだ日焼けと傷が絶えなかった。肩には薄い焼け跡が残り、膝の裏には畑仕事で擦りむいた痕が白く残っていた。

 それでも、この三箇月で見違えるほど肌艶がよくなってはいる。

 奴隷商が用意した食事と薬草の風呂、化粧用の油が毎日与えられたおかげだ。かつての乾いた肌には、いまはわずかな潤いが浮かんでいる。

 かすかではあるが、肉付きも生まれかけており、農村で鍬を握っていたころの姿を知る者が見れば、別人と思うほどだろう。

 

 身体は痩せていて、女としての線も浅いコゼだが、顔立ちは悪くないそうだ。

 頬や顎の形に素地の整いがあり、貧農出身にしては器量がよかったようだ。

 そのため、こうした未成熟な童女の身体を好む好事家もいるだろうと見込まれ、奴隷商はこの三箇月、コゼを丹念に磨き上げてきた。

 そして、今日、ついにコゼが競りにかけられる日がやってきたのだ。

 

 横に立つ奴隷商の顔を見ると、その思惑は当たっているらしい。

 競りの声が上がるたびに、彼の口元にはわずかな笑みが浮かんでいる。

 値が上がるたび、鞭の先が軽く床を打った。

 それが、満足を示す合図であることを、コゼは知っていた。

 

「顔を上げろ。下を向くな」

 

 鞭を手にした奴隷商が、鞭の先で顎を上げさせた。

 彼の声は落ち着いていて、怒鳴るでもなく、命令の調子で言う。

 

「脚も開け。使ってない性器であることを見せるんだ……」

 

 コゼは従順に閉じていた脚をわずかに拡げた。

 鞭の音が鳴らなくても、そうするように身体が覚えている。

 

「さあ、よく見てくれ。この性器が未使用であることは、鑑定書もついてる」

 

 奴隷商が大声で客に向かって叫んだ。

 男たちの視線が正面から突き刺さった。

 その重さを感じながらも、彼女は目を閉じなかった。

 

 なにも覆うものがなく、逃げる場所もない。

 それでも立っているしかなかった。

 冷たい石の床が、足の裏から体の奥にまでしみ込んでくる。

 

 コゼは、国境近くの小さな農村の出身だ。

 山と谷に囲まれた貧しい土地で、畑は痩せ、収穫も年によっては飢えを招くほどだった。

 家族は多く、兄弟姉妹は七人。

 そのなかで、コゼは真ん中にあたる子で、特に可愛がられたわけでも、虐げられたわけでもない。

 誰の記憶にも強く残らないような存在だった。

 

 村では幼いころから働くのが当然だった。

 夜明け前に起き、畑に出て、干し草や水を運び、冬になれば家畜の世話を手伝う。

 それが日常であり、疑問を抱くこともなかった。

 ただ、飢饉の年には、仕事をしても腹が満たされることは少なかった。

 

 コゼが売られたのは、そうした年のことだ。

 村をまわって借金取りを兼ねた奴隷商人がやって来た。

 父は既に年老いて働けず、母は病で寝たきりだった。

 末の弟妹を食わせるためには、誰かを差し出すしかなかった。

 その「誰か」に選ばれたのがコゼだった。

 

 理由は単純だ。

 顔立ちが整っており、力仕事よりは家事向きで、売値が高い。

 そのくらいのことだった。

 売られないように価値を示そうと、狩りの腕を磨いて、時折、獲物を持ち帰ったりしていたのだが、結局、それはなんの意味もなかった。

 家を出るとき、父はなにも言わず、母も泣きもせずに寝たままだった。

 弟妹のうち何人かが玄関先に立っていたが、誰も見送ろうとはしなかった。

 

 荷車に乗せられたとき、コゼは振り返らなかった。

 それが、家族と過ごした最後の朝になった。

 

 競りは続いている。

 また、観客の男たちが、興味半分にざわついている。

 半数は買う気などなく、競りにかけられる女奴隷の裸を見物に来ただけだとすぐにわかる。

 コゼのような幼い童女の身体にも興味があるのか、彼らの一部が下衆げた視線を向けて、酒臭い笑い声をあげている。

 

 その視線がどれほどいやらしくても、コゼの表情は変わらなかった。

 この三箇月、鞭と罵声で教え込まれたのは、黙って立つこと、命令を待つこと、そして値段のつく女になることだった。

 

 奴隷商が客席の方に声を向けた。

 声はよく通る。

 この地下では、それも商品の価値を高く見せるための演出だとわかる。

 

「さあ、見てくれ。肌の艶も、骨格も悪くない。使い道はいくらでもある。まだ無垢だ。丈夫だし、性奴隷としていくらでも仕込められる」

 

 鞭の先がまた軽く鳴った。

 まるで家畜の脚を確かめるように、奴隷商はコゼの周囲を回った。

 その動作ひとつひとつが、彼女にとっては見慣れたものだ。

 身体のどこに視線を注がれても、もう何も思わない。

 ただ、命令どおり立ち続けるだけだった。

 男たちの声が上がる。

 

「金貨二枚──」

 

「銀貨を十枚足す」

 

 奴隷商が満足げに頷く。

 この市場では金貨二枚でも高値の部類に入る。

 だが、奥で腕を組んでいた商人マニエルが、ゆっくりと手を上げた。

 

「金貨二枚と銀貨五十枚」

 

 その声で、場の熱気が一段上がる。

 娼館の主人が二人、あきらめたように手を下げた。

 コゼはそのやり取りを黙って見つめていた。

 自分がどんな用途に使われるのか、だいたい見当はつく。

 だが、それに感情が動くことはなかった。

 

 そのとき、別の声が響いた。

 

「金貨五枚」

 

 場内が静まる。

 声の主を探して視線が動いた。

 

 柱の陰に、黒髪の旅人が立っていた。

 薄汚れた外套をまとい、腰の剣は手入れの跡がある。

 客というより、どこか異質な存在だった。

 彼が誰なのか、コゼには見当もつかない。

 

 だが、その男の眼だけが、奇妙に心に引っかかった。

 初めて見るはずなのに、懐かしいような、どこか痛むような感覚。

 

「では、金貨五枚で決定だ──」

 

 奴隷商が叫んだ。

 場のざわめきが再び起こる。

 高値の取引が決まった喜びに、見物人が口笛を吹き、笑い声がこだました。

 鞭を持った奴隷商は満足げに頷き、手元の帳簿に印をつけた。

 その横で、コゼは静かに息を吐いた。

 これで、自分の新しい主人が決まったのだ。

 

 

「では、金貨五枚で、その方がこの童女を落札いたしました」

 

 奴隷商が高らかに宣言した。

 会場に拍手が起き、掛け声が重なった。

 奴隷商は大満足のようだ。なにしろ、彼は、まだ子供のコゼなので、金貨二枚で売れれば御の字だと話していたのだ。

 それが金貨五枚となれば、予想外の高額なのだろう。

 

 一方で、最後にその男とコゼを競ったマニエルという商人が口惜しそうな顔をしていることに気がついた。

 もう一生縁のない男であるはずなのに、なぜか、大きな安堵と溜飲がさがったような不思議な感情が沸き起こった。

 

「よくやったぞ、コゼ……」

 

 奴隷商が小声でささやく。

 彼の喜ぶ様子を見て、コゼは小さく息をついた。

 短い間だったが、この男のもとで過ごした三箇月は、想像していたほど酷いものではなかった。

 両親は、コゼに関心を払わず、税を払えずに困窮すると、迷うことなくコゼを奴隷商に売り渡した。

 その目に涙はなく、惜しむ言葉もなかった。

 

 それに比べれば、この奴隷商の方がよほど誠実だった。

 彼はコゼを「商品」として見込み、価値を高めようとした。

 食事を与え、薬草の湯に入らせ、肌の手入れを怠らなかった。鞭での躾はあったが、残酷すぎることはなかった。

 商売人らしく淡々としており、暴力を好むわけでもない。

 

 その結果、コゼはこの三箇月で、洗いと整えの作法、立ち居振る舞い、主人の前での姿勢を学んだ。

 彼にとって自分は“商品”にすぎなかったが、その扱いは一定しており、公平でもあった。

 そんな男に対してさえ、コゼはわずかな感謝の念を覚えていた。

 

 やがて、奴隷商とともに、舞台裏の商談室へ向かうことになった。

 取引の正式な手続きを行うためだ。

 競り台を降りると、もう次の奴隷が台に上がっていた。

 屈強な男奴隷であり、検分は形ばかりで、すぐに新たな声が飛び交い始めていた。

 

 商談室に入ると、すでに先ほどの黒髪の男が立っていた。

 灯りの少ない狭い部屋で、椅子とテーブルが一組だけ置かれている。

 男は座ろうともせず、静かに立ったままコゼを見つめていた。

 その視線に気づくと、コゼの心臓が早鐘のように鳴った。

 

 ──わからない。

 初対面のはずなのに、どこか懐かしい。

 近づくと胸の奥がざわめくようで、落ち着かない。

 ついさっきまで、誰に買われようとどうでもいいと思っていた。

 自分の人生など、とっくに他人の手に委ねたつもりだった。

 それなのに、この男が自分の主人になると知った途端、胸の奥に温かいものが灯る。

 嬉しい──なぜか、本当に嬉しい。

 

「金貨五枚です」

 

 男が静かに言い、テーブルの上に金貨を並べた。

 一枚一枚が鈍い光を放つ。

 声の調子も仕草も丁寧で、粗野な商人とは違う気品があった。

 

「確かに」

 

 奴隷商が金貨を一枚ずつ確かめ、満足げに頷いた。

 

「では、あなた様をコゼの主人として首輪に刻みます。お名前をお聞かせ願えますか」

 

 奴隷商は淡々と尋ねる。

 彼は高位ではないが、簡易な魔道操作を扱える。

 奴隷の首輪に新たな主の名を刻むことは、自らの職能の一つだ。

 

「俺はロウと言います」

 

 男は穏やかな笑みを浮かべた。

 

「ロウ様ですね……。では、主従契約を刻むために、体液を一滴……。指の血でいいですか?」

 

 奴隷商が小さな剃刀を取り出した。

 だが、その男──ロウが手でそれを制した。

 

「いや、刻みは不要です。あなたの名を奴隷紋から消すだけでいい。新たな刻印は入れないでください」

 

「えっ……解放奴隷にするおつもりで?」

 

 奴隷商の声に驚きが混じった。

 

「違いますよ。コゼは俺の女です。性奴隷として迎えます。ただ、首輪は要らない。ここで外してください」

 

 ロウは穏やかに、しかし一切の迷いなく言った。

 奴隷商は口を開いたまま固まる。

 意味が掴めないのだろう。

 コゼもまた、息を呑んだ。

 首輪を外すというのは、すなわち法の上では奴隷ではなくなるということだ。

 

「……外すと、彼女は自由になります。逃げ出すかもしれませんよ」

 

「それでも構いません。コゼは俺の持ち物ですから、逃げたところであなたに責任はない」

 

 ロウは軽く笑った。

 

「それに、こいつは、俺から逃げませんよ。──コゼ、逃げたいか?」

 

 突然名を呼ばれ、コゼははっと顔を上げた。

 ロウの瞳が、穏やかで、どこか深い光を宿していた。

 その目を見て、言葉が出なかった。

 ただ、無意識に首を横に振った。

 

「ね、そういうことです。手錠も外してください……。それから、身体を覆うものを……。俺の女を他人の目に晒しておくのは好きじゃないんです」

 

 ロウはにっこりと笑った。

 その声音に、有無を言わせぬ力があった。

 奴隷商は小さく肩をすくめる。

 

「……承知しました。勝手にしてください。もう、あなたの持ち物だ……」

 

 やがて、コゼの手錠が外され、麻布の代わりに一枚のマントが渡された。

 粗末だが温かい布地だった。

 コゼはそれを肩に掛け、胸元を押さえる。

 奴隷商が呪文を唱えると、首輪がかすかに光り、音もなく二つに割れた。

 鎖が床に落ちる鈍い音がした。

 

 それは、形式上の「解放」を意味していた。

 魔道刻印を施していない奴隷が首輪を失えば、法的には自由民になる。

 だが、コゼは何の実感もなかった。

 ただ、首に風が触れたような感覚とともに、胸の奥で何かが揺れただけだった。

 

「行こう、コゼ」

 

 ロウは軽く顎で出口を示した。

 その声は優しくも、抗えない響きを帯びていた。

 コゼは慌てて立ち上がり、マントを握りしめたまま後を追う。

 奴隷商に頭を下げる余裕もなかった。

 

 ──もう首輪はない。

 命令に従う義務もない。

 それなのに、どうして逆らう気にならないのだろう。

 

 不思議だった。

 いや、違う。

 この人には、従いたい。そう思ってしまうのだ。

 

「あ、あのう……どこにいくのでしょうか、ご主人様……?」

 

 闇市を出てしばらく歩いたあと、コゼは小さな声で訊ねた。

 

「宿だよ。お前を抱くんだ。お前は俺の性奴隷だからな。文句はないだろう?」

 

 ロウが振り返り、薄く笑った。

 その笑いがあまりに自然で、抗う気持ちが消えた。

 

「……はい」

 

 言葉が唇から滑り落ちた瞬間、自分の胸が熱を帯びた。

 恐怖と羞恥が入り交じり、それがなぜか甘い。

 

 城塞都市は午後の日差しを浴び、白い石畳がまぶしく光っていた。

 乾いた風が街路を抜け、砂埃を巻き上げる。通り沿いの露店は、昼下がりの静けさの中で客も少なく、軒先の影には酔った旅人がうずくまっていた。

 

 その中を、コゼは裸身を一枚のマントで包み、裾を必死に押さえながらロウの背中を追っていた。

 マントの下にはなにも着けていない。

 風が吹くたび、布の隙間から冷気が忍び込み、太腿を撫で上げていく。

 昼の陽射しよりも、それがずっと熱く感じられた。

 

 やがて宿に着く。

 外観は古びた木造だが、手入れは行き届いている。

 一階の食堂には誰の姿もなく、鍋とパンの香りが静かに漂っていた。

 

 宿の亭主が顔を上げたが、ロウは軽く会釈しただけで声を掛けず、そのまま階段を上っていく。

 コゼは慌ててその後を追った。

 二階の廊下は薄暗く、昼の光が窓越しに長い影を作っていた。

 突き当たりの部屋に入ると、そこは広めの造りで、寝台がひとつと、小さなテーブルと椅子が隅にあった。

 窓から差し込む光が舞い上がった埃を金色に照らしていた。

 

 ロウは部屋に入るなり、天井の梁を見上げて縄を通した。

 縄がきしむ音が、コゼの胸の鼓動と奇妙に重なった。

 なにが始まるのか、すぐにわかった。

 このロウは、コゼを縄で縛って抱くのだと思った。だが、どうして、それを考えたかコゼにはわからなかった。

 怖いはずなのに……いや、実際には怖くはなかった……。胸の奥で、期待と昂奮がなぜか静かに息づいていた。

 

 どうして……?

 コゼは自分の感情に当惑するとともに、ロウがやろうとしていることがわかることが不思議に感じた。

 

「両手を出せ、コゼ」

 

 命じられ、コゼは素直に腕を差し出した。

 ロウの手が麻縄を取り、彼女の両手首をひとまとめにして縛る。

 縄の繊維が肌に触れ、きゅっと締めつけられた瞬間、冷たい痛みが走った。

 その痛みはすぐに熱に変わり、皮膚の奥でじわりと広がっていく。

 

 ロウはそのまま、両手首を縛った縄を天井の梁に通し、静かに引き上げた。

 コゼの腕がじりじりと持ち上がり、やがて胸の高さを越え、肩が引き絞られる位置まで吊り上げられる。

 足の裏が床をしっかりと踏めるぎりぎりの高さだった。

 吊られた両腕が震え、縄が軋む。

 息を吸うたび、胸が押し上げられ、縄が肌を擦る。

 その刺激が身体の奥に響き、痺れるような甘さが全身を包みはじめた。

 

 ──抵抗できない……。

 それなのに、なぜか気持ちがいい。

 自分の身体はどうかしている。

 だけど、逃げられないという苦悶の中に、不思議な安堵があった。

 縄の締めつけが、まるで身体の形を確かめるように、優しくも容赦なく彼女を支配していた。

 

「……ご主人様……?」

 

 かすれた声が漏れた。

 ロウは答えず、荷物から取り出した小さな壺を開ける。

 薬草と油が混じった匂いが空気を満たした。

 

「破瓜を楽にする油だ。少し熱さを感じるかもしれない。でも、すぐに痒みと疼きに変わる……。かなり強い媚薬だ……。じっとしていろ」

 

 部屋の中心で両手を吊られて立たされる姿勢のまま、身を固くした。

 ロウの指が、股のあいだに滑り込む。

 冷たい感触が一瞬だけ走り、すぐに熱が広がった。

 

「んっ……」

 

 声を抑えようとしたが、喉の奥から勝手に漏れてしまう。

 指先は恥部の周囲をゆっくりとなぞり、油を押し込むように擦り込んでいった。

 そこから立ちのぼる熱が、次第に奥へと染み込んでいく。

 

 続いて、ロウの指が胸に触れた。

 指の腹で円を描くように乳房を撫で、頂点に油を塗りこめる。

 冷たさと熱が交互に押し寄せ、息が止まりそうになる。

 

「ひゃ……っ」

 

 短い声が洩れた。

 そのままロウの指は背中を伝い、腰を回ってお尻の割れ目をなぞる。

 粘ついた油が、奥の方にまで押し込まれた。

 

「そ、そこは……あ……っ」

 

 思わず言葉が途切れた。

 お尻の奥にまで熱が流れ込み、体の芯で弾けるような感覚が生まれる。

 

 やがて、塗られた場所のすべてが異様なほど熱を帯び始めた。

 最初は温かいだけだったはずなのに、すぐに痒みのような疼きに変わる。

 それは痛みではなく、皮膚の奥で無数の火花が散るような、どうしようもないむず痒さだった。

 

「あ、あつい……へんです……。これ、なんですか……?」

 

 コゼは思わず身をよじった。

 縛られた両手が軋み、縄が肌に食い込む。

 そのわずかな動きすら、痒みを刺激して新たな熱を呼び起こす。

 

 股間に、胸に、お尻に──。

 塗られた場所が同時に疼き出し、体の奥で燃えるように熱が脈打った。

 痒みが疼きに変わり、疼きがさらに鋭い痒みへと変化していく。

 

「あっ……あぁっ……か、かゆいっ……これ……やです、やです……っ」

 

 コゼは悲鳴を上げ、脚をもがくように動かした。

 両手は縛られ、身体を掻くこともできない。

 代わりに、内腿を懸命に擦り合わせて、どうにか痒みを逃そうとした。

 

 そのたびに太腿の内側がこすれ、熱がさらに増す。

 脚を閉じれば疼きが集まり、開けば風が入り込んで痺れが走る。

 どちらにしても、どうにもならない。

 

「だ、だめ……だめです、ご主人様……あっ、あああっ」

 

 涙混じりの声が漏れ、呼吸が荒くなる。

 胸が激しく上下し、汗が鎖骨を伝って流れ落ちた。

 痛みでも快感でもない、どうしようもない熱の波に、コゼはただ身体を震わせた。

 

「感じているな。身体が正直だ……。怖くても、拒んでも、身体は覚えている」

 

 ロウの声が低く響いた。

 その言葉が熱と混ざって、コゼの奥に染みこんでいく。

 

 けれど──「覚えている」という言葉に、どこか引っかかる。

 なぜか、知っている気がする。

 まるで、以前にも同じことをロウに言われたような。

 

 思考が霞む。

 その間にも、媚薬を塗られた場所の熱が形を変え、疼きが震えに、震えが細かい痒みに変わっていった。

 

「ああ、かゆい……かゆいです、ご主人様……」

 

 コゼは悲鳴をあげ、身を捩った。

 股の奥、胸の先、お尻の内側まで、無数の小さな虫が這いまわるような感覚。

 掻きむしりたくても、縄が腕を縛り、何もできない。

 

「あ、あつい……。からだが……へんです……」

 

「それでいい。身体が俺を思い出そうとしているんだ」

 

 ロウの声は低く、静かだった。

 命令のようでありながら、どこか優しい。

 薬の熱がさらに強まり、痒みは限界を越えて、痛みに似た快感へと変わる。

 胸が張り、息が詰まり、縄が軋むたびに甘い悲鳴が漏れた。

 

 身体の奥が、疼きの源を求めるように脈打つ。

 触れられたいのに、触れられない。

 そのもどかしさが、熱を倍増させていく。

 

「……ご主人様……たすけて……あつくて……」

 

 ロウはそんなコゼを見下ろし、ゆっくりと微笑んだ。

 

「怖いか?」

 

「……こわい……でも……きもち……いい……」

 

「それでいい。痛みも快感も、全部俺が教えてやる」

 

 ロウの指が頬をなぞり、涙を拭った。

 支配と慈愛が混じるその仕草に、コゼの身体から力が抜けていく。

 

 灯火が揺れ、影がふたりの輪郭を飲み込んだ。

 縄の軋む音と、乱れた息づかいだけが、静かな部屋に残った。

 

「もっと苦悶するんだ……。その苦悶が快感になる……」

 

 ロウが意地悪く笑いながら、両手を頭上に縛られているために剥き出しになっている脇の下の窪みに舌を這わせた。

 

「ひゃあ、く、くくっ」

 

 コゼは反射的に身体を震わせた。

 両手首を縛る縄が軋み、肌に食い込む。

 痛みは軽いが、熱を含んで痺れるような感覚を残す。

 

「くすぐったいか、コゼ……? じゃあ、もっとくすぐったくしてやろう」

 

 ロウの声には、意地悪とも慈しみともつかない響きがあった。

 その声が耳に残るのと同時に、塗られた薬の熱が、股間とお尻と胸の奥で一斉に暴れ出した。

 温もりではなく、激しい痒みだった。

 皮膚の下を無数の虫が這い回るような感覚が、ひと息ごとに広がっていく。

 

「あっ、あつい……やです……あっ、く、くすぐったいっ……」

 

 脇の下を舌でなぞられた瞬間、痒みとくすぐったさがぶつかり合い、思考が吹き飛んだ。

 股の奥で疼きが爆ぜ、胸の先が脈を打ち、お尻の奥がひくつく。

 どこをどう感じているのか、自分でもわからない。

 ただ、逃げたいのに逃げられない。

 

「ひゃ、やっ……やめて……くすぐったい、あつい、ああっ……」

 

 コゼは吊られた両腕を必死に動かそうとするが、縄がそれを許さない。

 身体を捩じるたび、縄が肌を擦り、食い込んだ部分がさらに熱を帯びる。

 くすぐったさが痛みに変わり、痛みが快感に転じていく。

 その境界が曖昧になり、息を吸うたび、喉の奥がひゅっと鳴った。

 

 やがて、ロウは舌の這う場所を移動させ、脇の下から鎖骨、胸の谷間へと舌を這わせていく。

 その冷たさが、逆に火照った肌を刺激した。

 痒みと舌の感触が重なり、コゼはたまらず悲鳴をあげた。

 

「あっ、やっ、やです……もう……どうして……」

 

 身体のあちこちが、自分の意思とは無関係に震えている。

 熱が痒みを生み、痒みが快楽を生む。

 その循環の中に閉じ込められ、コゼはただ息を荒げるしかなかった。

 

「童女趣味はないけど、十歳のコゼなら、もっと可愛がりたくなるな」

 

 ロウはその様子を眺めながら、微かに笑った。

 その笑い声が、まるで痒みそのもののように耳の奥に入り込み、

 コゼの混乱をさらに煽っていった。

 

「やっ、やあっ……やめて……」

 

 コゼは身体を捩じろうとしたが、動かすたびに縄が引き締まり、皮膚が擦れた。

 逃げようとすればするほど、身体の熱は強くなり、感覚が冴えていく。

 ロウはコゼの腰を片手で押さえ、もう一方の手を脚の付け根へと滑らせた。

 

「んんっ……」

 

 その指先が、ついに塗られた薬の部分に触れたのだ。

 熱が一気に蘇り、股間が疼き出す。

 塗布された媚薬の効果は強烈で、じんわりとした熱が痒みに変わり、その痒みが次第に快感に変化していく。

 

 ロウの指がわずかに動く。

 それだけで、火照りが脈打ち、熱が身体の中心へと集まる。

 コゼは混乱した。怖いのか、気持ちいいのか、自分でも判別できない。

 

「だ、だめ……ご主人様……」

 

 それでも、声はか細く甘く震えていた。

 ロウは笑みを浮かべ、舌で胸をなぞり始める。

 乳房の先を軽く咥え、舌先で円を描くように撫でると、コゼの身体が大きく跳ねた。

 

「ひゃあっ、そ、そこは……あっ……」

 

 ロウの舌が胸を移動し、指が股間の亀裂をなぞる。

 くすぐったさが疼きに変わり、疼きが熱を伴った痙攣のような快感に変化する。

 逃げようとしても逃げられない。

 身体のどこかが、明確に快感を覚え始めていた。

 

 舌が脇腹を伝い、腰骨をなぞり、背中の筋へと滑る。

 皮膚を伝う唾液が熱を持ち、微かな痛みとともに甘い刺激を刻んでいく。

 

「やっ……あっ……き、きもちいい──きもちいいです、ご主人様……」

 

「それでいい。感じるままにすればいい」

 

 ロウの声が低く響いた。

 その言葉が命令のようにコゼの頭に入り込み、身体の緊張がゆっくりと緩む。

 呼吸が荒くなり、汗が肌を滑り落ちた。

 

 ロウは腰を少し引いて、コゼの姿を見下ろした。

 吊られた両腕、きゅっと閉じた脚、汗で濡れた髪が頬に張りついている。

 小柄な身体が微かに震え、肩越しに見える背中が汗で艶めいていた。

 

「いい反応だ。身体のほうは正直だな」

 

 ロウが片手でコゼの腰を支えながら、もう一方の手を股のあいだに伸ばした。

 そして、指をすっとコゼの股間の亀裂の中に挿入してしまった。

 

「んっ、あああ……」

 

 コゼの身体が大きく反り返った。

 その瞬間、塗られた薬が内部で熱を帯び、痺れるような快感が全身に走る。

 ロウの指が静かに抜け、もう一度挿入してくる……。

 痛みはなかった。

 あったのは途轍もない快感だけ──。

 コゼは強烈ななにかを感じて、全身を硬直させた。

 

「無垢な身体に、すっかりと調教された性感だ。堪らないだろう。こっちの快感も覚えているか?」

 

 ロウが前で指を繰り返し律動したまま、お尻に指を這わせて、ずぶずぶとそこにも指を埋めていく。

 

「いやっ……やっ……あああっ……」

 

 コゼの脚が震え、縛られた両手がきしんだ。

 指が内部をなぞり、掻くように動くたび、得体の知れない波が押し寄せる。

 悲鳴とも喘ぎともつかない声が、部屋の中に響いた。

 

「いいぞ。ほら、感じるままにいけ」

 

 ロウの声がさらに低くなる。

 その言葉に導かれるように、コゼの腰が無意識に震え、

 快感が形を持つように膨らんでいく。

 

 ロウが耳元でささやきながら、前とお尻の愛撫を続ける。

 ますます頭が朦朧とし、すべての感覚や感情が曖昧なものになっていく。

 

「ごしゅじんしゃま、ごしゅりんしゃま、ごしゅりん──」

 

 コゼは叫んだ。でも、舌が回ってない。

 そして、背筋をぐっと反らせた。

 身体が痙攣をしたかのようにがくがくと震えた。

 

「あああっ」

 

 コゼは声をあげた。

 

「いくと言うんだ」

 

 ロウが言った。

 

「いぐううっ」

 

 コゼはわけもわからず叫んだ。

 

 すると、大きなものがコゼを包み込み、そして弾かれた。

 視界が白く弾け、頭の奥が痺れていく。

 全身の力が抜け、身体の奥から熱い波があふれ出す。

 縄の音が耳の奥で遠くに響いた。

 

「……いい子だ。じゃあ、次は俺の女になる番だな」

 

 ロウの声が遠くに聞こえた。

 けれど、何を言われたのか、すぐには理解できなかった。

 

 息が整わず、胸の奥で心臓が激しく跳ねている。

 両手はまだ吊られたままで、力が入らない。

 

 身体のあちこちが痺れ、汗が頬を伝って落ちた。

 痛みも、快感も、もう区別がつかない。

 ただ、どこか深いところで、何かが壊れ、そして、それが満たされたような気がした。

 

 怖い。

 けれど──その怖さの奥に、奇妙な安らぎがあった。

 自分がなにかを受け入れてしまったという確信だけが、コゼの小さな胸の中に残っていた。

 

 ロウが一歩、彼女に近づく。

 吊られた腕の下で、コゼの身体が小さく揺れた。

 男の手が腰を包み込み、軽々と持ち上げる。

 

 身体が宙に浮き、息が止まった。

 視線の高さがロウと同じになり、熱い呼吸が頬に触れる。

 

「怖いか?」

 

「こ、怖いけど……だいじょうぶ……です。あたしを……ごしゅじんさまの……女に……」

 

 声は震えていたが、拒絶の色はなかった。

 

「大丈夫だ。痛みは少ないはずだ。残るのは快感と、ずっと昔から俺の女だったという記憶だけだ」

 

「きおく……?」

 

「そうだ。なにしろ、ここはコゼのために俺が準備した仮想時空だからな」

 

 ロウがコゼの腰を抱えて宙に浮かせたまま、くすくすと笑う。

 

「かそう……じくう……?」

 

 意味がよくわからない。

 

「気にするな。それよりも破瓜だ……。いくぞ」

 

 ロウが微かに笑い、腰を引き寄せる。

 彼の体温が伝わり、吊られたコゼの身体がわずかに震える。

 いつの間にか、ロウはズボンと下着を脱いで、怒張がコゼの腰の真下にそそり勃っていた。

 ロウがコゼの脚を開かせて胴体を挟むようにさせる。

 股間の亀裂の真下に、ロウの怒張の先端が当たるのがはっきりとわかった。

 

「あっ」

 

 コゼは思わず悲鳴をあげた。

 だが、次の瞬間、ロウの手が緩み、ずぶずぶとコゼの股間がロウの男根に埋まっていく。

 

「いぎいいいっ」

 

 強い痛みが迸り、コゼは小さな身体を仰け反らせた。だが、同時に激しい快感もコゼと包んでいた。

 

「さすがに……狭いな……。だが、これでコゼは……俺の女だ」

 

 コゼの股間を貫いているロウがコゼを抱き締めながらささやく。

 幸福感が破瓜の痛みを打ち消していく。

 外の光が傾き、部屋の影がゆっくりと二人を包んでいった。

 痛みは熱に変わり、熱はやがて陶酔になった。内側の何かが、静かに書き換わっていく──そう感じた。

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