【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
156 偽りの誓い─貴公子パーシバル
「パーシバル様……騎士様、愛してます……。あ、あのう、これが今日の分です……」
目の前の可憐な少女──アーネがおずおずと白い袋を差し出した。目を落とすと、その指先が小さく震え、その震えが袋ごと微かに揺れていた。
「僕も愛しているよ、アーネ」
パーシバルは穏やかに笑い、彼女の顎を指で持ち上げた。怯えた瞳が見上げてくる。そのまま唇を寄せ、軽く触れるだけのはずが、彼は意図的に深く押しあてた。
少女の唇がこわばり、やがて溶ける。呼吸が混ざり合い、互いの吐息が頬を撫でた。
微かな湿り気が音を立て、彼はその反応を逃さず、さらに唇の角度を変える。
唇の内側まで支配するように、舌先で形を確かめながら押し込んだ。
アーネの喉が細く鳴り、身を預けてくる。
パーシバルはその震えを感じながら、一度唇を離した。
「……可愛いね、僕のアーネ」
パーシバルのささやく声が濡れた唇を離れたばかりの空気に溶ける。
指先で彼女の濡れた唇をなぞりながら、パーシバルは手を伸ばして、袋の重みを確かめた。
軽い。
開いて中身を確かめた。やはり、金貨は一枚もない。
「少なすぎるよ、アーネ。僕の注文している鎧は、特別な銀細工を施した一流のドワフ職人の品だ。王軍騎士になる僕には、それくらいの鎧でなきゃ似合わないだろう?」
「もちろんです」
「ああ、でも、これでは支払額に足りないよ。お前は僕に、支払いが足りぬ恥をかかせたいのかい」
「でも、これがあたしの全財産で……」
おどおどと答える声を、パーシバルはわざと哀しそうな表情を作って見下ろした。
「だから言っただろう。親父殿に頼めって……。理由など、どうとでも作れる。……まあいい。服を脱げ。抱いてやろう。その代わり、次に来るときには必ず残りを持ってくるんだよ……」
「ああ、でも……」
「いいから、聞くんだ。僕のアーネ……。どうしても親父殿に金を融通してもらう理由が思いつかないなら、盗めばいい。同じ家に住んでいるんだ。金のありかくらいわかるだろう?」
「だったら、今度はお父様にちゃんとお願いします。お父様に騎士様のことをお話してもいいですか? あたしが騎士様の妻になるのだと説明すれば、きっとお父様は鎧代くらい出してくれると思います」
その言葉に、パーシバルは少しだけ眉を寄せた。
このところ、彼女は婚約の話ばかり口にする。
世間知らずの商人の娘に、騎士の婚姻には正式な手続きが必要で、申し込みが済むまでは誰にも話してはならないと釘を刺してある。
それでも、彼女はそれを誇らしげに語ろうとするのだ。
──面倒な娘だな……。
結婚する気など、最初からないというのに……。
「まあ、それは待つんだ。そのうち正式に申し込みに行くつもりだから……。でも、まだ僕とお前が婚約していることは誰にも言うなよ。いいね──」
「でも……」
「いいから──」
パーシバルはアーネを抱き寄せた。
ここは、王国随一の穀倉地帯である南部領主域にある王国直轄軍が駐屯する城塞都市だ。その一角にある屋敷であり、アーネの実家が王国騎士団の騎士であるパーシバルに貸与している部屋だった。
普段は小従が仕えているが、今日はアーネが来る日だったため、小遣いを与えて外に追い払っていた。
「ああっ、騎士様……」
唇を近づけると、アーネは小さく息を呑んだ。
うっとりとした表情の彼女の肩を寄せる。その顔を見て、パーシバルの口もとに薄い笑みが浮かぶ。
パーシバルは、自分の顔が群を抜けて美男子であることを認識していた。
この顔で甘い言葉をささやき、愛を語れば、大抵の女は落ちる。
この娘もそうだった。
王都の貴婦人に比べれば洗練さはないかもしれないが、この南部域ではそれなりの美少女だろう。
しかもこの城郭でも一、二を争う商家の娘だ。
金づるとしては申し分ない。
年若く、もとは婚約者もいたらしいが、この地に赴任したパーシバルが横取りし、いまでは彼の虜となっている。
パーシバルに抱かれることを恥じる様子もなく、むしろ幸福そうに頬を染めていた。
もちろん、こんな娘と結婚するつもりなど毛頭ない。
所詮、使い捨ての慰み者だ。
もうすぐ、王都騎士団に異動することになっているが、そのときに行き先も告げず消えれば、それで終わりだ。
パーシバルは再び唇を寄せ、今度は舌を絡めてアーネの口の中を味わうように舐めた。
「あ、ああ……」
アーネが甘い声を洩らす。彼女の身体から力が抜けていくのを、腕の中で感じた。
「よし、おいで……。抱いてやろう」
パーシバルはアーネを離し、横の寝台に移動した。
服を脱ぎ、騎士として鍛え抜いた裸身を仰向けに横たえる。
顔と同じく、この身体も彼の自慢だ。
性の技も一流だと思っている。
アーネは寝台のそばで、指先を震わせながら衣の紐を解いていく。衣服が肩や腰からすべり落ちるたび、白い肌が灯りに浮かび上がった。
その胸は若草のように瑞々しく、丸みを帯びた乳房が小さく震え、乳尖がわずかに硬く尖っているのが見えた。
薄い吐息がこぼれ、静かな部屋に衣擦れの音だけが響いた。
恥じらいを残しつつも、命じられたままに身をさらしていく。
最後の一枚が足元に落ちるころには、彼女の頬は薔薇色に染まり、髪と同じ銀色の陰毛はすっかりと濡れていた。
それは、彼女がどれほどこの瞬間を待ち焦がれていたかを雄弁に語っていた。
「……失礼します」
素裸のアーネが寝台に上がり、開いた脚の間に膝をついてうずくまる。
躾けたとおりに、アーネはまず最初にパーシバルの一物を口に含むためだ。
アーネの唇が彼のものを含む。
その瞬間、パーシバルは低く呻いた。
伸ばした手でアーネの乳房を掴み、ゆっくりと揉み上げる。
「んんっ……」
アーネが身悶えして口を離しかけるが、すぐに咥え直す。
唇と舌で先から根元までを丹念に舐め上げ、特に先端を唾液で濡らしながら擦り上げていく。
指を袋の方に回し、撫でるように這わせてもくる。
なにも知らなかった田舎娘をここまで仕込むのに、どれほど手をかけたことか。
アーネの奉仕は、今では見事なほどに整っていた。
彼女の口と舌の動きに合わせ、パーシバルの身体は硬く反応した。
「……もういい。上に乗れ、アーネ」
「はい、騎士様」
アーネが脚を拡げ、膝立ちで彼の上に跨る。
ゆっくりと身体を沈めてくる。
「あ、ああ……」
挿し込まれた瞬間、アーネが大きく身を震わせた。
「ずいぶん濡れているな。よほど飢えていたのか?」
「き、騎士様に会えない日は寂しくて……」
頬を染めて答えるアーネに、パーシバルは薄く笑みを浮かべた。
彼女の腰がさらに沈み、ついに根元まで届く。
アーネがうっとりと目を閉じた。
白い喉が大きく震え、全身が甘い余韻に溶けていく。
「ほら、呆けるな。動け」
パーシバルは苦笑する。
アーネは喘ぐばかりで、動こうとしない。
「で、でも……騎士様に抱かれていると思うだけで……」
「可愛いことを言うな。そろそろ動け」
「……はい」
アーネはゆっくりと腰を揺らし始めた。
だんだんと息が荒くなり、身体の奥まで熱が伝わる。
「あ……ああ……」
すぐにアーネの嬌声が部屋を満たした。
彼女の動きは次第に滑らかに、艶めかしく変わっていく。
その姿を見ながら、パーシバルは半年前の夜を思い出した。
あのとき、彼女はまったくの生娘だった。
誘いに乗って来たくせに、いざとなると婚約者のことを口にして逃げようとした。
結局、力ずくで奪ったが、それはそれで愉しかった。
一度抱けば、アーネは二度と逆らわなくなった。
いまではこうして、自らの意思でパーシバルの元に通ってくる。
パーシバルは息を深く吸い込み、快感が込み上がるのを感じた。
アーネは相変わらずゆっくりと腰を動かし、彼の上で熱に酔っている。
彼女の酔ったような喘ぎ声と淫らに揺れる肢体に接し、彼は勝ち誇ったように口もとを歪めた。
この地方では、自分ほど女を悦ばせられる男はいない。
──やはり、僕の技は完璧だ。
この辺りの女たちなど、みなパーシバルに夢中になる。
王都へ行けば、もっと上等な女たちが群がるだろう。
そう確信しながら、彼はその動きに合わせて、精を放った。
「……よし、もういい。降りろ」
射精とともに欲が静まり、パーシバルは短く命じる。
アーネはまだ物足りなげな顔をしていたが、素直に彼の身体から降りた。
「今日はずいぶんとおとなしかったな。いつもはあんなに僕の上で乱れるのに」
パーシバルは寝台の縁に腰を下ろし、膝を揃えて座っているアーネの肩に軽く手を置いた。
余韻の熱がまだ残る肌は、うっすらと汗に光っている。
「お腹に負担がないようにと思って……」
小さく俯きながら、アーネが呟いた。
「お腹?」
思いがけない言葉に、パーシバルは上体を起こした。
寝台の上でアーネと向かい合う。
自分の眉がわずかに寄ったのがわかった。
「……騎士様、多分、騎士様の子を宿したのだと思います」
アーネが微笑んだ。
その表情には不安よりも幸福の色があった。
パーシバルは一瞬、息を呑む。
「こ、子供……?」
反射的に彼の声が震えた。
目線が自然とアーネの腹に向かう。
言われてみれば、ほんのわずかにふっくらしているようにも見える。
「はい。乳母に相談しましたが、間違いないそうです」
アーネは頬を染めてうつむいた。
その顔を見つめながらも、パーシバルの胸には冷たいものが流れ込んでいた。
「だ、だって……お前……避妊薬を……」
言葉が途切れる。
安価で安全、そして確実──避妊薬草を常用していれば、妊娠など起こるはずがない。
未婚の娘なら、誰もがたしなみとして飲むものだ。
アーネも当然、服用していると思っていた。
「……避妊薬は、騎士様があたしと結婚してくださると言ってくれてから飲んでません。夫になる方の子をたくさん産むのは女の務めですし……」
アーネは嬉しそうに笑った。
だが、パーシバルは顔を引きつらせたまま、言葉を失っていた。
子を宿した──?
これは、まずい。
思考が急速に冷えていく。
すぐにでも王都への異動を早めねばならない。
すでに王都騎士団への赴任が内定しており、この南部王軍の駐屯の任期はまもなく終わるはずだった。
それを前倒しして、今のうちに引き払う……。
それしかない。
──アーネは、もう捨てる。
だが、軽率には動けなかった。
彼女が乳母に相談したというなら、すでに家族にも知られているかもしれない。
田舎商人など恐るるに足らずとはいえ、軍本部に訴えでもされたら面倒だ。アーネの父親は、それなりに力のある商人なのだ。
なによりも、伯父に知られるのもまずい。
叱責だけでは済まないだろう。
「そ、それは……めでたいな。じゃあ、正式に挨拶に行くことにしよう。だが、騎士である僕は、婚姻に国王陛下の認可が必要なのだ。その手続きが終わるまで待ってくれ。……それまでは、誰にも言うんじゃないぞ。そう長いことじゃない」
口元に笑みを作りながら、パーシバルは声の調子を落とした。
巧みに優しさを混ぜたその声音に、アーネは安堵の涙を浮かべる。
「は、はい……。ありがとうございます、騎士様。本当に嬉しいです……」
アーネは心からの笑顔を見せた。
その笑顔が眩しいほどに無垢で、パーシバルは思わず視線をそらした。
彼の胸には、安堵ではなく、冷や汗に似た焦りが残った。
──田舎娘を孕ませたなど、伯父に知られたらどうなる。
考えるだけで、うんざりした。