【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
王都の商家街は、夕食の食材を求める人の波で溢れていた。
焼いた麦の匂い、果実の甘い香り、鉄鍋で煮込まれる香辛料の刺激が、混ざり合って通りを満たしている。
軒を並べる商家の看板は、どれも丁寧に塗り直されているが、下地の古びを隠しきれてはいない。
それでも、呼び声とざわめきが通りを満たし、午後の王都はいつもの顔を見せていた。
シャングリアは市場の人混みの中を、みんなと並んで歩きながら、周囲の視線がこちらに集まるのを感じていた。
見慣れた王都であっても、彼女たち五人の姿は目立ちすぎる。
コゼはいつもの半ズボン。シャングリア自身も、そしてエリカも、今日は膝より短い丈のスカートを穿いていた。今日、同行のスクルズもである。
脚を露わにする服は、いまの王都でもまだ多くはない。教義の縛りが緩んだとはいえ、足首を隠すスカートがいまでも普通なのだ。
けれど、一郎の趣味もあって、屋敷の女たちはみな脚を出す服を着るようになった。最初は恥ずかしかったが、いまではこのほうが軽く、暑さもしのげて動きやすいとさえ思っている。
とはいえ、日差しに白く光る太腿を見せて歩けば、すれ違う男たちの視線が一瞬でそこに集まる。
それを感じながらも、シャングリアはただ前を向いて歩き続けた。
「王都もずいぶん賑やかね。これじゃ買い物にも時間がかかりそう」
エリカが小声で言った。
「それでも楽になりましたわ。ロウ様が荷をお持ちくださるから」
スクルズが微笑む。
ロウが使っている亜空間術は、あの妖魔将軍サキから伝えられたものだ。
ただの収納魔道とは違い、物だけでなく人までも出し入れでき、内部の時間を止めることも進ませることもできるという。
理屈はわからない。だが、ロウはそれを当然のように使いこなしている。
今日のスクルズは、巫女服ではない。髪を魔道で黒く染め、深灰の上衣に短いスカートという平服姿だった。
王都神殿の筆頭巫女として名と顔が知られる彼女は、目立つ装いを避けているのだろう。
もっとも、いつもの紺の上衣に、足元まで白布を垂らす高位巫女の礼装を思えば、大胆に脚を露わにしたその姿はかなり艶めかしく、むしろ目立っている。
布地の薄さが思いのほか柔らかく、光を受けて脚のかたちを透かしている。膝上で揺れる裾がふと風に浮くたび、陽を含んだ肌の線がのぞいた。
それはともかく、彼女自身は平静を装っているが、どこか息づかいが乱れている気がした。
シャングリアは、奇妙な違和感を覚え続けている。
いつもよりも、色香を帯びているな──と。
だが、その理由まではわからない。
ロウはそんな彼女を見て、満足そうに微笑んでいた。
このところのロウは、自分の偏った性癖を隠そうともしなくなり、シャングリアたちが戸惑うような悪戯を仕掛けるのが日常になっていた。
もしかすると、今日はスクルズがその対象なのかもしれない。
「それにしても、あんた、本当に付き合いがいいけど、第三神殿の勤めは大丈夫なの?」
コゼがスクルズに声を掛けた。
「ええ、問題ありませんわ……。き、きちんとしておりますもの……」
答えながら、スクルズは微かに切なそうに息を吐いた。
やはり、変だ──。
そのとき、突然に膝がわずかに震え、両膝がかくりと落ちた
「あっ、ロウ様……ここでは……」
スクルズの口から掠れた小声が洩れた。
また、彼女の顔はみるみる赤くなり、内股を閉じて立つ姿は羞恥に染まって見えた。
シャングリアは、眼を見開いてしまった。
「なにを言ってるんだ。喜んで実験台になると言ったのは、スクルズ自身じゃないか。だったら、いろいろと検証させてもらわないとな」
ロウが隣で愉快そうに口角を上げる。
その言葉で、スクルズとロウがなにをしているのか、シャングリアは察してしまった。
おそらく、スクルズは出発前にロウによって、また妙な玩具を装着されたのだろう。
しかも、会話から察すれば、無理強いではなく、スクルズ自身が承知のうえで、それを受け入れた気配である。
「で、でも、さすがに……」
スクルズは腰を屈め、両手を股間に当てたまま、まるで尿意をこらえるように中腰のままだった。
「ロウ様、ちょっと目立ってます……。移動しましょう」
エリカがロウに身を寄せ、小声でささやくのが聞こえた。
実際、突然に色っぽく身体を悶えさせ始めたスクルズは、かなりの周りの視線を集めていた。
「そうだな。移動するか」
すると、ロウが懐から小さな板を取り出し、指を滑らせた。
スクルズの肩がびくりと震え、次いで力が抜けた。ほっとした様子で、ゆっくりと身体を伸ばす。
「ほら、進むぞ」
ロウがスクルズの腕に手を伸ばして、自分の腕にスクルズをしがみつかせる体勢にした。
そのまま移動を再開して、市場の人混みの中に割り入っていく。
「なあ、スクルズは、なにをされているんだ?」
腕を組んだスクルズとロウ、その隣にコゼ──シャングリアとエリカは三人の後ろをついていく感じで歩いているのだが、シャングリアは隣を歩くエリカに訊ねた。
「ああ、あんた、たまたまいなかったわね。ロウ様が出発前に、新しい玩具の試しをしてみたいって言ったのよ。それをスクルズが受けたの。ええっと、名前は……」
エリカが言った。
すると、ロウが後ろを振り返って、シャングリアたちに白い歯を見せた。
「禁欲帯だ」
ロウは飄々と言いながら、手に持っている木板を手に翳して小さく振る。
「禁欲帯?」
シャングリアは思わず繰り返した。
ロウが愉しそうに頷く。
「俺の術のこもった革帯だ、股間に装着されれば、俺が術を解かない限り外れない。しかも、外れない限り、どんなに感じても欲情は発散できない。だが、内側に仕込んだ突起が常に刺激を与えてくる。もちろん、操作もできる。──まあ、その程度の淫具だ」
ロウが反対の手で木の板に指先を滑らせた。
「あっ」
スクルズの身体がぴくりと震え、膝がわずかに落ちる。
たまらずロウの腕にしがみついたが、その表情は苦しげというよりも、むしろ嬉しそうに見えた。
「や、やめて……ロウ様……。そ、そんなにされたら……歩けませんわ……」
掠れた声でそう言いながら、頬を染めてロウに身を寄せる。
しかし、よく見れば、彼の腕に豊満な胸を押しつけ、わざと擦り寄せている。
スクルズもまた、このロウの“遊び”を愉しんでいるのは明白だ
エリカも同じように思ったのだろう。シャングリアの隣で呆れたように肩を竦めるのが見えた。
一方で、ロウの隣を歩くコゼは明らかにむっとした顔をして、ロウから木の板をひったくるように取りあげた。
「ほんとに淫乱な巫女ねえ……。でも、禁欲帯でしょう。いくまで刺激もらわないと、効果はわかりませんよね」
不満そうな表情のまま、コゼがロウから取り上げた板を指で撫でた。しかも、数回同じ動作を繰り返す。
「あんっ、コゼさん、それは、だめえっ」
スクルズが大きな悲鳴をあげて、完全に膝を折ってしまった。
しかも、握っていたロウの腕からも手を離してしまい、地面にしゃがみ込んでしまったのだ。
しゃがみ込んだスクルズの肩が、びくびくと小刻みに震えていた。
力が入らない様子で、胸が大きく上下に波打っている。
ロウの術で革帯の突起が内側から震えているのだろう。
そのたびに、スクルズの腰がわずかに浮き、喉の奥からかすれた声が洩れた。
「ん……あ、ああっ……や、やめて……もう……だめ……っ」
スクルズは身体を反らせ、唇を噛みしめ、両手を胸の前で固く握りしめている。
息が切れ、全身を震わせながら、何度も波を堪えるように身をよじる。
だが、次の瞬間、まるで糸を断たれたように動きを止めた。
ロウの説明の通りなのであれば、絶頂の手前で、突き上げる快楽が途切れたのだろう。
それでも股間の刺激は続いているのか、しゃがんだまま小刻みに身体を震わせている。
その様子を見つめながら、シャングリアは胸の奥にざらりとした感覚を覚えた。
──あれはつらい。自分も何度も、寸前で断たれたことがある。
あの焦燥と疼きは、時間が経っても身体が覚えている。見ているだけで、どこか同じ熱が蘇ってくるようだった。
周囲の視線が一斉に集まった。彼らのささやきもだんだんと大きくなる。行き交う商人や客たちが足を止め、ひそひそと語る声が耳に届く。
誰もが目のやり場に困るように顔を背けながらも、興味を抑えきれずに覗き込んでいる。
真昼の市場の喧噪が、彼女の荒い息づかいを際立たせた。
「……っ、いや……どうして……最後まで……」
掠れた声で、スクルズが小さく懇願する。
涙に濡れた瞳が震え、唇が微かに開いていた。
達しきれない苦しさに、身体の奥で熱がくすぶっているのが見てとれた。
その姿に、シャングリアは言葉を失った。
艶やかというよりも痛々しい。
──いや、どちらとも言えないのか、と心のどこかで思った。
「……とにかく、お前たち、ほどほどにしておいた方がいいぞ」
シャングリアは呆れて言った。
「まあ、そうだな」
ロウが短く笑い、コゼから板を取り戻して、板を軽く指で叩く動作をした。
「くっ」
ようやくスクルズの肩の力が抜ける。
その頬はまだ赤く、瞳は潤んでいたままだ。
「ほら、いくぞ……。コゼも、もう悪戯なしだ」
ロウが再びスクルズの腕を掴んで立ちあがらせるとともに、コゼに声を掛けた。
「はーい」
コゼが小さく舌を出して、悪戯っぽく笑ったのが見えた。
そのときだった──。
「うわっ──」
シャングリアは思わず、悲鳴をあげてその場にしゃがみかけた。
なにが起きたのか分からない。
だが、次の瞬間、内側を突き上げるような刺激が股間から走り、喰いしばった口から甘い悲鳴が洩れた。
「ひあああっ……な、なに、これっ……」
両手でスカートの前を押さえ、息を荒げながらロウを見る。
突然に股間に襲った鋭い衝撃は終わることなく続いている。
脚がふらつき、思わずしゃがみ込みそうになる。
こんな風に突然官能の悪戯を仕掛けるのは、ロウに決まっている。
「や、やめてくれ、ロウ……っ、あ、ああっ……」
シャングリアはしゃがみ込み、震える声で哀願する。
だが、股間に迸る甘い感覚はいつまでも続く。
ついに、腰が砕け、地面に両膝がついてしまった。
「あら、今度はシャングリア?」
コゼが明るくロウに話しかけるのが聞こえた。
「ロウ様、次はシャングリアもですか? さすがに趣味が悪いですよ」
エリカも呆れた声で、ロウを諫めてくれている。
だが、見上げると、ロウは全く笑ってない。それどころか、訝しげに眉をひそめている。
「違うぞ──。神かけて俺じゃない。……どうしたんだ、シャングリア?」
その表情には、いつもの悪戯めいた影はなかった。
本気で驚いている顔だ。
ロウが誤魔化しているようにも見えない。
シャングリアも唖然となった。
──じゃあ、いったい誰が?
いや、そもそも、これはなに──?
そのあいだも、股間の妖しい刺激は続いている。シャングリアは、歯を喰いしばって洩れそうな声を我慢する。
しかし、やっとわけのわからない刺激がなくなったと安堵した瞬間、今度は身体の奥から新たな感覚が弾けた。
股間だけでなく、腋、腹、尻、脚──全身のあらゆるところが一斉にくすぐられる。
神経のひとつひとつが、笑いと苦しみの境を狂わせる。
「ひ──ひいっ……あはは、やっ、だめっ、くすぐった、あはははっ、や、やめてっ、たすけ……ひゃははははっ……」
止めようにも身体が勝手に跳ね、呼吸が追いつかない。
地面に膝をつき、突っ伏すように蹲ったまま、肩を震わせ、笑いと嗚咽を繰り返す。
こんな短いスカートで、地面に蹲ったりしたら、下着が見えると思ったが、それを頓着する余裕は皆無だった。
くすぐりの感覚は、どんどんと拡大して、シャングリアを襲い続ける。
「や、やだ……あは……く、くすぐった……息が……とまる……あはは……み、見てないで……たすけ……」
「シャングリア──」
「おい、しっかりしろ──」
エリカとロウが駆け寄って両側から身体を掴んだが、シャングリアが激しく暴れるために、立たせることもできないみたいだ。
シャングリアもなんとか、耐えようと思うのだが、全身の刺激が凄まじすぎて、自分を制御できないのだ、
見えないなにかに、全身を撫で回されている──。
周囲もざわめき始める。
「おい、なんだ、どうした?」
「どうしたのよ、あんたたち?」
「なんの騒ぎだ?」
露店の主人や女将さんたちが慌てて駆け寄り、野次馬も次々と集まってくる。
その市場の午後の喧噪の中で、シャングリアだけが狂ったように、ひとりで笑い続けていた。
「……ザーラって……? 呪術?」
すると、ロウが急に、なにかに気がついたように、小さく呟いたのが辛うじて耳に入ってきた。
すると、全身のくすぐりが一瞬だけ止んだ。だが、次の刹那、お尻の奥にぞくりとした感覚が走った。
なにか柔らかいもの──細い毛の束のようなものが、お尻の割れ目を前後に、ゆっくりと、けれど執拗になぞっている。
筆先のような感触が、肌のいちばん敏感なところを這うたび、熱がせり上がってくる。
「ひいっ……い、今度は……お尻いいいいっ」
思わず声が洩れた。
誰かに見られていることなど、もう考えられない。
両手でお尻を押さえようとするけれど、細い毛の感触は逃げるように左右へずれ、また中央に戻ってくる。
止めようとしても止まらない。そもそも、実際にはなにもされてないのだ。刺激だけが襲いかかっている。逃れようもない。
「あっ……だめ……そこ……やめてくれええ──変になる……」
笑いとも泣きともつかない声が喉を震わせる。
腰が勝手に跳ね、蹲ったまま身体が弓なりに反る。
筆先がなぞるたびに、お尻の奥からじんじんとした熱が広がり、脚のつけ根まで痺れるようだった。
「シャングリア、しっかりしろ──」
「シャングリア──」
ロウとエリカが暴れ続けるシャングリアを両側から抱えるように抱く。
けれど、見えない筆先が舞い続け、甘く残酷なくすぐりを与えてくる。
笑いと喘ぎがまじり合い、涙がにじんで視界が滲む。
膝の下に石畳の感触を感じた。
スカートの裾がどこまで捲れているのか、自分でもわかってしまう。
下着が外気に触れているのを感じて、思わず身をすくめた。
それでも、止まらない。
お尻の奥をくすぐる感覚が、快楽と羞恥を溶かし合わせながら、もうどうにもならないほどに、シャングリアを支配していた。
すると、今度はまたもや、全身のくすぐりが再開した──。
「ふははははは──はははっ、く、苦しい──い、息が……はははは、ひいいいい──」
またもや、シャングリアは狂ったように笑い続けた。