※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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165 淫魔師の報復─貴公子肛姦

 仮想時空の術の発動により、視界が白く塗りつぶされた場所に変わった。

 〈中間層〉──仮想時空に入る前の準備の場だ。

 妖魔将軍こと、サキの固有能力であり、そのサキから一郎が借り受けている能力である。

 人や物をこの空間を経由して連れ込み、想像したものを形にし、外の時間を止めたまま、仮想の時を進めることができるのだ。

 いわば、仮想時空そのものを構築する“入口の間”ということになる。

 いつもながら、このなにも存在しない真っ白な世界は、ここがいつもの世界から完全に切り離された場所なのだと自覚させる。

 

「……こ、ここは……? な、なんだ、これは……」

 

 パーシバルのかすれた声が静寂を破った。

 一郎は答えず、横に視線を向けた。

 そこには、白い椅子に座るサキがいる。

 水着のような装いに薄いマントを羽織り、片脚を組んで笑っていた。

 

 一郎は着衣のまま、拘束されたパーシバルの前に立っていた。

 パーシバルは全裸で、両足を白い床につけたまま、両手首を革の枷で吊り上げられている。天井はなく、鎖は宙に溶けるように上方で消えていた。

 この空間では、想像によってあらゆる構造を自在に形づくることができるのだ。

 

 そして、パーシバルの肉体は、もはや男ではなかった。

 一郎はサキの術を応用し、パーシバルを女の身体へと変えてやったのだ。

 長い金髪が肩を滑り、胸のふくらみが小さく上下している。

 腹は薄く、腰はしなやかにくびれていた。

 その下、淡い金色の陰毛がわずかに光を含んでいる。そこにあったはずの男の象徴は消え、滑らかな肌の続きとして静かに馴染んでいた。

 均整のとれた四肢と白い肌が、かえって異様なまでに美しく見える。

 

 男だったころのパーシバルも、かなりの美貌だっ たが、女体化したいまは、その端正さが極限まで洗練され、妖しいまでの艶を帯びている。

 一郎はその姿を見つめながら、冷ややかに息を吐いた。

 

「これは、どういうことだ。どうして、女の姿に?」

 

 パーシバルも、得体の知れない空間に連れ込まれただけでなく、自分が女の身体になったことにも気がついたのだろう。

 激しく狼狽している。

 

 パーシバルをこの空間に引きずり込んだのは、サキの力だ。

 淫魔術で支配した相手なら、一郎はサキから借りている亜空間術だけで引き込めるのだが、支配外の相手は対象外だ。

 そのため今回は、サキの力を借りるしかなかった。

 だが、亜空間側に転送後は、術の主導権をサキから受け継ぎ、すでに支配権は完全に一郎の手に移っていた。

 サキは役目を終え、傍観者として一郎の隣に座っている。

 パーシバルの姿を変えたのは、間違いなく一郎の仕業である。

 

「こ、答えろ──。ここはどこで、どうして、僕は女になっているんだ──」

 

 パーシバルは必死に叫んでいる。

 一郎は答えず、横側のサキに視線を向けた。

 

「実験は成功だ。サキの仮想時空の力は実に面白い。応用も無限だ。ありがとうな」

 

 一郎はサキに向かって口の端をあげる。

 サキは、椅子に腰をおろして足を組んだまま、苦笑のような表情を浮かべている。

 

「うむ……。だが、主殿(しゅどの)、ひとつ聞いてもよいか? どうやって、こいつを男から女にしたのだ?」

 

 サキが笑みを浮かべたまま訊ねてきた。

 

「もちろん、仮想時空の力だぞ。無数の可能性のある世界のうち、こいつが女だった世界もあった。それだけだ」

 

「ああ、確かに仮想時空には、こやつが女の世界もあるだろう。だが、この白い空間では、基本的に外から連れ込んだ姿のままのはずじゃ。想像で作れるのは物だけで、それもこの空間の内に限られる」

 

「簡単なことだ。仮想時空で女だった時の世界を選び、意識を一瞬だけ送り込んだ。その姿のまま中間層へ戻した。記憶は切り離してある」

 

「なるほど……。そんな使い方があるのか」

 

 サキは感心したように笑った。

 

「最初のときに、コゼを幼いままの姿で、ここに出現させただろう。それと同じ方法だ」

 

「そういうやり方か……。主殿は、わしよりも仮想時空の扱いがうまいではないか」

 

「サキの力のおかげだ。刹那しか仮想時空に入れずに、それを白の空間で維持できるか試した。成功だな」

 

 一郎は言った。

 だが、当のパーシバルは、一郎たちが目の前で交わしている会話を全く理解できないみたいだ。

 ひたすら、狼狽えるばかりの様子である。

 まあ、当たり前か……。

 一郎は、パーシバルに向き直った。

 

「離せ、この鎖を外せえ──。僕をこんな所に閉じ込めて、ただで済むと思うな──」

 

 パーシバルが悪態をつきながら、一郎を睨みつける。

 一郎はその言葉を黙って聞いていたが、微笑を消して睨みつけてやった。

 すると、その視線がぶつかった瞬間、パーシバルが怯んだように息を呑む。

 強がる口は、もう言葉を失っていた。

 

「威勢がいいな、パーシバル。俺の女に手を出そうとしたんだ。それ相応の酬いは受けてもらうぞ」

 

 その一郎の声音にこもる冷たさを感じ取ったのか、パーシバルの顔色がみるみる青ざめた。

 だが、いまのパーシバルは、心だけは元の男のままだが、姿は絶世の美女といっていい女の身体である。

 正直、怯える姿は、一郎は嗜虐欲を刺激する。

 元々は男なのに……とは思うのだが、我ながら困った性分だ。

 

「ぼ、僕は、ダウス侯爵家の一門だぞ。冒険者風情が僕に手を出せば、とんでもないことになる──。わ、わかっているのか──?」

 

 パーシバルがなんとか気丈さを振り絞ったのか、唇を震わせながらも声を張り上げてきた。

 一郎はその言葉に薄く笑った。

 

「心配するな。命まではとらない」

 

「そ、そうか……」

 

 その一言に、パーシバルの肩からわずかに力が抜ける。

 

「……だが、二度とお痛ができない程度には心を折らしてもらおう。その身体でな」

 

 一郎の言葉を聞いた瞬間、パーシバルの顔から安堵の色が消え、凍りつくように強張った。

 軽く視線を送ると、鎖が応じて金属音を立て、両腕が上方へ引かれる。

 パーシバルの足が地を離れ、宙に浮いた爪先がかすかに震えた。

 

「ああ、痛いっ、あああっ」

 

 悲鳴が響いた。

 うちの女たちなら、宙吊りだけなら、一ノスでも、二ノスでも平然としているが、鍛えてないパーシバルには無理だろう。

 ましてや、女の身体だ。

 全体重が両腕にかかり、あっという間に激痛に喘いでいる。

 だが、その声はもう男のものではなかった。

 高く澄んだ、完全に女の悲鳴だった。

 

 


 

 

「ああ、痛いっ、あああっ」

 

 パーシバルは、足が白い床から離れて宙吊りにされたことで、全体重が吊られている両手首に加えられることになり、その苦痛に悲鳴を迸らせた。

 だが、口から迸ったのは、高く澄んだ完全に女の悲鳴だった。

 

 ──その声が、自分のものだとは信じられなかった。

 耳に届く音が他人の声のように響く。胸の奥がざわめき、全身が震えた。

 

 正面にロウが立っていた。

 黒い瞳の奥に、冷たい光が宿っている。

 その少し後方の椅子には、背の高い女が座っていた。

 美しいが、頭の両側に丸く曲がる大きな角を持っている。

 ──妖魔だ。

 その言葉が脳裏をよぎった瞬間、全身が強ばった。

 吊られた腕と肩に痛みが走り、動くたび、付け根から胸へと鈍い熱が広がっていく。

 

 とにかく、なにをされたのか、どうやってこうなったのか、まるでわからない。

 だが、女の身体に変えられていることだけは、痛みよりも深く屈辱として刺さった。

 それにしても、痛い──。

 肩が……。

 

「ああ、痛い……。た、頼む……」

 

 気がつくと、またしても、哀願が喉から漏れていた。しかし、その声はやはり女のような甲高い声だ。

 身体も声も自分のものではない。

 肉体を奪われ、得体の知れない空間で支配されている……。

それが途轍もない恐怖だった。

 

 しかも、目の前の者たちは服をまとっているのに、自分だけが裸身を晒したまま、吊るされている。

 隠すことも許されず、羞恥が痛みよりも深く心を抉った。

 

 ロウがさらに近づいた。

 ほとんど密着するほどの距離になる。

 その足音の静けさが、かえって怖ろしい。

 妖魔の女も笑っている。二人の間に流れる沈黙が、冷たい水のように胸を締めつけた。

 考えてみれば、あの女を従えているこの男は、いったい何者なのか……?

 恐怖が鎖よりも強く、全身を縛りつけていく。

 

「ま、待て、ぼ、僕は……ダウス侯爵家の一門で……」

 

 必死にそれを口にする。

 だが、喋るだけでも、吊られた腕が震えて、足先が宙を掻いた。

 痛みが骨の奥まで滲み、肩が裂けるように焼けついた。

 

「お前、そればっかりだな」

 

 ロウの口角がわずかにあがった。その笑みに滲む愉悦が、ぞっとするほど冷たかった。

 黒い瞳に見据えられた瞬間、心の奥まで冷たい指を差し込まれたような気がした。

 やっぱり、どうしようもなく恐ろしい……。

 

 そのとき、ロウの手がするりと動いた。

 吊り上げられた裸身の股間──指が股の裂け目の上あたりへ、ためらいもなく伸びてくる。

 慌てて避けようとしたが、激痛で身体はびくりとも動かない。

 次の瞬間、指先がそこを摘まみ、容赦なく捩じり上げた。

 

「あぎゃああああ──」

 

 なにをされたのかわからなかった。

 ただ、神経が焼け切れるような衝撃が走り、全身が勝手に跳ね上がる。

 鎖が軋み、肩の骨が鳴った。

 痛みが極点に達した瞬間、世界が裏返るように反転する。

 ロウが手を緩めると、痛みは引いたが、指先はまだそこを摘まんだままだった。

 

「クリトリスを捩られる苦悶はどうだ、パーシバル?」

 

 ロウが笑った。

 その言葉──クリトリス。女の身体の奥で最も敏感な場所であり、触れられれば痛みと快感が混ざる場所だ。

 意味は知っていた。だが、それが“自分の中にもある”とは思っていなかった。

 理解した瞬間、血が凍るような感覚が走る。

 そこだと悟る間もなく、ロウの指に再び力がこもった。

 

「あぎゃああああっ──」

 

 喉を裂くような咆哮がこぼれた。

 女の悲鳴ではなく、獣の鳴き声のように響いた。

 その声を耳にした瞬間、自分でもぞっとした。

 もう言葉では叫べず、声だけが身体の奥から噴き出し、意識の残滓にこだました。

 

「俺の女に手を出そうとしたんだ。こんなものじゃ許されないぞ」

 

 ロウがパーシバルの股間を握ったまま、力を入れ続ける。

 痛みと共に、頭の中で白い閃光が弾けた。

 息が止まり、全身が弓なりに反り返る。

 宙吊りの鎖が悲鳴を上げ、金属音が空間に響き渡る。

 

「ああぎゃああああ──。や、やめてええ──。許してくれ──ひぎいいいっ」

 

 それは悲鳴なのか、絶頂なのか、自分でもわからなかった。

 ただ、痛みと共に、股の奥から熱がせり上がってくる。

 胸が震え、乳首が硬く尖るのがわかる。

 痛みと恥と快感が、ひとつの爆ぜるような感覚に溶け合い、身体の奥から何かが吹き上がった。

 やがて、やっとロウの指が股間から離れた。

 

「なにか言うことはないか、パーシバル? それとも、もう一度、同じ場所を抓られたいか? 今度は針でも刺してみるのもいいな。多分、もっと痛いぞ」

 

 ロウの声が落ちる。

 その声音には、嘲りよりも冷たい悦びがあった。

 ぞっとなった。

 

「うわっ、やめてくれ。もういやだああ」

 

 パーシバルの呼吸は乱れ、喉の奥から短い悲鳴が迸った。

 痛みの熱はまだ引かず、身体は震え続けている。

 自分の声が獣のように聞こえた記憶が羞恥となって胸を焼いた。

 

「それは俺が欲しい言葉じゃないな」

 

 ロウの手が再び股間に伸びてくる。

 指先が陰核をつまみ上げたのがはっきりとわかった。

 その感触を自分の女の部分として理解してしまった瞬間、頭が真っ白になった。

 

「ひぎゃあああ」

 

 焼けつくような痛みと共に、全身が跳ね上がる。

 鎖が軋み、涙が散った。

 咆哮にも似た声が宙に散り、痛みとも快楽ともつかぬ余韻が身体の奥を駆け抜けた。

 ロウが容赦なく女の核を抓り続ける。

 

「いぎゃああああ──やめてええ──やめてください──」

 

 涙が頬を伝い、宙吊りのまま身をよじった。

 それがしばらく続く。

 痛みも快感も区別がつかず、ただ本能の声だけが迸り続けた。

 そして、ロウがやっと手を離す。

 

「なにか言うことはないか、パーシバル?」

 

 ロウがパーシバルを睨む。

 

「もう許して……僕が悪かった……。申し訳……ありません……でした……」

 

 必死で謝罪の言葉を口にした。

 涙が止まらない。

 いつの間にか、嗚咽が声になっていた。

 

「ははは、主殿もなかなかに鬼畜だのう。あっという間に泣かせおったか」

 

 横の妖魔女が声を上げて笑った。

 笑い方には下卑た響きがあったが、それでも妙に艶を帯びている。

 金属の鎖が揺れ、白い空間に乾いた音が響いた。

 

 パーシバルには、その声がどこか遠くに聞こえた。

 痛みと羞恥で思考が霞み、いま自分がなにをされたのかすらもう曖昧だ。

 ただ、捩られた股間が熱く痛み、同時にひりつくように疼いている。

 

「まだ、お仕置きは始まってもないつもりなのに、泣いてしまったよ」

 

 ロウが目の前で笑っている。

 だが、もはや、それを屈辱と感じる心はパーシバルには残ってなかった。

 ひたすら、嗚咽を繰り返すだけだ。

 

「だが、その人間、痛みではなく別のもので堕ちる気配がするぞ」

 

 女妖魔が嘲るように言った。

 ロウはその言葉に唇を上げ、次いで、無言で背後へ回り込む。

 宙吊りのパーシバルの尻たぶを片手で鷲掴みにされ、体が跳ねる。

 

「ひあっ、なに? なにを──ひいいっ」

 

 悲鳴が白い空間に響き、鎖が細かく震えた。

 ロウが冷ややかに笑う。

 

「さて、これからが本当のお仕置きだ──。せっかく女にしてやったが、犯すのは尻の穴だ。男に戻っても愉しめるだろう」

 

 その言葉を聞いただけで、血の気が引いた。

 尻を──犯される?

思考が止まり、血が逆流するような感覚が走った。

 しかし、ロウの指がパーシバルの肛門に触れ、ひんやりとした感触が尻の穴の上を這う。

 

「な、なにを……する気です……うわっ……」

 

 息が詰まり、身体がのけぞった。

 ただ、指で愛撫をしているだけじゃない。

 指先がぬめりを帯び、冷たい油剤のようなものが奥へと押し込まれていく。

 その感触で、パーシバルはなにをされているのか悟った。

 

「心配するな。ただの媚薬だ。ただれるような痒みと疼きが襲うだけのな。痒み責めは調教としては古くさいが、効果が大きい。それが、俺の女に手を出したお仕置きだ」

 

 痒みの油剤だと──?

 その意味を悟った瞬間、背筋を冷たいものが走った。

 

「ひああっ、いやあっ」

 

 だが、宙吊りのままでは逃げられない。

 冷たい感触がゆっくりと尻穴を抉り、奥に奥にと油剤を押し込められていく。

 

「ああ、やめてください──。謝った。謝りました。あああっ」

 

「謝ったからなんなんだ? 殺されても文句は言えないところを、尻責め程度で手打ちにしてやろうと言っているんだ。感謝しろよ……。もっとも、本当に手を出してたら、こんなもんじゃすまなかったけどね」

 

 ロウは容赦なく尻穴の後ろにも塗り込み続ける。

 熱が背筋を伝って上がり、尻の奥がじりじりと疼き出す。

 痛みとも違う、どうしようもない不快な──いや、妖しい感覚が広がっていく。

 やがて、やっとロウは指を抜いた。

 

「さて、どのくらい我慢できるんだ? 貴族のお坊ちゃんは」

 

 ロウが低く笑った。

 その声が耳の奥に響き、心臓が跳ねた。

 そのときには、早くも尻の奥の粘膜がかっと熱くなり、とんでもない掻痒感が襲いかかってきていた。

 

「うわっ、か、痒い──痒いよお……」

 

 パーシバルは喉を裂くような声を上げた。

 両腕の痛みも忘れ、宙吊りの身体を激しく揺らす。

 大きな乳房が震え、汗が光を反射して散った。

 長い髪が振り乱れ、涙と唾が入り混じる。

 

「ああ、痒いだろうな。だが、両手は吊られて使えない。さあ、どうして欲しい、色男?」

 

 ロウの声は、愉悦と残酷の境にあった。

 白い空間の中で、悲鳴と喘ぎが重なり、鎖の金属音がそのたびに乾いた余韻を放った。

 

「はは……主殿、まるで悪人の台詞ではないか」

 

 椅子に腰かけた女妖魔が艶やかな声で笑った。

 その笑いは冗談めいて楽しげである。

 

「悪人はこいつだ。俺のシャングリアに手を出そうとしたんだからな」

 

「怖いのう……。まあ、それが主殿じゃ。だが、女の身体を与えておきながら、女の部分ではなく、尻の穴だけを調教するとは……ちと切ない拷問じゃな」

 

「お仕置きだからな。女の身体でありながら、女としての悦びは一切与えない。そのかわり、尻の奥で快楽を覚えるようにしてやる。男に戻っても、そこしか感じなくなるようになるかもな」

 

 ロウの言葉が冷ややかに降る。

 その言葉を聞いた瞬間、パーシバルの背筋に氷の針が走った。

 だが、返す言葉は出ない。

 

 身体は言うことをきかず、全身を伝う汗が冷たく背を這う。

 掻痒の苦悶が限界にまで広がり、どうしようもなく腰が揺れる。

 自分では止めようとしているのに、身体が勝手に疼いてしまう。

 体重のかかっている手首と肩に痛みは走るが、いまやそれがなければ、狂ってしまいそうな痒みの苦悶だ。

 

「ああ……いやだ……いやだ……もう許してください……ああ……」

 

 涙混じりの声が口から迸る。

 

「男であるのを諦めて、犯してくれと言うんなら、尻を犯してやってもいいぞ。もっとも身体は完全に女だけどね」

 

 ロウがせせら笑う。

 

「ははは、もう覚悟はできておるんじゃないか。腰が淫らに動いておるぞ……、主殿よ、まるでそなたを求めておるようだぞ」

 

「そうだろう? 身体は正直だからな」

 

 ロウが薄く笑った。

 その笑みの気配だけが背後から伝わってくる。

 振り返ることはできない。

 だが、その声の低さ、その呼吸の間に潜む嗜虐の影を感じ取った瞬間、パーシバルの全身が震えた。

 

 ──この男に、いや、その女にさえ、決して手を出してはならなかったのだ。

 そう思った。

 

 遅すぎる悟りが、骨の芯まで冷たく突き刺さる。

 己の傲慢がいかに浅はかだったかを思い知らされ、喉の奥から嗚咽が洩れた。

 貴族の誇りも、男の矜持も、いまや鎖とともに宙に吊り上げられている。 

 

「ああ、もう、許してください……。痒い……痒いいい……ああ……」

 

 鎖が軋み、汗まみれの裸身が宙でのたうつ。

 痛みも羞恥も、もう区別がつかない。

 ただ、灼けつくような尻穴の痒みだけが、世界のすべてだった。

 

「尻を犯して欲しくなければじっとしてるんだな。男のお前が尻を犯されるのがどうしても耐えられないなら、必死に我慢することだ」

 

「うう、そんな……」

 

「まあ、犯されたくなったら言ってくれ。この空間では、時間はまったく過ぎていかない。それこそ、時間だけは無限にある……。まあ、頑張れ」

 

 ロウが静かに歩み寄ってきた。

 はっとした。

 いつの間にか、その手には白い鳥の羽根が握られていたのだ。

 

「だが、それも退屈だろう……。少し遊んでやろう」

 

 ロウがその羽根を軽く持ち上げ、宙吊りのパーシバルの股間にそっと触れさせ、上下に動かした。

 

「ひああっ、うわああっ」

 

 柔らかい羽根が上下に滑るたび、痒みとも疼きともつかない衝撃が神経を走り抜けた。

 息が止まり、視界が霞む。

 

「あっ……あああっ……」

 

 甲高い女の声が勝手に漏れた。

 痛みではない。けれど、それ以上に耐えがたい快感が全身を駆け抜ける。

 なんだ、これ──。

 これが女の快感──?

 ロウは何も言わず、その反応を観察するように羽根を動かし続けた。

 宙吊りの身体が小刻みに震え、汗が滴り落ちて床に消える。

 

 やがて、ロウはゆっくりと回り込んだ。

 今度は背後から、尻のあいだを羽根で撫でてきた。

 

「ひあああっ、ああああっ」

 

 衝撃が突き抜ける。

 くすぐられるたびに、腰が勝手に跳ね上がる。

 痒みが襲っているお尻を柔らかく刺激され、焦燥感と切なさに狂いそうになる。

 

「や、やめて……やめてくれ……あっ、あああ……」

 

 パーシバルは涙を散らしながら、宙でのたうった。

 鎖が軋み、全身が汗と震えにまみれる。

 だが、ロウは何も言わず、羽根を落とすように手を引いた。

 再び、刺激のない時間が襲いかかる。

 

「う……ううっ……あああ……」

 

 だが、もう耐えられない。

 放置されたまま、パーシバルは泣きながら宙吊りのまま身を身悶えていた。

 

「……お願いだ……。お尻を……犯して……。お……おねがい……します……」

 

 気がつくと、そう呟いていた。

 だが、ただれそうな熱さと痒みのお尻に、パーシバルは、そう口にせずにはいられなかった。

 

「まだ焦らしてもよかったがな……。その尻の振り方は合格だ……。まあ、報いてやるよ」

 

 後ろにいるロウがパーシバルの尻たぶに両手を当てて左右に開かせるような仕草をする。

 ついで、怒張の先端が押し当てられるのがわかった。

 そして、じわりと潜ってくる。

 

「ひんっ」

 

「パーシバル、しっかりと味わえ」

 

 ずんと滑り込むように、お尻の中にロウの男根が力強く押し貫いてきた。

 

「わあああっ」

 

 パーシバルは宙吊りの裸身を仰け反らせた。

 初めて味わう未知の──しかし、圧倒的な喜悦と快感が全身に押し寄せてきたのだ。

 

 なんだよ、これ──?

 

 これまで味わった女たちとの性交とは、規格外の圧力がパーシバルを打ち抜く。

 息もできないような気持ちよさに、パーシバルはもうまともに喋ることもできないでいた。

 

「パーシバル、痛みがないだけありがたく思え。快楽しかないんだからな。感謝しろよ」

 

 緩やかに、ロウの怒張の律動が尻穴で始まる。

 たちまちに、巨大な甘美感が全身を駆け回り、大きなうねりになって、五体を踏み抜いてきた。

 

「ああ、なに、なにこれ、なんだ、これは……あああっ──」

 

 いつの間にか、パーシバルは泣くような声をあげていた。

 そして、割り裂かれている二肢ががくがくと震え、それと同時に、圧倒的ななにかが全身を貫いた。

 頭が真っ白になるような快感──。

 パーシバルは息をすることもできずに、生まれて初めての女の快感に全身を突っ張らせた。

 

「味わえ、色男──。これが女にされた屈辱だ──」

 

 ロウがパーシバルの尻穴の中に精を放ったのかわかった。

 一射──二射──三射──。どくどくと注ぎ込まれる。

 

 しかし、もはや、屈辱という感覚はパーシバルにはない。それよりも、想像もできないような巨大な甘美感のうねり──。それに、我を忘れるほどに包まれていた。

 

 ロウがゆっくりと腰を引く。

 怒張が抜けた。しかし、抜けていく感触のあとに、からだの奥でふつふつと残り火だけが燃え続ける。

 息を整えようとしても、胸の鼓動が邪魔をした。

 波が引いたはずなのに、まだ身体の奥で潮が打っていた。

 

 男であったころには知らなかった、女の絶頂後の余韻──腹の底でかすかに脈打つ震えが、いつまでも鎮まらない。

 これが女の快感というものなのだろうか……。

 

 ロウが後ろから前に回ってきた。

 パーシバルの前側に戻ったロウは、さっきまでの行為など何事もなかったかのように身なりが整っていた。

 パーシバルは戸惑った。

 

「続きは任せるよ、サキ……。俺は先に現実へ戻る。こいつには徹底して尻で悦ぶことを教えてやってくれ……。体感で半年だ。でも、戻すのは現実側のすぐ後でいい」

 

 ロウが横の女妖魔に告げた。

 

「半年の尻責めか……。容赦ないのう。わかった。わしの眷属にやらせよう。そういう遊びを好むのがいる。女の身体にも男の身体にも、両方に仕込んでおいてやる」

 

 女の笑いには、熱よりも冷たさがあった。

 自分のことが話し合われている……。

 理解は届くのに、言葉は出てこない。

 いまだに、残り火が身体を支配して、喉からは微かな息しか漏れないのだ。

 

 すると、ロウの気配がふっと薄れ、この白い世界から姿を消した。

 女妖魔──ロウがサキと呼んでいた女が立ちあがった。

 

「さて、主殿の命だ。では、ほんの刹那の半年を味わってもらおうか」

 

 サキが立ち上がり、パーシバルの顎を指先で持ち上げる。酷薄な光を湛えた瞳が、泣き腫らした目と正面からぶつかった。

 次の瞬間、白い空間そのものが破れた。

 

 見たことのない森だ。

 苔むした巨木が連なり、湿った風が肌を撫でる。

 気づけば、宙吊りだった身体は地面に据えられた穴開きの板に首と手首を挟まれ、尻を後ろに突き出すように中腰の姿勢で固定されていた。

 膝が震え、逃げ場がないことだけがはっきりとわかった。

 

「うわああっ」

 

 そして、パーシバルは恐怖で絶叫してしまった。

 周囲に、異形の影が幾十も立っていたのだ。明らかに人ではなかった。

 多様な姿形は、彼らが妖魔であることを示していた。

 だが、全員が下半身だけ裸だった。

 勃起した性器が露わになっている。

 

 笑いを含んだざわめきが輪の外側から押し寄せ、男の妖魔たちの視線が一斉にこちらを舐め回した。

 しかも、全員がパーシバルの背後に集まっていく。

 パーシバルの叫びが再び森へ散った。

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