※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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166 女たちの戯れと騒動の終わり

 視界がふっと揺らぎ、感覚が戻る。

 仮想時空から現実へ帰還した一郎の耳に、最初に飛び込んできたのは、甲高い悲鳴と抗議の声だった。

 

「んふううっ、ふううっ──。お、お前たち──、い、いい加減に……」

 

 見ると、シャングリアが背もたれのついた長椅子に腰を下ろしていた。両手は後ろへ回され、椅子の背に拘束されている。

 身体を大きく弓なりに反らせ、がくがくと震えていた。

 どうやら一郎が戻ったのは、まさにシャングリアが絶頂した瞬間だったらしい。

 服は着ている。

 だが、その服は、シャングリアの汗でべっとりと肌に貼り付いている。

 

 一方で、そのシャングリアと向かい合う長椅子には、コゼ、エリカ、スクルズの三人が並んで座っていた。

 コゼの手には、シャングリアを刻んであるはずの「淫呪の人形」が握られている。

 どうやら、それを介してシャングリアの身体を拘束し、快感を送り込んでいる最中だったみたいだ。

 

 その証拠に、人形の姿勢も、椅子に座るシャングリアとまったく同じ格好をしている。

 よく見れば、シャングリアは拘束具で動けないのではなく、人形と同じ姿勢を崩すことができないでいるようだ。

 

「文句を言うんじゃないわよ、シャングリア。人形はただ、よがっていればいいの」

 

 コゼがけらけらと笑う。

 そして、そのコゼが隣のエリカを見た。

 

「……それはともかく、いまのは、あたしのときが速かったと思うわ……。あたしの勝ちでいいわよね、エリカ?」

 

「そんなことないわよ──。砂時計が二回半でしょ。ほとんど同じじゃない。そもそも最初にやったのは、わたしだし、二度目のあなたの方が有利なのよ」

 

 コゼに対して、エリカが憤然と応じた。

 ふたりは、あの淫呪の人形を挟んで言い合っている。

 会話の内容から判断すれば、あの人形を使って、シャングリアを絶頂させる時間を競いあっているのか?

 それはまた、随分と愉快なことを……。

 

 見ると、シャングリアのスカートの生地に丸い染みができていた。下着を穿いたままでこれほど濡らすのだから、どれだけ強烈に責められていたかは察しがつく。

 それはともかく、女たちはまだ一郎の帰還には気付いてない。一郎が三人の後ろ側に戻ったからだろう。

 

「それがなによ?」

 

 コゼだ。

 

「だから、それで時間が変わらないなら、わたしの勝ちじゃないのよ。……まあいい。同点にしましょう……。じゃあ、次はスクルズね」

 

「いえ、わたしは……」

 

 しかし、スクルズは尻込みしている様子だ。

 責められるのは好きなスクルズだが、責めるのは苦手なのか。一郎はスクルズの性質を改めて知った、

 

「いいから参加しなさいよ」

 

「ふざけるな、お前ら……。あっ、ロウ──助けてくれ──」

 

 シャングリアが一郎に気づき、悲鳴混じりの声をあげた。

 一郎に背を向けていた三人も一斉に振り返る。

 

「ロウ様」

 

「ご主人様」

 

「ロウ様」

 

 エリカとコゼとスクルズが、一郎を見て、ぱっと笑みを浮かべる。

 

「なにをしているんだ?」

 

 一郎は訊ねた。

 

「言われたとおりですよ……。シャングリアで遊んでます……。いまやっていたのは、この人形を使って、誰が一番速くあいつをいかせられるかという競争です」

 

 コゼが嬉しそうに言った。

 

「助けてくれ、ロウ……。こいつら、人形でわたしを動けなくして、こんなことばかりするんだ」

 

 シャングリアが泣くように訴える。

 一郎は思わず口の端を上げた。

 淫らな遊びを楽しむ自分の女たち──その光景は滑稽であり、愉快でもあった。

 

「……面白そうだな。俺も混ぜてもらうか……。勝った者は、ほかの全員にひとつだけ命令できるってことでどうだ?」

 

「そんなのご主人様が勝つに決まってるじゃないですか……。まあ、でもやりましょう」

 

 コゼが笑う。

 

「冗談じゃない──。もう、いい加減にその人形で遊ぶのをやめてくれ。スクルズ、解呪しろ──。できるんだろう?」

 

 シャングリアが悲鳴をあげる。

 

「……それは……できますけど……」

 

 スクルズがちらりと一郎に視線を向けた。

 

「まあ、慌てるな、シャングリア。お愉しみはこれからじゃないか」

 

 一郎は三人を強引に詰めさせ、エリカとスクルズのあいだに腰を下ろした。

 三人掛けの長椅子に四人で座る体勢なので、両脇のエリカとスクルズはほとんど一郎の膝に乗るほどに密着した感じになった。

 

「あっ、ちょっと狭いですね……。大丈夫。あたしが移動するね」

 

 すると、コゼがさっと立ちあがって、一郎の膝の上に乗っかってきた。

 

「わっ、なによ」

 

「あら?」

 

 左右に押し避けられた感じになったエリカとスクルズが小さく声を出す。

 だが、ふたりともそれ以上なにも言わない。

 まあ、コゼが一郎に過剰に甘えるのは、いつものことなのだ。

 

「ところで、いま何刻だ? あれからどのくらい経った?」

 

 一郎は訊ねた。

 

「あれから半ノスほどです……。ああ、そういえば、パーシバルはどうなったのです?」

 

 エリカが答えた。

 

「半ノスか……」

 

 一郎は頷いた。

 向こうで過ごした時間も、半ノスほどだったので、さっきの仮想時空の滞在は、こっちの現実時間と完全に一緒だったということだ。

 白い空間や仮想時空で過ごす時間は、現実とは切り離して動かせる。

 つまり、好きなように時間経過を調整できるということだ。

 だが、今回は意識していなかった。だから、現実の時間と同じように経過したのだろう。

 

 しかし、サキの話では、あの白い仮想時空で数年を過ごしても、現実では瞬きほどの差しかないように戻ることも可能だと言っていた。

 時間という概念そのものが、あそこでは意味をなさないらしい。

 一郎がサキから借りている〈亜空間術〉も、その原理は同じらしいので、時間の調節も再現可能のはずだ。

 そう思うと、興味が湧いた。

 

 ──仮想時空や白い空間なら、どれだけの時間でも女を抱ける。それでも、現実の時間は、ほとんど経過しないようにできるのだ。

 

 もし自在に、時間調節と亜空間を扱えるようになれば、いくらでも“愉しみ”を延ばせるということになる。

 練習する価値はある。

 女たちを連れ込んで、飽くまで試して、現実に戻る頃には──わずか数瞬。

 それが可能なら、これほど都合のいい術はない。

 一郎は静かに笑みを浮かべた。

 次は、それを実験してみよう。

 

「パーシバルはサキに預けてきた。仮想時空の中で、体感半年のお仕置きを指示した……。もっとも、こっちの時間では間を置かずに戻せるように指示したから、そろそろ戻ってくるだろう」

 

 一郎は説明した。

 仮想時空に置いてきたパーシバルは、サキに託してある。雌妖や男妖を使い、徹底的な嗜虐調教──とりわけ尻の穴だけを叩き込むよう命じた。

 期間は体感で半年である。

 男としては、これ以上ない罰だ。もっとも、そいつがいちばん似合いの報いだが……。

 

 そう思った矢先、目の前の空間が歪み、うずくまる人影が現れた。

 パーシバルだった。

 

「きゃあああ」

 

 女の悲鳴が響いた──いや、それはパーシバルの声だった。

 

 また、パーシバルの見た目は当然ながら男に戻っており、服装も一郎とサキが仮想時空へ連れ込んだときのままだった。

 だが、雰囲気がまるで違った。

 床に尻を下ろし、両脚を横に流すようにして座り込んでいる。仕草が妙に女のように見える。

 背を丸め、怯えるように両腕で胸を抱き締めていた。かつての騎士然とした威圧感はなく、ただ繊細な気配だけが残っていた。

 指先の震えと、こぼれる息の柔らかさもまた、女めいて見える。

 

「ど、どこ……ここは……? あ、あの、わたし……」

 

 言葉遣いまで柔らかくなっている。男の面影は残っているのに、喋り方も態度も女のようだ。

 

「……こいつ、いま“わたし”って言った?」

 

 一郎の膝の上にいるコゼが怪訝そうに呟いた。

 そのとき、またもや目の前の空間が歪み、パーシバルの横にサキが姿を現した。

 

「ふふ……指示のとおりに仕込んだぞ、主殿」

 

 サキが、艶やかに笑いながら言った。

 その声には誇らしげな響きがある。

 

「ああ、お帰り……。なんか、こいつ、女っぽくなったか?」

 

 一郎は、パーシバルを眺めながら、サキに声を掛けた。

 

「まあ、半年も眷属に繰り返し輪姦させたからな。見てのとおり、男の形は残したが、心と反応は女のものじゃ。いまでは、穴を撫でられるだけで女のように震えるぞ」

 

 サキの言葉に、パーシバルがびくりと震えた。

 頬が赤く染まり、喉がひくひくと震える。

 恥じらいとともに、どこか快楽の余韻を思い出しているようにも見えた。

 

「ほら、挨拶せんか──」

 

 サキが指を鳴らすと、パーシバルはその場で姿勢をただして土下座をした。

 

「……ああ、し、尻穴奴隷の……パーシバルでございますわ……」

 

 声は甘く、仕草はなよやかで、男の形をしていながら、言葉使いも身のこなしも、完全に女のそれだった。

 そして、顔だけをあげる。

 頬を染めて顔を赤くするパーシバルの目の焦点は合っておらず、唇だけがうっすらと笑っている。

 その正体のない表情に、一郎は少しぞっとなった。

 

「これが、あのパーシバルか?」

 

 シャングリアも驚いたように声を上げた。

 ほかの女たちも呆気にとられた感じだ。

 

「もう男としては通用せんな。見事であろう? 朝と昼は女で、夜は男の姿で、男の眷属どもに犯させた。尻穴だけをな。主殿の命じたとおりにだ」

 

 サキが愉快そうに言った。

 

「ええっと……。これは、ロウ様のご指示の結果なんですか……? でも、こいつになにをしたんです。まるで別人みたいですけど」

 

 一郎の横のエリカが女たちを代表するように訊ねる。

 目の前で女のように土下座するパーシバルが、脅されているのではなく、心の底から服従しているのを理解したのだろう。

 一郎もここまで変わるとは思わず、唖然としている。

 

「主殿に言われたとおりにしただけじゃ。半年かけて、己の快楽の形を教えてやったのよ。どうだ、主殿?」

 

 サキが自信たっぷりに笑い声をあげた。

 やり過ぎ……だとは言えなかった。

 命令したのは、間違いなく一郎自身なのだ。

 

「それで、こいつ、どうするんですか、ご主人様? なんか……見ていると、ぞっとします」

 

 コゼが眉を寄せて訊ねた。

 

「記憶を抜いて追い出すか。それとも、さらにお仕置きするか……?」

 

 一郎が視線を巡らせる。

 

「ああ、どうかお仕置きをしてくださいな。し、尻穴にどうか……」

 

 パーシバルがなよなよと尻を揺すって哀願した。

 土下座のまま顔だけあげている頬は上気し、口元からは涎が糸を引いている。瞳の奥は恍惚に濡れ、理性の影がまるで見えない。

 もはや、かつての貴族も騎士もそこにはいない。快楽に形を奪われたただの生き物だ。

 

「もういいじゃないですか。記憶を抜いて追い出しましょうよ、ロウ様」

 

 エリカが言う。声にかすかな嫌悪と哀れみが混じっていた。

 

「どう思う、シャングリア?」

 

 一郎が視線を向けた。

 

「もういい。追い出せ──関わるだけ無駄だ」

 

 シャングリアが冷たく言い放つ。

 

「そうか。ならそうしようか……。記憶を抜いて放り出してくれ、サキ……。路地にでも落としておけばいい」

 

「承知した」

 

 サキが指を鳴らす。

 光がひときわ強く瞬き、パーシバルの姿が霞の中に溶けていった。

 

「これで片づいたな」

 

 一郎は小さく息を吐いた。

 緊張の余韻が残る中、サキがゆるやかに微笑んだ。

 

「主殿も、酷なことをする。あの男、最後は主殿にもう一度、尻を犯されるのを愉しみにしておったのだぞ。それなのに、手をつけずに追い出すとは、やはり主殿は鬼畜じゃのう」

 

「冗談じゃない。俺は男を犯す趣味はない──。だから、仮想時空でわざわざ女の姿にしたんだ」

 

 一郎が肩を竦めると、コゼが笑いを堪えきれなかったように吹き出した。

 

「まあいい……。よし。続きをするぞ──。次はスクルズの番のようだったろ」

 

 一郎は話題を変えたくて声をあげた。

 

「えっ、やっぱり、わたし……ですか?」

 

 スクルズが慌てて身を引く。

 そのとき、コゼが嬉しそうに「淫呪の人形」を手に取って振りかざした。

 

「はいはい、再開よ。シャングリア、逃げられないわよ」

 

「ま、待て、ロウ。いい加減に、その人形遊びをやめろ」

 

 人形の呪術のために、長椅子に座ったまま動けないシャングリアが怒鳴った。

 座る姿勢は脚がやや開き気味で、スカートの裾が乱れ、太ももに汗が光っていた。

 人形もまた、同じ格好なのだ。

 

「遊びの途中で止めるのはよくないしな……。だが、座り方に風情がないな。こうしてみるか」

 

 一郎が涼しい顔で言うと、人形の脚を大きく開かせた。膝を曲げて真横に開脚するようにだ。

 

「うわっ」

 

 すると、向かい側のシャングリアの脚も同じように動く。

 いわゆる“M字開脚だ”。シャングリアの短い丈のスカートは捲れあがり、女たちに共通して身につけさせている薄地の白い“紐パン”が露わになった。

 べっとり愛液で濡れていて、布に局部が完全に張り付いていてかなり扇情的だ。

 

「随分と下着を汚してるな」

 

 一郎はわざと指摘する。

 さっきまで人形を通して愛撫を受けていたからだろう。

 愛液で内腿を濡らして、まるでおしっこでも漏らしたかのようになっている。

 まあ、シャングリアもそうだが、一郎が毎日抱いて、淫魔術で徹底的に性感を敏感にしてやっているのだ。

 当然の反応だろう。

 シャングリアの顔がみるみる赤く染まる。

 

「こ、これは恥ずかしいぞ。やめてくれ──。せ、せめて、脚を戻してくれ」

 

「まあ、遠慮するな、シャングリア。遠慮なく恥ずかしがってくれ」

 

 一郎は揶揄った。

 すると、サキがソファの後ろ側で喉を鳴らして笑う。

 

「ふふ……主殿は相変わらず、色事には容赦ないのう……。では、わしも見物といくか」

 

 サキが長椅子の後ろから、一郎に抱きつく仕草になる。

 一方で、シャングリアは悔しげに歯を食いしばっている。

 

「だが、本当に人形を触ると、シャングリアに伝わるのか?」

 

 一郎はM字開脚をしている手に持っている人形の胸から股間にかけて、軽く手で愛撫してみた。

 

「や、やめろ……ああっ」

 

 シャングリアの悲鳴が響き、椅子の上で身体が跳ね上がる。

 甘い声が部屋に戻り、空気が一気に熱を帯びた。

 また、部屋に漂っているシャングリアの愛液の香りが濃さを増すのがわかった。

 

「なるほど、面白いものだな……。じゃあ、スクルズ。お前の番だ」

 

 一郎は人形をスクルズに手渡した。

 

「えっ……わ、わたしがですの? そんな……だって……」

 

 スクルズが戸惑いながら頬を染める。

 その仕草を見たコゼが、すかさず茶化した。

 

「そんなに嫌なら、代わりにスクルズが人形になる?」

 

「ええっ、そ、それは……困りますわ。だって……」

 

 すると、スクルズは満更でもないように、そわそわと落ち着かない様子になった。

 言葉を濁すスクルズの声が妙に甘く震えている。

 

「えっ、あんた、人形側がいいの?」

 

 コゼが吹きだした。

 

「困る……という感じじゃないな」

 

 一郎も笑ってしまった。すると、スクルズは慌てて首を振る。

 

「ま、まあ……そんなこと……ありませんわ」

 

 頬を赤らめ、視線を逸らすスクルズ。

 だが、明らかに、なにかを期待しているのがわかる。

 そわそわと指を弄びながら、ちらちらと一郎に視線を送ってくる。

 

「……スクルズ、あなたって」

 

 エリカが呆れたような溜息をついたのが聞こえた。

 

「だったら、交代だ、交代──。もう解放してくれ──」

 

 シャングリアが叫んだ。

 

「面白い連中だのう。主殿の性奴の仲間は……」

 

 すると、サキが高笑いし、一郎も吊られてさらに笑ってしまう。

 部屋の中が笑いと官能と悲鳴で入り混じった。

 享楽と退廃が絡み合う、いつもの夜がまた幕を開ける。

 

 

 

 

 21話『女騎士のちょっとした災難』終わり──

 22話『第三王女の夜這い命令』に続く──

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