※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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176 夜這い未遂の夜

 ロウのにやにやと馬鹿にしたような笑みを向けられながら、イザベラは屈辱に耐えて服を脱いでいく。

 普段は自分で衣服を脱ぐことなどなく、着替えも侍女任せだ。

 他人の前で裸になること自体には慣れていても、脅されて服を剥がされるとなれば話は別だ。

 腹の底が煮えくり返る。

 やがて、一糸まとわぬ姿になったイザベラは、両手で胸元と股間を押さえ、膝をぎゅっと寄せた。

 

「恥ずかしがるんじゃない。ミランダから容赦なく服を剥ぎ取ったくせにな。さっさと長椅子に乗れよ。手摺りに脚を載せて股を開け。そして、指で秘部を拡げるんだ」

 

「な、なんだと──」

 

 あまりの命令に、イザベラは思わずかっとなった。

 だが、その感情を見透かすように、ロウが左手の球体をわずかに離す仕草をする。

 イザベラは反射的に身体を強ばらせた。

 

「さっさとやるんだ。シャーラがどうなってもいいのか?」

 

 イザベラは拳を固く握りしめた。

 だが、ここまで来れば従うしかない。

 長椅子に座り、両足を手摺りに乗せる。

 なんという恥ずかしい格好……。

 さらに手を伸ばして、股間の割れている部分を指で引っ張って拡げる。

 

「なるほど……、生娘であるのは確かだが、まったく使っていない身体というわけでもなさそうだな。自慰は好きだろう。何日置きにやるんだ?」

 

「なっ──」

 

 かっとなる。

 しかし、向かい合う長椅子に座るロウがまたもや、起爆具になっている球体を前にかざした。

 イザベラは黙り込んだ。

 

「手はそのまま動かすな……。そして、質問に答えろ、姫様」

 

「な、なんで、そんなことを……教えなければ……ならん……」

 

 怒りに震えながら言う。

 だが、気がつくと視界が歪んでいた。

 どうやら、眼に涙がこぼれたみたいだ。

 

「理由か? 簡単だ。俺はこの球体でシャーラの首と腹を爆ぜさせられる。答えたくないなら、そうしてもいい……。俺は爆裂の首環を炸裂させてここから逃げる」

 

「こ、この……卑怯者……」

 

「さあ、質問に答えろよ……」

 

 ロウが勝ち誇った口調で言う。

 イザベラの身体は、悔しさに震えた。

 

「じ、自慰などせん──」

 

 本当は違うが、正直に答える必要はないとイザベラは思った。

 

「嘘をつくな。自分の状態を見てみろ。見られるだけで、これほど濡れているのに。自慰の経験すらないはずがないだろう」

 

「ば、ばかなことを──濡れてなどおらん──」

 

「いや、濡れてるぞ。自分でわかるだろう。どうやら辱められると感じる性質らしいな。これは驚きだ。ハロンドール第三王女殿下が、苛められて悦ぶ性癖とはな」

 

 ロウが楽しげに笑い声をあげた。

 

「な、なにを……わたしを愚弄するか──」

 

 イザベラは怒声を漏らした。

 だが、その直後、胸の奥で心臓が跳ね上がったのがはっきりとわかった。

 ロウに指摘されるより先に、いまの自分の反応はわかっている。

 指を添えている局部には、思いもよらぬほどの湿りが広がり、その指先にぬるりとした熱がまとわりついている。

 こんな無礼者の前で股を晒すなど、本来は耐えられない屈辱のはずだ。

 

 それなのに羞恥を押しつけられるほど、腹の奥が落ち着かず、いやな熱がせり上がってくる。

 どうしてこんな反応をするのか。

 その理由だけは、受け入れたくなかった。

 

「もういいでしょう、ロウ……。これで十分懲りたと思うわ。もう許してあげなさい」

 

 そのとき、ミランダが横から声をあげた。

 依然として光の檻に監禁されているミランダだが、さっきロウが渡した服をすでに身につけてはいる。

 

「そうですよ、ロウ殿──。ここまでとは聞いていません。ただ姫様を懲らしめるだけと……」

 

 続いて、シャーラも困惑したように口を挟む。

 どこか雰囲気が違う。

 ロウに完全に屈服させられ、爆裂の首環で脅されているようには見えない。

 むしろ、先ほどまでとは打って変わって、ロウと打ち解けた空気さえ漂っていた。

 

「なに言ってんだ──。陰毛を剃るのと引き換えに悪役を引き受けただけだ。これくらいやらなきゃ懲りないだろう。それに──さっきのも本当だ。姫様は俺に辱められて、しっかり感じているぞ……」

 

「やり過ぎよ、ロウ……」

 

 ミランダがぴしゃりと言った。

 すると、ロウが大きく溜息をついた。

 

「わかったよ。じゃあ、終わりにしよう……。姫様、手を離してもいいですよ」

 

 ロウの声色ががらりと変わった。

 イザベラは呆然とした。

 

「もしかして……芝居か? シャーラ、お前……ロウと結託して、わたしを愚弄したのか?」

 

 イザベラは手を股間から離し、慌てて椅子から脚をおろした。

 そして、必死に両手で胸と股間を隠してシャーラを睨みつける。

 すると、ロウが口を開いた。

 

「別に愚弄したつもりはないですよ、姫様。シャーラが俺にひどい目に遭って、実際に敗北したのは事実です……。返り討ちにしました」

 

「シャーラが本当に負けたのか?」

 

 驚いてイザベラはシャーラに視線を向けた。

 あのシャーラが……?

 いままで何度も自分を守ってきた、最強の護衛が?

 あり得ないと思う気持ちと、認めざるを得ない現実が胸の中でぶつかり合う。

 そのシャーラは、さっきまで裸身を晒していたが、とりあえずマントで身体を隠している。

 

「事実です。負けました。完膚なきまでに……」

 

 シャーラは小さく頷く。

 呆然となった。

 シャーラの魔道の実力も、武術の腕も十分に知っている。キシダイン派との後継者争いの中で、いまでもイザベラが生きているのは、シャーラのおかげだろう。

 それが手もなく負けるとは……。

 

「ただ、姫様には手を出さないで欲しいとだけは言われて、それは約束しました。だから、手は出してないでしょう?」

 

「まあ、手は出してないわね……。王女を脅迫して裸にし、秘部を晒させて、自慰の経験を訊ねはしたけど、手は出してないわね」

 

 ミランダが呆れたように横から口を挟む。

 

「……とはいえ、俺としても、くだらない気まぐれでミランダをひどい目に遭わせた件は腹に据えかねた。そこで、折り合いとして“いまの辱めという形になったわけです……。シャーラの協力を得たうえで」

 

 ロウは悪びれる様子もなく、にやりと笑った。

 

「協力って……。あれは、そんな生やさしいものじゃあ」

 

 シャーラが真っ赤になる。

 

「わたしを……騙したのか、お前たち」

 

 イザベラは声を震わせた。

 だが、どこまでが芝居で、どこからが本当なのか整理がつかない。

 シャーラが「王家の道」でロウを案内したのは事実だし、恥ずかしい格好でここまで連れて来られたのも事実だ。

 

「……姫様、とにかく、わたしがロウ殿にまったく歯が立たなかったのは本当です……。ロウ殿の屋敷に行ったとき、わたしは全くなすすべなく負けました」

 

「本当にか?」

 

「ええ、幸いにして、ロウ殿は悪人ではありませんでした……。もしも、ロウ殿が本気で悪意を持っていたら、わたしは助からなかったでしょう」

 

 シャーラの言葉に、イザベラは言葉を失った。

 

「もういいでしょう、ロウ……。それより、そろそろここから出して」

 

 ミランダが静かに促した。

 

「そうだったな……。じゃあ、姫様も、ミランダを解放してください。クエストは失敗で構いませんよ。俺は姫様を夜這いしませんし」

 

 ロウがさっきイザベラから取り上げていた杖を渡した。

 釈然としないまま杖を受け取り、イザベラはミランダを閉じ込めていた光の檻を消滅させた。

 一方、シャーラは自分の首にあった首環をあっさり外した。それだけじゃなく、下腹部に刻んでいる刺青に手をかざすと、あっさりと魔道で消してしまった。

 

 イザベラは、またもや唖然とするしかなかった。

 しかし、思い返せば、ロウが「爆裂の首環」だと言った際、ミランダが妙に怪訝な顔をしていたことを思いだした。

 

「もしかして……ミランダ、お前も最初からこれが狂言だと気づいていたのか?」

 

 イザベラは問いかけた。

 

「ドワフ族は山の民です。炸裂砂の匂いはよく知っています。あの首環からは匂いがしませんでした。それで、危険な代物ではないとわかりました」

 

 ミランダは淡々と答えた。

 

「だったら……どうして、それをわたしに教えん?」

 

 イザベラが言うと、ミランダは不満げに鼻を鳴らした。

 

「教える? あなたに、監禁され、裸にされて辱められた相手にですか?」

 

 ミランダは冷えた声で言い放ち、卓上の宝石箱から自分の魔道の指輪を取り上げて嵌めた。

 その言葉と態度で、ようやくイザベラはミランダがどれほど怒っているかを理解した。

 

「それについては……謝る……。だが、わたしはロウという男を試したくて……」

 

「いくら試すと言っても、自分を夜這いに来いなどと命じるのは、人を愚弄しています。あなたはハロンドールの姫君なのですよ。いったいなにを考えているのです──」

 

 ミランダが鋭い声で叱責した。

 

「そうです、姫様。もうおやめください。ロウ殿は、わたしや姫様が試せるような方ではありません。あんなに怖い思いをしたのは初めてで、歯が立たなかった相手もロウ殿が初めてです」

 

 シャーラも言った。

 イザベラは、なによりシャーラがここまでロウを評価していることに驚いた。

 しかも、そのロウに説得され、一時的とはいえ自分を裏切るような行動をしたことが、どうしても納得できない。

 

「もういいじゃないか、シャーラ……。とにかく、姫様への最後のお仕置きだ。ここで本物を見てもらおう」

 

 ロウが手を伸ばし、シャーラの手首をつかんだ。

 

「ちょ、ちょっと、ロウ殿……」

 

 シャーラは困惑した声をあげた。

 しかしロウが手を引くと、素裸のシャーラは大きく抵抗することなく、ロウの膝の上へ導かれてしまう。

 

「お……お前、なにをするつもりだ?」

 

 イザベラはびっくりして声をあげた。

 まさか、ここでシャーラを抱くつもりなのか──?

 イザベラの目の前で──? しかも、ここはイザベラの私室だ。

 

「おっと、姫様はそのままですよ……。これはクエストだ。姫様に手を出さず、今回のお転婆にお灸をすえる──それがシャーラ殿から新たに依頼されたクエストでね」

 

「ク、クエストって…….なにを言っているんです、ロウ殿」

 

 シャーラはすでに、ロウによって長椅子に押し倒されていた。

 抵抗の素振りもあるが、明らかにそれは弱い。

 ほとんど、かたちだけのものだ。

 あのシャーラが……?

 

「報酬は、俺が好きなときに身体を許すことで、期限は無制限。……これが最初の一回目だ──。文句あるのか? 屋敷で承知させただろう?」

 

 ロウは悪びれもせず言った。

 

「そ、それは確かに……。でも……ここでは……」

 

 シャーラは明らかに戸惑っていた。

 

「なに言ってるんだ、シャーラ。いつでもどこでもという約束だ? ここも例外じゃない。さあ、俺に乗るんだ」

 

 ロウは、ズボンを緩めて股間を露出させた。

 

「なっ」

 

 イザベラは思わず声をあげてしまった。

 

「あらあら、そんな約束をしたの、シャーラ? 本当にいつでも、どこでもって?」

 

 ミランダだ。

 ちょっと茶化すような口調だ。

 

「い、言いましたけど……。でも、それは強要されて……」

 

「だったら、諦めるのね。このロウは、とんでもない好色の絶倫男よ。屋敷にいる三人だけじゃ足りなくて、相手をする女を捜してるんだから。まあ、覚悟しなさい」

 

 ミランダは笑っている。

 制止する気配はない。

 

「そ、そんな……」

 

 シャーラは戸惑いながらも、結局すぐに抵抗をやめた。

 ロウに強要されるまま、椅子に座るロウに向かい合うように跨がって腰に乗り、ロウが露出している怒張に腰を埋めていく。

 

「あんっ、ああ……」

 

 イザベラは目を丸くした。

 本当にイザベラの目の前で、ロウとシャーラが性交を始めたのだ。

 イザベラから見えるのは、シャーラの背中と白いお尻だが、それが淫らに上下し始める。

 

「すっかり準備ができてるじゃないか。愛撫なしに俺を受け入れられるほどに濡らしておいて、我慢とは身体に毒だぞ」

 

「だ、だって……、あっ、ああっ、あっ、あっ」

 

 シャーラがなにか言おうとしたが、ロウの動きがそれを飲み込んだ。

 ロウがシャーラを翻弄するように、本格的にシャーラの腰を下から支えて激しく動かしだしたのだ。

 

「ああ、だめええっ」

 

 シャーラが耐えきれなくなったようにロウの背中にしがみつく。

 

「舌を出せ」

 

 ロウが激しくシャーラを上下させながら声をあげた。

 後ろからだが、ふたりの唇は重なったようだ。

 ロウとシャーラは、舌を絡め合いながら腰の律動を続けている。

 

 イザベラは、その激しい営みにまるで息を忘れたように見入っていた。

 毅然としたシャーラの面影はどこにもなく、快楽に乱れるだけの姿になっている。

 その変貌に、イザベラは圧倒されるしかなかった。

 しばらくして、ロウはシャーラの舌を舐めるのをやめて、シャーラに両手を頭にあげさせて脇の下を舐めだした。

 

「そ、そんなところを……」

 

 イザベラは驚愕の声を漏らした。

 シャーラの乱れ方はさらに激しくなる。

 

「ああっ……だ、だめ……っ」

 

 シャーラは大きな声をあげ、全身を大きく震わせた。

 イザベラは思わず息をのんだ。

 

「じゃあ……出すぞ。受け止めろ」

 

 ロウの声が響く。

 

「は、はい……ロウ殿……。あ、ありが……とう……ございます。ああああっ、ああ……」

 

 シャーラが全身を突っ張らせて、がくがくと身体を痙攣させる。

 ロウの身体がかすかに震える。

 シャーラはロウにしがみついたまま、幸福そうに身体を震わせ続けた。

 

 


 

 

「じゃあ、本当にシャーラをイザベラ姫の前で抱いたんですか?」

 

 エリカが目を丸くしている。

 いつもの幽霊屋敷だ。

 シャーラとともに一郎だけで宮殿に乗り込むことに、エリカは最初難色を示した。

 だが、シャーラが安全を保障してくれたこと、そしてミランダを救出しなければならないという目的があった。

 最終的には一郎ひとりが向かうことをエリカも認めたのだ。

 もちろん、それはシャーラという王女の護衛侍女を一郎が確実に淫魔術で支配してしまうという条件付きだ。

 一郎は、エリカに従い、シャーラが一郎を裏切れないように支配を刻むと、彼女の案内で王宮内に乗り込んだのである。

 

 王宮に乗り込むのは一郎だけになったのは、シャーラが王家の道を使わせる条件として、「秘密に接するのが一郎だけ」というのを強く望んだからだ。

 エリカたちも一緒に、という話になると、王家の道は使わせられないと言う。

 それで、エリカは最終的に折れたのだ。

 

 いずれにしても、監禁されているミランダを解放するには、一郎が直接イザベラ姫のところに赴く必要があると思った。

 そうでもしなければ、気性が荒く我儘だというイザベラが、素直にミランダを解放するとは思えなかった。

 シャーラの説明によれば、他人の忠告や諌言など、まず聞き入れない姫なのだという。

 

 一郎はシャーラとともに宮殿に乗り込んだ。

 シャーラが一郎に脅迫されているという体にして、偽物の爆裂の首環を嵌めさせたのは、洒落半分の仕掛けだ。

 イザベラに手は出さないことを条件に、多少の懲らしめは構わないとシャーラも同意していたし、シャーラを人質にして服を脱がせる程度のことはするつもりだった。

 少しばかり怖い目を見せ、そのうえでミランダを解放させて帰ってくる──当初の算段はその程度だった。

 秘部まで晒させたのは、まあ成り行き……。

 

 最後にイザベラの前でシャーラを激しく抱いた。

 そこまでは元の計画にはなかったのだが、裸にさせて自分の性器を指で拡げさせるような辱めを命じたとき、屈辱に震えながらも、イザベラの身体がひそかに欲情して熱を帯びていくのが一郎にはわかったのだ。

 

 イザベラは、見られることで感じていた。

 その隠れた性癖を見抜いた一郎は、だったら目の前でシャーラを抱いてみせようと考えた。

 

 シャーラはすでに一郎にすっかり屈服していて、抵抗しないこともわかっている。

 自由な意思は奪っていないが、一郎のシャーラへの淫魔術の縛りは完璧なのだ。

 

 目の前で行われる性行為に、イザベラが興奮状態に陥ることも予想できた。

 一郎としては、あの生意気な姫が圧倒されて大人しくなる様子を見てみたかったのだ。

 

 案の定、一郎とシャーラが事を終えて身体を離したとき、イザベラの股間からはかなりの愛液が流れ、すっかり熱く疼いた状態になっていた。

 イザベラはなにも口にせず、他人の目の前で一郎に抱かれたシャーラよりも、当の本人のほうがよほど恥ずかしそうにしているのがおかしかった。

 

 そして、一郎は十分に満足して宮殿を後にし、こうして戻ってきた。

 入るときとは違い、帰りはミランダとともに正面から堂々と出た。

 一郎をとがめる者は誰ひとりおらず、拍子抜けするほどあっさり宮殿を出ると、途中でミランダと別れて、王都内の小屋敷を経由して、この屋敷へ戻ってきたというわけである。

 外はまだ暗く、夜明け前だ。

 もうじき朝日が昇るだろう、という頃合いだ。

 

「王女様の前で、シャーラを抱いたりして、そんなことをして大丈夫なんですか?」

 

 エリカは目を丸くしている。

 

「まあ、問題ないだろう……。姫様のあの顔は、とてもではないが無礼に怒っているような顔じゃなかったぞ。ちょっと興奮気味だった」

 

 一郎はきっぱりと言った。

 

「でも、わたしはイザベラ姫様は、もう一度ロウに接触してくると思うな。姫様のご気性については、わたしも少しはわかっている。あの姫様は、そういうお人だ」

 

 すると、シャングリアが口を挟む。

 

「なになに? やっぱり腹を立てて、もう一度ちょっかいをかけてくるということ?」

 

 コゼが笑って言った。

 一郎たちは、屋敷の広間のソファーに座っているが、一郎を挟んで両側にエリカとコゼ。その斜め横の椅子にシャングリアが腰掛けているという体勢である。

 

「まあ、そのときはそのときだな……。少なくとも、シャーラには淫魔師の呪術を結んでいる。俺に不利益なことはできない。姫様が暴走してもなんとかしてくれるさ」

 

 一郎は肩を竦めた。

 

「そうじゃない……。ロウは、自分が思うよりずっと魅力的だぞ」

 

 シャングリアがさらに言った。

 

「おう、嬉しいな。こんなおっさんがか?」

 

 一郎は笑った。

 

「本当だ。イザベラ姫は、自分がこれはと思った相手には執着する。話を聞く限り、ロウに圧倒され、力を認めたんだ」

 

「ん、そうか?」

 

「ああ、だからだ──。姫様はロウを手に入れたい。もともとは家人にしたい話だったのだろう? いまでも、そのつもりのはずだ」

 

 シャングリアがきっぱりと言った。

 

「だったら、あたしたちは冒険者から、宮廷に出入りする家人に格上げですか? 」

 

 コゼがからかうように言った。

 

「それはすごいな」

 

 一郎は笑った。

 

「笑い事ではないぞ、ロウ。姫様は本当にそうする。どんな手を使ってもな。それが嫌なら、姫様をロウの術で支配すべきだったと思う。そうすれば、意に染まぬ命令をされる心配はない」

 

 シャングリアは淡々と言い切った。

 この場にいる三人は、一郎が淫魔師であり、精の力で女の心を縛る術を持つことは、もちろん知っている。

 承知したうえでの言葉だ。

 

「支配なあ……」

 

 一郎は頭を掻いた。

 完全に女の心を縛るやり方は好きではない。

 最初のきっかけとして術を使うことはあっても、関係が深くなるほど、呪術の力は徐々に弱めていくのが一郎の常だ。

 最近では、身体は支配しても、心にかける呪術は最小限にとどめている。

 

 ここにいるエリカ、コゼ、シャングリアもそうだし、ミランダも同じだ。

 本当に支配しているのなら、人形のように言いなりになっているはずだ。

 そんなことをしなくても、彼女たちは一郎に好意を抱いてくれる。

 実際にそうであり、一郎もそれを信じている。

 

 そもそも、心の操作は制約が多く、無理をさせれば心が不安定になって危険なのだ。

 淫魔術の精度が上がるにつれ、そうしたこともわかってきた。

 それよりも、徹底した快楽で屈服させる方が、よほど安全で確実だ。

 シャーラもそうであり、結局のところ、精の力で心を縛る必要はほとんどなかった。

 

「まあいいさ、なるようになる……。それより眠い。もうすぐ夜明けだ。夜通し動き回ったせいで疲れた。そろそろ寝よう」

 

 一郎が言うと、三人がわずかに身体を強張らせた。

 頬が赤く染まり、何かを連想したように視線が揃って泳ぐ。

 

「言葉通りの意味だぞ──」

 

 一郎は慌てて言った。

 

「そ、そうですよね。もちろんです」

 

 エリカが照れたように言い、コゼとシャングリアも赤い顔のまま、勢いよく頷いた。

 

 

 

 

 

 22話『第三王女の夜這い命令』終わり──

 23話『第三王女イザベラの決断』に続く──

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