【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「姫様、よろしければ、そろそろ刻限ですので、ロウ殿のところに向かいたいと思います」
シャーラが寝室に入ってきた。
毒を飲まされて昏睡した影響もすっかり消え、いよいよロウのもとへ行く夜がやってきたのだ。
すでにほかの侍女たちは、イザベラが寝所へ入った時点で、それぞれの部屋に引きあげさせている。
イザベラがシャーラの移動術でロウの屋敷に向かう間、寝室にはシャーラの魔道で“寝ている姫”の気配が作られる段取りだ。
掛布は頭からすっぽりと被せたふくらみが施され、寝息まで再現されるらしい。
掛けているものをめくりでもしない限り、姿がないとは誰も気づかない。
「待て。まだ着替えていない」
イザベラは驚いて声をあげた。
ほかの侍女に悟られぬよう、寝所に入るまでは普段どおりに振る舞っていたため、いまは完全に休むための格好だ。
身につけているのは、上からすっと被る薄手の寝間着一枚。その下には腰の下ばきだけで、足元は室内履きである。
「着替えるって……。それでよろしいでしょう。どうせ、すぐに脱ぐのですから」
シャーラはあっさりと言った。
「だ、だが、お前がひとりで迎えに来るまでは、いつもと同じようにしろと言うので化粧もしてないぞ。ロウに抱かれる前に、もう一度身体を洗いたいし、少し待ってくれ」
イザベラの鼓動は早鐘のように跳ねていた。
覚悟はしていたはずなのに、その瞬間が近づくと、怖ろしいほどの緊張が襲ってくる。
正直、気持ちを落ち着かせる時間が少し欲しかった。
「必要ありません。そのようなことをするなら、もう一度侍女を起こさねばなりません。装束も化粧道具も侍女たちのいる部屋にあります。そのままで行きますから」
シャーラが移動術の空間を作る仕草をすると、イザベラは慌ててそれを制した。
「そ、それに、これはふくらはぎまでの丈があるぞ。ロウは短い丈のスカートが好きだと言ったではないか。お前も最近、随分と短いものしか、はかないくせに」
イザベラは声をあげた。
実際、ロウの女たちはみな短いスカートだ。
スカートをはかないのは、黒髪で小柄なコゼくらいで、彼女はいつもズボン姿だ。
ほかは全員が丈の短いスカートだ。
エリカは太腿を剥き出しにしたものしか身に着けないし、女物に縁のなかったシャングリアでさえ、最近はエリカと競うような丈になっている。
ミランダも、以前はズボンが多かったが、いまでは膝が出る軽装ばかりだ。
そのうえ目の前のシャーラも、ロウの女になる前は膝下丈の侍女服だったはずなのに、少しずつ短くし、いまでは堂々と膝が出ている。
スクルズとベルズも同様で、巫女服は重厚な長さなのに、私服はエリカたちのように短い。
その結果、王都の社交界でも短いスカートが流行しはじめている。
しかし、イザベラは知っていた。実際には、ロウが自分の趣味で女たちに着せているだけなのだ。
「それで構わないでしょう。それにロウ殿には、イザベラ姫様は寝所からそのまま連れてくると伝えています」
シャーラが困惑したように言った。
「わ、わかった。なら、これで行く……。だ、だが、もう一度教えてくれ。ロウとふたりきりになったら、どうすればいいのだ? 自分から服を脱ぐのか? それとも待った方がいいのだろうか?」
「万事、ロウ殿に委ねればいいと思います……」
シャーラは少し困ったように言った。
「委ねればいいなどと適当な……。もしも作法が気に入らなくて、ロウがわたしを抱かなかったらどうするのだ──。いい加減なことを言うな」
イザベラは声をあげた。
「抱かなかったらなどと……。そのようなことはありませんよ。話はついております」
「しかし、この前は抱かなかったぞ。わたしを脅迫して裸にしたくせに、その目の前でお前を抱いたのだ」
「あれは……、事前にわたしが手を出さないように頼んだからです。ミランダだっていましたし……」
「とにかく、ロウに嫌われたら困るのだ。あの男がどんなことを好むのか言うのだ。嗜虐好きだとか、鬼畜癖があるとか言われてもさっぱりとわからん」
ロウが女を抱くときには、縛るとか苛めるとか、変わった嗜好があるのは聞いていた。
シャーラやミランダにも、どんなふうに抱かれたのか訊ねた。
そんな性交のやり方があるのかと驚いたものの、ロウがそれを好むなら別に構わない。どんなことでもする覚悟はある。
だが、どうしてもわからないことがある。
ロウの前で、どんな“態度”をとればいいのかだ。
シャーラもミランダも「ロウに委ねればいい」と口を揃えるのだが、よく話を聞けば、シャーラは泣き叫んで抵抗したと言うし、ミランダは逆らわなかっただけだと言う。
ならばどうすればいいのかとさらに訊けば、「ロウ殿は、従属したくない女を無理矢理に従わせるのがお好きだから、従順すぎるのもどうかと……」と首を傾げる。
逆らえばいいのかと訊ねれば、とんでもない、とふたり揃って否定した。
さっぱりとわからない。
「そうはいっても、わたしだって、わかりません。わたしも、ロウ殿になにもかも委ねるだけです。とにかく、なにをされても本気で抵抗してはなりませんよ。戯れの範疇に留めてください」
「そういうのが一番わからんのだ」
イザベラは怒鳴った。
「わかりました……。では、一切のことについてロウ殿に従ってください。そうすれば間違いないですから」
シャーラが嘆息しながら言った。
「従えばいいのだな」
「四つん這いになれと言われたらなるんです。床を舐めろと言われたら舐めてください」
「そんなことをするのか──?」
イザベラは驚愕したが、すぐに頷いた。
「……いや、わかった。床を舐めろと言われたら舐める。だが、事前に聞いておいてよかった……。その場で言われれば、驚いたところだ……。間違って嫌がったかもしれん」
「嫌がっていいのですよ」
「なにを言うか──。本気で嫌がれば嫌われるであろう。わたしには、嫌がる素振りの演技などできん。とにかく、全部服従しろというのであれば、そっちが楽だ……」
「わかりました。では、そのように……」
「ほかに、どんなことをされると思う?」
「知りません。もう出発していいですか?」
シャーラがまた嘆息した。
「ま、まだだ。ほかにどんなことをするかもしれないか言わんか。たとえば、ロウの性器は舐めた方がいいのだろう? むかし、エルザ姉様がタリオ公に嫁ぐとき、閨教育というのを一緒に受けたことがある」
「そうなのですね?」
「ああ、わたしはやらなかったが、姉君は木の模型で乳母にやり方を指導されておったぞ……。いや、考えてみれば、練習しておけばよかった……。失敗した」
イザベラは悔やんだ。
第二王女エルザが嫁ぐ前に受けた閨教育のことなど、すっかり忘れていた。
王族の婚姻は国家を結びつける政略だ。
寝所の作法も教えられる。夫と仲が悪くなれば国と国の関係すら揺らぐからだ。
当時十三歳のイザベラもその場にはいたが、実地の訓練までは受けなかった。
いま思えば、やっておいた方がよかったのかもしれない。
だがイザベラには、エルザの乳母のように指導役になる者はいない。
その役割があるとすればシャーラなのだが、シャーラもイザベラと年齢が大きく違うわけではなく、詳細な閨の作法を教える経験は乏しいだろう。
「ふぇらちおのやり方ですね。わたしもロウ殿に習っていますけど、ロウ殿がやらせたいと思えば、徹底的に調教してくれますから、問題ありません」
「ふぇらちお……というのか? ふぇらちおだな? ふぇらちおと言われたら、口に咥えて舐めればいいのだな?」
「そんな簡単なものじゃありませんが、何度も言うようですけど、ロウ殿に委ねればいいです。もう、本当に行きましょう」
シャーラがイザベラに近づき、がっしりと手を取った。
「ま、待て、まだ覚悟が……」
「覚悟なさいませ」
シャーラの言葉が終わると同時に、はらわたがよじれるような感覚がイザベラを襲った。
一瞬、景色が白く弾け、次の瞬間には見知らぬ屋敷の部屋が周囲に立ち現れた。
到着したのは、椅子と卓があり、彫刻や絵画まで飾られた立派な応接室だった。
冒険者の家と聞いて粗末な建物を想像していたぶん、調度の上等さに少し驚かされた。
待っていたのは、十歳ほどの年に見える童女だ。
メイド服に身を包み、愛らしい顔でこちらを見上げているが、どこか人ならぬ気配が漂う。
「お待ちしておりました、姫様。ご主人様に仕える屋敷妖精のシルキーです。よろしくお願いいたします」
シルキーと名乗った童女が、にこにこと頭をさげた。
「屋敷妖精とな?」
イザベラは驚いて訊ねた。
「はい、当家の屋敷妖精のシルキーと申します」
シルキーが笑顔で応じる。
屋敷妖精についての知識はあったが、実際に見るのは初めてだ。
だが、魔力の高い魔道遣いにのみ仕え、屋敷を守る妖精族──そのはずの存在が、ここにいることに、イザベラは戸惑いを覚えた。
「屋敷妖精がここにいるということは、この建物の主人は魔道遣いなのか?」
イザベラは思わずシャーラへ振り向いた。
「わたしも当初は驚きましたが、ロウ殿のしもべに間違いありません。何度も来ていますので確かです」
「だが、ロウは魔道遣いではなかろう?」
「そうですが……。ロウ殿が愛人にした女の能力を向上させるという、不思議な現象に関係しているのかもしれません……」
シャーラが小声で答えたところへ、シルキーが柔らかく口を開いた。
「シャーラ様は広間へどうぞ。コゼさんたち三人がお待ちです……。姫様は、まず隣の部屋でお仕度を。さらに先の部屋で旦那様がお待ちでございます」
「……それでは、姫様」
シャーラは背側の扉から静かに出ていった。
「どうぞ、姫様」
シルキーが示したのは、シャーラとは逆側の扉だった。
そこを開けて入ると、応接室とは打って変わって、狭く殺風景な部屋だった。
真ん中に卓がひとつ置かれ、その上に革帯のようなものが置かれている。
「ここでお仕度を、との旦那様のご指示です。わたくしめがお手伝いいたします。失礼ですが、下着を脱がさせていただきます」
シルキーはイザベラを卓の前に促すと、ためらいなく足元にしゃがみ込んだ。
戸惑う間もなく両手が寝間着の裾の中へ滑り込み、下着がするりと腰から降ろされた。
「ちょ、ちょっと──」
声をあげたときには、すでに足首から抜き去られていた。
シルキーは脱がせた下着を卓の上に置き、すぐに革帯を手に取った。
「これを下着の代わりにお着けください。少し脚をお開きくださいませ」
革帯を両手に捧げるように持ちながら、シルキーが言った。
「ま、待て。それはなんだ?」
イザベラはようやく声を絞り出した。
その形状を認め、ようやく理解した。シルキーが持つのは──貞操帯だ。
貞操帯がどういうものかは、辛うじて知っている。
股間を覆って鍵をかけ、夫以外との交わりを防ぐための道具だ。
だが、これからロウに抱かれるというのに、性交を妨げる道具を装着しろと言われていることに、イザベラは強い困惑を覚えた。
もしかして──ロウは自分を抱くつもりがないのか?
胸の奥で不安が小さく疼いた。
だが、同時に気づく。
貞操帯の股間の内側には丸い突起がいくつも並び、どれもがねっとりと濡れている。
「脚をお開きください、姫様」
シルキーは淡々とそう告げた。
「答えんか、屋敷妖精──。その貞操帯には、なにを塗っておる。そもそも、なぜ貞操帯をせねばならん。わたしはロウに抱かれにきたのだぞ。聞いておらんのか?」
「これは、旦那様のご命令です。さあ、脚を……」
「うっ──」
その瞬間、イザベラの両脚が勝手に肩幅ほどに開いた。
全身が硬直し、指一本動かせない。
屋敷妖精の魔道か……。
そう思ったが、明らかに強力な術だった。下級魔道遣いのイザベラには抗いようがない。
シルキーは寝着の裾をすっとめくり、頭を差し入れるようにして腰へ手を伸ばすと、革帯の横帯をきゅっと締めた。
続いて、前から縦帯を股に通してうしろへ回し、ぐいと引き上げる。
その手つきは妙に手慣れており、一息のうちに終わった。
「うくっ……」
イザベラの喉から小さな呻きがこぼれた。
縦帯の内側の突起が、敏感な部分のすべてを容赦なく押しつけてきたのだ。
「な、なんだ、これは……?」
歯を噛みしめながら声を漏らす。
突起は肉芽だけでなく、女陰の入り口、外側、さらに尻の穴の周辺にまでしっかり当たっている。
少し動いただけで突起が前後左右にずれ、そこへ鋭い刺激が走る。
イザベラは顔をしかめた。
さらに、突起に塗られていた粘性の液体が肌に染み込み、じわりとした疼きが股の奥から沸き立ってきた。
「さあ、どうぞ」
シルキーは寝着の下からすっと出てきて、何事もなかったように扉の方を指し示した。
「あっ、ま、待て……あっ、ああっ」
前へ一歩踏み出した瞬間、縦帯の内側の突起が肉芽と入口を同時に擦り上げた。
膝ががくりと折れかけ、喉の奥で漏れそうになった声を必死に抑え込む。
「な、なんだ、これは……」
もう一歩踏み出せば、今度は突起が別の角度から押し込み、下腹の奥へ鋭い刺激が突き抜けた。
イザベラは腰を引きそうになり、唇を固く噛んだ。
進むほどに、貞操帯が敏感な場所ばかりを執拗に捉えてくる。
立ち止まってしまえばよかった。
しかし、すでにシルキーは次の扉を開けており、振り返ることすらしない。
逃げ場を失ったイザベラは、膝を震わせながらもその後を追った。
歩くたび、突起が細かくずれ、疼きと熱が股の奥からせり上がってくる。
イザベラは寝着の裾を握りしめ、どうにか声を押し殺したまま部屋へ足を踏み入れた。
シルキーはついてこない。
イザベラが中に入った瞬間、背後で扉がゆっくりと閉じられた。
「えっ?」
閉ざされた扉を振り向きながら、イザベラの胸に不安がじわりと広がった。
しかし、改めて案内された部屋の光景が眼に入った瞬間、イザベラは息を呑んだ。