【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
エリカが怒っていた。
なぜ、危険な潜入を自ら引き受けたのかというのだ。
だが、それには答えようもない。
それが必要であり、あの場にいた誰よりも一郎が適役であることを一郎自身が知っていたからとしか言えなかった。
もしかしたら、柄にもなく勇気を振り絞ってみたのは、一郎にとってこの世界はなんとなく現実離れしているからかもしれない。
ともかく一郎は、十分に離れた場所で待機している救出組と別れて、ひとりでダルカンの北の別宅と称される場所に向かっていた。
「必撃の剣」という魔道剣をしっかりと握っている。
ダルカンの北の別宅というのは、案内の必要もなかった。
向かった先に樹木に囲まれた大きな屋敷がそびえ建っていた。
さらに近くまでいくと、その屋敷は、火避けの効果がある高い土壁が巡らせてあった。
正門は頑丈そうな鉄の門だ。
たかが里長の別宅としては厳重すぎる気がした。
ここには、なにか秘密があるように思う。
いずれにしても、屋敷の外壁の外からでは中の様子はわからない。
一郎の魔眼の能力は、安定したところでは二十メートルくらいの範囲だ。
ただ、ユイナが犯されていたときには、それを遥かに超える距離で魔眼の能力が働いたということもあった。
魔眼の力と淫魔力については、なにか相関関係があるのかもしれない。
とにかく、なんとか、屋敷内に入らなければ……。
そう思って裏側に進むと、突然に大勢のエルフ族の男たちが近づく気配を壁越しに魔眼で感じた。
二十人近くだ。
屋敷の内側からこっちに向かってくる。
一郎は慌てて物陰に身を潜めた。
すると、裏口のような小さな出入口がさっと開いて、慌てた様子の男たちが一斉に駆け出ていった。
もしかしたら、さっそく里の中央付近で起こしている騒乱の効果が出たのだろうか?
一郎は、男たちが出ていった戸に近づいてみた。
その反対側に誰もいないことは確認している。
開いている──。
しめた──。
どうやら余程に急いでいたようだ。
一郎は外壁の内側に入り込んだ。
土壁の向こうは低木が生い茂る庭だった。
庭に外から水路が引き込んであり、それが複雑に経路を作っている。大きな屋敷がその向こうにあった。
誰もいないことを確認しながら、一気に屋敷の近くまで進んだ。
いた──。
一郎の魔眼に、トーラスという男のステータスが入り込んできた。
屋敷の中であり、一郎が立っている屋敷の壁の少し向こう側くらいだ。
特に拘束はされていないようだが、魔力封印と出ている。
また、すぐ近くに、戦士ジョブが〈レベル5〉のエルフの男がふたりいる。
状況から考えて、牢のような場所に閉じ込められて、ふたりの監視がついているというところだろう。
トーラスがいるのはわかった。
イライジャは……?
意識をして周囲に魔眼を飛ばす。
すると、突然にそのイライジャのステータスが頭の中に飛び込んできた。
“イライジャ
エルフ族(褐色)、女
年齢:20歳
ジョブ
戦士(レベル10)
魔道遣い(レベル4)
緊縛師(レベル1)
生命力:100
攻撃力:1(拘束状態)
魔道力:50(魔力凍結)
経験人数:男1、女2
淫乱レベル:B→S(媚薬塗布)↓
快感値:10/200↓”
「なんだ……?」
感知できた方向と距離も概ねわかる。
おそらく、屋敷から少し離れた側面だ。
屋敷内にいるはずの大勢のダルカンの手の者の気配を通り越して、さらに距離のあるイライジャのステータスを魔眼で探知できたのかはわからないが、おそらく、一郎が無意識のうちに、イライジャという名を探知した結果ではないかと思う。
だが、状況は気になる。
拘束状態で媚薬塗布とあるから、かなり切迫した状況であるのは間違いない。
緊縛師という、よくわからないジョブもあるが、とりあえず、それは捨て置こう。
とにかく、そっちに向かってみることにした。
ただ、その前に懐からプルトに持たされた合図用の球体を取り出して、それを握りしめた。
手のひらに収まるほどの白い玉だったが、力を入れると簡単に手の中で消滅した。
まずは、屋敷の壁沿いに移動する。
やはり、人が少ない。
屋敷内にいる男たちを探知できるが、いまのところ十人もいない気がする。
これなら、救出は成功するだろう。
屋敷の横側に出た。
そこもさっきと同じように低木と細い水路が入り組んだ場所になっていた。
一方で、さらに魔眼で感じるイライジャの存在が強くなる。
しかし、そこにあるのは、ただの中庭だ。
建物らしいものはないが……。
はっとした。
足の下だ。
目の前の庭の地下だ──。そこからイライジャのステータスが流れてくる。
また、別の女がイライジャのそばにいた。
ヴォロノサとある。
人間族の女……。
戦士レベルは〈レベル2〉……。
攻撃力も高くはない。
ただし、毒遣いともある……。
また、拷問師というよくわからないジョブもあり、その両方とも〈レベル10〉だ。
こっちはかなりの上級者だ。
すると、喧噪が聞こえてきた。
プルトやエリカたちが屋敷に飛び込んできたのだろう。
まずは、さっきまで一郎がいた側の屋敷内から、人が駆けまわる音や喚き声が始まった。
騒然とした雰囲気を屋敷の中から感じる。
救出隊の三十人が屋敷に雪崩れ込むのも魔眼でわかった。
もともと屋敷内にいた男たちが、次々に「負傷状態」で生命力を減じて動かなくなるか、あるいは、いきなりステータスが消滅したりしだした。ステータスの消滅は死んだということだ。
トーラス──。
そのステータスが頭に再び飛び込んできた。
周りに屋敷内の男たちのステータスもあるが、あのエクトスのステータスもある。
そこにプルトが加わった。
そして、トーラスの周囲がエクトスとプルトだけになった。
救出に成功したのだ。
一郎はほっとした。
そのとき、突然にこっちに男がやってきた。
ステータス──と意識する。
頭に情報が入って切る。
名が“ガルシア”と出た……。
“ガルシア
エルフ族(褐色)、男
年齢:120歳
ジョブ
魔道遣い(レベル25)
戦士(レベル4)
生命力:100
攻撃力:80(剣)
ひとりだけだが、眼が血走っている。
一郎は急いで隠れた。
ガルシアは一郎の存在にはまったく気がついていないようだ。
そのまま、庭の一角に走っていくと、
子供ほどの大きさの白い石の銅像を軽く横に押した。
すると、銅像が滑るように動き、地下に降りる階段のようなものが出現した。
ガルシアは、そのまま走り降りていく。
嫌な予感がした……。
なにをするつもりだ……?
一郎は一瞬だけ思案した。
「あっ」
しかし、一郎は思わず声をあげてしまった。
なにをしようとしているかなど、明白ではないか──。
大事が起きたとわかり、ガルシアはまだ残っている人質をどこかに連れ出そうとしているのに違いない。
同時に一郎の頭に閃いたのは、アスカ城からルルドの森に逃亡したときに、エリカが遣った「移動術」という跳躍魔道のことだ。
エリカによれば、あれは相当に能力が高い魔道遣いだけが遣える術であり、あのときのエリカは、アスカにもらった魔道の杖によって魔道遣いとして強化されていたので遣えた技だと言っていた。
あのときの特別な杖は折ってしまったので、いまのエリカはもう遣えない。
ただ、そのときの強化されたエリカの魔道遣いレベルが〈レベル25〉だったことを一郎は覚えていた。
通りすぎていったガルシアの魔道遣いのレベルも〈レベル25〉だ。
合理的に考えて。遣える魔道というものは、ジョブレベルの上昇に応じて増えるのが普通だろう。
そうであれば、あのときのエリカと同等のレベルにあるガルシアは、移動術を遣えるに違いない……。
一郎は迷った。
大きな声をあげて、助けを呼ぶべきか……。
だが、喧噪はまだ屋敷の中だけだ。
こっちからは遠い……。
プルトたちがやってくる前に、ガルシアはイライジャを連れて魔道で逃亡してしまうような気がする。
一郎は持っていた「必撃の剣」をぐっと握った。
一撃だけであれば、いまの一郎にも、あのガルシアに立ち向かえる。
一撃であれば……。
だけど……。
できるか……?
しかし……。
一郎の想像が正しければ、イライジャは救出隊がここまでやって来る前に、ガルシアに連れ出されてしまう……。最悪、口封じで殺される……。
“魔眼保持者は、凄まじく勘が鋭くなる”──。あのルルドの森で出会ったユグドラという女精の言葉を思い出す……。いま、一郎の「勘」は、すぐに行動しなければ、手遅れになると告げていた……。
「ええい、ままよ──」
一郎は、自分を鼓舞するように叫んでから駆け出した。
必撃の剣の柄に右手をかけ、ガルシアの後を追って階段を駆けおりる。
「あああっ、お、お願いだよおお。痒みを何とかしてよ──。なんでも言う──。ほ、本当に気が狂ううう──」
イライジャはもう見栄も体裁もなく、拘束された身体を激しく揺さぶって泣きじゃくっていた。
ヴォロノサは、その姿にほくそ笑んだ。
なにか揉め事があったらしく、この屋敷内はばたばたとしていた。
ガルシアもイライジャに関わっていられなくなり、この地下の隠し部屋から屋敷側に戻って、なにか慌ただしく指示をしている様子だ。
イライジャの痴態を見物するために集まっていた大勢の男たちも、すっかりといなくなり、ここは、イライジャとヴォロノサのふたりだけになっている。
まあいい……。
ヴォロノサの役割は、このエルフ族の里で里長をやっているダルカンという強欲エルフを助け、クリスタル石をこれからも、本国に横流しさせる態勢を維持させることだ。
それが、アスカ城から請け負った仕事だ。
そのためには、こんなところで、あのエルフ男に失脚してもらっては困るのだ。
もっとも、義務だけでこんなことをしているわけではない。
気の強い女をいたぶって、泣きべそをかかせることは、ヴェロノサの何よりの大好物だ。
ヴォロノサは、美貌の顔を激しく左右に振って、歯を噛み鳴らして痒みを訴えているイライジャに、例の羊毛紙をかざして詰め寄った。
「じゃあ、これに誓うんだよ。『認めます』とこれに向かって言いな。それで終わりだ。あとは、ここにいる男たちに股をほぐさせてやるさ。一度精を放ってもらいさえすれば、嘘のように痒みは収まるよ」
「ふ、ふざけるな──。こ。このき、きちがい──」
汗と涙と鼻水で、顔が凄まじいことになっているイライジャが真っ赤になって睨む。
だが、気丈な言葉と態度とは裏腹に、イライジャの腰は激しく跳ね動き続けている。
狂うような股間の痒みだけでなく、ただれそうなくらいの疼きがイライジャを襲い続けているのだ。
「そんなことを言っていいのかい? お前の身体は、物欲しそうだけどねえ」
ヴェロノサは、媚薬の影響で真っ赤に腫れたようになり、さらにまるで放尿のようにぼたぼたと愛液を滴らせているイライジャの股間を指でひと撫ぜした。
ただし、痒みが襲っている肝心の場所には触らない。そのぎりぎり横を刺激するのだ。
「あうううっ、だめえええ、もっと、ちゃんと触ってよおおお」
イライジャの腰がヴェルノサの指を追うように突き出される。
しかし、そのときには、すでに指は離れている。
また、放置状態だ。
「あああ、もうなんとかしてええ──。お願いよお──。あそこを、あそこを掻いてええ──」
イライジャが吠えるように叫んだ。
そろそろ、終わりだろう。
ヴェルノサはほくそ笑んだ。
凛としていたイライジャの眼は、すでに焦点を失ったようになっている。
かなり強い総痒剤を使ったから、これ以上の放置はイライジャの気が狂ってしみあうのはわかっている。
女である以上、もう耐えられるわけがない。
限界を越える痛みを我慢できる者はいくらでもいるが、限界を越える痒みに耐えられる者など存在しないのだ。
「だったら、言うことがあるだろう?」
ヴェルノサは、自白したことを表す魔道の羊毛紙をかざす。本来は、先に自白の内容を刻んでから、自白を認める魔道を注がせるものだが、これは白紙のまま刻ませ、そのあとに内容を刻めるように細工をしてある。
これにさえ、自覚の紋様を刻ませれば、冤罪の作り放題ということだ。
「あああ、み、認めるよ──。認めます──。ああ、認めるから──」
イライジャが大きな声で言った。
ヴォロノサはにやりと笑った。
白紙の羊毛紙の下側に紋章のようなものが浮き出て、なにかの魔力が刻まれたのがわかった。
これでイライジャの白紙の自白書が完成したということだ。
「よくやったよ。とりあえず、足の縄を解いてやるよ」
ヴォロノサは言った。
そして、小刀で棒の両端に結んでいたイライジャの足首の縄を切った。
「ひ、ひいいっ──。か、痒い──痒い──。は、早く──早く、痒みを消して──、あああ──」
イライジャは足を解いた途端に、太腿を強く擦り合わせ始める。
だが、この痒みは腿を擦り合わせようと、指で掻こうと消えない。
消えるのは、ただ男の精を受けたときだけだ。
そういう魔道の込められた薬剤なのだ。
「痒みを消してやりたいけどね……。さっきも言ったけど、男の精がないと痒みは消えないのさ……」
「だ、だったら犯して──。後生だよ──。ああ、我慢できない──。お願いよ──。なんでもする──。犯して──犯してったらあ──」
イライジャが激しく声をあげて絶叫した。
いまのイライジャは、ただこの痒みをほぐして欲しいという思いだけで、なにも考えることができないに違いない。
「悪いけど、いま、みんな取り込んでいるみたいなんだよ……。まあ、そのうちに来るだろうからさ……」
ヴォロノサはイライジャの狂態に苦笑した。
そのとき、この地下の隠し部屋に誰かが降りてくる気配がした。
ヴォロノサは視線を向けた。
ガルシアだ。
慌てているようだ。
なにかあったのだろうか……。
「ああ、ガルシアの旦那……。イライジャが自白書を刻んだよ。ほら……。じゃあ、精を注いで痒みを消してやっておくれ──。このままじゃあ、本当に発狂してしまうからね」
ヴォロノサは、とりあえずガルシアにイライジャの自白が刻まれた白紙の「自白書」を手渡した。
「よくやった、ヴォロノサ──。ただ、非常事態だ。ここが襲撃された。トーラスも奪い返されたかもしれん……。とりあえず、この女だけでも連れていく」
ガルシアは、剣を抜くと、天井から両手を束ねて吊るされていたイライジャの縄を手首の上付近で切断した。
イライジャの汗まみれの身体が力を失って床に崩れ落ちる。
「あ、あああ──、だ、だめえ──か、痒いいい──」
その瞬間、手首を縛られたままの手でイライジャが自分の股間を掻きむしりだした。
「ああ、だめえ──。痒みが取れない──ああ、なんとかしてよお──。なんでもする──。どんなことでも従うから──。ひい──」
イライジャが自分の股間を自慰のように擦りながら叫ぶ。
「へっ、あの、気の強いイライジャが形無しだな……。まあ、逃げてから、ゆっくりと犯してやるぜ」
ガルシアが相好を崩してイライジャを見た。
次の瞬間、なにかの気配を感じた。
男───?
必死の形相をした若い男が走り込んでくる。
ヴォロノサの眼には人間族のように思えた。
なんでここに人間族が──?
……と思ったが、考える余裕などない。
もう目の前だ。
「な、なんだ、お前──?」
ガルシアも気がついた。
剣を抜きながら振り返る。
「うわああああ──」
だが、顔をひきつらせたその若い男は雄叫びをあげながら、ガルシアにそのまま突進してきた。
その右手は剣の柄にかかったままだ。
「貴様──」
ガルシアが剣をその若い男に向かって斬り払った。
「ぐあっ──」
しかし、一瞬、その人間族の男の勢いが信じられないくらいに増し、直前で抜いた剣先がガルシアの腹に突き刺さった。
ガルシアの剣は、屈んだその若い男の頭上を空を切っていた。
「な、なんだ……? な、なんだ……?」
ガルシアが目を丸くしたまま崩れ落ちて、自分自身の血だまりの中に身体を倒した。
「お、お前……、だ、誰?」
ヴォロノサはびっくりして壁まで後退りした。
殺される──。
そう思った。
ガルシアがそれなりの遣い手だったのを知っている。
そのガルシアがひと太刀だ──。
ヴォロノサなど一瞬だろう……。
蒼白になっているその男が、血の付いた剣をヴォロノサに向けた。
がくがくと震えているようだが、その剣は真っ直ぐにヴォロノサへ向いていた。
「ひ、ひっ」
ヴォロノサは声をあげてしまった。
「い、行け……」
そいつが言った。
「はっ?」
ヴォロノサは思わず問い返した。
「行け──。どっかに行け──。さ、さもないと殺さなきゃならない……。た、頼む──。もう、行け──」
その男は身体をがくがくと震わせながら、なにか必死の様子で怒鳴った。そ
して、手元の落ち着かない感じで、二度ほど失敗しながら一度剣を柄に入れた。
すると、なぜか急に男が少し落ち着いた様子になり、殺気が襲ってきた。
それ以上は考えなかった。
行っていいというなら行くだけだ。
ヴォロノサは、もはや振り返ることなく、一目散に地上に戻る階段に走った。
一郎は腰が抜けたように、その場に崩れ落ちた。
ガルシアの死体がそばに転がっている。
さっきまで生きてはいたが、いまは死骸だ。
自分が……。
自分が人を殺した……。
やらなければならないことだったとはいえ、自分自身で誰かを殺めたということに、一郎は愕然としていた。
身体の震えが止まらない……。
苦しい……。
息が苦しい……。
一郎は空気を求めて、必死で呼吸をした。
その一郎にいきなりなにかが体当たりしてきた。
「うわっ」
イライジャだ──。
初めて会うが、魔眼の力でそれがイライジャであることはすぐにわかった。
手首を拘束されていて、まったくの全裸だ。
全身は汗びっしょりで目つきが不自然だった。
「い、イライジャさん……。無事ですか……?」
なにかを語りかけようとしたが、イライジャがいきなりすごい力で一郎の腰に自分の股間を擦りつけてきた。
「お、お願い──入れて──。せ、精をちょうだい──。痒いの──痒くて死にそう──。せ、精を注いでもらわないと痒みが消えないの──。お、おねがい──。た、助けて──。精をちょうだい──。あんたの精液を注いで──」
イライジャが狂気のように顔を振りながら、一郎の股間にイライジャの巣股を擦りつけてきた。
「う、うわっ」
その勢いがすごくて、一郎はイライジャに押し倒されるかたちになった。
馬乗りになったイライジャが、必死の形相で手首を拘束された前手で一郎のズボンに手をかける。
「ま、待って……。縄を……。縄を解きますから……」
「そ、そんなのいいのよ──。せ、精をちょうだい──。か、痒いのよ──。あ、あああ──」
イライジャが暴れまわる。
一郎は、なんとかそれを制して、とりあえずイライジャの下から抜け出し、まずはイライジャの手首の縄を解こうとした。
だが、簡単ではなかった。
常軌を逸したようになっているイライジャが、すぐに一郎にしがみつこうとするのだ。
一郎はそれを押さえながら、やっと縄を解いた。
しかし、縄が解けると、再びイライジャが一郎に馬乗りになってきた。
イライジャが必死の形相で、また一郎のズボンを脱がせようとする。
この時点で、一郎にも状況がみえてきた。
痒いと叫び続けるイライジャは、おそらく股間に相当の痒み剤を塗られたに違いない。
悲鳴に混じって口走っている言葉から考えて、痒みは擦っても消えないものであり、男の精を受けなければなくならないようになっているようだ。
そんな都合のいい媚薬があるものかと思ったが、魔道が日常生活に浸透している世界だ。
淫具や媚薬についても魔道的なのかもしれない。
しかし、精を注いでくれと懇願している目の前のイライジャをそのまま抱いていいのだろうか……?
一瞬だけ一郎の理性が動いたが、そのときにはすでにイライジャは一郎のズボンのベルトを解き終わっていて、震える手でズボンと下着を両手で引き下ろしてしまっていた。
一郎の躊躇に関わりなく、一郎の分身は美貌の褐色エルフで若い未亡人の妖艶な裸身に、すっかり態勢が整っている。
ええい──。
仕方がない……。
一郎は状況に流されることに決めた。
抱いてどうなるかは、あとで考えればいい。
いずれにしても、イライジャの狂態は常規を逸している。性を注ぐしか痒みを癒やす手段がないというのであれば、いま一郎にできることはほかにはない。
そして、それは難しいことではなく、一郎には容易いことなのだ。
「……は、早く……は、はやぐう──」
イライジャは奇声のようなものまで発しだした。
すると、その途端にイライジャの全身に例のもやが発生した。
どうやら、女の性感の見える桃色と赤色のもやは、一郎が欲情しているか、それに近い心理状態に見えるようになるようだ。
そして、イライジャの全身はすっかりと欲情して真っ赤だった。
特に股間が赤い……。
あとは、口の中に濃い赤が集中している。
一郎は下だけ完全に脱ぐと、イライジャが自分で動きやすいように、座位になって自分の腰の上にイライジャの腰を乗せるようにしてやった。
すっかり濡れきったイライジャの膣は、なんの抵抗もなく一郎の怒張を咥え込み、あっという間に最奥まで迎え入れた。
「あ、あああ、き、気持ちいい──。か、痒みが小さくなる……。も、もっと──、もっと擦ってええ──」
イライジャが一郎の腰の上で裸身を狂ったようにうねり舞いさせる。
「おじり──おじりにも指を入れて──。そこも痒いのおお」
イライジャが吠えた。
一郎はイライジャの腰の後ろに手をやって、言われたとおりにアナルに指を入れてやる。
薬剤を塗られている肛門は、それを潤滑油代わりにして一郎の指を受け入れた。
「はがあああ──き、きもじいい──。も、もっと──、お股も──股も犯して──。は、はやぐう──」
男の一郎に掻かれれば痒みが少しはなくなるらしく、イライジャはすっかりと陶酔の顔で全身を震わせる。
一郎はお尻の穴に指を入れたまま、イライジャの腰を上下に動かし始めた。
「あ、ああっ──、いぐううっ」
がくがくとイライジャが身体を痙攣させて全身を突っ張らせた。
もう達したようだ。
しかし、それでもイライジャの狂態は終わらない。
さらに、「痒い、痒い」と叫んで一郎に抱きつき、一物を貫かれている腰をぐいぐいと動かし続ける。
「イ、イライジャさん……。も、もう少しです……。も、もう、ちょっと、頑張って……」
一郎は息を荒くしながら言った。
とにかく、早く精を出した方がいいだろう。
本格的な抽送運動を始めた。
片手はイライジャの腿の付け根を支え、もう片方の手の指はしっかりと指を肛門に埋めて、尻の下からイライジャの腰を持っている。
「うはあっ」
抽送を続けると、あっという間にイライジャは二度目の絶頂をした。
一郎は弓なりになったイライジャの身体を一度引き寄せ、大きく開いて涎を垂れ流している口の中に舌を入れた。
イライジャの強い性感帯が口の中であることがわかっている。
赤く見える口の中の性感帯を舌先で強く擦りまわした。
「あ、ああ……あはあっ、ああ、ああっ──」
イライジャが呆けたような顔で甘え泣きのような声をもらす。
そして、細い首をのたうたせて、膣いっぱいに咥え込んでいる怒張を締め動かすイライジャに対し、やっと一郎もまた射精の準備が整ってきた。
一郎はイライジャの口をむさぼるのをやめた。
「だ、出しますよ──」
「出して、出して──。ほ、ほおおお──あ、ああん──あああ──またいぐうう──」
イライジャが汗に光る首筋を限界まで突っ張らせた。
一郎は精を放った。
その精がイライジャの子宮に飲み込まれるのを感じる。
イライジャはがくがくと身体を震わせて、感極まったように絶叫した。
そして、一郎の背中にしがみついたまま、がくりと脱力した。
軽く気を失ったようだ。
だが、その顔は完全な満足感に染まっている。
とりあえず、狂うような痒みはなくなったのだろう……。
一郎はほっとした。
そのとき、一郎の頭になにかの声のようなものが聞こえてきた。
いや、正確にいえば、それは声ではなく、一郎自身が一郎に問いかける伝心のようなものなのだが、一郎の感覚としては質問を受けたような感じだった。
“孕ませますか……? 孕ませませんか……?”
そんな質問が急に頭に浮かんできた。
“孕ませない───”
一郎は慌てて、強く念じた。
“性奴隷にしますか……? しませんか……?”
また、質問が浮かんだ。
それについてはちょっと迷ったが、すぐに我に返り、“しない──”と念じた。
なにかの強いエネルギーのようなものが、ぱっと発散したような感覚が襲った。
なんなのだろう……。
いまのは……?
一郎は呆気にとられた。
しかし、そのとき、地上に繋がる階段に足音を感じた。
我に返って、はっとした。
プラム……。
そして、エリカだ。
「ロウ、ここなの──? 大丈夫なの──。ねえ、返事して──。お願いよ──。どこにいるの──? ここにいるの、ロウ──?」
エリカの必死の声が近づいてきた。
一生懸命に一郎を探し回ってくれているのだと思ったが、そのエリカと一緒にプラムも降りてくるのが魔眼でわかる。
しかし、エリカはともかく、プラムはまずい──。
一郎は慌てて、腰の上のイライジャをどかそうとしたが、気を失っているイライジャは結構重くて、簡単にはいかなかった。
そして、まごまごしていると、ふたりが目の前にやってきてしまった。
「……ロウ……大丈夫……? うわあっ──ロ、ロウ様──?」
エリカがびっくり仰天した声をあげた。
「き、貴様──、なにをしておるか──?」
プラムの怒声も響き渡る。
次の瞬間、石の塊りのようなものが頬に喰い込んだ。
プラムの拳とわかったのは、その衝撃で身体が飛ばされて、全身を部屋の壁に叩きつけられたときだ。
そのとき、イライジャの膣から一郎の一物もすぽんと抜けて、力を失っているイライジャの身体が横倒しになる。
「こ、殺してやる──この人間があああっ──」
プラムが右手に持っていた剣を振り被った。
すっかりと怒っている──。
本当に剣が向かってきた。
「うわああっ」
一郎は悲鳴をあげた。