※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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191 貪欲の告白

 白い光が揺れているように見えた。

 天井なのか、空間そのものなのか、それすら判断がつかない。

 視界はかすんでいて、輪郭が溶けていた。

 

 ──あれ……ここは……?

 

 意識の端がゆっくりと浮かび上がってくる。

 けれど身体はまだ熱く、ぼうっとしていた。

 まるで深い水の底から、ようやく息を吸ったばかりのような感覚だった。

 

 はっきり覚えているのは、トリアに優しく、そして意地悪に焦らされ、最後は溺れるように深い快感の大波へ落ちていったところまでだった。

 頭が真っ白になり、絶頂の衝撃で甘美な迷宮の底に沈んでいった。

 

 その先の記憶は、霞がかったように途切れていた。

 下腹部の奥はまだ火照っていて、手足の先まで痺れている。

 呼吸も浅く、身体の重さが自分のものではないみたいだった。

 

 愛液がとろとろと内股に滴り落ち続けているのがわかる。

 身体は震え、心は苛められるのを待っている。

 自分でも嫌になるほど浅ましい身体だと感じ、ノルエルは自己嫌悪で泣きそうになった。

 

 両腕は頭の後ろで紐に固定されていた。

 膝を曲げた脚も左右に開かれたまま拘束されている。

 そんな淫らな姿勢のまま、大きな寝台の上に全裸で晒されていた。

 

「ノルエル……起きたみたいね? もしかして、失神してた?」

 

 耳のそばに落ちてきたくすくすという笑い声の主に、ノルエルはゆっくりと焦点を合わせた。

 柔らかな髪が揺れ、トリアの顔がすぐ近くにあった。

 さっきまでノルエルを深く可愛がってくれたときと同じ甘い光を帯びた笑み。

 

 けれど──その横にも、もうひとり……。

 

 ロウがいた。

 薄く汗のにじむ肌にはなにも身につけておらず、落ち着いた目でノルエルの身体をじっと観察している。

 トリアと一緒に、左右からノルエルを覗き込むように──。

 

 気づいた瞬間、ノルエルの胸は大きく震えた。

 恥ずかしさが喉の奥までこみ上げ、羞恥を隠そうと身体を悶えさせる。でも、逃げられないと理解した途端、股間の奥がきゅっと縮まった。

 

「ふふ……ノルエル、可愛い顔してるわ」

 

 トリアが楽しそうに笑う。

 

「反応が素直でいいな。……トリアが言ったとおりだ」

 

「そうでしょう。とっても素直なのよ。心も……身体も……。多分、ロウさんも気に入るわ」

 

「いや、もう気に入っている」

 

 ロウの声は落ち着いていて、どこか愉しんでいるようにも聞こえた。

 しかも、ふたりはまるで仲間同士のように、自然に言葉を交わしている。

 ノルエルを真ん中に置いたまま会話するその親密さが、胸の奥をざわつかせた。

 

 置いていかれるような、不安にも似た感覚──。

 それなのに、ふたりに見られているだけで身体が震える。

 

「ノルエル。そんなに震えて……可愛いわ」

 

 トリアが耳元に顔を寄せる。

 

「あ……あの……」

 

 声が喉でほどけ、ただ震えだけが漏れた。

 

「大丈夫よ。わたしたちがちゃんと可愛がってあげるわ。次はあなたの番だもの……」

 

「そうだな……。だが……この娘はとても……貪欲そうだ」

 

 ふたりの声が縛られた身体に落ちていくたびに、ノルエルの耳の奥が熱くなる。

 

 “貪欲そう”──。

 

 ロウのその言葉に、胸の底がざわりと揺れた。

 否定したいのに、喉がうまく動かなかった。

 

「ノルエルは、こうやって理不尽に与えられる快感が好きだね?」

 

 ロウの指が、ノルエルの陰毛を軽くすくい上げた。

 

「あっ……」

 

 触れたか触れないかというほどの軽さで皮膚の上を滑らせていった。

 甘くて、逃げ場のない手つきだった。

 そして、たったそれだけで声が出てしまった。

 恥ずかしさで、身体がかっとなる。

 

「……苦しいのも……嫌じゃない」

 

 ロウの指が今度は乳首を弾く。

 痛みと愛撫の中間くらいの微妙な力で──。

 

「ああ、やっ」

 

 またもや、口から甘い声が迸ってしまった。

 そして、囁くように落とされたそのロウの言葉が、縛られたノルエルの身体の奥に染み込んでいく。

 否定しようと喉に力を込めても、否定する声は漏れなかった。

 震えた吐息だけが、胸の奥からこぼれる。

 なにしろ、ロウの言葉が間違ってないことは、ほかの誰よりも、ノルエル自身が知っている。

 

 ノルエルは、多分……誰よりも淫らで貪欲に愛欲を求めている……。

 それは、誰にも……特にトリアには決して知られたくない……ノルエルの恥部だった……。

 

「……もちろん、こんなふうに優しく触れるのも大好きだ」

 

 ロウが内腿に指を滑らせる。

 

「ひあっ」

 

 ノルエルの背筋が小さく跳ねあがった。

 すると、自分の股間のそばで笑い声がした。

 

 トリアだった。

 いつの間にか、ノルエルの脚側にいて、ノルエルの開かされている下腹を凝視するようにしているのだ。

 みっともなく愛液が垂れ流れている股間を……。

 かっと羞恥が襲う。

 

「そんなにロウさんに反応して……。妬けちゃうわね」

 

 トリアの指がお尻の穴をくすぐるように刺激してきた。

 

「ひあああ、そこは……だめ……あんっ」

 

 ノルエルは必死で身体をもがかせる。

 しかし、縛られている身体はほとんど動かず、トリアの意地悪な指を避けることなどできない。

 

「ロウさん……この娘はここも性感帯です。とってもいやらしいんです」

 

 トリアは執拗にノルエルのお尻の穴を愛撫しながら笑う。

 甘い声音なのに、内容も愛撫にも容赦がない。

 

「全身が敏感だが、この娘が快感を覚えるのは身体だけじゃない……。理不尽で、意地悪で、望まない快感……そして、苦痛……それに欲情する。多分ね……」

 

 ロウが身体を屈めて、乳首を舌で舐めあげる。

 トリアによるお尻への刺激も続いている。

 

「ああ、もう……」

 

 淫らで激しい衝撃が貫き、ノルエルは全身を突っ張らせた。

 だが、すっとトリアとロウがノルエルから手を引いた。

 ノルエルはがくりと脱力してしまう。

 

「ふふふ、やっぱり可愛いわね……。ねえ、ロウさん、一緒に徹底的に苛めましょうよ。ノルエルはそうやって、苦しめられるのが大好きなんです」

 

 トリアがノルエルの頬に手を添え、覗き込むように微笑む。

 反対側からロウも……。

 じっと、ノルエルの心を見透かすかのように、笑みを浮かべてノルエルを見る。

 

「ち、違う……あ、あたしは……」

 

 ノルエルは震えた。

 ふたりの視線が、自分ひとりに降り続けている。

 

「正直に言うことだ……。君は理不尽に扱われると……安心する……。そうだね?」

 

 ロウの声音だけがやわらかく、言葉は容赦なく心の奥を抉ってきた。

 ノルエルの肩はびくりと震える。

 すると、次の瞬間、ロウの手がノルエルの鼻先をふさぐように摘んだ。

 続けて、もう片方の手で口が塞がれる。

 

「んっ……んん──」

 

 ノルエルは必死に首を振る。

 だがロウの手は優しいまま、しかし逃げられない確かな強さで呼吸を奪った。

 胸が苦しくなる。

 それなのに、身体の奥からぞくりと波が走った。

 

 息ができない──。

 

 鼻の穴も口もしっかりとロウに手で塞がれていた。

 懸命に頭をもがかせて、息を求める。 

 しかし、それは与えられなかった。

 

 もちろん、両手は拘束されている。ノルエルにできるのは、顔を振り、腕を動かし、なんとかロウの手を払おうとするだけだ。

 でも、ロウは離してくれない。

 

 やがて、全身が震えてきて、激しく痙攣を始めた。

 力も抜け、身体も動かなくなる。

 そのとき、やっと鼻と口を押さえていた手が離された。

 

「ぷはっ、はあっ、はっ、はっ、はっ」

 

 しばらくのあいだ、かすむ視界の向こうへ喉を開き、ノルエルは必死に息を求めた。

 

「ほら……いまの苦しさ……ちゃんと感じたね」

 

「ロウさん──ノルエル、いまの……すっごく興奮していた……。ものすごく……濡れたわ……」

 

 ノルエルの太腿近くの恥ずかしいほど近い場所に顔を寄せているトリアが愉しそうに告げた。

 

「もっと理不尽に……意地悪く扱って欲しいだろう……? それが君の……貪欲な望みだ」

 

 ロウが囁くように言い、またもや、ノルエルの鼻を軽く摘まみ、今度は唇を重ねられて、舌を口の中に挿入される。

 同時に、トリアがノルエルの股間へ顔を寄せ、股間に口づけをされた。

 

「んんんっ、んんっ」

 

 口と下腹を同時に舌責めの快感が襲った。

 ロウによって息が奪われ、そして、トリアの舌はノルエルの鋭敏なクリトリスを愛撫している。口の中を蹂躙される気持ちよさと、トリアの舌舐めの刺激と、呼吸ができない苦しさの全部が重なる。

 

 頭が白くなる──。

 熱いものがあっという間に、全身を席巻する。 

 

「んんんんっ」

 

 ノルエルの身体が弓なりに反った。

 口と股間に重なる圧倒的な快感に、息ができない苦悶が重なる。

 ノルエルは背中を反らせて、激しく悶えた。

 快感の衝撃が身体を席巻して脳天を貫く。

 信じられないくらいに、身体が痙攣する。

 

「んぐううううっ」

 

 だが、絶頂のすんでのところで、ふたりはまたしても同時に離れた。

 呼吸の苦しさも、絶頂の気配も残したまま……。

 ノルエルは肩で息をしながら、切なさに身体を震わせた。

 

 理不尽で……意地悪な……苦しさ……。そして、それを求める貪欲さ……。

 ロウの言葉が頭のなかで繰り返されていた。

 

 胸の奥にじんと痛むような感覚が襲う。

 ──苦しいのに、どこか安心する……。

 それは、昔から変わらない、自分でも嫌悪するほど歪んだノルエル自身の反応だった。

 

 胸の奥が熱を帯びたように疼く──その感覚が、ノルエルの記憶の扉をゆっくり開かせた。

 

 幼い頃の家は、息が詰まるほど静かだった。

 記憶を思い起こすだけで、心が湿ったように重くなり、胸が固まっていく。

 義母の顔が思い浮かぶ。

 いつも薄い笑みを浮かべ、ノルエルを見るときだけ、その目尻が冷たく歪んだ。

 

 『前妻の子なんて、家の汚れよ』

 

 『せっかくうちに置いてあげてるのに、感謝もできないの?』

 

 理由などなかった。

 義母の機嫌ひとつ、義姉妹の気まぐれひとつで、叱られ、押されたり、冷たい水を浴びせられたりした。

 棒で叩かれ、鞭で打たれた。さらに、誰かに喋ったら、もっと折檻してやると脅された。

 

 痛かった。

 怖かった。

 

 なのに──胸の奥が少しだけ、じわじわと込みあがる気持ちよさで落ち着いた。

 

 “ああ、今日も、あたしはここにいる……。”

 

 理不尽な仕打ちのたびに、そんな思いが込みあがり、身体が熱くなった。

 いまにして思えば、それは幼い子どもの、本能的な自己防衛だったのだろうか……。

 嫌悪と安堵が同じ場所に生まれ、それはノルエルを混乱させた。

 

 叩かれる──苛められる──苦しめられる──でも、それを安堵とともに悦ぶノルエルがいた。

 その歪んだ感覚が、いつしかノルエルの心の奥に棲みついていたのだ。

 

 ──苦しいと、安心する。

 ──理不尽に扱われると、自分が「そこにいる」と確かめられる。

 

 だから、優しい言葉だけでは落ち着かなくなった。

 微笑まれると、不安が胸を掻きむしる。

 

 家を出て侍女になったとき、ノルエルは初めて“静かな日々”を知った。

 だが、そこには奇妙な空白があった。

 

 怒られない。

 叩かれない。

 冷たい視線が向けられない。

 

 それなのに、安心できない。

 

 ──あたしは、どうすればいいの?

 

 そんな戸惑いを抱えたまま過ごしていた。

 

 ……トリアに出会うまでは。

 

 トリアは優しかった。

 けれど、ときおり見せる強気な目や、意地悪な笑みは、ノルエルの胸の奥の歪んだ安心に真っ直ぐ触れた。

 

 あの日のことを、ノルエルはいまでもはっきり覚えている。

 

 トリアは、最初から迷いがなかった。

 ノルエルの手首を取って寝台に押し倒すと、やわらかな声のまま淡々と紐を取り出し、両手を頭上に縛り上げた。

 

 

 『……やっ……トリア様……』

 

 『怖い? でも逃げないのね。かわいいわ』

 

 淡い笑みとともに紐を締められた瞬間、胸が震えた。

 恐怖だけではなかった。

 逃げられない感覚が、身体の奥に小さな熱を灯した。

 

 そして、トリアの手がノルエルの脚を開かせ──。

 従わせるように膝を押さえ、優しく、しかし容赦のない愛撫で責めはじめた。

 トリアはノルエルが涙目になるまで焦らし、震えるまで追い込み、それでも優しげな声で囁いた。

 

 『どうしてそんな顔をするの……? 苦しいのに、嬉しそうね』

 

 その言葉を聞いた瞬間──。

 身体の奥で、なにかがほどけた。

 

 苦しいのに……。

 恥ずかしいのに……。

 逃げたいはずなのに……。

 

 「やめてほしい」の裏側で、「もっと欲しい」という感情が、どうしようもなく膨らんでいくのを感じた。

 

 その日、ノルエルは気づいてしまった。

 

 ──あたしは、こうされると……落ち着く。

 ──理不尽に扱われて、支配されると……身体が、心が、満たされる。

 

 その“事実”を自覚してしまった恐怖は大きかった。

 浅ましく、いやらしい自分の心と身体に嫌悪感が生まれた。

 でも、それ以上に、胸の奥では静かな安堵が広がっていた。

 

 初めてだった。

 優しさと、少しの厳しさが混ざった誰かを“怖いのに好きだ”と思ったのは。

 

 そして──置いていかれたくない、と願ったのも。

 ──置いていかれたくない。

 もしも、ノルエルがそんな風に、いじめられて悦びたいなどと考えていると、トリアが知れば、呆れて軽蔑したトリアは、二度とノルエルを愛してくれないのでないか。

 それこそが大きな恐怖になった。

 その感情が心に芽生えた瞬間、ノルエルは自分の弱さも醜さも知った。

 

 そして、目を逸らせなくなった。

 トリアには知られたくない……。

 

 ノルエルのなかにある貪欲で汚い欲望を……。

 変質的な情欲を求める浅ましさを……。

 

 しかし、いまロウに心を見透かされ、トリアに支えられているこの状況は──。

 ノルエルにとって、ずっと求めていた「満たされる苦しさ」そのものだった。

 それが、いちばんの自己嫌悪でもあった。

 

 甘い熱がまだ身体の奥に残っている。

 ノルエルが肩で息をしていると、トリアがそっと顔を近づけてきた。

 その表情は、優しいのにどこか意地悪だった。

 

「ノルエル……次は、わたしが奪う番よ……」

 

 囁き声が触れた瞬間、唇が──いや、鼻と口に口を被せられた。

 舌が口の中を蹂躙する。

 浅い口づけではない。

 舌が押し込み、呼吸の隙間を奪い取るような深いキスだった。

 さらに、鼻の穴を舌で舐め尽くされる。

 

「ん……んんんっ……」

 

 息が吸えない。

 胸が圧迫され、肺が焦がれる。

 なのに──怖いはずなのに、逃げたいはずなのに、身体の奥は震えながら熱を孕んでいく。

 

 そのとき、下腹に熱い感触が落ちた。

 ロウの舌だった。

 

「んぐううう──んぐうう……っ」

 

 唇を塞がれたまま、股間に舌が滑り込む。

 鋭敏なクリトリスのすくい上げと、膣への舌の挿入が交互に繰り返され──。

 呼吸不能の苦悶と、昇り詰める快感が同時に襲いかかる。

 

 またしても、頭の中がまっ白になる──。

 

 苦しい。

 でも──もっと……欲しい……。

 

 自分の心から漏れてしまったその感情に、ノルエルは混乱した。

 苦しさで涙がにじむのに、身体は熱と脈動で暴れ続ける。

 

「んんん……っ……ん──……っ」

 

 トリアの舌が口内を蹂躙し、完全に息を奪っている。

 ロウは執拗に敏感な芯を舐めあげる。

 

 息が……できない……。

 でも……このまま……落ちたい……。

 

 そんな矛盾した欲望が胸を満たした瞬間──ノルエルを襲っている快感は絶頂のふちまで一気に跳ね上がった。

 

 だが……。

 

 またしても、ふたりは同時に離れた。

 

 口に息が戻り、股間がゆっくりと冷えていく。

 喉の奥が空虚な音を立て、寸前で奪われた絶頂が身体の内側で燻り続けた。

 

「はぁ……はぁ……はっ……」

 

 ノルエルは、切なさで身体を震わせた。

 苦しさの余韻が残ったまま、快感の残骸が胸に渦巻く。

 

 ──苦しいのに……。

 ──なんで……こんなに……欲しい……。

 

 もっと……。

 もっと、苦しめてほしい……。

 

 あたしは、ここにいる──。

 

 自分で自分がわからず、涙が滲むほどだった。

 

 そして、同じことが繰り返された。

 

 ロウがキスをしてノルエルから呼吸を奪い──トリアが快感のぎりぎりまで股間を舌で責めあげる。

 

 次は、トリアが逆に口づけをして、ロウが愛撫で追い詰める。

 

 それでも、最後のひと押しだけは与えられない。

 ぎりぎりまで快感はせり上がるのに、必ず寸止めで終わる。

 

 ノルエルはあまりもの苦しさに泣きじゃくってしまった。

 苦しさの余韻が胸の奥に張りつき、呼吸は乱れた。

 快感の残骸が渦巻いて、逃げ場がない。

 気がつくと、そんなノルエルを、ロウが静かに見下ろしていた。

 

「ノルエル……そろそろ言うべきだな……。君が本当に望んでいることを……」

 

 低く落ち着いた声なのに、どこか逃がさない気配を帯びている。

 ノルエルはびくりと肩を震わせた。

 

「言いたく……ない……です……」

 

「言わないと、一生苦しいままだぞ……。ほら、トリアが見ている……」

 

 視線を向けると──。

 トリアが膝をついたまま、まっすぐにノルエルの顔を見つめていた。

 

 優しい目……。

 でも、逃げられない目。

 

「ノルエル……聞かせて……あなたの本当の気持ちを……」

 

「トリア様……」

 

 喉の奥がつまる。

 胸が痛む。

 こらえていた涙が滲む。

 

 そして、ロウがさらに追い込みをかけた。

 

「君は……虐められたい……。苦しいほど安心する……。それを……トリアに与えてほしいと思っている……。そうだろう?」

 

「ああ──」

 

 言葉が堰を切ったようにこぼれた。

 

「あ……あたし……最低で……汚くて……っ……」

 

 涙が零れた。

 

「苦しいこと……されると……安心して……嬉しくなって……しまうんです……」

 

 声は震え、涙と一緒に落ちていく。

 

「そんな自分……嫌いなのに……でも……トリア様に……されると……もっと……欲しくなるの……」

 

 泣き声が寝台に落ちる。

 ノルエルは縛られた腕をわずかに震わせ、必死に言葉を継いだ。

 

「ごめんなさい……トリア様……。こんな……最低なあたしで……ごめんなさい……」

 

 声が崩れ、大粒の涙が頬を伝った。

 

 その瞬間──。

 トリアがゆっくりと身体を倒し、ノルエルの頬に両手を添えて抱き締めた。

 

「ノルエル……」

 

 耳元に落とされた声は、驚くほどやわらかかった。

 

「いいの。あなたは……わたしのノルエルよ……。大好きよ……」

 

「ああ……っ……トリア、さま……」

 

「あなたがどう感じるかも……どう歪んでいても……全部かわいい。全部そのままでいいの……。あなたが苦しんだぶん……わたしが受け止めるわ」

 

 抱き締められた身体が、涙で震える。

 心の奥に巣食っていた黒い影が、少しだけ溶ける。

 

 ああ……。

 置いていかれない……。

 

 その確信が胸に落ちた瞬間、ノルエルは嗚咽まじりにトリアへ身を預けた。

 

 すると、ロウがトリアへ何かを手渡した。

 黒革で編まれた細身の帯──“張形帯”だ。

 ノルエルはその形を見ただけで、胸の奥が震えた。

 

 トリアが女同士で愛を交わすときに使っていたもので、革紐で腰に装着し、男のもののように相手の中を貫く張形だった。

 それと同じものを今日はロウがトリアに渡したのだ。

 トリアが嬉しそうにくすくす笑う。

 

「ノルエル、今日は特別よ……」

 

 革紐が擦れ、張形具がトリアに装着される音が聞こえた。

 自分の脚が拘束されたまま、その上にトリアの影が落ちてくる。

 

「かわいい子……。また気持ちよくなりたいんでしょう?」

 

「あ……あたし……そんな……」

 

 否定の声は弱く、震えていた。

 トリアはそれを見透かしたように微笑み、ノルエルの頬にそっと触れた。

 

「大丈夫よ。あなたは……わたしのノルエルなんだから」

 

 そして──ノルエルの腰に両手を添え、ゆっくりとノルエルの股間に張形を押し入らせてきた。

 ねちゃねちゃといやらしい水音とともに、トリアの股間に装着した張形の律動が始まる。

 

「あ……っ、や……っ……」

 

 声が漏れる。

 トリアの動きは、優しいのに容赦がない。

 愛と羞恥が同時に押し寄せ、ノルエルの視界が揺れた。

 

「ほら……すぐこうなる。かわいいわね……」

 

「ああっ──ああ、トリア──ああ、ああああ──」

 

 あっという間に絶頂に昇りつめさせられる。

 でも、トリアはノルエルが絶頂に触れそうになる瞬間を知っている。

 ゆっくり追い込み、ノルエルが息を奪う寸前で──。

 張形をふっと引き抜いて、離れてしまった。

 

「や……いや……」

 

 ノルエルは腰を震わせた。

 あと一息だったのに、置き去りにされた切なさが胸に残る。

 

「交代だな……」

 

 いつの間にかロウが股間側に回っていた。

 トリアがノルエルの身体から離れるとすぐに、その空白を埋めるようにロウの手が腰を掴む。

 

「あっ……ロウさん……ま、待っ──」

 

 言い終える前に、ロウの指がノルエルの乳房をなでおろした。

 その手つきは優しいのに、支配の気配があまりに強い。

 

「怖がらなくていい。……すぐ気持ちよくなる」

 

 ロウの怒張で股間を抉られた。

 

「ん、や……っ……あっ……」

 

 トリアとは違う。

 もっと深く、もっと容赦なく、心の奥に届く。

 すぐに激しい律動が再開された。

 

「あ、ああ、あああっ」

 

 だが、またしても絶頂に触れたその瞬間──ロウもまた、ぴたりと動きを止めた。

 

「……そこ、やだ……っ……お願い……」

 

 ノルエルは涙をこぼして震えた。

 まだ挿入はしているが、全く動いてくれない。

 ノルエルは腰を振って、最後の快感を搾り取ろうともがいた。

 

「もう一度、交代しましょうか、ロウさん」

 

「そうだな」

 

 しかし、ロウの怒張が抜かれてしまう。

 寸止めによる切ない焦燥感が嵐となって、全身を苛む。

 

 すぐに、またもやトリアの張形がノルエルの中に入ってきた。

 

 しかし、荒々しく律動をして、またしても、ぎりぎりで責めをやめて張形を抜いてしまう。

 

「次は、また俺だな」

 

 ロウが笑いながら、トリアと交替してノルエルを貫く。

 でも、ノルエルが追い込まれて昇天しそうになると、やはり男根を抜いてしまう。

 

「ああ、許して──狂っちゃいます……ああ、お願い、トリア様──ロウ様──」

 

 ノルエルは半狂乱になった。

 それでも、ふたりは笑いながら、挿入してはノルエルを追い詰め、絶頂しそうになったら寸止めで抜くというこを繰り返した。

 そのたびにノルエルの身体は跳ね、泣き、震え、追い詰められていく。

 快楽が蓄積し、苦しみに変わり、でもその苦しみすら甘くてたまらない。

 

「……ああ、もう殺して……」

 

 思わず漏れた声は、悲痛な悲鳴そのものだった。

 快楽に焼かれながら、逃げ場を失った哀願だ。自分でもなにを言っているかわからない。

 ノルエルは狂いそうな快感への飢餓感に泣きじゃくった。

 

「だめよ。あなたは生かして、可愛がるの」

 

 トリアがノルエルの頬にキスを落とした。

 

「ほら……もっと曝け出すんだ」

 

 ロウがノルエルの耳元で促す。

 

「もっと欲しいって言うのよ……。……それがノルエルの本当の望みでしょう?」

 

 トリアも反対側の耳でささやく。

 

「や……やだ……そんな……」

 

「言わないと、ずっとこのままだぞ」

 

 ロウは甘く静かに、逃げ場を塞ぐように続けた。

 

「そうよ……。苦しくて、切なくて、触れてほしくて……でも届かないままよ……」

 

 トリアが意地悪く笑う。

 ノルエルは涙を流しながら口を震わせた。

 

「……もっと……欲しい……です。でも、もっと……苦しく……てもいい……。あたし……おかしいから……っ……やめられない……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、トリアはノルエルを抱きしめた。

 胸元に引き寄せ、震える身体を包み込む。

 

「いいの。あなたは……わたしのノルエルよ」

 

 耳元で囁かれたそのひと言が、胸の奥で何かを溶かした。

 ノルエルは泣きながら顔を寄せ、縋るようにトリアの肩に額を押しつけた。

 

 背後では、ロウの手がノルエルの腰に添えられる。

 

「トリア、仕上げていいか?」

 

「ええ……お願い。ロウさん。ノルエルを……わたしたちの子にして」

 

 ノルエルの心臓が跳ねた。

 逃げられない。

 でも──それを望んでいる自分がいる。

 

 ロウがノルエルの腰を抱き起こし──またしても、怒張を挿入された。

 一気に深いところまで──。

 荒々しい抽送が再開する。

 

「や……っ……あっ……あああ──」

 

 一番気持ちのいいところをこれでもかと男根で刺激される。

 寸止めの極限まで追い込まれ続けた身体は、触れられた瞬間に破裂しそうにのたうった。

 腰が跳ね、背中が反り、視界が白く染まる。

 

 そして──。

 

 ノルエルは拘束された身体を限界まで弓なりにして、ついに絶頂を極めた。

 それに合わせるように、ロウがノルエルのなかで精を放つのをはっきりと感じた。

 

 ロウの精が子宮に流れ込んだ瞬間、心の奥深くまでなにかが刻み込まれていく感覚が襲った。

 ノルエルは息を呑み、震え、泣きながらその感覚に呑まれていった。

 

 ──もう、戻れない。

 ──でも……幸せ……。

 

 涙のにじむ視界の中で、ノルエルはそう思った。






 ノルエル
  人間族、女
   商家の娘
   イザベラ付侍女
  年齢16歳
  ジョブ
   侍女〈レベル3→10〉↑
   官吏〈レベル20〉↑(新)
  生命力:50
  魔道力:15
  経験数:女1→男1、女1
  淫乱レベル:A→S↑
  快感値:150/150→90/90
  能力
   補佐力↑(新)
  状態
   一郎の性奴隷↑(新)
   淫魔師の恩恵↑(新)
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