【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
一郎は、白い空間から、再び小離宮の広間に戻った。
床の上には、仰向けに倒れたままのクアッタがいる。
全裸の身体に、侍女服と下着だけが無造作に載せられた格好だ。
「ひ、ひあっ……。こ、ここは元の広間ですのね。もう……もう少し待ってくださっても……よかったと思いますわ……。ひどい、あんまりですわ……。わたし、恥ずかしいから待ってくださいとお願いいたしましたのに」
クアッタが天井に向けて恨めしげな声を絞り出した。服は身につけておらずに、仰向けの身体の上に固めて載せている。いまは、人目のある場所に戻ったことで、必死に身体を丸めて裸を隠そうとしている。
だが、まだ四肢はだるいのだろう。
頬は真っ赤で、呼吸はまだ乱れ気味だ。
しかし、喋る勢いだけは妙に元気だった。
「望みは、拘束を解いて服も返すことだったろう? その通りにした。着ないのはお前の勝手だ」
一郎が軽く言うと、クアッタは床の上でぷるぷると震えた。
「で、でも……わたし、指一本動かせませんもの……。少しくらい待ってくださっても、罰は当たりませんわ……。さっきの空間では、少しも時間が経たないとロウ様はおっしゃったではありませんの……。そうですわよね……?」
「まあ……そうかもしれないな。ここで待っている者の感覚では、多分、俺とクアッタが消えたのは、一瞬前くらいだろうな」
「そうでしょう? でしたらなおさら、お待ちくださってもよかったのですわ……。なにしろ、わたし……人生で初めてでしたのよ……。殿方を受け入れるのも……あんなふうにたくさん果てるのも……」
視線を逸らしたまま、床に倒れたクアッタの裸身が小さく身悶えする。
クアッタの裸身は、まだ赤く火照っていて、かなりの汗で濡れているし、一郎の放った精もそのままだ。
その姿だけは、まだ完全に余韻の中である。
まさに情事の直後という状態に、広間にいる女たちも顔を赤らめている。
「クアッタ、口だけは元気だのう……。まあいい。お前もこれで身内だ。こっちに来い」
すると、呆れを隠しもせず、イザベラがため息をついた。
また、すでに一郎の手で堕ちた侍女たち──トリア、ノルエル、ユニク──は、熱に浮かされた目でクアッタを見つめている。シャーラとスクルズもイザベラの横だ。
一方、まだ手をつけられていない六人は、緊張のあまり背筋を伸ばしたまま固まっていた。
一郎は六人をざっと見渡す。
顔色が蒼白で、呼吸すら浅いふたり──オタビアとダリアが列の端に並んでいる。
明らかに動揺が極端だ。
毒の小瓶をいまだに身体に隠しているのは、このふたりである。それは一郎の魔眼の能力により、「武器」として判定されたことで、所持しているのがわかった。おそらく、イザベラに毒をもろうとしたのも、このふたりで間違いないのだろう。
だから当然だが、表情ひとつでそこまでわかりやすいのも珍しい。
いや、わかり易す過ぎだ。
一郎は溜息した。
「……さて。次は──」
一郎は、怯えに震えるふたりへと視線を向けた。
「たまたま、眼が合ったしな。オタビアとダリアにしようか。こっちに来てくれ」
できるだけ自然な口調で、一郎は二人を指名した。早く楽にしてやった方がいいだろう。
その瞬間、ふたりの緊張が張りつめる。
オタビアがわずかに後ずさろうとしたが、イザベラが鋭い声で叱りつけた。
「オタビア。出よ──。ダリアもだ」
「……はい、姫様……」
足元が崩れ落ちそうなほどに震えながらも、オタビアは従った。
ダリアも唇をかみ締め、横に並ぶ。
ふたりの張りつめている緊張が伝わってくる。
特にオタビアなど、まるで冷たい水を浴びせられたかのように顔色が真っ青だ。
「まずは口づけだ……」
一郎は身体を前に進める。
「ひっ……」
すると、オタビアは肩を跳ね上げ、小さく悲鳴を漏らした。
そのまま、後ろへ下がろうとして足がもつれかける。
脚が震え、立っているだけで精一杯なのがわかる。
──そうか。
一郎は、オタビアのステータスを改めて魔眼で読む。
オタビア=カロー
人間族、女
子爵家 次女
イザベラ付侍女
年齢19歳
ジョブ
侍女〈レベル4〉
生命力:50
攻撃力:5(フィーイの毒保有)
魔道力:30
経験数:なし
淫乱レベル:SS
快感値:80/80
状態
先天性全身性感帯
ステータスに記された「先天性全身性感帯」。
意味はわかる。異常なほどに性的に敏感な身体の持ち主ということだ。先天性とあるので、生まれつきなのだろうが、例えば他人に触られると、指先であろうと鋭敏な性感帯に触れられたのと同じように快感を覚えてしまうのだ。
だから、触れられること自体を恐れているのだろう。
彼女の白い長手袋は、肩近くまで覆っており、あれは自分を世界から隔てる「最後の防壁」なのだろう。
「オタビア、心配ない。落ち着け……」
一郎はできるだけ優しい口調で名を呼んだ。
すると、オタビアの肩がびくりと揺れ、まるで叱られる子供のように目を伏せる。
その怯え方は、やはり理屈ではない。
身体が勝手に反応してしまうのだろう。
これは、優しくしても逆に潰れるタイプだな……。
一郎はそう判断した。
「オタビア──跪け──。すぐにだ──」
一転して、鋭い口調で怒鳴りあげる。
「──ひっ」
強い命令に、オタビアは糸が切れたように膝を落とした。
抵抗という概念すら浮かばないかのように、ただ従うしかないといった姿勢だ。
「上を向いて。口を開けろ──」
考える余裕を与えないように、間髪入れずに、続けて大声で命令する。
「オタビア様──」
隣のダリアが悲鳴のような声をあげる。
だが、一郎は無視する。
オタビアもまた、ダリアへの反応はない。その怯える瞳は、ただ一郎だけを見ている。
「……あっ、あ……」
オタビアの震えた唇がわずかに開く。
まるで、自分がなにをされるか理解する余裕もないまま、命令だけを追っている。
一郎はその口へ、上から静かに唾液を垂らした。
透明な滴が、オタビアの舌に落ちる。
「ひ……っ」
オタビアは喉を震わせながら、それを飲み込んだ。
その瞬間、淫魔術の糸がふっとつながる感覚が走る。
支配には程遠いが、白い空間に引き込むための鍵としては十分だ。
「まあまあ……。お優しいロウ様も素敵ですが、意地悪のときのロウ様もまた素敵ですわあ」
場をわきまえない調子で、スクルズが見当違いの嬉しげな声をあげた。
一度振り返ると、スクルズはなにも考えてないかのように、満面の笑みを浮かべ、シャーラは当惑顔だ。イザベラは少し複雑な顔になっていた。
一郎は、ダリアへ向き直る。
「次はお前だ。どうする? オタビアとは別々に行きたいか?」
ダリアは一瞬だけオタビアを見た。
その視線には恐れよりも、主を守ろうとする意志の色が強い。
ダリア
人間族、女
カロー家侍従長の娘
イザベラ付侍女
年齢18歳
ジョブ
侍女〈レベル7〉
生命力:50
攻撃力:5(フィーイの毒保有)
魔道力:なし
経験数:なし
淫乱レベル:B
快感値:450/450
ダリアのステータスには、カロー家侍従長の娘とあり、さっきまでの態度から考えると、オタビアとともにイザベラの侍女であるだけでなく、オタビアを守る従者でもあるのだろう。
「いえ……一緒に行きます」
ダリアもまた、膝をつき、オタビアと並んだ。
そして上を向き、じっと口を開く。
一郎はダリアの口にも唾液を落とした。
喉が上下し、淫魔術の刻みがふっと浸透する。
ふたりの刻印を確認したところで、一郎は立ち上がった。
そのとき、一郎の名を呼ぶ声がした。
声の方向を見る。
イザベラだった。
「……ロウ、ふたりを頼む……」
イザベラが静かに言った。
表情は真剣だ。
「任せてくれ……」
一郎は頷いた。
おそらく、あまりにも不自然なオタビアたちの様子から、自分に毒をもった者がオタビアたちであるとは予想がついたのだろう。
しかし、一郎は「犯人捜し」をしないと約束させた。
だから、このまま気がつかない振りはしてくれるに違いない。
もっとも、これからのことを考えると、イザベラともシャーラとも話し合い合わないとならないことはある。
だが、それは、まずはオタビアたちのことが終わってからだ。
「よし。では行くぞ……ふたりとも」
次の瞬間、世界は白一色へと変わった。
「えっ……」
「あれ……?」
戸惑いの声がふたつ、白い虚無へ重なるように響いた。
一郎は、その声でふたりが覚醒したことを知った。
オタビアもダリアも、この白い空間で意識を取り戻したときには、すでに「調教椅子」に拘束された状態だ。
「調教椅子」というのは、一郎が名づけた名称であり、産婦人科の“診察台”を思わせる形状の調教拘束具だ。
寝椅子状になっていて、女の両膝を曲げた開脚のまま高く掲げ、そこに固定する構造になっている。
──もっとも、一郎自身は本物を見たことはない。ただ、知識として知る“あの構造”を、この白い空間で再現しただけである。
「ど、どうして……こんな……」
「お嬢様……だ、大丈夫ですか……?」
覚醒した直後の困惑が、ふたりの瞳に大きく揺れている。
一郎はそれを黙って見下ろした。
ふたりの四肢は革の帯で固定され、膝は専用の支えに乗せられ、大きく股を開かれている。
腰と胴もベルトで締められていた。
乳房の上下にも一対の帯が掛かっている。
なによりも、この構造で一郎が気に入っているのは座台の部分であり、座台は臀部だけを支える形で左右に割れて、股間の真下にはなにも遮るものがないのだ。
固定したまま座椅子自体を回転させることもできるので、思うままに女を責め立てることができるということだ。
実に素晴らしい。
しかも、すでにふたりの服は脱がせており、腰の下着しか身につけさせてない。
ただ、オタビアについては、肩までの白い手袋だけは許した。
一郎は、向かい合っているふたりの寝椅子を少し回転させて、ほぼ天井を向いているふたりのお互いの顔が見えるようにした。
調教椅子には、角度を変えるハンドルもあるが、白い空間内なので、念じるだけで自在にできる。
「ああ、ダリア──」
「お嬢様──」
視線を合わせることができたふたりが声を掛け合う。
だが、相手の格好を見ることで、自分の体勢も理解したのだろう。
ふたりの顔が一気に紅潮し、露わになった肌が細かく震える。
息も荒くなり、拘束された剥き出しの乳房の上下が細かく震えだしたのがわかった。
ふたりをこの状態にしたのは一郎自身である。
これまでの四人は、現実空間から白い空間へ移すとき、姿勢も服装もそのまま連れてきた。
しかし、今回は変えた。
ふたりには抵抗する余裕すらも与えない。
一瞬だけふたりの意識を、無数に枝分かれした可能世界のどこかへ落とした。そこから“ちょうどこの姿のふたり”を抽出し、意識を同期させて白い空間へ繋ぎ直したのだ──淫魔師である一郎にしかできない処理だと思う。
そして、そのまま白い空間へ接続し直せば、ふたりはこの格好で目覚めるというわけだ。
ふたりの侍女服は、いまは一郎の亜空間に収納している。
「お嬢様と呼んでいるのか……。みんなの前では、“オタビア様”と呼んでいたと思ったけど?」
一郎は、固定されたダリアへ歩み寄る。
「あっ」
「あ、あの……」
座椅子に拘束されているふたりの視界は極端に狭い。
横側に立っていた一郎の存在に気がつかなかったのだろう。声をかけたことで、ふたりとも必死に一郎に視線をむけようとしている。
「返事は?」
一郎は、ダリアの脚のあいだに移動して、彼女の股間を下着の上から、縦にゆっくりとなぞった。
「ひああっ……」
ダリアの脚が調教椅子の上で震え、全身が弓なりに反った。
腰を逃がす場所がないため、震える身体はそのまま椅子に押しつけられる。
「返事だよ」
一郎は薄い布の上からダリアの敏感な陰核を転がすように愛撫してやる。
一郎だけにわかる性帯の印の赤いもやの部分だ。淫魔師である一郎には、相手の性感帯の弱点がもやの場所と色の濃さで視覚的に感じとれるのだ。
「ひあっ、いやあっ、やっ」
一郎の執拗な愛撫に、ダリアの股間のもやが拡大して、色の濃さが増していく。股間だけでなく、全身にも赤いもやが増えていく。
下着に丸い染みができて、それが淫靡な香りとともに大きくなっていく。
「返事だと言っているだろう? 質問にはすぐに答える。それがこの白い世界のルールだ」
一郎はダリアの無防備な股間への愛撫を続けながら言った。
ダリアの声に甘いものが交じり、脚の震えも始まる。
「あ、ああっ、いやああ──。そ、そうです。む、昔から……そう呼んでしまう癖があって……ときどき、です……。ゆ、許して──」
羞恥と混乱が押し寄せているのか、ダリアの眼に涙が滲みだしている。
一郎は指を離した。
ダリアが調教椅子の上で脱力した。
「ああ、大丈夫、ダリア?」
向かいのオタビアは、それを見て青ざめていた。
しかし恐怖だけではなく、自分も同じ姿で拘束されているという羞恥に、胸が上下している。
手袋に包まれた指先がかすかに震える。
「説明しておくか。ふたりが座っているのは、調教椅子というものだ。お尻も股間も責め放題ということだ。そして、お前たちには逃げる手段はない」
一郎は二人を交互に見ながら言った。
「……ひど……こんな……恥ずかしい……」
「お、お嬢様……。ああ、こ、こんなの……」
言葉は震えているが、ふたりとも逃げられないとは悟っているだろう。ふたりの顔に逃げ場のない羞恥と怯えが濃く滲む。
「さあ、じゃあ、懺悔の時間だ」
一郎はふたりを見下ろしながら、雑多なものを収納している空間から鋏を取り出した。
「なんに使うものかわかるか?」
一郎はまずは、その鋏を持ったまま、オタビアに身体を向ける。
オタビアの喉がはっとしたように小さく上下する。
一郎は、鋏の先をオタビアに唯一残っている下着の中に差し入れた。
「ああっ、お、お許しを……」
オタビアが顔を真っ赤にして身をよじろうとしたが、革帯がそれを許さない。
一郎は、無造作にオタビアの下着をまずは縦に斬り割いた。
さらにもう一箇所を切断すると、布片になった下着がぱらりと調教椅子の下へ落ちていく。
「や……あ……」
オタビアの喉から悲鳴とも嗚咽ともつかない声が漏れた。
露わになった股間は、ひどく濡れていた。
また、一郎の魔眼には、彼女の全身から発される赤いもやが強烈に見えていた。
普通の女であれば、赤いもやは胸や乳首、局部や陰核などに偏る。
だが、オタビアは違う。
肩、腕、腰、脇腹、背中、首筋、腹、太腿──どこもかしこも同じ濃さで赤く染まっている。
これが、「先天性全身性感帯」ということなのだろう。
しかも、剥き出しにさせた股間は、まだ刺激していないのに〈50/80↓〉まで落ちていた。
異様な感受性だと、一郎は改めて理解した。
局部ではねっとりとした愛液が漏れ始めている。
「男に触られるのが怖いのか? その手袋が、それを物語っているようだね」
一郎は、オタビアの肩に触れ、手袋越しに、肩から腕へ、肘の内側へ、そして手首へと指先を滑らせていく。
「ひああああっ……」
絶叫が白い空間に震えた。
オタビアの身体が大きく跳ね上がり、革帯に締められながら身をよじろうとする。
わずかな触れ方で、ここまで反応してしまうのだ。
しかも、ただの腕だ──。手袋越しで……。
なるほど、ここまで全身のあらゆる場所で感じてしまうなら。男に触られるどころか、近寄られるのも怖いだろう。
だから、ダリアが護衛のように、いつも側にいるのに違いない。
「ゆ、許して……ください……」
オタビアが啼きそうな顔で言う。
視線を向けると、蜜は粘りを帯び、内股をぬめらせていた。
一郎は、乳房の上辺りへ指を移した。
胸ではない、鎖骨の下あたりをゆっくりと撫でてやる。
「ひああっ……ひあっ……あ……ああ……っ」
涙がこぼれ、頬を濡らした。
脚が強張り、腰が跳ね、乳房が震え続ける。
向かい側のダリアの叫びが聞こえる。
一郎は無視して、オタビアの上半身を適当に手を走らせ続けた。
オタビアは拘束している革紐を引き千切らんばかりに暴れる。
やがて、突然にオタビアの背が弓のように反り返った。
「……あ、ああああっ……」
次の瞬間、股間から透明な飛沫がぴゅっと上へ向けて飛んだ。
絶頂とともに全身が痙攣し、肩から爪先まで細かく震え続けている。
息が乱れ、胸がひくつき、しばらくしてからがくりと脱力する。
一郎はオタビアから手を離した。
全身が性感帯であるだけでなく、反応も異常に鋭い。
「まるで、男に嬲られるためだけに存在する身体だね」
一郎は思わず、口に出してしまった。
「お嬢様に、これ以上触らないでください──。あたしなら……あたしなら、なにをされてもいいですから」
ダリアが悲鳴のような声をあげた。
涙のにじんだ目で、一郎を睨むように見ている。
震えながらも主を庇おうとする意志は、揺らいでいなかった。
「なにをされてもいいのは当然だろう。自分たちがなにをしたのか。懺悔をする気には、まだならないか?」
一郎は視線を向け、静かな声で告げた。
「懺悔……」
すると、一郎と視線が合っていたダリアがはっとしたように眼を大きくする。
一郎は、その反応を静かに受け止めるように視線を落とした。
「お前たちが、ここで裸で拘束されていたということは、この俺が服を脱がせたということだ。この意味がわかるな? つまり──隠していた小瓶を、俺が見つけたということだぞ」
その言葉に、ダリアもオタビアも、さらに顔を蒼くして震えだす。
一郎はふたりの侍女服を亜空間から呼び戻し、確認したときのことを思い返していた。
内ポケットの奥に、小さな瓶が丁寧に布で括り付けられていた。色も匂いも前回と同じ──フィーイの毒。劇毒であり、一滴でも摂取すれば人族なら即死しかねない。
前回と違い、今回は皿に塗った毒がすぐに露見したせいで、処分もできず、そのまま身体に隠したのだろう……と推測している。
だが、もっと不可解だったのは量だ。
ふたりの瓶に残っていた毒の量が、まるで計量したかのようにまったく同じだったのだ。
普通なら──皿に塗った直後であれば、どちらか片方から素早く使ったはずだ。
残量が一致するというのは、どうにも腑に落ちない。
分けて使ったのか、そもそも最初から量が揃えられていたのか……。どちらにしても、かすかな違和感だった。
「あ、あの……それは……」
ダリアが必死に言葉を探す。
だが、一郎はそれを遮るように、ゆっくりと言葉を続けた。
「姫様には、俺に犯されたことでお前たちの罪は問わないように取りなした。だが、こうして誰もいない空間で懺悔のひとつもできないというのなら……それなりの罰を与えないとな──」
その言葉を聞いたふたりの身体が揃ってびくりと震えた。
顔色がさらに青ざめ、喉が上下する。
一郎は、そのまま、さっきの鋏を持ち直し、今度はダリアの脚のあいだへ回り込んだ。
オタビアのときと同じように、下着の横を縦に切り裂き、さらに反対側を斜めに切断する。
ぱさり、と布片が床に落ちた。
「いやあっ」
羞恥に震えるダリアの声が漏れた。
露わになった下腹部がかすかにひくつき、薄い恥毛の根元がわずかに濡れている。
一郎は亜空間から、小瓶を取り出した。
掻痒剤のクリームだ。
粘度のある透明な液体が、瓶の内側で鈍く光っている。もちろん、あの三人娘ものたうち回るほどの痒みと即効性のものだ。
指先にたっぷりと掬う。
「まずは罰のひとつ目だ。ダリア……」
「ひい……っ」
一郎の指が、ダリアの臀部の割れ目をなぞり、肛門の縁に触れた。
「ああっ」
高く跳ねるような声が弾け、ダリアの身体がぶるりと震える。
革帯に締めつけられているため逃げ場がない。
一郎の指先はそのまま、肛門の周囲へゆっくりとクリームを塗り広げていく。
「や……っ……そ、そこは……っ」
嫌悪と羞恥の混じった声──。
だが、喉の奥にはすでに甘い響きが混じりつつあった。
歯をかちかちと鳴らしながら、必死で声を堪えている。
一郎には、肛門の奥に、赤いもやが小さく点のように灯っているのを見ており、そこへ指を押し当ててクリームを集中的に塗っていっているのだ。
嫌悪感が快感に変化するのに、いくらもかからなかった。
「っ……あ、あああ……っ」
ダリアの顔がひきつった。
その表情はすでに、戸惑いと羞恥から耐え難い快楽の色へゆっくりと変わっている。
肛門が一郎の指を押し返すように震え、太腿ががくがくと揺れた。
粘度の高い音を立てながら、指先が内部へクリームを塗り込んでいく。
「ひあっ……やっ……そんな……だめ……っ」
訴えているはずなのに、声は甘く崩れている。
一郎は十分な量を塗布すると、ゆっくりと指を引き抜き、腰を上げた。
「……では、次はオタビアだな」
「ひあああっ……やめて……やめてええっ……」
さきほどの絶頂の余韻がまだ残っているのか、オタビアは肩で息をしながら叫んだ。
目元は涙に濡れ、胸は大きく上下している。
「ああ……お嬢様には……触らないで……。あたしが……あたしが受けます……。お嬢様は悪くないんです……。全部、あたしがしたことなんです──」
ダリアがほとんど絶叫に近い声を張り上げた。
涙で濡れた目で、一郎を睨みつける。
「なにを言っているの……。わたしです……。わたしが全部悪いんです……。ダリアは従ってくれただけで……」
オタビアもまた、必死に叫ぶ。
ふたりが互いを庇おうとしているのが、痛いほど伝わってきた。
一郎はふっと小さく鼻を鳴らした。
「……どうやら、懺悔する気にはなったみたいだね」
そう言うと、一郎は虚空へ手をかざし、椅子を一脚出現させた。それをふたりの調教椅子のあいだへ置き、ゆっくりと腰をおろした。
その瞬間だった──。
「ああっ──」
甲高い悲鳴が白い空間に突き刺さる。
ダリアの身体が跳ね上がった。
「か、かゆい……っ、や、やだ、これ……っ、かゆい、かゆいいいっ──」
ダリアに視線を向ける。
すでに、全身から脂汗が噴き出していた。
全身が真っ赤になっていて、喉がひゅっと鳴っている。
調教椅子に拘束された四肢が、逃げ場を求めるように震えながら無様に痙攣する。
「ダリア──。だ、大丈夫? しっかりして──」
向かい側のオタビアが、蒼ざめた顔で泣き出しそうに叫んだ。
彼女自身も、さっきの絶頂の余韻が残り、肩で息をしているが、必死に身を乗り出すようにしてダリアを見ている。
「お……嬢様……っ、む、無理……っ、かゆい……っ、かゆいのお……」
ダリアは震える声で叫び、必死に尻を浮かせようとしている。
しかし革帯がきつく固定しているため、逃げ場はない。
身動きできない状態で痒みがお尻に広がり、喘ぎにも似た断続的な悲鳴が漏れ続ける。
一郎はその様子をじっと見つめ、椅子の背にもたれさせている。
「さあ、とにかく、懺悔だ……。さもないと、痒みは永遠に続くぞ」
一郎の低く落ち着いた声が白い空間に響いた。
淡々と告げられたその言葉が、逆にふたりの恐怖を煽ったのか、ダリアは苦悶で背を反らし、オタビアは震える唇を噛みしめて、一郎に哀願の眼を向ける。
まあ、いずれにしても、逃げ場も時間も奪われたふたりを前に、一郎は静かに腕を組んだままでいた。ふたりが口を開くのを──じっくりと待つだけなのだ。
「かゆっ……かゆいっ……。いやだっ、やだああ──っ」
ダリアは全身をのけ反らせ、革帯を食いちぎらんばかりに暴れている。
腿も腹も肩も、掻きむしることすらできない苦悶に震え続ける。
「ダリア──。ああ、ロウ様──。罰は……罰はわたしに……。わたしこそ……罰を受けるべきなんです──」
オタビアが涙をにじませ、震えながら叫んだ。
その声は細く弱いのに、必死に張り上げようとする健気さがあった。
「それも……そうだな。確かに、片っぽだけというのは、実に不公平だ」
一郎は掻痒剤の小瓶を持ち直して、ゆっくりと立ちあがった。
その動きだけで、オタビアの肩がびくりと跳ねる。
「だ……だめええっ──。お、お、お嬢様には──これは無理です──。あ、あたしに……っ。あたしが……お嬢様の分も受けますから……。お嬢様には……やめてください、お願いです──」
痒みと恐怖で涙をぼろぼろと流しながら、ダリアは必死に叫んだ。
主を守ろうとするその声が、白い空間に痛々しく響く。
「ほう、じゃあ、ダリアがオタビアの分も受けるということだね?」
一郎はほくそ笑んだ。