※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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1話 召還された外来人
001 召還された無能力者


 素っ裸の美女が、こちらに向かって突進してきた。

 

 白磁のような肌──。

 尖った耳──。

 

 そして、なによりも人間離れした息を呑むような美貌──。

 

 いわゆる“エルフ族”というやつだ。

 そのエルフ女が、これまた素っ裸の一郎めがけて飛びかかってくる。

 

 本来なら──これは男として、涙して喜ぶべき状況かもしれない。

 だが、いまの一郎に、そんな余裕はなかった。

 次の瞬間、その女の裸体がふっと視界から消える。

 

「ぐあっ──」

 

 言葉を発する間もなく、全裸の美女の回し蹴りが脇腹にめり込んだ。

 呼吸が止まり、吐き気がせり上がる。

 一郎は苦悶の声を上げることもできず、その場に崩れ落ちた。

 間髪入れず、女が膝蹴りを見舞おうと迫ってくる。

 わかっていても、もう身をかわす力も、気力も、残ってはいなかった。

 

 ──ただ、受けるしかない。

 

 ふと、視界の端に揺れた。

 眼前に現れた女の、ほどよく膨らんだ小ぶりの乳房がわずかに跳ねたのだ。

 その刹那、あらゆる痛みが霞み、思考がその裸体に奪われる。

 

 真っ黒な長髪、透けるような白肌。くびれた腰に、柔らかくも張りのある尻──。

 そして、無毛の股間……。

 

 どこを切り取っても、男の欲情をかきたてる完全な裸体だった。

 

 やはり、ここは“異世界”なのだ。

 

 この女ひとりの美しさだけで、そう納得するしかない。

 

 二日前──。

 一郎は、なんの前触れもなくこの世界に召喚された。

 

 それ以来、理不尽な暴力の嵐に晒されている。

 これが、いまの田中一郎に降りかかっている現実だ。

 

 美しい裸身を視界に入れた瞬間、下腹が熱を持ち、男根が不意に持ち上がった。

 どれほど屈辱にまみれても、女の裸体には逆らえない──そんな自分に、一郎は呆れかえった。

 

 だが──。

 その視界を女の膝が遮る。

 

「ぼへえっ」

 

 顔面への直撃。

 再び意識を失うかと思った。

 気絶すれば、魔道で無理やり覚醒させられ、同時に負傷箇所は治癒される。

 そしてまた、「試し」が繰り返される。

 

 この二日間、ずっと続いている地獄のようなサイクルだ。

 だが、一郎は何を試されても「無能」と評価されるだけだった。

 戦士として無能──。

 魔道遣いとしても無能──。

 暗殺者、商人、農夫、職人……どんな職能を探しても、それに応える覚醒した力はなかった。

 異世界から召喚された、ただの平凡な人間──。

 それが、一郎に下された唯一の評価だった。

 

「やめよ」

 

 そのとき、不意に“声”が部屋に響いた。

 この見知らぬ空間に閉じ込められて以来、一郎のすべてを「支配」してきた声──。

 主の命が下った瞬間、全裸の美女は、膝を振り上げたままの姿勢でぴたりと静止する。

 

「駄目だな……筋力、耐久、敏捷性、すべて最低ランク。理力もほとんど感知されず、魔道の資質もなし。戦士としても、魔道遣いとしても使いものにならん。わたし程度の生身の戦闘力にも劣るとなると、並の農夫の方がまだ力がある。しかも、三十五歳だと? 外界人にしては、かなりの老齢だな」

 

 声にはあからさまな落胆と嘲りが滲んでいた。

 それに、三十五歳で老齢とは、失礼な話だ……。

 

 胸の中でそう毒づきながらも、一郎は黙っていた。

 口答えをすれば、また容赦のない魔道の“罰”が待っている。

 それは、この二日間でいやというほど味わわされた。

 

「申し訳ありません、アスカ様……。わたしの召喚術、やはり不完全だったのでしょうか……」

 

 自責の気配が濃くにじませて、おずおずと声を上げたのは、若い女のものだった。

 

「いいや、エルスラのせいではない。召喚によって呼び寄せられる外界人の能力は偶然に左右される。呼んでみなければ、どの資質が突出しているかはわからん。だが、これまで百人以上を召喚してきて、ここまで無能力な個体は初めてだ。しかも三十を超えている……。普通は、男も女も十代か二十代で現れるのだがな」

 

 アスカ──。

 

 姿を見ずとも、それとわかる声音。

 この城の主であり、異世界から人間を召喚する「召喚師」。

 そして、軍団を築き、独立領主のように振る舞う魔道の女王。

 

「ごめんなさい、お姉様……」

 

 そして、エルスラ──。

 それがもうひとりのエルフ族の女の名だった。

 

 ほどなくして、ふたりの姿が部屋に現れる。

 それと同時に、一郎をいたぶっていた“人形”が霧のように消えた。

 その“人形”こそ、アスカが魔道で作り出した、自身の分身である。

 実体と見紛うほど完璧な肉体と容姿──。

 全裸の美女に襲われるという悪夢は、すべてこの人形による仕業だった。

 

 まったく、とんでもない女たちだ。

 

 ──アスカとエルスラ。

 

 漆黒の髪を持つアスカは、妖艶な美女で、この“アスカ城”を支配する絶対的な存在。

 一方、黄金の髪を持つエルスラは、彼女の弟子にして、若き召喚師の卵。

 ふたりはともにエルフ族──本人たちの主張するところによれば、この世界では高位の人種らしく、長い耳と透き通るような肌を持ち、痩身ながら驚くべき身体能力と魔道の才を併せ持つ種族らしい。

 また、彼女たちこそが、一郎をこの異世界へと召喚した張本人であった。

 そして一郎に与えられた役割は、召喚後に魔力で洗脳され、「奴隷戦士」としてこの城に仕えることだった。

 

 召喚の直後──。

 一郎はアスカとエルスラの手で、この城の内部を案内され、最低限の説明を受けた。

 彼女たちがいう「外界人」とは、異世界から召喚された者たちを指す言葉で、召喚によって転移してくる者は、例外なく、なにかしらの能力に“変異”が起きるとされていた。

 筋力、魔力、知力、治癒力、運勢……

 いずれかが人並外れて高まるのが、召喚者の常識であった。

 ゆえに、外界人は「奴隷」として扱われながらも、魔道の軍勢に組み入れられ、時には、アスカ城の中枢にまで取り立てられることすらある。

 

 ──だが、一郎は違った。

 

 どれほど調べても、特筆すべき能力が見つからない。

 身体を鍛えても強くならず、魔道具を持たせても反応はない。

 呪具も通じず、感応力も乏しい。

 唯一誇れるのは、ただひとつ、妙に頑丈な性器だけ。

 このままでは評価がつかないという理由で、一郎は延々と“試し”を受けさせられた。

 半日で終わるはずのものが、二日以上も続いた。

 

 しかもその試練とやらは……はっきり言えば、拷問だった。

 人形による暴力、魔道による苦痛、そして羞恥心を抉るような屈辱の数々。

 

 ──それでも、一郎はなにも覚醒しなかった。

 

 気絶し、治療され、また拷問を受ける。

 それを繰り返すうち、心も身体も限界に近づいていた。

 ただ、首に巻かれた銀色の首環だけが、いまだに存在を主張していた。

 「支配の首環」と呼ばれるそれは、一郎がこの世界に現れた直後に魔道によって自ら装着させられたものだった。

 

 抵抗すれば、電撃のような苦痛が走る。

 拒否すれば、呼吸が止まる。

 無理やり脱がされ、全裸にされ、羞恥のまま首環だけを残されて立たされる。

 それが、この異世界における「奴隷」の始まりだった。

 

「それにしても、こんな無能ならば、『支配の首環』を使うことすらもったいないのう」

 

 アスカが小さく鼻を鳴らした。

 

「はい……」

 

 エルスラは項垂れている、

 

「この支配具は、そこそこ高位の魔道具だぞ? 理力を封じるためにかなりの力が要る。こんな無能にくれてやるとは……」

 

「ですが、お姉様。この男は従順です……。それだけは評価できると思います」

 

 エルスラが一郎に冷たい目を向ける。

 その視線には、召喚者としての落胆と苛立ちが滲んでいた。

 生まれて初めて本格的な召喚術を試みた結果が、よりにもよってこの無能力者──。

 それがエルスラの落胆の理由であり、怒りの矛先は、一郎に向けられていた。

 

「おや? どうやら、当の本人は怒っているようだぞ」

 

 アスカが口元を歪めて笑う。

 

「まあ、いい。調教するのも召喚師の務めだ。支配の首環は心を縛るが、意志までは従えない。主命に進んで従わせるには──躾が必要だ。練習ついでに、エルスラ、お前がやってみよ。好きにしてよい。殺してしまっても構わん。どうせ、これ以上の価値はない。無能にはその程度の役割しかない」

 

「……わかりました、お姉様」

 

 エルスラがじろりと一郎を睨み据え、手に持った細い杖を掲げた。

 その一言で、空気が凍る。

 

「……立ちなさい、奴隷。これより本格的な躾に入るわ。わたしのことは“ご主人様”と呼びなさい。イチ──」

 

 イチ──。

 それが、一郎に与えられた「名」だった。

 田中一郎の名からとった、彼女たちなりの蔑称だ。

 エルスラの構える杖がこちらを向けられる。

 はっとした。

 ──次の電撃が来る前に、立ち上がらねばならない。

 

「ま、待って……わかった、立つ……立つよ、だから……」

 

 すぐに立ちあがる、同時に両手で股間を隠す。

 いくら異世界でも、羞恥という感情は変わらない。

 なにより、相手は若い女──しかもふたりも──。

 恥辱が胸を焼く。

 

 だが──。

 その屈辱のさなか、不思議な感情がこみあげてきた。

 あらわな肉体を、あざけるように見下ろすふたりの美女。

 その視線にさらされているというだけで、なぜか身体の芯が熱を帯びていく。

 

 ぞくりとした。

 背筋から尻へ、そして股間へと、焼けるような熱が移ってゆく。

 

 まさか……。

 

 一郎は気づいた。

 立ちあがる前から、股間が疼き、硬くなりかけていたのだ。

 だが、アスカもエルスラも、まだ気づいていない。

 いまはまだ、手で覆ってさえいれば隠せているが……。

 

 とにかく、視線を逸らしたまま、ふたりの顔を見ないようにしていた。

 ふたりの裸身を見ただけで、理屈を越えた熱が身体の奥から突き上げてくる。

 こんなにも──女の身体に執着してしまうとは、自分でも信じられなかった。

 だが、その一挙手一投足までも、見逃さずにいたのはエルスラだった。

 

「……その手を股間からどけなさい──」

 

 ぴしゃりとした声音が飛ぶ。

 

「いや、そのう……。どけろと言われても……」

 

 すでに、股間は完全に勃起状態だ。

 

「奴隷の姿勢は、手を後ろに。立っているときも座っているときも、そうするのが決まりよ。恥を隠すのは、自由を持つ者の権利──奴隷にはその資格はないわ」

 

「……」

 

 声にならない呻きが漏れる。

 それでも──命令には逆らえない。

 一郎はゆっくりと、両手を背後へと回した。

 

 その瞬間──。

 

 股間の勃起が、ふたりの前にむき出しとなった。

 むずかしく曲がった怒張が、下腹部から突き出し、ぴくりと震えながら存在を主張する。

 

「な──っ」

 

「ひゃっ……」

 

 ようやくふたりが、それに気づいた。

 アスカは呆れたように目を細めて口元を緩めた。

 

「ほう?」

 

「きやああああ」

 

 一方で、エルスラは悲鳴を上げた。

 

 そのときだった。

 エルスラの身体の股間あたりが、ふわりと桃色の光を帯びたのだ。

 しかも、ぼんやりと広がっていく。

 

 ──それだけではない。

 一郎の脳裏に、突如として“数字”が浮かんだ。

 

 アスカ──“300”。

 エルスラ─“50”。

 

 意味は、わからない。

 だが、確かに視えた。

 

「──なるほど、一物だけは、並以上に元気のようだな」

 

 アスカが楽しげに笑った。

 

「だったら、種馬として使ってみるか? 女奴隷を孕ませる用途なら、役立たずでも可能性はある。ふふ……いいかもしれんな」

 

「お、お前、な、なにを勝手に大きくしてるのよ──」

 

 一方で、エルスラが顔を赤くして叫んだ。

 

「ち、ちっちゃくしなさいっ──」

 

「ちっちゃくって……。そんなに自由自在には……」

 

「いいから、従ってよ──」

 

 エルスラが怒りのままに、杖で一郎の股間を引っ叩いた。

 

「うっあああっ」

 

 無防備な睾丸に軽く当たっただけだったが、その衝撃は異常なほど鋭かった。

 

 そして──。

 その刺激に耐えきれず、一郎の肉体が暴走する。

 張りつめた欲望が、理性を追い越して奔流となり──意志とは無関係に、精が放たれてしまったのだ。

 

 次の瞬間──。

 びゅっ──と精が噴き出し、目の前にいたエルスラの顔面を直撃していた。

 

「きゃああああっ」

 

 悲鳴が木霊する。

 エルスラがうずくまり、ローブの袖で口元を必死に拭う。

 精が、口の中に入ってしまったのだろう。

 事態を呑みこめないまま硬直する一郎の横で、アスカが腹を抱えて爆笑していた

 

「はははっ、これは愉快だのう。困ったサルめ」

 

 アスカは袖を拭いながら震えるエルスラに、なにかを放り投げた。

 

 小さな金属の輪──。

 親指ほどの大きさの、鈍く光る銀の輪だった。

 

「これを貸してやろう。淫猥な男根を管理するための“射精管理具”だ。首環が心を縛る道具なら、これは股を縛る道具──。調教を始めるには、ちょうどよいだろう?」

 

「ちょ、調教って──? しかも、射精管理……。それを、わたしがやるんですか?」

 

 顔を真っ赤にしたエルスラが、絶句する。

 だが、アスカは悪びれることなく続けた。

 

「そうだ。せっかく召喚したのだから、ひと通り扱えるよう躾けてみよ。うまくいけば、ご褒美にまた可愛がってやるぞ」

 

 エルスラの視線が鋭く一郎に向けられた。

 唇を噛みしめ、震える手で杖を握り直す。

 

「こ、このっ……」

 

 呪詛のような言葉が漏れた。

 そして次の瞬間──。

 怒りを込めた電撃が股間から全身に向かって貫いた。

 

「うぎゃあああああ──」

 

 全身が痙攣し、視界が一瞬で白く染まった。

 耳の奥で、誰かが名前を呼ぶ。

 命じるような、冷たい声──。

 

 けれど、もうなにもわからない……。

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