※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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197 決着と帰還

「じゃあ、愛し合え、命令だ──。さあ、始めてもらおうか、奴隷たち」

 

 ロウの声が白い空間に落ちた瞬間、ダリアは思わず肩を震わせた。

 さっきまで白い床のような場所に座っていたはずなのに、気づくとそこは広く柔らかな寝台へと変わっていた。

 目を瞬かせても、それは変わらない。

 まるで幻術のような……、いや、それ以上のなにか。ロウの能力は、やはり常人の理解では追いつかない。

 

「ほら、遠慮なく相手を責めろよ。手を抜くと掻痒剤の罰だ」

 

 その言葉に、ダリアの背筋がぞくりと粟立った。

 あの地獄のような痒みのことを思い出し、喉の奥まで小さく震えが戻ってくる。

 寝台の向こう側で目を合わせたオタビアも、青ざめた顔で首をすくめた。同じ記憶がよみがえったのだろう。

 

 だけど──。

 

 ロウに抱かれたとき、全ての痒みが嘘のように消えて、胸の奥が幸福で満たされた感覚もまた同時に記憶を呼び起こす。

 抗いようのない支配……。それなのに安心するような包まれ方……。

 ダリアは知らなかった。誰かに支配されるということが、こんなにも救われるものだとは……。

 

 もう逆らう気持ちはなかった。

 ただ、言われた「愛し合え」という命令だけは、どうしていいのかわからない。

 まごついていると、ロウが呆れたように笑った。

 

「ほら、見つめ合っているだけじゃ、なにもできないぞ」

 

 そう言いながら、オタビアの肩に腕を回し、そのままダリアのほうへぐいっと押しやる。

 

「ああっ、あんっ……」

 

 たったそれだけで、オタビアの身体は柔らかく波打ち、くねるように甘い声を漏らした。

 

 ──っ、まただ。

 

 オタビアは他人に触れられるだけで、全身が快感に震えてしまう異常な性感の持ち主なのだ。

 それを誰より知っているのはダリアだ。

 ずっと守ってきたのは自分。侍女としての使命でもあった。

 

「お嬢様……大丈夫ですか……?」

 

 思わず駆け寄るように身を寄せかけたが、ロウが振り返りもせずにオタビアの耳元でささやく仕草になり、浮かせていた腰を落とし直す。

 

「恥ずかしがるな、オタビア……。それは個性だ。それに愛し合うときは、誰でもそうなる」

 

 オタビアは荒い息のまま、その言葉にすがるように頷いた。

 

「こ、こんなはしたない身体で……失望されませんか……?」

 

「失望なんかするか。愉快で愉しい。ついつい苛めたくなる。実に愉しい俺の玩具だ」

 

 そう笑って、ロウはオタビアの乳房を軽く揺さぶった。

 

「あっ、いやあっ……あああっ……」

 

 オタビアは腰まで跳ねるほどに悶えたが、その表情を見て、ダリアは凍りつくどころか、むしろ安心してしまった。

 これは嫌がっている顔じゃない。

 お嬢様は、ロウ様に恋している。

 そんなふうに感じられるほど、オタビアの目は熱く濡れていた。

 

 その瞬間、ダリアは胸を撫で下ろしたような気持ちになった。

 嬉しい……。

 だけど、なぜかほんの少しだけ、胸の奥が寂しかった。

 

「しかし、その敏感な身体じゃ、ダリアと一対一じゃ負けだな。……よし、オタビアの拘束は外してやる」

 

 ロウが冷静に言葉を継いだ。

 背中にかけられていたオタビアの革枷が外れ、オタビアは自由になった腕を胸元で抱くようにして震える。

 

「ダリアを徹底的に苛めるんだ」

 

 その命令に、ダリアは息を呑む。

 後手拘束のままでは抵抗などできない。

 

「ダリア……ロウ様のご命令ですので……わたしと一緒に……恥ずかしい想いをして……」

 

 オタビアが、涙ぐんだような顔で迫ってくる。

 次の瞬間、オタビアは激しい勢いでダリアの裸身を抱きしめてきた。

 オタビアに抱きしめられ、ダリアは自分の胸の奥がきゅっと熱く締めつけられるのを感じた。

 

「あなたには……感謝してます……。ふ、不出来なわたしに尽くしてくれて……」

 

 後手に手錠されたままのダリアの顔を腕に押しつけながら、オタビアが震える声で告げる。

 その言葉に、ダリアはオタビアの乳房に押しつけられている顔を小さく左右に振る。

 

「お嬢様……お嬢様は、不出来なんかじゃ……」

 

「不出来です……。お姉さまや……お父様に逆らえず……取り返しのつかないことを……。あなたまで巻き込んで……」

 

「違います……。お嬢様は、わたしの誇りです」

 

 ダリアがそう言うと、オタビアはダリアの肩に額を押し当てたまま、かすかに震えた。

 

「湿っぽいのはもう終わりにしろ──。まずはキスだ。ぴったり寄り添って口を吸い合え──。命令だ」

 

 そのとき──背後から、ロウの冷えた声が落ちた

 命令という言葉が落ちた瞬間、ふたりしてびくりと震えてしまう。

 はっとしたが、次の瞬間、ふたりで顔を見合って笑ってしまう。

 オタビアがそっとダリアの眼を見つめてきた。

 

「……ダリア、口づけを……」

 

 その顔が近づく。

 潤んだ瞳も、震えた睫毛も、すべてが愛おしくて堪らない。

 

「はい……お嬢様……。それと……昔から、ずっとお慕いしてました……」

 

 言うつもりなんてなかった。

 心の底に沈めて、決して言うまいと思っていた言葉だったのに──いまは自然と漏れた。

 オタビアは眼を大きくしていた。

 

 顔を伸ばし、オタビアの唇に自分の唇をそっと重ねる。

 柔らかくて、甘くて、ずっと触れたかった感触だった。

 触れ合っただけで胸の奥からじわりと熱が溢れ、唇同士を撫でるように、擦り合わせるように摺り寄せた。

 

「ん……っ……ん……」

 

 甘えるような鼻声が、オタビアの喉から漏れた。

 感じてくれている──そう思うと、ダリアの全身が震えるほど嬉しくて、もっと触れたくて、もっと味わいたくて、身体が熱くなる。

 

「そんなに熱のない口づけじゃなく、舌と舌をお互いに吸い合え。恥ずかしいことも、みっともないことも曝け出すのが愛し合うということだ」

 

 ロウの声は内容こそ赤裸々なのに、どこか優しく響いた。

 ダリアは一度唇を離し、オタビアの耳もとで囁く。

 

「お、お嬢様……口を開いて……」

 

「う、うん……」

 

 オタビアがそっと口を開く。

 ダリアは舌を差し入れ、オタビアの舌に自分の舌を絡めた。

 

 柔らかい。甘い。気持ちいい──。

 吸って、舐めて、絡め合う。

 

 オタビアもか細い息で「ん……っ、ふ……っ」と返してくる。

 その反応が愛おしくてしかたなかった。

 

 いつの間にかダリア自身の息遣いも荒くなっていた。

 舌を絡め合うたびに、胸の先や下腹部が熱を帯びて疼く。

 しばらくのあいだ、夢中で吸い合っていた。

 

「そうだ。それが愛し合うということだ」

 

 ロウの声とともに、ダリアの肩に手が触れた。

 軽く押されると、身体は寝台に仰向けに倒れ込む。

 後手の手錠はついたままだが、手首を繋ぐ鎖は長く、寝台に横たわっても邪魔にはならない。

 むしろ身体の側面にぴったり触れる位置であり、動けないという拘束感が妙に熱を生んだ。

 

「オタビア、ダリアに口づけだ……。今度は胸だ。優しく口づけしてやれ」

 

「は、はい……」

 

 オタビアがダリアの下腹部に跨り、太腿を挟むようにして体重を預け、両肩に手を置いて胸を見下ろしてきた。

 その視線だけで胸が熱くなる。

 次の瞬間、オタビアの唇がダリアの右の乳房に触れた。

 

「ひゃんっ……ああ……お、お嬢様……」

 

 声が漏れた。

 乳首をそっと包まれ、柔らかく転がされ、吸われる。

 そこから全身へと熱が駆けあがり、下腹部がじんと疼いて、腰が勝手に跳ねる。

 

「そうだ。股間も触ってやれ。優しく。感じる場所をな」

 

 ロウの声に従うように、オタビアの指がダリアの下腹部にそっと触れた。

 

「あっ……ああ……っ……」

 

 オタビアの指が襞を撫で、陰核のまわりをくすぐるように揺り動く。

 

「お嬢様……っ……」

 

 乳首と股間──二か所を同時に責められ、ダリアは身体を突っ張らせた。

 

「ダリア……わたしも大好きよ……。いつも守ってくれるあなたが……大好き……っ」

 

 オタビアが顔を上げ、涙を浮かべながら叫ぶ。

 

「ああ……お嬢様……。あたしも……ずっと……」

 

 好きです──喉の奥からその言葉が零れた瞬間、オタビアの指が強く陰核を押し、ダリアの全身が熱の波に覆われた。

 幸福に包まれ、胸の奥で叫ぶ。

 

 ああ、お嬢様……。もう死んでもいい……。そう思った。

 

 胸と股間を同時に愛撫されながら、ダリアは寝台に仰向けのまま、荒い息を押し殺すことすらできなかった。

 乳首を転がすオタビアの舌は、まるで蜜を探す小動物のようで、指先は慎ましやかに震えながらも、感じる場所だけを確実に撫でていく。

 自分より弱くて、怖がりで、すぐ泣いてしまう──そんなイメージのあったお嬢様なのに……いまは違う……。

 触れられるたびに、ダリアの身体は敏感に跳ね、オタビアの動きに合わせて震え続けた。

 

「お嬢様……や……そんな触りかた……っ……ああ……っ」

 

「ダリア……かわいい……。わたし……もっと触れたい……っ」

 

 オタビアの声は甘く震えていたけれど、その指先は迷っていなかった。

 むしろ恋人に触れるような確信めいた動き。

 その変化が嬉しくて──胸がじんと熱くなる。

 ロウが横で見ているのに、そんなこと気にならないほど、いまは彼女に夢中だった。

 

「オタビア……もっと下だ。中指を滑らせて、奥に触ってやれ」

 

「は、はい……ロウ様……」

 

 控えめな返事のあと、オタビアの指がダリアの裂け目をゆっくり押し開いた。

 

「ひぅっ──。お嬢様っ……そこ……だめ……っ」

 

 濡れきった熱い襞の中へ、オタビアの細い中指がじわりと沈んでいく。

 

「ああ、ダリア──」

 

「指が……入って……っ……お嬢様……っ……」

 

「こんなに……あたしのために……濡れて……」

 

 オタビアの頬が赤く染まり、その瞳は涙に似た光で潤んでいた。

 自分の身体の奥にオタビアが触れている──その事実だけで胸が熱くなって、息が震えた。

 

「お嬢様……っ……指……動かさないで……っ……」

 

「だめよ……ダリア……。ロウ様に言われたの……。あなたを……気持ちよくさせるの……」

 

 言いながら、オタビアはダリアの中で指をゆっくり前後に動かし始めた。

 それがあまりにも優しくて、あまりにも愛おしくて、ひと押しごとに身体が跳ねあがる。

 

「お、お嬢様……そんな……だめ……っ……だめ……っ」

 

「かわいい……。ダリア……かわいすぎる……」

 

 オタビアの身体がゆっくりとダリアに覆いかぶさる。

 汗が混ざった肌同士が触れ合い、胸と胸が押し合い、熱が絡み合った。

 

「……お嬢様……」

 

「ダリア……キス……したい……」

 

 涙のように潤んだ瞳で覗きこまれ、ダリアは息を飲む。

 

「はい……お嬢様……」

 

 唇同士が近づき、舌が絡むと同時に、

 

「んっ……っ……ダリア……っ……」

 

 オタビアの指がダリアの内部の甘いところを押し上げた。

 舌を吸われながら、愛撫の刺激が襞の奥をかき乱し、全身が細かく震えた。

 

「ひぁっ……あっ……お嬢様……だめ……っ……でちゃう……っ」

 

 快感で身体が跳ねて、顔が離れた。ダリアは声をあげた。

 

「ダリア、オタビア、脚を開いて股間を重ね合え──。ぴったりと押しつけて、お互いの茂みを摺り合わせるようにね」

 

 ロウの声が跳ぶ。

 ダリアは、言葉に操られたように気がつくと脚を開いていた。オタビアが上から覆いかぶさるようにして、腰と腰をぴたりと合わせてきた。

 そのオタビアの眼は、まるで酔っているかのように潤んでいる。

 

「ああ、ダリア──」

 

「お嬢様──」

 

 敏感なオタビアは、股間が触れただけで、ぶるぶると身体を震わせて、身体をダリアに落としてしまった。

 胸と胸が押しつけられ、濡れた股間同士が滑るように触れ合う。

 ダリアは下から、押し合わさった中心を確かめるように、腰をそっと摺り寄せた。

 

「ああ、気持ちいい……ダリア……わたしも……こんな気持ち……初めて……」

 

「お嬢様……わたしも……っ……好き……っ……」

 

 もはや抑えられなかった。

 乳房と乳房までもよじり合い、股を刺激し合う。もうすっかりと官能の芯が燃えている。

 頭の中も痺れていた。

 すっかりと潤んでいる部分をさらに腰をよじらせる。腰の奥で熱が溜まり、股間の内側が痙攣を始めた。

 

「ダリア……いっちゃう──。わたし、いっちゃう──」

 

「あ、あたしも、いきます──一緒に──」

 

 その願いが胸に響いて、ひと押しの力になった。

 

「お嬢様……っ……っ、あ……あああああっ……」

 

 ダリアは腰を跳ね上げ、後ろ手のまま指を握り締め、身体を突っ張らせたまま絶頂が押し寄せた。

 

「ダリア──あああっ」

 

 オタビアもまた、全身を突っ張らせて、ダリアを抱きしめながら快感の極みを示した。

 そして、お互いに完全に脱力してしまう。

 

「ああ……お嬢様……っ……あたし……幸せです……。本当に……」

 

「わたしも……。あなたがいてくれて……幸せ……」

 

 涙を浮かべて笑い合いながら、ふたりはしばらく抱きしめ合った。

 そして、その背後で、ロウが静かに腰を上げる気配がした。

 絶頂の余韻は、まだ身体の芯に残っている。

 ダリアは寝台の上で荒い呼吸を整えていたが、突然、ロウがゆっくりと腕を伸ばし、上に倒れ込んでいたオタビアの身体を抱き寄せた。

 

「あっ、ロウ様……」

 

 オタビアの細い身体がロウの胸に沿うように引き起こされ、胡座をかいていたロウの右脚側にそっと横抱きに収まる。その動作のひとつひとつに合わせるように、オタビアは肩を震わせて身悶えしていた。

 

「いちいち反応してくれると、嬉しくなるな」

 

 胡座にかいた右脚にオタビアを座らせ、ロウが笑う。ロウは裸身に黒いガウンを身につけていたが、オタビアは裸のままロウのガウンにすがりつくように掴まっている。

 

「だ、だって……ロウ様……っ……抱かれるだけで……」

 

 オタビアは胸に顔を押しつけ、熱い息を漏らしていた。

 

「ほら、ダリアも来い」

 

 ロウは次に左手を伸ばし、ダリアの腰を軽く引き寄せた。ダリアの身体は自然とロウの左脚に沿う位置へ移動し、後手に革枷で拘束されたまま、オタビアとは反対側で抱き上げられる形になる。

 右にオタビア。左にダリア。ロウの太い腕の間にふたりが抱きすくめられ、三人でひとつの塊のように密着した。

 ロウの胸板の熱と抱き寄せられる腕の重さだけで、ダリアの背中が震える。

 

「生まれ変わった気持ちか?」

 

 囁くような声が落ちた瞬間、目の前のオタビアがびくりと身体を震わせた。

 ロウに抱かれた腰が跳ね、喉が小さく震えている。

 ダリアは胸の奥がじんと満たされていくのを感じていた。

 ロウの腕の中に、自分とオタビアが同時に包まれている。その幸福が全身をあたためた。

 

 だが、そのとき、いまのロウの言葉が胸のどこかに刺さった。

 生まれ変わる──。

 唐突に頭の中の霞が晴れるような感覚が走り、思考がひとつにつながった。

 

「……狙われたんですね、カロー家は……」

 

 ぽつりと漏らしたひとことに、ダリア自身が驚いた。

 

「ダリア……?」

 

 オタビアがロウの胸の上で顔を向けた。

 

「カロー家に借金があったのは知ってました。でも……返済不能な額になって、証文がディセル家に渡った。それって仕組まれたことなんですよね……。お嬢様とあたしが……姫様の侍女だったから……」

 

 言葉が止まらなかった。さっきまでは恐怖で見えなかったものが、いまは驚くほど鮮明に形になっていく。

 

「まあ、そういうことだな」

 

 ロウの声は淡々としているが、どこか優しさがあった。

 

「……じゃあ……お家のことも……あたしたちのせい……」

 

「ばか。そんな風に考えるな。お前らは犠牲者だろう──。まあ、これが落ち着けばすぐに動く。カロー家もお前の姉も保護に向かおう。とにかく、お前たちは巻き込まれただけだ。姫様とキシダイン卿の抗争にね」

 

 その言葉に、今度はオタビアが息を呑む音が聞こえた。

 

「……ナディア姉さまの……連れてきていた家人……」

 

 囁くような声で言い、ロウの胸の上で目を大きく見開く。

 

「どうかしたか。ディセル侯爵家の家人だと、さっき教えてくれたな。そうなんだろう」

 

 ロウがオタビアに言った。

 

「そうかもしれないし、そうじゃないかも……。でも、突然思い出せたの……。どうして……? まったく覚えてなかった顔なのに……」

 

「どういうことですか、お嬢様?」

 

 ダリアはロウの腕の中で身を起こして視線を向けた。

 

「七年くらい前……。わたし、王国祭の行事で……遠くからキシダイン卿を見たの。そのとき、護衛のひとりが……あの人だわ……」

 

 オタビアの声は震えていた。

 

「えっ……七年くらい前って……。お嬢様、まだ十歳か十一歳くらいでは?」

 

「そうよ。でもどうしてか……思い出せたの……? 間違いない。同じ顔。あのディセル家を名乗った男は、キシダイン卿と一緒にいた人だわ」

 

 オタビアが叫んだ。

 

「本当ですか。お嬢様?」

 

 ダリアはびっくりした。

 今回の陰謀がキシダイン卿による工作なのはわかっている。

 だが、おそらくディセル卿には結びついても、キシダイン卿には繋がらないようになっていると思っていた。

 毒を運んできて、オタビアたちに渡したのは、ディセル家に行儀見習いに行っているナディアだ。

 証文そのものはディセル家にあるが、そんなものは脅迫の証拠にはならないし、カロー家の旦那様への脅迫の証拠が残るようなことはしないはずだと思っていた。

 

 あの家人だって、ディセル家とは言っていたが、そうでない可能性も強いと思っていた。

 その方が都合がいい。

 事件の調査のときに、その者がディセル家と関係がなければ、脅したという証拠などなくなる。

 でも、まさか家人役の見張りがキシダイン卿に繋がるなど……。

 

 そこまで考えたところで、ダリアはふと気がついた。

 どうして自分はそんなふうに理路整然と考えているのだろう。

 まるで、自分が自分でなくなったみたいだ。

 ロウの言葉じゃないか……まるで、生まれ変わったみたいに……。

 

「わたし……思い出しちゃった……。覚えているはずもないことなのに……」

 

 オタビアも唖然とした顔になっていた。

 無理もない。七年前の、十歳すぎのころの話だ。

 しかも、さっきの説明によればほんの少し遠くから垣間見ただけのことだろう。

 オタビアの言葉に嘘があるはずはないし、勘違いという気もしなかった。

 しかし断言できるが、オタビアは子ども時代の、しかも印象的でもないことを鮮明に覚えているほど記憶力のいい方ではない。

 

「……お前たちだけには教えておこうか。俺の精には特別な効果がある。あまり言いふらさないでくれよ。多分、面倒になりそうだし」

 

 ロウはふたりの肩を軽く抱き直し、低く穏やかに告げた。

 

「面倒なこと……ですか?」

 

 ダリアがロウを見上げる。

 

「俺の奴隷になれば、なぜか、なにかの能力の大きな向上が起きる。オタビアは記憶力。ダリアは洞察力。それが上がった。ついでに言えば、女としての見た目も上がったみたいだ。ふたりとも綺麗になってるぞ」

 

 ロウが微笑んだ。

 

「あっ……あっ」

 

「まあ、ダリア?」

 

 自分の顔はわからないが、オタビアの顔を見れば理解できた。

 オタビアはオタビアなのに、明らかに美貌が上がっている。身体の線までも──。ちょっと唖然となるほどの変化だ。

 また、自分もそうなのだろう。オタビアが目を丸くしているのがその証だ。

 

 すると、ロウがふたりを両腕に抱えたまま、ゆっくりと腰を引き直した。

 三人の身体の間で、白い空間特有のやわらかな光が揺れる。

 

「それよりも、もう少し相手をしてもらおうか。お前たちがあまりにも可愛らしい百合愛を見せてくれたから、責任とってくれ」

 

 ロウはそう言い、ふたりに目線で視線を下側に誘導した。

 すると、ロウの黒いガウンの股間の部分が明らかに盛り上がっているのが見えた。

 

「あっ……」

 

「ひあっ……」

 

 オタビアは顔を真っ赤にして小さく声を漏らし、ダリアは息が詰まったような妙な声を出してしまった。

 羞恥と熱が全身に一気に回る。

 ガウン越しでもはっきりとわかる逞しい隆起が視界に入るだけで、股間がきゅっと疼き、濡れが広がっていくのが自分たちでもわかった。

 

「文句があるか、奴隷ども? 命令だ。俺にも奉仕してくれ」

 

 ロウが半分お道化るように、半分は脅すように低く言い放った。

 

「ありません──」

 

「文句はありません。あたしたち奴隷ですので……」

 

 オタビアが慌てたように答え、すぐにダリアも追いかけるように返事をした。

 だがダリア同時に気づいてしまっていた。

 ロウの言葉に奴隷と含まれただけで心の奥に甘い衝撃が走り、じゅくりと濡れが増したことを……。

 羞恥で身体がまた熱くなる。

 

「よし、そうでいい。かわいい奴隷たちだ」

 

 ロウはふたりの反応を見て薄く笑い、腕の力を少し強めた。その声が白い空間に落ち、光が揺れ、世界がそっと閉じ始めた。

 

 


 

 

 一郎の視界が現実の色を取り戻した。

 次の瞬間、周囲から息をのむ気配が押し寄せた。

 

 黒いガウンを羽織って立つ一郎の足もとには、ぐったりと眠るオタビアとダリアがいた。

 ふたりとも一糸まとわず、汗が肌を伝い落ち、うっすらと湯気が立っている。全身からは濃い一郎の精液の匂いが漂っているし、なにが行われたのか誰の目にも明らかだろう。

 オタビアは気絶したまま微細に震えていた。連続絶頂の余韻が神経を痙攣させているのだろう。

 ダリアはその上に覆いかぶさって眠り、静かな寝息だけが規則正しく響いていた。

 

「……これはまた……酷いな」

 

 イザベラが苦笑した。

 

「わたしたちには、戻ってくるまでの時間がほんの一瞬に思えましたが……これは、そうではないのですよね」

 

 シャーラが呆れ混じりに言った。

 

「まあね。それなりに過ごしたさ。見てのとおり抱き潰すくらい可愛がったし、話もたっぷりした。目を覚ませば元気なはずだ……後でな」

 

 一郎がそう告げると、イザベラはほっとしたように頷いた。

 

「……そうか。ならよかった」

 

 白い空間に連れていく前、イザベラはふたりを案じていた。

 今回の毒殺未遂事件のこのふたりが関係しているのを見抜いていた気配があったが、いまの様子を見るかぎり、知らないふりをしてくれそうではある。

 一郎はほっとした。

 いずれにしても、あとで、これからのことを話す必要はあるだろう。

 毒殺が失敗した以上、今度はこのふたりが狙われる可能性が大きい。口封じとして……。

 そのとき、甲高い声が上がった。

 

「きゃあああっ……」

 

 クアッタだった。

 鏡の前に立っていた赤毛の少女が、裸のまま服を胸に抱え、一郎の前へ跪いた。

 

「ロウ様、ありがとうございます……。わたし、びっくりしましたわ。綺麗になってます……信じられないくらいです。この感激をどう伝えれば……。嬉しすぎて……ロウ様の足に口づけしないくらいなのです……」

 

 言いながら、本当にうずくまって一郎の足に顔を寄せてきた。

 一郎は眉を寄せ、苦笑した。

 また、クアッタが、まだ服を抱きしめたまま裸でいるのは、一郎たちは、向こうで長い時間を過ごしているが、こちらではほとんど瞬きほどの時間しか経っておらず、クアッタが鏡で自分の顔を確かめただけで、すぐ一郎が戻ってきたということなのだろう。

 

「やめよ、クアッタ。それより、そこにいるオタビアとダリアを頼む。他の者もだ」

 

 イザベラも声をかけた。

 

「は、はいっ」

 

 クアッタが慌ててふたりのほうへ駆け寄る。

 すでに淫魔術を刻まれたトリア、ノルエル、ユニクたちも続いて集まってきた。

 彼女たちの眼差しは熱く、横たわるふたりを大事そうに抱き起こした。

 

「ふふ、大丈夫ですわ。ほかの方同様に、わたしが回復術をおかけします……。ロウ様は、思う存分に、お抱き潰しください」

 

 スクルズだ。

 早速、ふたりに魔道をかけている。

 なるほど、クアッタが復活しているのは、そのためか。

 

「悪いな、スクルズ」

 

 一郎は微笑んだ。

 

「いえ、問題ありませんわ」

 

 すると、スクルズは嬉しそうな表情になった。

 

「……さて、次は誰だ。さっきも申したが、わたしの侍女を務め続ける条件はロウにここで抱かれることだ。例外はない。そして拒否することも許さん」

 

 イザベラは残る侍女たちを見渡し、静かに言った。

 残っている四人の侍女たちが息を詰める。そのなかで、ひとりが迷いなく前へ出た。

 

 素早く魔眼を使う。

 

 デセル──。農家出身の平民で、もの静かに状況を観察してきた娘だ。

 

「では、あたしがお願いします。あたし、なにがなんでも侍女を罷免されるわけにはいきませんの。よろしくお願いします……淫魔師様」

 

「淫魔師?」

 

 一郎は目を細めた。一郎をそう呼んだ女は初めてだった。一郎が淫魔師であることを知っている女は少ない。

 この世界では、淫魔師というのは、禁忌に近い忌み嫌われる存在だと、最初に教えてもらっていたからだ。

 だから、魔眼の能力同様に、言いふらすようなことはしてない。

 もちろん、三人娘は知っているが……。

 

 面白そうな娘だな。

 一郎は静かに息をついた。

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