【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
はっとした。
ロウが意地悪そうな笑顔を浮かべたまま、あの楕円体の操作具を、まだセクトへ向けていた。指先がその紋を軽くなぞる。
「んあっ、ああっ──」
次の瞬間、アナルのディルドが不意に蠕動を始めたのだ。腰の奥から、逃げ場のない衝撃が突きあがる。
しかも、すっかりと油断していたこともあり、脳天を衝きあげるほどの衝撃になった。
「そっ……そこは──」
体勢が崩れかけ、呼吸が震える。
「……次だ」
ロウは、それだけ告げると、再び操作具を指でなぞった。瞬間、今度は後ろが止まり、膣を抉っているディルドが激しくうごめき始めた。
「っ……ああ、ああっ……っ……」
思わず膝から崩れ落ちそうになり耐える。
これまでの半日間に受けていた刺激とは、衝撃が全く違っていた。
なにがどうなっているのかわからないが、これまで無かった微細な凹凸が、粘膜のすべてをかき分けてくる。
それが、まったく別々の動きをしながら、膣の中のあらゆる部分を抉り動くのだ。
セクトを支えていた芯のようなものが、その瞬間に砕かれてしまったかのような感じだった。
「次はまた、後ろだ」
前が止まり、再びアナル──。
こっちも同じ──。やはり、ディルドの表面に無数の小さな突起が発生している。
多分、そういう魔道のかかったディルドだったのだろう。
「おおおっ、こ、交互に……だ、なんて……お、おおおっ」
口を開いても、まともな言葉にはならない。出てくる言葉に呻くような声が混ざる。
「次は前……と思うか?」
アナルの振動はとまり、瞬時に襲ってきたのは、陰核の突起の振動だった。
かなり激しい──。
これは、確実にセクトを昇天させるための刺激だ──。このとき初めて、これまでの振動はロウに手加減をされていたのだと悟った。
「こ、こんなの我慢なんて……」
下肢から力が抜ける。
気がつくと、辛うじて盆は両手で支えていたが、膝は折れかけ、もはや立っているとは言えない格好だった。
姿勢は完全に崩れ、支えになっているのは気力だけだった。
「次はどこかな?」
ロウが笑いながら、持っている操作具を動かす気配がした。
「ひあああっ」
アナルの振動──。その代わりに絶頂寸前で、陰核の振動は静止した。
腰の力がさらに抜けていく。
「ほら、しっかり立て。料理人の矜恃にかけてだろ?」
アナル責めが終わって、またもや、陰核への激しい責め──。セクトは悲鳴をあげた。
刺激は重ならない。どこかが責め、どこかが休む。その時期も予想できない。
突然に切り替わって、残り二箇所のどっちかが深く抉り、また別の瞬間には甘くなぞる。
どれも重ならず、どれも休ませず、ただ焦らすためだけの動き。絶頂に届かせぬよう、わざと外すかのような動きばかりが選ばれていた。
翻弄するだけの動きが、次々と切り替わる。
「……まだ立っているな?」
ロウの声は相変わらず落ち着いている。
セクトは震える息を押さえ込みながら、懸命に腰に力を入れようとする。
これが立っていると言えるだろうか?
セクトは完全に腰を引いて膝を曲げ、手も足も小刻みに震わせていた。
「ずらすぞ」
その刹那、前後のディルドの動きが互い違いに、速いタイミングを交互に襲ってきた。
だが、陰核に当たっている突起が振動をしながら、前後に動き始めたのだ。
「っ……ま、待って……っ……それは……っ……」
前が押した瞬間、後ろが逃げる。後ろが深く脈動した瞬間、前はわずかに触れるだけ。身体がどちらにも対応しきれず、ひと息ごとに震えが走る。
クリトリスがこれでもかと抉られる。
「い、いきそうですわ──。あっ、あああっ」
セクトに絶頂の兆しが一気に襲いかかってきた。
中腰のまま、全身を突っ張らせる。
だが、まさに果てようとした瞬間だった──突然にして、淫具の振動が一斉に静止したのだ。
「ああんっ、こ、こんなの酷いですわ。せ、切ないですわ」
果てそうだったのに、果てきれなかった熱が、下腹に渦となって残り続ける。震えだけが身体に残され、解放されないまま疼き続けているようだった。
止められた瞬間の余韻が、かえって快感を鋭くした。
絶頂寸前の刺激の寸断に、さすがにセクトは、ロウを睨んでしまった。
すると、ロウが大笑いした。
「命令に従えなかった奴隷に、ご褒美があるわけないだろう。盃の水はどうなっている?」
ロウが笑いながら言った。
はっとなった。
満水だった盃の水はさすがに、かなり零れていた。盆の上もかなり濡れている。
「零れてしまいましたわ。申し訳ありません。ご命令を守れませんでした」
セクトは意気消沈してしまった。
「命令に従えなかった奴隷はどうなるんだった?」
「罰を与えられますわ……。ロウ様、どうか罰をお与えくださいな」
セクトの口から、そんな言葉が考えることもなしに出てしまった。
その言葉が、どうして自分の口から零れたのかはわからなかった。ただ、言ってしまったことだけは確かだった。
「服を脱げ」
ロウが立ちあがって、自分の服を脱ぎ始めた。
セクトの背筋がぴんと強張った。両手にはまだ盆を抱えている。
「……はい。あの……盆は、こちらに置いてもよろしいでしょうか……?」
ロウが軽く顎を動かした。
許されたと理解し、セクトはそっと台へ盆を置いた。
盃の水で濡れた盆の表面にはまだ揺れの名残が光っている。
それを確かめる間もなく、セクトは呼吸をひとつ整えた。
服を脱ぐ──それが命令だ。
セクトは胸元の布へ指を伸ばし、ひとつ、またひとつと結び目を解いた。
薄布が音もなく肩から滑り落ち、続いて腰布が指先から滑り落ち、静かに床へ広がった。
肌は灯りを受け、汗と愛液の名残で淡く光った。
だが、革帯だけは、当然に外すことができない。
セクトは、革帯だけを残した裸身となった。隠す布がなくなると、革帯の存在がいやらしく際立っている気がした。
乳首は明らかに興奮で固く勃起している。
思わず胸を隠すように腕が動きかけたが、しかしそれが許される姿勢ではない気がして、両腕は体側に伸ばしたままじっとしていることにした。
視線を上げると、ロウはすでに全裸だった。
肩から腰に連なる筋肉は滑らかで、下腹部には重々しい男根が屹立している。
灯りに照らされて、逞しい怒張の陰影が深まり、脈動する血管までもが艶やかに浮かんでいた。
その光景を見た瞬間、セクトの頬がかっと熱くなった。
思わず、ロウの股間から眼をそらし、しかし羞恥と好奇心の間で視線が泳ぐ。
「高級娼婦が、男の裸を見て顔を赤くするのか?」
嘲りとも揶揄ともつかぬ声音が落ちる。
「お……おかしいですわね……。わたくし、ずっと男性のお相手をしてきたはずですのに……。なのに……その……ちっとも慣れていないように思えて……自分でも理由がわかりませんの……」
言葉にしてなお、困惑が深まる。
本来なら大勢の性器を見てきたはずだ。
それなのに、目の前の裸に戸惑い、胸がざわつく。
理由がわからない。
そもそも、これまで客と対した記憶が曖昧だ。
まるで、男の裸そのものを初めて見るかのように恥ずかしい。
ロウはそんなセクトをしばし見つめ、喉の奥でくつりと笑った。どこか含みを帯びた笑いだった。
「ど、どうして笑われますの……?」
「いや……実に興味深いと思ってね」
ロウはゆっくりとセクトに歩み寄る。革帯に片手をかざした。すると、後ろで小さな金属音がして、金具が緩んだ。
金具が外れると、内部の圧迫がふっと軽くなった。
「あんっ」
革帯の重みでディルドがずるりと下がり、その刺激でセクトは思わず甘い声をあげてしまった。
「外すぞ」
ロウの手がセクトの腰へ触れ、装具をゆっくり外していく。
「あっ……、じ、自分で……」
「性奴隷はじっとしてろ」
ロウがディルドを抜いていく。
セクトは思わず腰を落としかけた。
なにしろ、半日ほど挿入されていたディルドがやっと引き抜かれたのだ。
完全に抜けとられるまでに、先端がかすかに引っかかり、それが抜けた瞬間、熱とともにとろりとした液が太腿を伝う。
「随分と出たな、セクト。さすがにいやらしい身体だ」
ロウが低く笑い、手元のディルドをわざとセクトの目の高さに掲げた。
「い、苛めないでください。ロウ様のせいですわ……。しかも、その表面の突起……。最初はついてなかったですよね?」
ディルドの表面には、先ほど感じた微細な凹凸がたくさんついていた。
あれが別々に微妙に違う刺激を送り込んでくるのだ。
我慢できるわけがない。
「これが気に入ったなら、また遊んでやろう。とにかく、かわいらしい反応だったぞ」
その言い草に、セクトは胸の奥がかっと熱くなる。
怒りでも羞恥でもない、もっと複雑で甘やかなざわめきだった。
「苛めないでくださいませ……。でも、あんなふうに、ぎりぎりで……止められたら……切なくて……。ねえ、お情けを頂くわけにはまいりませんか?」
甘えるような声音が口から滑り出て、自分でも驚く。
「罰のはずなのに、性奴隷がご褒美をねだるのか?」
「……そういうつもりでは……。でも……ロウ様に……。あっ、なら、虐めて頂くとか……」
言いかけたところで、ロウが手をかかげてセクトの言葉を遮る。
「言葉を変えても一緒だろう。まあいい。お前のそういうところも、悪くはない」
ロウはさらに愉快そうに笑った。
セクトが目を瞬くと、ロウはソファの脇に置いていた布をつまみ上げ、広げて見せた。
いつの間に、そこにあったのかはわからない。
そんなものは、いままでなかった気はするが……。
「これが罰だ。これを身につけろ」
差し出されたのは、白一色の幅が細い前掛けだった。
首の後ろと腰の後ろを結ぶ紐だけの簡素な作りだが、布面積が狭くて丈も短い気がした。身につけても全部は隠れないことが一目でわかる。
「これを……着て……?」
「そうだ。料理人のお前には似合いだろう。だが今日、この前掛けでお前が得るのは快楽だ。以後、料理人のお前は、前掛けを締めるたび今日のことを思い出す。それが罰だ」
セクトはごくりと喉を鳴らした。
ロウの眼差しは静かで、どこまでも支配者のそれだった。
「さあ、身につけろ。結び目は後ろだ」
セクトは前掛けの下の紐を手探りで取り、腰の後ろで結びながら自分の姿をそっと見下ろした。
直後、顔が真っ赤になるのがわかった。
渡された前掛けは、あまりに狭くて心許ない。胸元の中心に垂らしても布が覆うのは乳房の半分ほどしかない。縁ぎりぎりのところで乳首は隠れるが、少しでも動けば布が揺れて簡単に外へ零れ落ちてしまいそうだった。
「……な、なんて……無茶な……。胸が……隠れませんわ。お股も……これでは……」
それだけでなく、丈も異常に短い。
布の上端を気にして少し上へ引き上げると、布の下から陰毛の黒が覗いてしまう。そうかといって、しっかりと前掛けを下げると、今度は乳首が露出してしまうのだ。
なんという破廉恥な前掛けだろうか。前掛けというよりは、小さな布に紐が付いているだけだ。
「あ、あげれば胸が零れますし……。下げれば……あ、あんなところが……丸見えになりますわ」
セクトは必死に首の後ろの紐を調整し、布を上下に微妙にずらして、なんとか乳首が布の影に入る位置と陰毛が布に隠れる位置を同時に保とうとした。
だが、ほんの指二本ぶんほどの余裕しかなく、少し動けば完全に露出する。
「これでは……裸よりも……恥ずかしゅうございますわ……」
羞恥で目が潤み、声も震えた。ロウはソファに腰を下ろし、裸のまま腕を組んで眺めていた。
愉しげな笑みを浮かべている。
「似合うじゃないか。料理人らしい前掛けだ……。いや、そのはしたなさが何より素晴らしい」
「意地悪を言わないでくださいませ……」
そのとき、扉がコツコツと叩かれた。セクトが肩をびくりと震わせる。
「だ、だれか……来ましたわ」
「下に頼んでおいた食材だろう。小僧が持ってくる時間だ」
ロウはそのまま、扉に背を向けた体勢でソファに深く座り込んでいる。
「受け取って来い」
「え……わ、わたくしが……この格好で……?」
「他に誰がいる。この部屋に滞在のあいだは、お前が料理を作る契約だ。食材を受け取らねば始まらん」
セクトは呆然と前掛けを両手で押さえて、ロウを見つめた。
「む、無理ですわ……っ。こんな……前掛けとも呼べない布一枚で……」
ロウは愉しげに片眉を上げる。
「料理人として許してやった唯一の衣服だぞ。誇れ」
「誇れませんわ……」
そう言っているあいだにも再びノックが響いた。
セクトは観念したように震える息を吐き、前掛けの位置をもう一度だけ必死に微調整して扉へ向かった。
扉を少し開くと、娼館で働く見習いらしい少年が木箱を抱えて立っていた。
少年はセクトの姿を見るなり、顔を真っ赤にして固まった。その視線が一瞬だけ胸元と下腹のあいだで泳ぎ、慌てて宙の一点に逃げた。
セクトは必死に身体を硬直させ、布が揺れないよう腕を体側に張り付けた。
「す、すぐ……厨房へ運びますわ……ありがとう……」
少年は言葉にならない返事をし、耳まで真っ赤にして逃げるように戻っていく。
セクトは扉を閉め、悄然と木箱を抱えて厨房へ運んだ。
そして、ロウのところへ戻ると、ついに堪えきれず訴えた。
「ひ、ひどいですわ……ロウ様……。あれは……あんまりです……」
「さっきの罰のひとつだ。お前が言ったとおり、“あんまり”なやつじゃないと、罰にならないだろう」
「罰だなんて……。でも、恥ずかしすぎます……」
「だから罰なんだ。それに実にいい眺めだぞ。こっちに来い」
ロウが手を伸ばすと、セクトは前掛け一枚のまま引き寄せられ、膝の上へそっと落ち着かされた。裸身同士が触れ合い、呼吸がひとつ震える。
その瞬間、前掛けの隙間からロウの指が滑り込み、乳房を柔らかくひと掴みにした。
摘まれた肉の奥から鋭く甘い衝撃が迸る。
「あんっ……ああ……」
短い声が勝手に漏れ、身体がびくりと跳ね、布が揺れた。
信じられなかった。高級娼婦として本気で喘ぐなどあってはならないのに、いま確かに喘いでしまった。
どうしてなのか。触れられただけなのに膝が笑い、胸が疼いてたまらない。
ロウはすぐに手を離した。ほんの一瞬触れただけである。
それでも余韻は身体に焼きつき、胸元を押さえる指先が震えていた。
セクトは自分の反応に戸惑い、そしてロウの技巧に、怖いほどの焦りを覚えた。
「い……いま……びりって……きました……。驚きましたわ……」
思わず正直に告げる。自分でも信じられないほど敏感な反応だった。
「触れただけでこれだ。もう十分にできあがっているな」
ロウはその戸惑いすら愉しむように低く笑った。
「そんな……」
セクトがロウの膝に縋りついたまま身じろぎすると、前掛けの布がかすかに揺れ、乳房の縁がちらりと覗いた。
ロウはその揺れを逃さず、セクトの顎を指先で軽く持ち上げた。
「セクト。お前はまだ、この前掛けの罰の意味をわかっていないな」
「……意味……でございますの?」
セクトが息を呑むと、ロウは指を滑らせ、前掛けの下の端をそっと摘んだ。
「あっ」
たったそれだけで布は頼りなく揺れ、下腹があっさりと露わになり、セクトの太腿が反射のようにぎゅっと寄せ合わされた。
「濡れてるな」
ロウが喉で笑った。
「い……言わないでください……。そりゃ……濡れておりますわ……。半日も淫具で弄ばれて……最後は寸止めまでされましたのよ……。こんなの……濡れないほうが無理ですわ……」
頬がさらに熱くなる。
言葉にした瞬間、羞恥と自覚が胸の奥にじわりと広がり、前掛けの下で濡れた部分がいっそう存在を主張してくる気がした。
「この前掛けはな……隠すための布じゃない。お前が隠したいものを、隠させないための前掛けだ」
「隠させない……前掛けですか……?」
セクトの背筋がかすかに震えた。
「裸よりも恥ずかしいと言ったな。それでいい。裸は覚悟を決めれば耐えられる。だが、この前掛けは、覚悟をしても揺れひとつで、お前の羞恥を誘う」
ロウの指先が前掛けの下端をなぞり、セクトの内股に手を置く。セクトは思わずびくりと肩を跳ねさせた。
「……隠せたと思えば、すぐ零れる。零れまいとすれば、別の場所がはだける。お前の意志では、どうにもできない」
「ず、随分なご趣向ですのね……。でも、うまくいってると思いますわ。わたし、とても恥ずかしがっておりますもの
セクトは知らず、指先で前掛けの端をつまみ、布が浮かないようそっと押さえていた。
「それこそが罰だ。お前の娼婦としての誇りも、料理人としての矜恃も、その布一枚に絡め取られて、揺さぶられ、思い出すたび乱れるように仕向けられている」
セクトは胸元を押さえようとして、しかし、ロウが睨んだので、途中で腕が止まった。
「ロウ様……そんな……」
「今日、これを着たままで犯される。その感触、その恥、その悦び、すべてが前掛けという道具に刻まれる。その結果、お前は前掛けに触れるだけで身体を思い出すようになる」
ロウはセクトの腰を掴み、膝の上に引き寄せた。
「そ、そんなことをお語りになるのは狡いですわ。わたし、そうしたら、これから前掛けをするたびに、意識するじゃないですか」
セクトは頬を膨らませた。
「それが狙いだ。料理をするとき、給仕をするとき、どんな前掛けであっても、お前は、今日の快楽が蘇る。そのたびに、自分の身体が俺に調律されたことを思い知るだろう」
「……そ、そんな……。卑怯ですわ。そんな呪いのようなお言葉」
「呪いでなんかあるものか、単に思い出だ」
ロウは笑いながら、前掛けの胸元に指を差し入れ、セクトの乳房の起伏を布越しに押し上げた。
「あ、ああ……」
布はすぐにずれ、乳房の柔らかな輪郭が完全に露わになった。
セクトは肩を震わせて眉を寄せた、しかし逃げなかった。代わりにロウの首に手を伸ばしてしがみつく。
「理解したか。今日は身体を罰するのではない。お前の矜恃そのものに罰を刻もう」
「……ロウ様……その……厳しすぎますわ……」
「厳しいかどうかを決めるのはお前ではない。罰を与えるのは俺で、受けるのはお前だ」
ロウは笑い、セクトの顎をもう一度持ち上げた。
セクトの喉がきゅっと鳴り、前掛けの布が胸の鼓動に合わせて小さく震えた。
「さあ、覚悟を決めろ。前掛けでお前を犯す。それが罰だ」
ロウに引き寄せられ、セクトは前掛け一枚のまま膝の上へそっと落とされた。対面座位の体位だ。
胸がロウの胸に触れ、太腿が絡む。肌の熱が混ざり合い、その距離の近さに息が勝手に震えた。
「ああ、ロウ様……」
「しっかり刻めよ。料理をするたびに、この快感が思い出せるようにな」
前掛けの隙間からロウの指が滑り込み、乳房を柔らかく掴む。
刺激は鋭く、胸の内側で甘い痺れが弾ける。
「あんっ……ああ……」
短い声が漏れ、胸がびくりと跳ねた。
本来なら高級娼婦として決して見せてはならない反応なのに、胸の奥が疼いて止まらない。
ロウの手は胸から股間へ移り、布越しに中心を押し上げてきた。押された瞬間、身体の深い部分がきゅっと縮むように熱を帯びた。
「あっ……そこ……」
思わずロウの背中に指がしがみつく。
すると、セクトの唇にロウの唇が落ち、舌が触れ、呼吸が絡め取られた。
股間で淫らなロウの指が動きながら、口の中を舌で刺激される。
「……ん……っ……」
口づけと股間の愛撫が同時に重なるだけで、胸まで震えが広がる。
ロウの手が腰を抱え上げると、もう片方の手が尻に回り、柔らかな肉をゆっくりと広げるように押し開いた。
「あああっ……あぁ──」
股間と尻を同時に責められ、逃げ場のない快感が押し寄せる。
前掛けは揺れ、乳房は完全にこぼれ落ちている。
セクトは続けざまに込みあがる快楽の波に耐えられなくて、ロウの肩に縋りつき、必死に体勢を保った。
今度は、胸と股間──。同時に扱かれ、刺激が重なった瞬間、熱が一気に身体を駆け抜けた。
「あ……ああ……」
背が反り、太腿が震え、呼吸が勝手に乱れた。ロウの肩へ沈めた指先が、小刻みに痙攣する、
あっという間にセクトは悶絶してした。
高級娼婦のセクトなのに、ロウを置いてきぼりにして、本気で絶頂してしまった……。
こんなことではいけない──自分が満足するのではなく、ロウを満足させなければならないのに……。それが高級娼婦としてのセクトの矜恃だ
必死に自分を叱咤して、立て直そうとした。
しかし震えが残るまま、ロウがセクトを抱き上げ、体勢を変えられた。
ソファへ仰向けに倒され、脚が開かされる。前掛けは胸の上で揺れ、ほとんど外れかかっていた。
「十分に準備はできているようだね」
ロウの怒張が荒々しく、一気にセクトの股間を貫いた。
「あああっ、あっ、ああ──」
セクトは大きな声をあげて、下からロウの首につがみつく。
すぐに律動が始まった。
ロウの屹立に突かれるたびに、粘膜がただれるように溶け、ずきずきと強い疼きが子宮に襲いかかる。
なんて、気持ちいいの──。
セクトは我を忘れそうになった。
「あ、ああっ、ああ……ロ、ロウ様……こ、こんなに……さ、されたら……落ちて……落ちてしまいますわ……あ、ああ……」
「落ちればいい。それが罰だ」
怒張を押し込まれるたびに前掛けが揺れ、胸が半ば露わになる。
快感が次々に弾ける──。
「あ……っ……あっ……」
深さが増し、速度が増してソファの軋む音が室内に重なる。
すると、上から口づけが落ち、舌が絡む。
「……ん……っ……」
衝撃と甘い口づけが重なり、全身がまた限界へ追い込まれる。
「んんんっ……んあああっ」
激しい快感に首を振って、息を求める。
「セクト、来い──」
ロウがすでに布が外れている乳房を両手で掴んで、深々とセクトの股間を突きあげていく。
胸を揉まれながら深く打ち込まれ、セクトは震える身体をロウへ預けながら再び高みに押し上げられた。
口から嬌声が迸り、背が弓のように反って、全身が強く震えた。
「いくって言え──。性奴隷──」
「い、いくううっ──」
セクトは腰をのた打たせ、膣いっぱいに咥え込まされたロウの怒張を締めつけながら、快感を一気に解き放った。
また、同時にロウがセクトの子宮に精を放つのをはっきりと感じだ。
セクトは力いっぱいに、下からロウの裸身を抱き締める。
そのときだった。
胸の奥に、ふわりとした温かさが満ちていった。
痕を残すような痛みではない。
ただ、幸福と安心と甘い余韻が静かに染み込んでいく。
「これで、セクトも俺の女になった……」
セクトの上のロウが破顔した。
「はあ、はあ、はあ……わ、わたし……いま、なにかをされたのでしょうか……?」
息を整えながらロウに問いかける。
たったいま、自分の内側で確かに何かが揺れ、形を変えた。
それだけははっきりわかるのに、何が起きたのかがうまくつかめない。
胸の奥で脈打つ熱が、次第に落ち着いていく。
呼吸が整っていくたび、身体が軽くなり、静かな余韻が全身へ広がった。
満たされているという、揺るぎない感覚。
生まれ変わったように澄んだ心の静けさ。
そして、ロウへの思いが、理由もなく胸の底へゆっくりと沈んでいく。
甘く、温かく、触れればほどけてしまいそうなほどに穏やかな感情だった。
「刻んだだけだ。淫魔術をね。セクトは俺の女になり、姫様や、俺の女たちと心で繋がった……気分はどうだ?」
ロウの声音は静かだった。
「……わたし……どうしようもなく……満たされております……」
「それでいい。それが刻みだ」
背を撫でる手は優しく、セクトは目を閉じたまま、その余韻をゆっくりと受け止めていた。
世界がふっとほどけ、一郎はセクトを抱いたまま白い空間へ戻った。
仮想時空の景色は消え、ソファだけがそこに残っている。
「……あれ、ここって……?」
セクトはあたりを見回し、小さく息を呑んでいる。
まだ、仮想時空で高級娼婦だったときの記憶と、元の自分に戻ったときの記憶が混乱しているのだろう。
ロウはとりあえず、セクトの上から身体をどかせた。
まだ結合していた部分が離れ、セクトの腰が震える。
「あんっ……」
一郎はセクトを支えてソファに座らせながら、静かに声を落とした。
また、セクトは完全な全裸だ。まだ絶頂の余韻をそのままに身体は火照り、肌は汗でまみれ、股間はセクト自身の愛液と、一郎の精液の残滓で汚れている。
「わかったか……? いまのが仮想時空の世界。実際に存在したかもしれない無限の時空から、俺が選んだ仮想世界だ」
「……仮想……? でも、わたし……」
セクトは首を傾げている。
しかし、だんだんと混乱が収まってきたのか、呆けていた顔が少しずつ解けた雰囲気になっている。
やがて、大きく溜息をついた。
「さっきまで、高級娼婦として、ロウ様のお相手をしておりましたのに、全部、夢だったということですのね?」
「感じたことも、あの体験も本物だぞ。それが仮想時空というものだ」
「そう……なのですね……。でも、思い返すと、わたし、ちっとも高級娼婦ではありませんでしたわ。ロウ様に苛められただけでした」
セクトは、どう言葉にしていいのかわからないように眉を寄せた。
一郎は思わず吹き出してしまった。
すると、セクトが自分の胸にそっと手を当て、小さく首を傾げた。
「……なにか……胸のなかに暖かいものが……あります……」
「それが淫魔術の刻みだよ。心の奥に俺たちとの繋がりが残る。もう、セクトも俺の女だ。仮想時空だろうと、体験は本物だからね」
「そうなのですね……。でも、理解できましたわ。姫様がわたしたちを信用するために、全員がロウ様に抱かれろと申された理由が……。確かに、皆様と一緒になれた感覚がございます」
セクトは、安心したようにまぶたを伏せた。
しかし、すぐに、はっとしたように自分の身体へ視線を落とし、慌てて胸元と下腹部を手で押さえる。
「……あれ。ありませんわ……あの前掛けが……」
一郎は小さく笑った。
「仮想時空の物は、外には持ち出せないんだ。白い空間までは引きずってこれるが、結局は消える。どうせ外には持ち出せない。それに……まあ、さすがに状態がひどかったからな」
「そう……ですのね……。あれ、ロウ様から頂いたものでしたのに……少しだけ、残念ですわ」
セクトはわずかに肩を落とした。
一郎はその言い方に思わず眉を上げた。
「惜しいのか。あんな布切れを?」
「……ロウ様がくださったもの……というだけで……なんとなく。物として惜しいわけでは……ありませんけど……」
セクトは恥ずかしそうに頬を染めながら、視線をそらした。
その反応に、一郎は喉の奥で笑いを漏らした。
「心配するな。同じものを贈るよ。お前には、裸にあれだけを身につけて、料理をしてもらわないとならないしな」
「そ、それは……恥ずかしすぎますわ……」
セクトは反射的に胸元を押さえ、真っ赤になった。
「拒否じゃないんだな?」
一郎が揶揄気味に言うと、セクトは口をつぐんだまま、わずかに俯いた。
否定も反抗もしない沈黙に、一郎はにんまりと笑みを深めた。
セクトの頬は、ますます赤く染まっていく。
「あれっ?」
そのとき一郎は、思わず声をあげてしまった。
話をしながら、セクトのステータスを読んだのだが、意外なものがあったのだ。
セクト=セレブ
人間族、女
男爵家 次女
イザベラ付侍女
年齢22歳
ジョブ
料理(レベル5→20)↑
侍女(レベル4→10)↑
官吏(レベル20)↑(新)
娼婦(レベル2)↑(新)
生命力:50
経験数:なし→男1
淫乱レベル:C
快感値:350/350
能力
毒見力↑(新)
状態
一郎の性奴隷↑(新)
淫魔師の恩恵↑(新)
「ロウ様、どうか、なさいまして?」
「いや……なんでもないんだけど……」
一郎は表情を整えながらも、内心ではさきほど読み取ったセクトのステータスの変化を反芻していた。
まず目についたのは、「侍女ジョブ」と「官吏ジョブ」の成長だった。これは、これまで淫魔術を刻んだ侍女たちにも共通して起きてきた現象だ。
王女に仕える侍女としての技能と、宮廷運営を担う官吏としての資質が同時に底上げされる。
もはや当たり前のこととして受け止めていた部分だ。
また、セクトの場合、「料理ジョブ」が急上昇しているが、これも予想の範囲内だった。
もともと高かった得意分野が、そのまま飛躍的に伸ばされた形だと理解できる。
だが、そこに並んでいた娼婦のジョブには、一郎もさすがに思考を止めざるを得なかった。
現実のセクトには経験がないはずで、仮想時空で一時的に高級娼婦として振る舞っただけで、現実のジョブに「娼婦ジョブ」が形成されているのだ。
仮想時空での行動が、現実のステータスとして認識されることなどあるのか。
断言はできないが、娼婦ジョブが生まれた理由は、そこにしか見当たらなかった。
さらに「毒見力」という新しい能力。
淫魔術を刻む前、セクトは、自分に毒を見抜く力があればイザベラを救えたのにと、悔やむように漏らしていた。
その嘆きが、まるで能力として形になったように思える。
一郎は、そこで最初に当然として流していた一点へと考えを戻した。
侍女たちのあいだで共通して生まれていた「官吏ジョブ」だ。当たり前の現象として片づけていたが、本来なら存在しなかった資質である。
なぜ侍女たちが官吏の働きまで担えるようになったのだろう。なぜ、元々の経験を越えて能力が広がったのか。
淫魔師の恩恵とは、単なる能力値の底上げでも、個人の得意分野の強化だけでもなく、全体の役割分担に応じて、それぞれに必要な能力そのものが生まれ、集団として最適化されていくものなのだろうか?
「ロウ様……急に黙ってしまわれて、本当はどうかされたのでは?」
セクトが心配そうに声を掛けてきた。
「いや、本当になんでもない。考えごとだ」
一郎は肩を竦めた。
「そうですか」
セクトはほっとしたように息をついた。
まあいいか……。
考えてもわからないし、大勢に影響はないだろう。
「じゃあ、現実空間に帰るぞ」
一郎はセクトに声を掛けた。
「でも、ロウ様。わたし、このままでは戻れませんわ。なにも身につけておりませんもの」
セクトは自分の身体を見下ろし、慌てたように胸と下腹を両手で隠した。
「気にすることはない。ほかの侍女たちも裸で戻ってきただろう。同じだ」
「そ、それは……そうかもしれませんけれど……。でも、やっぱり恥ずかしゅうございますわ」
セクトは耳まで赤くなって、小さな声で言った。
「そうか……。なら、せいぜい恥ずかしがってくれ」
一郎は、セクトとともに白い空間をあとにした。