【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
唇を重ねられた瞬間、胸の奥でなにかがほどけるように熱く揺れた。その温かさに包まれたまま、足元の感触がふいに薄れ、白い床が広がった。
空間は静かで、なにもない。
ただひとつ、柔らかな寝台だけがそばに置かれていた。ほかにはなにひとつ存在しない世界だった。
「ここが、みんなが行っていた場所なんですか……? 静かですね……」
ぽつりと漏れた声が、小さく空間に響いた。
「まあな。逆に落ち着けないか? どんな場所にもできるぞ。想像の世界のようなものだ。王都広場の喧噪を再現することもできるな。そこで愛し合うか?」
「いえ、ここで結構です」
慌てて首を横に振る。
ロウが作る幻想世界なのだと理解したが、賑やかな王都広場に寝台がぽつんと置かれ、その上で自分が横たわる姿を想像してしまい、顔が熱くなった。
「そうか。ならここでいいか。ほかの侍女たちも、セクトを除いて、この白い空間で愛し合ったしね」
「セクトは……違う場所ですか?」
「彼女を高級娼婦にして、その雰囲気の部屋を作っただけだ」
ロウが軽く笑い、リノの手を取った。
言っていることのほとんどが理解できなかったが、ひとつだけわかったのは、リノには想像もできないような力が使われているようだということだ。
本当に何者なのだろう。
こんな力を持つのなら……姫様が頼ろうとする理由も、少しわかる気がした。
「さて……じゃあ、始めようか、リノ」
寝台へと導かれそうになり、リノは慌ててロウの手を引き留めた。
「あっ、待ってください。その前に……ひとつだけ、言っておかなければならないことが……」
「なんだ?」
ロウがリノの手を握ったまま、寝台にあがりかけた姿勢で振り返った。
「そのう……。わたし……本当に……なにも知らなくて……。この手のことに全く無知なんです。だから……どうすればいいのか……。教えていただけませんか……?」
自分は男女がどうやって愛し合うのか、誰にもきちんと教わったことがなかった。
騎士を目指していたころは余計なことを考えないように努めていたし、侍女になってからは仕事を覚えるだけで精いっぱいだった。
両親とも離れて暮らしており、女友達とも、いまの侍女仲間とも、そういう話題を一度も口にしたことがない。
「教えるって……なにをだ? 性行為のことか?」
ロウの目がわずかに見開かれた。
「あっ、もちろん、基本的なことは知っています。男性の……ものを……わたしの股間に挿入して、精を放たれて……子ができる行為だということは……」
「まあ、間違ってない。安心しろ。今日は子は作らない。俺には避妊の術がある」
「わたしも……サビナ草は飲んでおきます。大丈夫です」
サビナ草は、侍女仲間の多くが使う一般的な避妊薬だと聞いていた。
「で? なにが不安なんだ?」
「いえ……作法のようなものがあるのでは……と思って……。でも、わたし……全然知らなくて……」
リノは俯き、胸の前で指をぎゅっと握った。
男女の営みについて誰かと話したことなどなかった。
ただ、女子寮の入浴場で、見知らぬ女官たちが相手の男を性行為のやり方を知らない下手だと小馬鹿にして怒っていたのを聞いたことがある。
あの声を思い出すたび、胸がきゅっとなる。
自分ほどの無知では、もっと怒らせてしまうのではないか。
二十四にもなって知らないというのは恥ずかしかったが、最初に白状しておけば、失望させずに済むかもしれないと考えた。
「作法──? 性行為の作法か?」
ロウはくすりと笑った。
呆れたように見えたが、その目にはどこか愉快な色が宿っていた。
「は、はい……。申し訳ありません。知らないんです……。それと……がっかりされるかもしれませんが……未経験です」
リノは小さく震える声で言った。
生娘であること自体は恥ではないと思っていたが……知らないままでは迷惑をかけるのではと不安になった。
ロウは寝台の端に腰を下ろし、リノの手を引いて前に立たせた。
「作法は確かにあるな。じゃあ、教えてやろう。性行為の作法においては、まずは、女が服を脱ぐ。だが、下だけだ」
「えっ、下だけ……ですか?」
「最初はな。それから──性器を露出したら、自分の指で股間を開いて、腰を突き出して、穴の中を俺に見せるんだ。それが誰でもやっている作法だ」
「そ、そんなこと……皆さんが?」
「当たり前だろう。常識だ」
ロウの声は淡々としていたが、その目は明らかに愉んでいた。
リノの頬は羞恥でさらに熱くなった。
初めて知る「性行為の作法」はあまりにも衝撃的で、リノは思わず足に力が入らなくなった。
「じゃあ、下を脱ごうか。スカートからだ」
ロウが軽く顎をしゃくった。
「……はい」
「正面だ。作法に反する」
リノは一瞬だけ横を向こうとしたが、すぐにロウの声が飛んだ。
「す、すみません……」
羞恥で指先が震える。それでも正面を向いたまま、ゆっくりとスカートの腰帯へ手を伸ばした。
布がするりと脚を滑り落ち、足元にまとまる。
そのとき、ロウが何気なく横を指さした。
「服はそこに置け」
なにもなかった白い床に、いつの間にか編み籠が置かれていた。
リノは驚きながらスカートを畳み、そっと籠に入れた。
「じゃあ、次は下着だな」
「……はい……」
下着に指をかけただけで、膝が揺れた。
白い布地の小ぶりな簡素な下着は侍女支給品であり、動きやすさを最優先に作られたもので、布は薄く、縁も控えめに縫われている。
引き下ろすと太腿に白布が落ち、脚のつけ根が露わになった。
「ちょっと待て。止めろ」
「えっ?」
下着が太腿まで下がった状態で止められた。
あまりにも中途半端な姿勢で全身が熱くなる。
股間だけがじわりと外気に触れ、どこを隠せばいいのかわからない。
「その下着……リノも同じなんだな……。全員同じ型か?」
「は、はい……。支給品です。動きやすいように、布が少なくて……」
「なるほどな。便利そうだ」
なぜかロウの声は愉快そうで、リノは余計に恥ずかしくなった。
ロウの視線がリノの下腹部へと落ちる。その狙いがどこか、すぐに理解させられた。
だが、さすがに剥き出しの股間を凝視されると恥ずかしい。
「あ、あのう……ロウ様……」
「どうして、陰毛が全部残っているんだ?」
ロウが怪訝そうな口調で言った。
「えっ……そ、その……どういう……?」
リノは反射的に股間を隠そうとして、両手を脱ぎかけの下着に触れさせたまま、身体を横に寄せかけた。
「正面を向けと言っただろう──。脚も閉じるな──」
ロウが声をあげる。
「す、すみません……」
慌てて脚を戻す。しかし、視線を向けられるだけで下腹部がむずむずと疼き、変な感覚が襲う。
「剃っておくのが作法だ。知らないのか?」
「そ、剃るんですか……? 本当に……?」
「当然だ。女は右か左のどちらか半分だけ剃る。全部残すのは拒絶の意味だ。失礼だぞ」
「は、半分……ですか……? で、でも……」
リノは混乱のまま仲間の侍女たちの姿を思い浮かべた。さっきまで幾人も全裸のまま戻ってきた彼女たち……。だけど、彼女たちには、普通に陰毛は残っていた気がする。
「で、ですが……ほかの侍女様たちは……全部そのままだったような……」
「見間違いだ。全員そうしていたぞ」
「そ、そう……なんです……ね」
ロウの断言に、リノは自分の記憶のほうが誤っていたのだと悟った。
歯噛みする。なにも知らないのに、失礼なことを口にしてしまった……。
「も、申し訳ありません……。じゃ、じゃあ、すぐに剃ります……。少しだけ、お待ちいただければ……。あの……」
辺りを見回すが刃物などどこにもない。ここは真っ白な世界だ。
「道具が……なくて……。どうすれば……」
「いまはいい。次から気をつければいいだけだ」
ロウが小さく息を吐いた。
「す、すみません……。本当に……」
リノはしゅんと肩を落とし、自分の無知が情けなくて胸が痛んだ。
「続けようか。下着は脱いでいい」
「……はい」
リノは白布を足元に落とし、籠に入れた。
下半身が外気に触れ、恥ずかしさで膝が生まれたての子鹿のように震えた。
「さあ、脚を開くんだ」
「……こ、こう……ですか……?」
リノは脚を開き、腰をほんの少し前に出した。股間が露わになる。
「腰を出して、がに股の体勢だ……。そうそう。そんな感じだ。いいぞ……。それから自分で指を使って、穴を開いて見せるんだ」
「えっ……あ、穴を……ですか?」
「作法だ。さっき説明したとおりだ。全員やっていることだ」
「す、すみません……。こ、こう……でしょうか……?」
リノは指先を股間へ向けるだけで手が汗ばみ始めた。
両手でそっと陰唇を開き、身体を前へ突き出すように向けた。
すると、ロウが喰い入るように近づく。その視線だけで下腹部がじんと疼き、背中に震えが走る。
「自慰をしたことは?」
「じ……じい……とは……?」
ロウの眉が大きく跳ね上がった。
「お前……自慰も知らないのか?」
「す、すみません……。わたし……本当に……無知で……」
指で襞を両横に引っ張り、穴を開いた姿勢のまま、リノは泣きそうな顔で俯いた。
羞恥と申し訳なさが胸を締めつける。
その震えが白い空間にまで伝わるようだった。
「仕方がない。教えてやる……。基本の作法として、自慰を男に見せることで興奮させる。それと、女の股の蜜を出す。十分に出てないと男側が痛い」
「そう……なんですね……」
「そうだ」
ロウが寝台の端に腰掛けたまま、宙から取り出すかのように、手に小瓶を出現させた。
蓋を軽く開くと、刺激臭とともに淡い香りが空間ににじむ。
指先に、そのとろりとした油剤をすくうと、ロウはそのままリノの開いた亀裂へ指を近づけた。
「な、なにを……?」
びっくりして声をあげる。
「魔道で練った薬だ……。自慰をしやすくするために、身体を快感に敏感にさせる。危険なものじゃない。動くな──」
ロウの叱咤のような強い声に、リノは瞬時に身体を固くした。
股間を指で開いた姿勢のまま、息を詰めて、自分の股間に近づくロウの指を見つめた。
「くっ、あっ」
ロウの指先が粘膜へ沈んだ。身体が弾かれたように跳ねた。
「ひあっ……。ひっ……」
腰が思わず揺れるだけじゃなく、肩まで震えた。自分の意志ではない反応が全身を走る。
「動くなと言っているだろう。わざわざ教えてやっているんだ」
「す、すみません……。ひぁ……ああっ」
粘膜に触れる指は油をまとってなめらかに動き、開かれた襞の奥へ入り込んでいく。
触れられるたびに熱が募り、脚が震えそうになる。
「……ひ、ひんっ……」
そして、股間の上部に指がかすった瞬間、リノの腰が大きく跳ねた。
慌てて腰に力を入れて、静止を保とうとする。
だが、ロウの指は執拗に襞の皮をめくるように、油剤を足していく。
「……快感があるのか?」
ロウの声音は淡々としていたが、指先の動きは容赦なく、襞の隅々へと広がった。
熱が強まり、腰の震えは抑えられなくなる。
「わ、わかりません……。か、快感というのは……。で、でもおかしい……です……。身体がむずむずして……あ、熱くて……あっ、ああっ」
「それが快感だ。快感から逃げようとするな。ただ、感じればいい……」
ロウの指は深くまでは入らないが、リノが手で開いている亀裂の奥に指で油剤を塗り進める。そのとき、指先で攪拌をするロウの指がびくんびくんと強い衝撃をリノに伝えてくる。
指で持っている襞の部分や、さっきの敏感な亀裂の部分にも繰り返し油剤を追加していく。
「な、なにか……おかしいです……。むず痒くて……。じんじんと痺れるような……。ど、どうして……」
「当然だ。媚薬を塗っているんだからな」
「媚薬?」
呼吸が荒くなり、胸が大きく上下する。
媚薬というのは、辛うじて耳にしたことがあった。
使うと理性が飛び、獣のようになってしまう怖ろしいものだと聞いていた。
それを塗られているのか──?
「ロ、ロウ様──び、媚薬とは……怖ろしいものでは……?」
「怖ろしくなどない──。生娘のリノを楽にするものだ。それに、自慰を知らないんだろう? 教えてやってるんだ。やり方を覚えたら、今夜から毎日やれよ。この媚薬も与えていくから」
「は、はい……。必ず……」
リノは刺激に耐えて必死に頷く。
──毎日、媚薬を使って……自慰というものをする──。言いつけを頭に刻む。
「とりあえず、終わりだ」
やっと、ロウの指が離れた。蓋が閉じられ、またもや、小瓶は宙に溶けるように姿を消した。
「ああっ……」
しかし、ロウの指が完全に離れると、逆に疼きが強くなり、自分でも信じられないほど高い声が漏れた。
股間を開いた指にぬめりが絡みつく。
そこからあふれているのが自分の蜜だと悟るのに時間はかからなかった。
「これが……蜜……なんでしょうか? み、蜜は出ておりますか……?」
自慰にも必要だが、確かロウは、媚薬でリノが蜜を出さないと、自分が痛いのだと説明してくれたと思う。
ちゃんと蜜は出ているだろうか?
「ああ、出ている……。だが、まだ足りない。しばらくその姿勢のままだ」
ロウは愉快そうに微笑んだ。
「は、はい……」
リノは股間を突き出し、脚の震えを必死に抑えながら、両手で襞を開いた姿勢を保ち続けた。
時間の感覚が曖昧になり、どれほどその姿勢を保っていたのかわからなくなった。
リノは気づけば口を開き、荒い息をくり返していた。
胸が上下するたび、肺の奥まで熱がのぼり、額や首筋、背中から汗が噴き出していく。
媚薬を塗られた股間は、まるで意志とは別に動いているようだった。
両手で開き続けている襞の奥がひくひくと震え、塗られた部分から熱が湧いては疼きを増幅させる。
「腰が動いているぞ。じっとしていろ」
ロウの声が落ちた。
「す、すみません……」
リノははっとして腰に力をこめた。
震えを抑えようとするたび、媚薬の刺激が内側をかき乱してくるようで、呼吸がさらに荒くなった。
我慢すべき理由も、どれほど耐えればいいのかも、考えようとすると霧がかかったようにぼやけていく。
「手を離していい。こっちに来い」
ロウに腕を取られ、身体が軽く浮いた。
「あ……」
そのまま寝台へ導かれる。
ロウは黒いガウンのまま中央に胡座をかき、下半身だけ裸のリノを横抱きにするように胸へ受け止めた。
熱を帯びた身体がロウの胸元へ沈み、呼吸がさらに乱れた。
「気持ちのいい場所を探して、自分の指で刺激してみろ。それが自慰だ。だが絶頂は禁止だ。ぎりぎりで止めるんだ」
「ぜ、絶頂とは……なんですか……?」
リノは息を震わせながら問いかけた。
身体の奥がうずき続け、言葉さえうまく形にならない。
「それも知らないのか──。手がかかるな」
ロウが声をあげて笑う。
申し訳なさでかっとなる。
「ご、ごめんな……さい……」
「あっ、いや、いまのは悪かった。知らないのは仕方がないな。じゃあ、最初だけは教えてやる」
ロウの指がリノの股間へ伸びた。
「あっ、あんっ」
蜜でぬめる亀裂の外の襞へ指先が触れ、そのまま上へ滑る。
いちばん疼きが強かった箇所を、ゆっくり押し、揉み、円を描くように動かしてきた。
「あっ、ああっ……ああ……」
足裏から力が抜け、腰が勝手に揺れた。
意識の端が白くほどけ、熱が下腹から背骨を抜けて脳天へ突き抜ける。
息の仕方がわからず、喉から漏れる声も自分のものと思えなかった。
「上を向いて口を開けろ。俺の舌の真似をしろ」
命じられ、リノはふらつく頭を上げ、口を震えながら開いた。
ロウが唇を重ねてきた。
舌が押し入ってきて、リノの舌を絡め取った。
そのあいだも股間の刺激は止まらず、意識が跳ねては溶け、なにが起きているのか頭が定まらない。
「んっ……んあっ……ん……」
舌がかき混ぜられ、吸われ、押し広げられる。
そのたび股間にも鋭い熱が走り、膝が震え続けた。
ロウの言葉を必死に思い出し、真似をしようと舌を伸ばして返す。
侵入している舌に触れ、さらに舌を伸ばして、ロウの唇の裏をなぞり、歯の裏へそっと触れる。
瞬間、股間の刺激が一段強く跳ね上がった。
ロウの指の動きが激しくなったのだ。
全身のどこにも身を置けないような衝撃が走り、喉の奥から押し出されるように声が洩れる。
「んんっ……んんんっ……」
口を塞がれたまま、背筋が弓なりに反り、全身が突っ張った。
胸の奥が震え、下腹の熱が爆ぜ、足先まで波が走った。
ぶるん、と痙攣するような震えが数度続き、指で開いていた襞がびくびくと跳ねる。
なにが起きたのかわからなかった。
ただ、身体が一気にほどけていくような甘い脱力だけが残り、呼吸が勝手に乱れ続けた。
「いまのが絶頂だ」
「ぜ、絶頂……これが……」
息の切れた囁きが漏れ、リノは胸の奥から熱が逆流してくるような感覚に呑まれていた。
震えが止まらない。腰はまだ余韻で勝手に揺れようとする。
こんな感覚を知らなかった。身体の奥が爆ぜるように白く跳ね上がったあれが、絶頂だというのか。
「だが、自慰は絶頂のぎりぎりでやめる。それが自慰だ。できるだけ、寸前でやめるんだ」
ロウの声音は穏やかで、どこか愉しんでいた。
「わ、わかりました……。やってみます」
「自分の指で触れろ。気持ちのいい場所を探して動かすんだ。ただし絶頂は禁止だぞ。寸止めだ」
「絶頂は禁止……。寸止め……」
リノは頭に刻み込む。
性行為の作法には、覚えることはたくさんある。忘れないように……そして、次にロウに抱いてもらうまでには、できるようにしておかなければ……。
リノはロウの膝に凭れながら、震える手をそっと股間へ伸ばした。
触れてはいけないはずの場所が、媚薬の熱で脈打ち、内側から呼び寄せるように疼いている。
触れたくて仕方がないのに、触れるのが怖い。その矛盾が胸と喉を締めつけた。
「やれっ」
低い命令が落ちた瞬間、リノの背がびくりと震え、指先が粘膜へ溶け込むように触れた。
「ひ……あ……あっ……」
触れた途端、腰が跳ね上がった。
腹の奥で熱が巻き上がり、足先まで震えが走る。
胸が苦しい。呼吸が追いつかない。
「止めるな。続けろ──。だが絶頂は禁止だ──」
「は……はい……っ……あ……ああっ……」
必死に指を動かす。
媚薬で敏感になりすぎた粘膜が、触れるたびに溶けそうなほど熱を帯び、
下腹部から衝撃がいくつもこみ上げ、全身の芯を突き刺してくる。
「う……く……うっ」
さっきの「絶頂」感が襲ってきた。
絶頂に飛び込みそうになる瞬間、歯を食いしばって指を止める。
止めた途端、喉がきゅっと締まり、腰が砕けそうな痛みが走る。
止めるほうがつらい。
けれど、止めなければいけない。
「……なんとか成功したか……。でも、まだいけるな。ぎりぎりまで追い込め。もっとやれ」
「……はいっ」
リノは震える指を股間へ戻した。
止めたいと叫び続ける理性を、続けろという命令と疼きが押し潰していく。
「あっ……ああっ……」
指が粘膜をなぞるたび、熱がせり上がり、視界が揺れた。
息が吸えないほどの快感が腹の奥で膨らみ、破裂しそうなほど重くなる。
「ああっ、あああっ、く、くるっ、来ます──」
あと少し触れれば、さっきの絶頂に落ちるとわかる。
そこまで近づいて、リノは歯を食いしばって指を止めた。
「ん……くう……」
胸が締めつけられ、腰が痙攣したように強く震えた。
止めた瞬間の苦しさが、先ほどよりもさらに深い。
「まだ甘いな。もっとぎりぎりまで追い詰められるぞ。止めるのが早すぎるんだ。だけど、絶対に達するな。これが自慰だ」
ロウが愉快そうに眉を上げた。
「は……はい……あ……あっ……。す、すごい……ものなんですね……」
リノは震える指を動かし始めた。
粘膜は媚薬の熱で濡れすぎていて、触れるたびに自分の指先さえ嫌になるほど敏感だった。
自分のものとは思えない声が喉から漏れ、背中が跳ね続ける。
「あ……ああ……も、もう……だめ……」
「もっとだ──。行け。もっと深くまで落ち込める。ぎりぎりの淵まで指で連れて行け」
ロウの言葉が、命令として身体にしみ込んだ。
触れる角度を変えた瞬間、腹の奥が爆ぜるように跳ねた。
「うあ……あああ……っ」
寸前で止めると、意識が白くちぎれるようだった。
呼吸が乱れ、胸の内側が焼けるように熱くなり、膝が砕ける。
指を止めても、止めた場所が脈打ち、強烈な快感の残滓がずっと奥で震えている。
でも、いまのは危なかった──。
絶頂しそうだったのだ。ぎりぎりで踏みとどまれたのが奇跡のように思った。
そして、確実にリノは絶頂しやすくなっている。それもわかった。
「いい顔になったな。だが……まだ行ける。多分、もっと追い込めるぞ」
ロウはリノの髪をひとすじ指に絡め、熱のこもった目でのぞき込んだ。
「も、もっと、ですか?」
リノは目を丸くして、ロウを見上げた。
さっきのは、本当にぎりぎりだった。あれ以上、指を動かし続けていたら、絶頂をとめられることはできないと思った。
「何事も練習だ……。毎日やれば、もっと上手になるはずだ」
「わ、わかりました……。頑張ります……」
リノは頷いた。
才能のない自分ができるのは、頑張ることだけ……。
ロウの期待に応えよう──。
心から思った。
「よし、じゃあ、自慰は終わりだ。上も脱げ。全裸になるんだ」
「い、いえ……もっと頑張ります……。もっと……自慰を……練習しないと……」
媚薬に焼かれた身体は、止められることを嫌がるように震え続けた。
寸止めの苦しさは喉をふるえさせ、涙が滲むほどつらいはずなのに、身体は指を動かせと催促してくる。
リノはもう一度触れようと手を動かした。
「やめろ」
ロウの手に手首を掴まれた。
「え……あ……まだ……できます……やめたく……ないです……」
自分でも信じられない声が漏れた。
苦痛なのに、なぜか続けたい。つらくてたまらないのに、触れたい。
媚薬のせいで身体と理性が噛み合わない。
「もういい。そろそろ結ばれよう」
ロウが立ち上がり、ガウンを脱いだ。
視界の前で黒い布が落ち、裸体が露になる。そして、勃ち上がっている男根が目に入った。
リノの息が止まった。
「……お……大きい……です……ね……」
「普通だぞ……。それよりも、上衣も脱いで全裸になれ」
リノは慌てて服を脱ぐ。
上衣だけ身につけていた服は、下着もなにもかも汗でびっしょりだった。
寝台の下の編み籠に脱いだものを落としていく。
「作法としては、生娘の場合は女が上になるんだ。いまのリノの状態では難しいだろうし、今日は俺が上になってやる。寝台に仰向けになって脚を開け」
リノが全裸になったところで、ロウが端に寄って、寝台の真ん中を指した。
だがリノは震える膝を押さえて言葉を返した。
「い、いえ……。それが……作法なのですよね……。なら……わたしが上になります。やり方を……教えてください……」
ロウは驚いたように目を細め、次いでゆっくりと笑みを浮かべた。
「そう来たか。真面目だな、お前は。よし……教えてやる。全部俺の言う通りに動け。怖がるな。なら、上になるのは、お前の役目だ」
「は、はい」
たじろぐ気持ちを抑え、リノは胸の奥に宿る羞恥と決意を押し固めながら、そっとロウの前へ膝を進めた。
「じゃあ、正式の作法を教えてやろう。両腕を背中で組んで、俺に背中を向けろ」
ロウが今度は宙から縄束を取り出して解き出す。
「えっ?」
リノは思わず声をあげてしまった。