【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
209 政務殿の密議
太陽宮──本来は国王が政務を執る正殿である。
だが、ルードルフが政務を放棄して後宮にこもって久しく、いまや太陽宮は王妃アネルザが国家運営を行う舞台となっていた。
名目上の統治者であるルードルフが後宮に引きこもり、政務に姿を現さなくなって久しい。
その空白を埋めるため、仕方なくアネルザは政務殿へ常に詰め、貴族や官吏への指示を自ら下すようになった。
アネルザは、三人の王妃付の侍女を後ろに立たせ、テーブルの奥側の椅子に腰掛けて待っていた。
すると、鍵金具が動く気配が扉越しに伝わった。
アネルザが命じているため、取り次ぎの声はかからない。今日、ここへ通す予定の相手はひとり──キシダインだけである。
扉が開く気配とともに、伴ってきた取り巻きの三人の貴族と並んでキシダインが立ち止まる。
王妃がすでに座している光景を前に、動揺したのがわかった。
「こ、これは……王妃陛下、お待たせしたようで……申し訳……」
言い終える前にアネルザは手を軽く上げて制した。
キシダインが連れてきた三人の若い取り巻きも、待機室のつもりでやってきた場所に、すでに王妃がいるのを見て目を丸くしている。
「いいんだよ。わたしが待ちきれなくて、勝手をしたのさ。かわいいアンの婿なんだ。少しくらい待つのは構わないよ。……アンは元気にしているかい?」
気さくな口調を装いながらも、アネルザはキシダインの反応を鋭く観察している。
わずかに息を呑む気配とともに、背筋がわずかに強ばる気配があった。
こちらの視線を受けて身構えたのだと、アネルザはすぐに察した。
動揺してくれたなら、それでいい。
そのために、わざわざ意表をついてやったのだ。
「それはもう……元気に。最近は気鬱が抜けないと言っていて、屋敷にいるのが良いと……」
「まあ、そうだろうね。あの子は昔から大人しい性格だったからさ。仲良くしているならいいよ」
「仲良くしております」
キシダインが微笑みとともに軽く頭をさげる。
アネルザは軽く顎を動かして、アネルザの斜め横の椅子を示した。
「そこに座りな。立たれていると落ち着かないよ」
キシダインが素直に歩み寄り、椅子に腰を下ろす。
その動きに合わせるように、後ろの三人の取り巻きも並んで腰を掛けようとした。
「……許しもなく、座るんじゃないよ」
アネルザは一喝した。
三人が硬直する。
キシダインが振り返り、怒気を帯びた声を放つ。
「お前たち、なにをしている。王妃陛下の御前だぞ。作法もわきまえぬとは恥を知れ」
叱咤の鋭さは、先ほど見せたアネルザへの追従の口調とは別人のようだ。
「申し訳ございません、王妃陛下。未熟な者たちでして……。陛下の前では立っているのが当然だと教えているのですが、まだ行儀が徹底しておりません」
だがその直後、キシダインはアネルザへ向き直り、また柔らかな声音に変える。
三人の取り巻きは蒼ざめて頭を下げた。
アネルザは視線だけで彼らを キシダインの後ろへ下がらせる。
三人は弾かれたように移動して姿勢を正す。
キシダインは胸元から封書を取り出した。
「アンから手紙を預かっております。アネルザ王妃へ、と」
「アンからかい……」
アネルザは表書きの文字だけで娘の筆跡を見分け、胸の奥でほっと息をつく。乱れていない書きぶり。それだけで、アンが今すぐ傷つけられているわけではないと判断できる。
アネルザは封書を侍女へ渡した。
紙を裂く小さな音がしたあと、手紙がアネルザの手元へ戻ってきた。
紙面へ視線を落とす。
時候の挨拶。暮らしぶりの報告でごめんなさいと書いてあった。
また、アンは夫のキシダインに日々よくしてもらっているようだ。屋敷の中で自由に過ごせており、不自由はないという。
筆跡は確かにアンのものだと思う。
震えも乱れもない。
アネルザは、手紙を横に置くと、視線をキシダインに戻す。
「取り巻きは外させな」
キシダインは従順に頷き、令息たちを廊下へ下がらせた。
アネルザも、自分の侍女たちを壁際まで退けさせる。
「悪いね。わたしは立場があって人払いなんかできないからね。一応、女だからさ……。盛りの終わった枯れ薔薇だけどね」
「なんと、まだまだ美姫であられますよ。お若い」
「わざとらしい世辞はやめな。虫唾が走るよ」
アネルザは吐き捨てると同時に、胸の奥がじりりと疼くのを覚えた。
いまさら、美しいだの若いだの──そんな言葉に心が動く歳ではない。もう四十五を過ぎた。
幼い頃から、美姫だの可愛らしいだのともて囃されたこともあったが、あれは辺境候家の長女だからだ。領主貴族の娘に向けられる儀礼の飾り文句であって、女としての自分に向けられたものではなかった。
王都の女たちの洗練された美しさを見たとき、己がそこに並ぶ器ではないことなど、すぐに理解した。
ルードルフが自分に触れたのも、アンを授かるまでの話だ。
しかし、男子を産むまでは側妃を置くわけにはいかない──そう言って、王宮の若い女を厳しく監督し、ルードルフが手を出せないように厳しく言い渡した。
間違って、ルードルフに手を出させたら、本人だけでなく、実家も潰すと脅すと、さすがにルードルフに近づく貴族令嬢がいなくなった。
だが、監視の目が届かぬ場所は必ずある。
あの男は、こそこそと王宮の下働きの平民に手を伸ばしたのだ。
発覚したときは激怒したが、すでに妊娠していた以上、処置のしようがなく、出産を許した。
エルザはアンと同じ年に生まれた。エルザを産んだ平民女は、死んだことにして処理し、魔道で記憶を抜いて金を持たせ、王宮から遠ざけた。
いまでも一応、見張らせているが、記憶が復活することもなく、商人の男と結婚して、いまは別の家庭を持っている。
だが、正妃の子と同年で生まれた子を、どう扱うべきか──その後始末を考えるうちに、アネルザは側妃管理そのものが空虚に思えてきた。
それからは放置した。
ルードルフは勝手に後宮へ入り浸り、子を産めぬ処置を施された奴隷女を抱いて満足していた。
アネルザにとっては、それで構わなかった。
六年ほど経った頃だ。
ルードルフは政務から完全に逃げ出し、アネルザが政務殿で国の舵取りのすべてを担うようになっていた。
無駄な後宮の費用を削るべく、奴隷女の入れ替えにかかる予算を削ったとき──歯車が狂った。
王が、今度は下級令嬢を後宮にさらって監禁しているという報せが入ったのだ。
あの男の暴走が、また始まったのだと悟り、アネルザは後宮へ踏み込んだ。
だが、救い出した令嬢はすでに気が触れ、腹には子がいた。
事件は外へ出せない。
王家の体裁がある。
アネルザが王妃宮の地下で保護をした。令嬢は出産したものの、日に日に衰弱していて、出産に耐えられず、女児の誕生と引き換えに命を落とした。
産まれたのが、第三王女イザベラだ。
そのとき、アネルザはルードルフを半殺しにし、二度と同じ真似をさせぬよう、子種を魔道で潰させていた。
後宮の費用は元に戻した。
貴族の娘へ手を出すな──それが条件だ。
ルードルフは、妊娠の心配なく女を抱けるのが嬉しいのか、喜んで従った。
そんな男に、もはや後継など望みはしない。
しかし、思えば、自分も同じ穴だ。
いまでは、アネルザもまた、王妃宮の地下に、性欲解消のための男娼を置いている。
毎日の政務の忙しさに追われていると、情欲が収まらず、満たされない苛立ちを押さえるために、そういう存在がどうしても必要になったのだ。
そんな自分に、若いだの美しいだのと言われれば──苛立たぬはずがない。
王妃でなければ、誰もそんな言葉を口にしない。
だから、キシダインの空虚な言葉が腹立たしい。
「これは……お厳しい」
キシダインがにやりと笑う。
濁った水たまりに落ちる石のような、不快な笑みだった。
アネルザは眉ひとつ動かさなかったが、内心では小さく舌打ちしていた。
指先で魔道具を起動すると、周囲の気配がふっと震え、防音結界が展開された。
音の余韻が落ち着き、外へ漏れる心配がなくなる。
「さて。これで外のあいつらにも聞こえない。腹を割って話そうじゃないかい」
「……ご用向きは?」
キシダインの声がわずかに上ずる。アネルザはゆっくりと立ち上がった。
「そういえば、茶も出してなかったね。待っておくれ」
「い、いえ、王妃自らそんな……」
驚いたようにキシダインが手を振る。
「いいんだよ。義理の息子と義理の母親さ。遠慮はいらない。これでも昔は貴族令嬢だ。茶くらい淹れられる。それに、いい葉の献上があってね」
アネルザはあらかじめ温めておいた茶器に湯を注ぎ、立ちのぼる香りを確かめる。
さらに、キシダインの前へ滑らせると、キシダインの鼻先がわずかに震えた。
「……ほう、見知らぬ香りですな。どこの産でしょう?」
「さあね。タリオ経由で入ったものらしいけど、エルニア産だと言っていたよ。献上に来たのは──アンジュ家とカロー家さ」
茶碗へ伸びていたキシダインの指が止まった。
みるみると顔色がさっと褪せる。
アネルザはゆっくりと嘆息した。
やはり、イザベラに毒を盛ったのは、こいつの仕業だと確信した。
イザベラ側が証拠を封じたため表には出ていないし、未遂で終わったこともあって把握はわずかに遅れた。
だが、裏を調べさせれば十分だった。侍女の実家を脅し、毒を渡した形跡は掴んだ。
きちんとした証拠はさすがに残してないが、この王宮では、失脚させる材料としては証拠などなくてもいい。
疑わしいだけで十分なのだ。
それをしてしまうのは、こいつの慢心だろう。
「……どうした。飲まないのかい。わたしの淹れた茶じゃ不足かい?」
「……その、カロー家とアンジュ家といえば、イザベラ王女付きの侍女の……」
キシダインの額に汗が浮かぶ。
こいつが部下を使って、イザベラの侍女のひとりであるカロー家とアンジュ家に接触させたことはわかっている。
わざとらしいアネルザの態度に、アネルザがキシダインの関与を見抜き、目の前の茶に渡していた毒を混ぜたと想像したのだろう。
「そうかい? 悪いけど、下級貴族の名なんて、いちいち覚えていなくてね……。さあ、飲みな」
アネルザが軽く脅すように促すと、キシダインの喉がひくりと動いた。だが茶器を口に触れさせようとしない。
アネルザは静かに舌打ちした。
毒だとわかっていても、こういうときは平然と飲むものだ。
その程度の度胸もなくて裏工作を気取っているのかと内心で呆れる。
「ところで──ディセル卿のことは聞いているだろう?」
キシダインの指が跳ねた。
今朝届いた知らせだ。
ディセル侯爵は、キシダイン派の重鎮のひとりだが、昨夜に馬車事故で急死した。
だが、ディセルは羽振りこそ良かったが、実際にはキシダインの金に縛られた従属者だ。
汚れ仕事もすべて押しつけられてもおかしくないくらいの……。
その男がイザベラへ毒殺未遂事件の直後に事故で死ぬ──。
帳尻が合いすぎる。
この男のやることが愚かすぎて呆れた。
「ディセル卿は……かけがえのない友人でした」
キシダインはわざとらしく目を伏せ、茶椀を置こうとする。
「飲まないのかい。舌に少し痺れがあるが、気にせず一気に飲み干すといい」
「お、お戯れを……」
乾いた笑みをしながら、キシダインは結局、茶を口にするこなく、テーブルに戻した。
アネルザは深く息をついた。
「……お前は本当に脇が甘いよ。イザベラを殺せばお前に王太子が回るとでも思ったのかい」
アネルザは手を伸ばして、キシダインの手元にあった茶を口につけた。
キシダインが目を見開く。
茶に毒なんて入ってない。
軽く揺さぶってやっただけだ。
そもそも、こいつが仕込んだ毒は、まだイザベラの手元だろう。
あの王女は、事件を表にしないつもりだけど、キシダインがイザベラに毒を盛ろうとしたという証拠を握っていることにはなる。
イザベラが毒の証拠を握っているとなれば、少々面倒だ。
「イザベラが毒なんかで死んでごらんよ。ルードルフは嬉々として、公爵家の孫を王太子にするよ。あれは腑抜けた阿呆だが間抜けじゃない。お前が隙を見せれば、それを大喜びで口実にするさ」
「はっ……ルードルフ陛下は、私を気に入っておいでですよ……。美姫を届ければ喜ばれ……」
キシダインの顔から血の気が引いた。
「はあ? 知らなかったのかい。あいつは単に面倒を避けたいだけさ。見境のない好色だから女奴隷は喜んで受け取るだろうが……。だが根本的にルードルフはお前が嫌いだよ。面と向かって言わないのは、お前の後ろに上級貴族がついているからさ」
「ま、まさか……」
「本当に知らなかったのかい。お前もその程度かい」
アネルザは腹の底から笑った。
キシダインは呆然とし、その後で真っ赤な怒気を浮かべた。
その顔の変わりようを見て、アネルザは冷笑する。
こんなのがアンの夫だとは……。
だが、後継者争いの旗印としては、ほかに据えられる者もいない。
結局は、アネルザの見る目がなかったというだけの話だ。
アネルザは小さく自嘲の笑みを洩らした。
「……ともあれね。お前がどれだけ愚かでも、いまさらすげ替えはしないよ、だから、大人しくしてな、わたしがお前を王位につけてやる」
「は、はい……」
キシダインが目を瞬かせる。
アネルザは茶碗を卓へ戻し、指先で軽く縁をなぞった。
「貴族議会の上級貴族の多数は、もうお前を王太子に推す以外の道を想定していない。わたしの実家もそうだ。タリオとの橋も、お前を通して掛けているんだろう? ……いまになって、別の者を担ぎ上げると、どこも軋む」
「あ、ありがとうございます──」
「でも、勘違いするんじゃないよ──」
アネルザは言葉を断ち切った。
「議会がどう考えようと、最終的に王太子を指名するのはルードルフだ。あいつが勅書に署名しないかぎり、お前はいつまで経っても、候補止まりさ」
キシダインの喉が、ごくりと鳴った。
「し、しかし、共同継承権は──」
「紙の上の権利なんてものは、王の署名ひとつで生きも死にもする。……お前がそれを一番よく知っているはずだろう?」
アネルザは鼻で笑った。
「セルデン王が生きていた頃は、お前は王のお気に入りで寵児だった。だが、いま王冠をかぶっているのはルードルフだ。あいつは、お前を見るたびに、自分が蔑まれ続けた昔を思い出す。だから、王太子への署名だけは、意地でも止めている」
ルードルフの顔が脳裏に浮かぶ。
酒と女に溺れた情けない男。それでも一つだけ、頑として譲らない拒絶がある。
「後継者の決定については、議会の推挙も、わたしの進言も、何度も上げた。だが、あいつは署名の段になると、匙を投げる。病を理由に寝所へ逃げ込み、紙だけ積み上がっていく始末さ。あいつの得意技さ……」
アネルザは肩をすくめた。
「そんな……」
「だからこそ、イザベラを殺そうなんて真似は、論外なんだよ」
「どういうことですか?」
「イザベラが死ねば、ルードルフは、お前を外す口実を手に入れる。公爵家の孫でも、だれでもいい。とにかくお前じゃない誰かを、喜んで王太子にするさ。あいつは阿呆だが、自分が大嫌いな相手に冠をくれてやるほど、甘くもない……。結構しぶといよ……。叩いても叩いても死なない毒虫のようなやつさ」
アネルザの頭に、ルードルフの下半身の管理に苦労がよぎった。
キシダインの顔に、今度は別種の青さが広がる。
アネルザは、その変化を逃さず見つめた。
「……この十年、王太子の椅子は空いたままだ。お前も、イザベラも、グリムーンの孫も、みんな候補の札をぶら下げられて、互いに牽制している。膠着しているからこそ、王国の均衡が保たれている」
アネルザはゆっくりと言葉を区切った。
「……イザベラ……王女殿下はともかく、グリムーン公の孫は赤子ですが?」
キシダインがちょっとむっとなる。
「ルードルフにとっては、お前でなければ十分だよ。それに、いま、赤ん坊でも、すぐに赤ん坊ではなくなる」
「……私は、王国に尽くしてます……。なんの実績もない王女よりも、ましてや、赤ん坊になど……」
「笑わせるんじゃないよ」
アネルザは冷たく切り捨てた。
「は?」
「あいつは、王としては無能だが、自分の感情だけは手放さない。お前がいま以上に目立てば目立つほど、王太子の椅子は遠ざかる一方さ」
キシダインは口を開きかけたが、結局、言葉を飲み込んだ。
「……だから、わたしに任せな……。お前はアンの夫だ。なにがなんでも、お前には王になってもらう。あいつがお前を嫌っているのは、単なる感情だ……。感情は変わる。いまはときを待ちな」
「はい……」
キシダインは小さく頷いた。
アネルザは厳しい顔を引っ込め、柔和な笑みをキシダインに向ける。
キシダインがちょっとたじろいだような顔になった。
「大丈夫だよ……。厳しいことも言ったけど、何度も言うが、お前はアンの夫だ。わたしが見放すことはない……」
「……私はアンを大事にしてます。俺には過ぎた女だと思ってます」
「ならいい……。だけど、もしも、イザベラの侍女を使ったんなら、その侍女がまだ王女のところにいるのは、かなり悪い状況だ。でも、なんとかしてやる。お前は、アンの夫だからね」
アネルザは安心させるような口調に気を配りながら言った。
キシダインが息を吐く。
「……申し訳ありません」
キシダインが頭を下げる。
これでいい──。
しばらくは、こいつも大人しくするだろう。
こいつの浅慮な行動で、後継者指名に失敗するわけにはいかないのだ。
あとは、アネルザがやればいい。
とりあえず、キシダインが駒として使った侍女を確保することだ。
いまは神妙そうにしているけど、実際、なにを考えているのかわからない。焦ったキシダインが口封じに手を出すかもしれないが、あの小離宮じゃあ守り切れないだろう。
それに、現段階では始末は考えてないけど、いざとなれば、処分することも検討しなければならない。
関係する侍女を王女付から、王妃付にすればいいだろう。あそこには、下級令嬢や平民しかいないから、王妃付は大出世だ。
アネルザの指示に拒むことはないだろうし、拒むことをさせるつもりはない。
「それにしても、お前も馬鹿だねえ。どうせ、手を出すなら、狙うべきは王女じゃなくて、ルードルフだよ──。もっとも、あれは、仮にも王だから、護りの宝具をもっているし簡単じゃないけどね」
アネルザは豪快に笑った。
「へ、王陛下を……。まさか──ありえません」
キシダインが焦ったように首を横に振る
「心配ない。防音の結界がある。誰にも聞こえない……。だけど 毒を盛る相手がルードルフなら、わたしも止めはしないかもね」
アネルザは声をあげて笑い続けた。