※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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211 王女宮の狂宴

「ひゃあああああっ……だ、だめぇっ……そこは……っ」

 

 ユニクの悲鳴が広間に弾けた。

 王宮施設内のイザベラの離宮である「小離宮」の夜は、もう完全に一郎の遊戯場と化していた。

 今夜も移動ポッドでエリカたちとともに押しかけ、集めた十人の侍女たちと三人娘を一回り抱き終えた直後である。

 いまは、その中休み的に、ユニクだけに施した「淫紋」を披露している最中だ。

 

「あんっ──そこはくすぐったい……ひあっ、ああっ、そんなところまで──」

 

 ユニクの喘ぎと震えが重なるのとほぼ同時に、彼女の下腹部で黒い影が蠢いた。

 淫紋は、普段は下腹部の少し上に刻まれた二匹の向かい合う蛇の紋様にすぎない。刻まれた位置も形も女性的な刺青のように整えられ、ただの淫らな飾りにも見える。

 だが、一郎の淫魔術が触れると、その紋様は刺青という概念から離れていく。

 

 蛇は、絵ではなく生き物のように皮膚の上を滑り始める。腹を巡り、胸に登り、腰骨をなぞり、背へ回り、また股へ潜る。

 紋様である以上、掴んでも止まらないし、押さえても阻めない。触れれば指をすり抜けるように流れ、皮膚のすぐ下を這うように刺激が走るのだ。

 二匹が重なってねじれれば、全身のどこであれ敏感な場所を選んでいるかのような快感が突き刺さり、離れればまた別の場所へと滑り込む。

 股間の奥をなぞるように暴れれば、それだけで女は膝を折るほどの刺激になるし、紋様の蛇が股間に交差して入り込むふりをするだけで、他人の陵辱を許さない挿入を防ぐ貞操帯の役割もする。

 

「すっごい……。これが淫紋」

 

 周りにいる侍女の誰かが呟きながら、息を呑むのか聞こえた。

 一郎は、裸に薄いガウンを羽織って床に座っているが、その周りに、エリカたちに加えて侍女たちが密着するように集まっている。そのなかの誰かの侍女が呟き、息を呑むような声とともに声を漏らしたのだ。

 

 それはともかく、女たちが集まっているので、女たちの匂いが濃密に立ちこめている。熱の名残が漂っていて、汗と女の濡れた匂い、零れた精の甘い臭いが充満しているのだ。

 

 また、女たちが身につけているのは、一郎がマアに強請って準備をしてもらった特別なものだ。

 薄桃色のシルクの袖なしの短衣であり、丈が短すぎて膝を延ばしたり、屈んだりすれば、すぐに裾から下腹部かお尻が露出してしまうほどに短い。

 しかも、いまは床に座っているので、多くの娘の脚のあいだから、白く濁った体液が静かに滴り落ちているのが見える。

 全員、まだ身体さえ拭いていない。

 呼吸も浅く、肌は汗に光り、髪は乱れたままだ。

 

 そんな乱痴気の中心で、いま一番騒いでいるのがユニクだった。

 淫紋の蛇が這う軌跡がすべて丸見えになるように、ユニクだけは一糸まとわずに中心に立たせている。

 

「やっ……またっ……あああっ……」

 

 ユニクが股間を必死に押さえる。だが模様の蛇は指をすり抜けるように腹を巡り、腰骨をなぞり、股間へ戻って蠢いた。

 

「きゃ、すっご……背中にまでやってきた……」

 

 トリアが赤面しながら口元を覆う。

 

「ほんと……あれ、どういう術なのよ……」

 

 ダリアが呆れたように呟いた。

 

「多分、身体の表面を動く紋様の魔道なんてないだろうな。これができるのは、ロウだけだろう」

 

 シャングリアが声をあげて愉しそうに笑った。

 

 集まっている女たちは、二種類に分けられる。

 拘束組と拘束をされてない組だ。

 

 拘束組は──エリカ、シャングリア、ノルエル、クアッタ、リノ、ミレイユであり、後手に革手枷、膝枷までつけられたまま床に座り込んでいる。

 組み分けは気紛れだ。拘束組は拘束して抱き、非拘束組は自由なまま抱いた。

 一巡の後半組は、一郎に抱かれ終わった余韻でまだ立ち上がれず、座り込んで息を整えている。

 

「ユニク……声がかわいいですわ……。とても色っぽいし。まあまあ、どうしましょう……」

 

 クアッタが陽気な声をあげる。

 

「かわいいっていう状況じゃないでしょ……完全に悲鳴よ……」

 

 エリカがぼそりと口を挟んだ。

 

「ひっ、ひっ……くる……またくるぅ……っ。きゃああ、おしりいい──」

 

 ユニクがお尻を押さえて立ったまま仰け反った。

 一郎の視線では、二匹の蛇が股間で交差して震えたあと、内腿の付け根を滑り進んで後ろに回ったのまで見えたが、いまの感じだと、お尻の穴にでも潜ったのだろうか。

 蛇の動きは制御もできるが、勝手に泳がせることもできる。いまは、自由に動かさせていた。

 

「ひあああっ、あああっ」

 

 ユニクがお尻を両手で押さえたまま跳ねた。

 娘たちは真っ赤な顔で、喰い入るようにユニクに吸い寄せられている。

 

 一郎はふと顔を横に向けて、寝椅子に視線を向けた。

 マアだ。娘たちから少し離れた位置で横になり、エリカたちと侍女たちと同じ薄桃色の短衣の裾を乱したまま、寝椅子に沈み込んでいる。

 本来の彼女は六十二歳の老女だ。

 しかし淫魔術の「治療」によって肌も内臓も若返り、三十歳そこそこの美女になっている。

 その若い肉体を一郎が容赦なく抱き潰した結果、体力の回復が追いつかず、寝椅子に倒れ込んでいるというわけだ。

 

 マアがここにいるのは、イザベラの相談役として密かに呼ばれているからだ。

 イザベラは、シャーラと伴って、アネルザの急な呼び出しに応じており、あとで話を聞くために、移動ポッドでやってきたのだ。一郎の幽霊屋敷と同じく、小離宮も魔道で転移路が結ばれている。

 

 そのときに、運んできたのが、みんなが身につけている、この薄桃色の扇情的な袖なしの短衣なのだが、雰囲気からすれば、自分も抱かれるとは思ってもなかったようだ。

 もちろん、一番最初に抱き潰した。

 

「ひあああっ……や……おなか……だめぇぇぇ……」

 

 ユニクの甲高い声がまた響き続ける。

 一郎は淫魔術を解除した。

 一瞬にして蛇が這い回るのをやめて、下腹部の淫紋に戻る。

 ユニクがその場に崩れ墜ちた。

 糸が切れたように膝を折り、床へ手をついて震えている。

 

「ひゃあああああっ……だ、だめぇ……そこは……」

 

 ユニクの悲鳴は細く震えていた。崩れ落ちた肩がまだ揺れており、淫紋の余韻が腹の奥に残っている様子だった。

 

「ユニク、ご苦労さん……。愉しい余興だったぞ。ご褒美だ。来い──」

 

 一郎は膝を折り、そっと手を差し伸べた。

 ユニクは横に倒れたまま、濡れた睫毛を震わせて顔を上げ、かすれた声を洩らした。

 

「……ロウ様……脚に力が入りません……」

 

「わかった。じゃあ、そのままでいいぞ」

 

 一郎はユニクの前に位置を変えて、腰に手を回して、ユニクの身体を持ちあげる。

 軽く持ち上がったユニクを仰向けにして脚を抱え上げ、一郎の太腿に跨がせるようにして腰を支えた。

 ユニクの体温は高く、肩から太腿まで微妙に震えている。

 膝に太腿を乗せると、短いスカートがめくれ上がり、蜜をたっぷりと吹きだして真っ赤に熟れている秘部が露わになる。

 

「あっ、ああ……ロウ様……か、感じます……」

 

 ユニクが喘ぎだし、身悶えが激しくなる。

 

「まだ、なにもしてないぞ」

 

 一郎はユニクの脚を引き寄せただけだ。触れているのは抱えている太腿と腰の括れの部分だけだった。

 

「……で、でも紋が……淫紋が奥で脈を打って……止まりません……」

 

「ほう?」

 

 淫紋を見下ろす。

 淫紋そのものは静止しているはずなのに、皮膚の下で微細な脈動が続き、奥を勝手に震わせているようだった。

 よく見れば、腹の皮膚の下で、鼓動に似た反応が繰り返されている。

 

「調整が必要だな」

 

 一郎は苦笑した。

 改めて体勢を取り直し、両腿を抱えて膝の上に載せているユニクの腰を、さらに引き寄せる。

 ユニクの脚は小刻みに跳ね続けていた。

 一郎はそのまま腰を寄せ、ガウンの前を開くと怒張を露出させ、ユニクの亀裂に先端をゆっくりと押し当てた。

 濡れた入り口がかすかに震え、花弁が押し開かれるように迎え入れる。

 次の瞬間、吸い寄せるように一郎を飲み込み始めた

 

「あんっ」

 

 ユニクがぶるりと震える。

 

「入れるぞ」

 

「は、はいっ……ロウ様……」

 

 預けられた身体が一郎の腕の中でくたりと緊張を解き、湿り気のある入り口がわずかに締まったかと思うと、次の瞬間、吸い寄せるように一郎の怒張をユニクの膣が吸い込み始めた。

 

「おっ」

 

 自然にやっている吸い込みらしいが、相変わらずの異常な吸引力に、一郎も思わず声をあげてしまう。

 一郎はさらに男根を押し込む。

 ずぶずぶと沈み込む感触が股間に伝わる。最初は柔らかく受け入れ、すぐに奥の筋が反応し、きゅうと締め返してくるのだ。

 さすがの名器だ。

 この気持ちよさには、一郎も快楽に息があがる。

 

「……すごいな」

 

 苦笑とともに、律動を開始する。

 

「ひ……あ……。ロウ様……」

 

 ユニクの身体は跳ねあがる。

 一郎はそのまま深さを確かめるように、腰を押し進め、そして、引き、また押し込む。

 ユニクの身体が膝の上で波打つように震え、すぐにユニクは身体を折りたたむように震えだした。

 

「くっ……名器だな。こちらが先に限界になるところだ……」

 

 一郎は律動をさせながら淡々と呟いたが、手のひらに伝わる緊張は冗談ではなく本気の感触だ。

 ユニクの股間は、締め付けも緩みも吸いつきも、すべてが理屈を超えて整っている。

 また、周りは、女たちでいっぱいだ。周囲で息を呑む音がした。

 

「あ、ああ、ああ……ロウ様……お願いです……もっと……もっと……」

 

 ユニクが歓喜の声をあげて、床を指で掴むような仕草とともに、全身を仰け反らせた。

 

「くっ」

 

 いよいよ、膣が一郎の一物を締めつける。しかも、腰の痙攣が一郎の股間にも伝わってくるのだ。

 快感が股間から全身に一気に広がる。

 

「ああ、き、気持ちいいな……」

 

「あっ……ああっ……」

 

 ユニクの身体が弓なりになった。持ち上がり膣がぎゅっと収縮した。

 筋肉が絡むように密着する。

 内側の吸い込みが強く、わずかな動きで限界を誘う。

 ユニクの全身が跳ね、膣奥が一瞬だけ緩んだ。

 

「いけるなら、先にいけ」

 

 ユニクは腰を震わせ、声を漏らしながら身体を強ばらせた。

 一郎が腰を引き寄せると、ユニクは全身を硬直させた。

 

「あおおおっ」

 

 ユニクが声をあげて激しく痙攣した。

 ついに絶頂に達したようだ。

 だが、痙攣が膣奥に集まり、一郎を締め、吸い、震えが深層まで伝わった。

 逃れようとしても逃れられず、そのまま一郎は射精した。

 制御できない射精など淫魔師になった一郎には滅多にないが、ユニクのときだけは、勢いのまま射精をすることが多い。

 いまもそうだ。

 

「……もう動けません……ロウ様に……全部奪われました……」

 

 ユニクが胸を上下させ、余韻に震え続ける。

 腰の痙攣は弱まりつつも途切れず、かすかな息が漏れ続けていた。

 

「こちらも同じだ。とんでもない身体だな」

 

 一郎はユニクの頭を撫で、静かに息を整えた。

 その場にいた侍女たちの視線が、熱と呆れと羨望のまじった気配で二人へ集まっているのがわかる。

 一郎はユニクから男根を抜く。

 いまだ吸引を続けるユニクの股間がそれを惜しむかのように、引き込みを続けていた。

 

「ご主人様、お掃除しますね……」

 

 ユニクとの性交を終えた一郎の太腿に残る熱気がまだ消えぬうちに、コゼがするりと膝を寄せた。

 甘えるような声音で囁く。

 

 コゼは顔を伏せ、一郎の怒張に舌先を触れさせた。舌が付け根をゆっくりとなぞり、ユニクの残滓をすくうように丁寧に舐め上げる。

 

「ああ、ありがとう……」

 

 一郎は股間に顔を埋めているコゼの頭に手を置いた。

 コゼの身体が嬉しそうに揺れた。

 そして、返答の代わりに、男根に絡んでいるコゼの舌の動きが速くなる。

 また、口元から湿り気のある音が漏れ、先端を口に含んだまま、喉の奥へ押し込むように深く受け入れ、吸い、舌で絡め取っていく。

 

「く、ふう……綺麗になりました……」

 

 しばらくして、コゼは唇を離し、上気した頬のまま湿った口元を拭いもせず、胸元を寄せ、そのまま、裸で抱きついてきた。

 

「ねえ、ロウ様……。あたしにも刻んで欲しいです」

 

 コゼが一郎の胸に胸を押しつけながら甘える。

 

「なにをだ?」

 

「淫紋です……。ご主人様の奴隷の証。あたしも欲しいです」

 

「あれはご褒美じゃないぞ。俺が好きに使うための淫具のようなものだぞ」

 

 一郎は苦笑を浮かべる。

 

「だからいいんです。使われるための印なら、なおさら嬉しいです」

 

 コゼはその言葉を否定せず、むしろ嬉しそうに身を寄せた。

 とろんとした視線で寄り添うその様子に、侍女たちがざわめいた。

 

「コゼさん……大胆……」

 

「確かに、わたしも印が欲しいかも……」

 

「そうですわね……」

 

 侍女たちの囁きが周りから聞こえてくる。

 コゼは一郎へさらに身体を押し付けてきた。

 

「だって、ロウ様。だって、エリカだって、クリリングをつけているじゃないですか。ほら」

 

 コゼがくすりと笑い、片手をエリカの方へ伸ばした。

 

「うわっ、待ちなさい……触るな──」

 

 エリカが慌てて身体をそらす。

 だが後手には革手枷、膝にも枷を嵌められているせいで身動きが取れず、床に座ったまま上体を引くのが精一杯だった。

 

「なによ……ちょっと偉そうじゃない。そんなこと言っていいの」

 

 その隙に、コゼの指先はエリカの足のあいだから垂れた糸を摘まんでしまっている。

 その糸は、最初の一巡目のとき、一郎が悪戯で付けたクリリングに結んだ堅糸の名残だった。外し忘れていたせいで、いまもスカートの裾から覗いていたのだ。

 

「ちょ、ちょっと離すのよ。あっ──」

 

 エリカは必死に腰を引くが、コゼが糸を握ってしまった以上、繋がっているクリリングごと引かれるのは当然だった。

 鋭い刺激に、思わず悲鳴が洩れる。

 

「いまだけは、どうか離してください、お願いします……とか言った方がいいんじゃないの?」

 

「なにを言ってんのよ。早く離すのよ──」

 

 エリカが真っ赤な顔で怒鳴る。

 

「そう? でもね。こんなこともできるのよ」

 

 コゼは紐を指に絡めたまま立ちあがった。

 

「ひいいっ、引っ張らないで──」

 

 クリトリスを引かれた痛みに、エリカは強制的に立ち上がる。

 だが、後手拘束に、さらに膝枷という不自由な姿勢では体勢を保つことすら難しいらしく、膝が笑い、身体が揺れている。

 

「ほら、エリカ。みんな見てるわよ。どうするの」

 

「いや……や、やめて……」

 

 わずかな力で引かれただけで、腰が跳ね上がる。

 痛みと快感が入り混じるらしく、エリカの目の端には涙が滲んでいた。

 

「コゼ、本当に離しなさい──」

 

 エリカが震える声をあげた途端、今度はコゼがいきなり早足で歩きだした。

 

「ほら、捕まえてごらんなさい」

 

「ひいいっ……」

 

 エリカは完全な拘束姿勢のまま、ずるずると床を滑って引き回される。

 足で踏ん張れず、腰が浮き、引かれるたびに悲痛な声が上がった。

 

「きゃ……っ、あ……だめえ……」

 

 じたばたと膝を揺らすが、膝枷をしたままでは、追いつけるはずもない。

 必死に腰を前に出して、脚を進めている。

 

「うそ……紐だけで、あんなに……」

 

「エリカさん、可哀想だけど……ちょっと……」

 

「いや、あれは痛いはず……なのに声が……」

 

 侍女たちが口々に囁く。

 コゼは振り返り、愉快そうに唇を歪めた。

 

「ほら、何人かおいで。いまなら、やりたい放題よ」

 

「だめ……ロウ様……やめさせてください……ほんとうに……ひぎっ──」

 

 腰を震わせ、全身を紅潮させながらエリカが懇願する。

 数名の侍女が、興奮した面持ちで駆け寄っていった。

 一郎の視線からも、彼女たちがどんな悪戯を思いついているかは容易に推測できた。

 

「そのままにしておいてくれ」

 

 一郎は自分の身体に残る熱気を払い、女たちの喧噪から少し離れている寝椅子の方へ向かった。

 

「おマア、起きているか?」

 

 声をかけると、寝椅子に仰向けに沈んでいるマアが、薄く目を開いた。

 薄桃色の短衣の裾は大きく乱れ、若返った太腿が露わになっている。

 だが、その深い呼吸には六十二年分の疲労がしっかり残っている。

 

「……ロウ殿は容赦ないねえ。あたしが何歳だと思ってるんだい。あんなに思い切り抱いて……」

 

「若返ったんだから大丈夫だろう。女の三十過ぎは女盛りともいうらしいぞ」

 

 一郎が寝椅子の端に腰を下ろす。

 マアが横たわったまま身体の向きを変え、一郎に笑みを向けた。

 

「冗談じゃないさ。見た目は若くても、中身は老女なんだよ。ちょっとくらい手加減をしておくれ」

 

「手加減してるぞ。すぐに二巡目に入るが、おマアだけは休んでいていい。特別扱いだ」

 

「はあ……まったく、とんでもない絶倫男だねえ。あんな若い娘が大勢揃ってるのに、あたしまで抱こうとするなんて」

 

「残念だったな。まあ諦めろ」

 

「可愛がってくれるのはありがたいよ。これでも一応、女だからね」

 

「これでもじゃない。十分に女だ」

 

 一郎は短衣の脇からこぼれている胸に手を伸ばし、軽く揉んでやる。

 

「ひあっ……も、もう勘弁しておくれ。死んでしまうよ……」

 

 マアが身を捩って悲鳴をあげる。

 一郎は笑いながら手を離した。

 

「ところで、おマア。冒険者ギルドに立ち寄ったとき、お前について噂が立っていたぞ。商会の事務所で毒を盛られて虫の息だそうだ」

 

「ほう、もう流れたかい。さすが冒険者ギルドだね。情報が回るのが早い」

 

 マアがゆっくり身体を起こす。

 その表情は、一郎に抱き潰された女のものから、

 タリオの女豪商にしてハロンドールの流通を握ろうとする希代の策謀の女傑の顔へと変わっていた。

 

「毒で死にかけたという噂は便利なんだよ。あたしが商会を引退する理由が自然になる。キシダイン派も、脅しが効いたと思っているようだしね」

 

「やっぱり、引退を決めるのか?」

 

 一郎は笑って言った。

 マアが表向き、いまのマア商会を手放して、別の新商会を立ち上げる構想は教えてもらっていた。

 いまのマア商会は、タリオ公国からハロンドール王国に跨がる巨大商会だが、キシダイン卿ともタリオとも近すぎる。

 それで、マアは一度、自分を表社会から消してしまい、別の存在として新しい商会を立ち上げるつもりなのだ。

 別の商会といっても、最初に動かすのは現在のマア商会の末端にある小規模商会を五個ほど目立たぬように引き抜いて新たな看板を掲げさせるところから始まる。

 それを核に、旧マア商会の取引先や流通網へ少しずつ競合を仕掛け、外側から静かに侵食しながら人材も引き抜いて育てていく。

 つまりは、表向きには「引退した老女が姿を消しただけ」に見せかけ、実際には自分の商会を自分で食い替えて、新しい商会を本体へと育て上げるということだ。

 

「仕方ないだろう。ロウ殿がこんな風にしてしまったんだ。スクルズ殿には、老女姿に見せかける欺騙の魔道具も借りたけど、いつまでも頼れない。どうせ、別人に見えるなら、本当に別人になってしまうよ」

 

 マアが破顔した。

 六十を超えている老女の笑顔ではない。三十に達したばかりにしか見えない働き盛りの美女の顔だった。

 

「名前も変えるのか?」

 

「いや、マアでいくよ。マアという老女が消え、同じ名を名乗る若い女が同じような商才を発揮して、流通界を席巻するんだ。もしかしたらと思う者も出てくるだろうさ。人材を引き抜くときに使える」

 

「なるほどね。いまのマア商会には、マアが育て上げた者が大勢いるんだろうね。消えたマアに変わって、若返っているが、同じ能力と記憶を持つ、おマアを名乗る女が現れれば、調略もかけやすいか」

 

 一郎は頷いた。

 

「能力も記憶も以前以上だよ。ロウ殿がしたのは、あたしの見た目だけの奇跡だけじゃないね? 頭の回転も商いの勘もおかしくなるほど冴えてる。まあ、一年でいまのマア商会を潰して、この国の流通界を姫様派一色にかえてやるさ。任せておきな」

 

「頼もしいね」

 

「とにかく、あたしは毒で虫の息だ。会長職も退く連絡もした。指名したマア商会の後継者は、キシダインの犬みたいな男さ。飼い主のあたしに毒を盛ろうとするようなね」

 

 マアが凄みのある笑みを浮かべる。

 一郎も知らなかったが、マア商会は、キシダインの活動の資金源を支えていたが、度重なる巨額の融資請求に、マアも最近では難色を示すことも多かったらしい。

 すると、キシダインは、脅しのつもりか、マアの近辺に、わかりやすい毒を仕掛けることをやり始めたらしい。

 マアは、動いた部下を特定はしたが、そのまま放置していたそうだ。

 今回は、それを利用することにし、毒に倒れたというシナリオを作ったというわけだ。

 

「でも、自分に噛みついた子飼いの部下に、育て上げた商会をくれてやるとはな。おマアも思い切ったことをする」

 

「キシダインは喜ぶだろうさ。扱いにくい老女が消えて、自分の犬が商会長になるんだからね。でも、それも一年程度さ。遠慮なく叩き潰してやるよ」

 

「おマアのことだから、裏では、もう別の動きもしているんだろう?」

 

「もちろんだよ。末端の商会をすでに五つ引き抜いた。名目上はまだマア商会に属しているけど、実際には全部あたしの手の上にある」

 

 一郎が口元を緩めた。

 

「末端の五つの小さな商会だけで、おマアの巨大な商会を一年で潰せるか?」

 

 一郎は笑った。

 

「一年もいらないね。あたしにはわかるんだ。どの町に何を流せば、市場がどう動くか。まるで地図の上に未来が描き出されているようにね。あんたがくれたのは恐ろしい力だよ、ロウ殿」

 

「商才が爆発したというわけか」

 

「そうさ。キシダイン派で支配していた流通を、冒険者ギルドを使って脇から浸食してやる。向こうはまるで気づいていない。金の流れが変わるときは、案外静かなものだからね」

 

「ミランダがおマアへの協力を惜しむようなら、俺に言ってくれ。身体でわからせてやる」

 

「心配ない。ミランダは喜んでいるよ。低ランク冒険者のための安定的なクエストが得られるってね……。だけど、呆れたよ。あの元(シーラ)ランクで、歴戦の冒険者たちが一目置くミランダがあんたを怖がるとはね」

 

「そうか?」

 

「ああ、ロウ殿の名を出したときには、顔を引きつらせてたよ。今回の話にはほっとしていたけどね。ロウ殿はいままで、どんな無茶な要求をミランダにしてたんだい?」

 

 マアが笑い声をあげる。

 

「実はミランダは苛められるのが好きなんだ。俺はその奉仕をしている奴隷のようなものさ」

 

「よく言うよ」

 

 マアが大笑いする。

 

「ところで、新しい商会の名は決めているのか?」

 

 一郎はふと訊ねた。

 

「決めたよ……。ターナ商会さ」

 

 マアがにやりと微笑む。

 

「……ターナ商会? まさか、俺の名前からとったのか?」

 

 驚いて訊ねた。

 “ロウ”と名乗っている一郎だが、本当の姓名は“田中一郎”だ。この大陸の仕来りであれば、“イチロウ=タナカ”となる。

 先日、実は姓を持っていると教えたら、マアも驚いていた。なにしろ、この大陸の慣習では、姓を持つのは貴族のみなのだ。

 だから、“ターナ商会”というのは、そこからとったとしか思えない。

 

「当然さ。語感もいいしね。もちろん、ロウ殿の商会だ。あたしは、そのために動くだけさ」

 

「おマアの商会だろう」

 

「いいや。あたしの人生は、もうロウ殿のために使うと決めている。稼いだものを全部、ロウ殿に貢ぐよ。そのために生きるんだ」

 

 マアは笑った。

 

「それは……ありがとう。だけど、味方にはしたが、人生を奉仕するとまでは言うなよ。おマアはおマアであればいい」

 

「あたしはあたしさ。だから、ロウ殿に尽くすんだ。そもそも、イザベラ王女を支えることに承知したけど、それはロウ殿が命令したからだ。商売人としては、あのなにも知らない王女様に乗るのは、あまり旨味はない」

 

「手厳しいね」

 

「キシダインは贔屓目に見ても悪人だけど、流通は知っている。政治も知らず、基盤もないあの子に元からつく気はなかったけど、ロウ殿が選んだのなら話は別だということだよ」

 

「なら安心だ。おマアがそこまで言うなら、キシダイン派も長くはない。姫様もいい味方を得られた」

 

「必ず沈めるよ。相手に気づかれずにね」

 

「ありがとう。やっぱり、いい女だ。終わりだと言ったけど、もう一回くらいいいか、おマア?」

 

 一郎はマアに手を伸ばした。

 

「ひっ、む、、無理だよ──。か、勘弁しておくれ──」

 

 マアが一転して余裕をなくして、顔を青ざめさせて身体を縮込ませる。

 これは本気で嫌がっているな。

 一郎は手を出すのは諦めた。

 

 そのとき、部屋を貫く悲鳴が響き渡った。

 エリカだ。

 先程コゼに糸を掴まれ、クリリング越しに股間を引かれてしまったその体勢のまま、まだ逃れられずに振り回されていた

 

「や……あ……やめ……引っ張らないで……っ」

 

 だが、後手には革手枷、膝にも枷がある。身体の自由がきかず、満足に歩くことさえままならない。

 そのため、コゼが少し動くだけで、エリカの腰が跳ね、肩が震え、太腿がもつれそうになっている。

 

「ほらエリカ、ついてきなさいよ。置いていくわよ」

 

 コゼが軽い調子で歩調を少しあげた。

 

「ひああっ──。そ、そんな急に……っ」

 

 エリカの身体が遅れて引き寄せられ、悲鳴が上がっている。

 しかも、いつの間にか、トリア、ユニク、セクトの三人の侍女が面白がるように群がっていた。

 トリアは、興奮に頬を紅潮させながら、エリカの短衣の脇から細い筆を差し込んで乳首あたりに小筆をそっと滑らせている。

 ユニクは、さっきまで自分が喘いでいたくせに、いまはけろりとした顔で、エリカのお尻を筆で軽くくすぐっていた。

 セクトは控えめだが、興味を隠しきれない表情で、太腿の内側へそっと筆を当てている。

 

「ひっ……ああ……だめ……っ。や……やめて……それ……っ」

 

 どこを触られても、エリカの身体は誤魔化しようもなく反応していた。

 脚が震え、つま先が床を探り、泣きそうな顔のまま前へ引きずられる。

 だが、周囲の侍女たちが囁き合い、たまらず口元を押さえている。

 あれは、エリカも溜まらないだろう。

 まあ、あとで慰めてやろう。

 

 一方で、広間の奥ではシャングリアを中心に、別の輪ができていた。

 そちらは、拘束組を主体に。ただ静かに談笑している。

 穏やかそうな会話だけが、淫らな喧騒のなかで不思議な島のように存在していた。

 

 一郎は腕を組み、そのすべてを眺める。

 嬌声、悲鳴、笑い声、囁き、筆が肌をなぞる小さな音──それらが混ざり、小離宮の夜気に濃厚な熱を漂わせていた。

 

 さて、じゃあ、そろそろ二巡目にでも入るか……と立ちあがりかけたときだった。

 イザベラとシャーラが戻ってきたのだ、ふたりが広間に姿を現した。

 しかし、二人の顔色はひどく悪かった。

 

「……ロウ、おマア殿、戻った……。えっ?」

 

 イザベラが声を漏らす。広間を見渡した瞬間だった。

 

「なっ……これは……」

 

 シャーラも言葉を失っている。

 当然だろう。糸を引かれ悲鳴を上げるエリカとそれを楽しげに引き回すコゼや侍女たち……。

 ほかの侍女たちも後手に拘束されていて、薄桃色の過激な袖なしの短衣姿で談笑している。

 イザベラが息を呑み、シャーラはわずかに後ずさった。

 

「驚いたか……? じゃあ、すぐに着替えてくれ、いま二巡目に入るところだ。服は姫様とシャーラの分もあるからな」

 

 一郎は亜空間から、侍女たちと同じ薄桃色の短衣を二着取り出した。怖ろしく丈が短く、露出の多い薄物だ。

 

「すぐに着替えろよ。もちろん、目の前でだ」

 

「え……ここで……か?」

 

 イザベラが受け取った服を見て唖然としている。

 シャーラは絶句している。

 

「それと、その服は下着を着ける仕様になっていない。素肌だけにそれを身につけるんだぞ」

 

 二人は真っ赤になり、衣装を胸に抱きしめた。

 

「ふふ、ロウ殿は容赦ないのう。姫様とシャーラにもか?」

 

 マアが面白そうに口を挟む。

 

「当たり前だ。俺の調教を大人しく受ける。それが唯一、姫様に俺が味方する条件だ。いやとは言わさないぞ」

 

 一郎は笑った。

 イザベラが真っ赤になる。

 

「いやとはいわん。だが、ロウ、着替える前に話を聞いて欲しい……」

 

 イザベラの声が震えた。一郎は動きを止める。

 

「話とは、王妃との会合の件か? なにかあったか?」

 

「アネルザ王妃陛下より……侍女三名を、王妃付きの侍女と入れ替えるよう命じられました……。王命として扱われる、と……」

 

 シャーラが続けた。

 

「侍女の三人の入れ替え? 誰をだ?」

 

 一郎は眉を寄せた。

 シャーラがトリア、オタビア、ダリアの指名を受けたと説明する。

 そういうことかと思った。アンジュ家のふたりと、カロー家だ。いずれも、実家を通じて小離宮に毒を持ち込んだ者たちである。

 情報は隠蔽したつもりだったが、どうやら隠しきれなかったということだ。

 口封じをするつもりか、確保するつもりかわからないが、王妃側に彼女たちの身柄が渡れば、なにをされるかわからない。

 

「拒否はしたが、王命に変えられれば逆らえん。王妃は王命に変えるだろう。王陛下は王妃には逆らわんからな……。どうしたらいい?」

 

 イザベラが息を吐く。

 一郎は目を細め、すぐには返事をしなかった。

 

 侍女三名の入れ替え──。

 広間の喧噪が、遠くへ引いていくように感じられた。

 一郎は深く息を吸い、侍女たちの顔ぶれを順に見渡し、静かにイザベラへ視線を戻した。

 

 いまの状況を受け入れるわけにはいかない。

 それだけは絶対だ。

 もうあいつらも、一郎の女だ──だからこそ、家族ごとミランダやマアに頼んで手を打った。

 相手が王だとうと、王妃だろうと渡すつもりはない。

 

「侍女の入れ替えには、もちろん応じられないぞ、姫様……。王妃侍女が混ざったりすれば、せっかくの俺の遊び場がなくなる。トリアたちも、すでに俺の女だ」

 

 一郎はにっこりと微笑んだ。

 

「だが……王命が正式に出されれば……」

 

 イザベラの顔が強張る。

 

「俺に任せればいい……。なんとかするさ……、おマア──」

 

 一郎は寝椅子に視線を向ける。

 

「なんだい?」

 

 マアが顔を向ける。

 

「協力してくれ。引退を正式発表する前に手紙だけを一本書いて欲しい」

 

「もちろんさ。ロウ殿の仕掛けなら、喜んで動こう。なんでも言っておくれ」

 

 マアが妖艶に笑んだ。

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