【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「ひっ、それは──」
アネルザの喉から、短く引きつった悲鳴がこぼれ落ちた。
白い空間で完全に拘束された状態で、アネルザは思わず身体を震わせていた。
全裸の身体は、ロウに対して正面を向いたまま、両腕は頭上へ引き上げられている。
手首には金属枷があり、そこから伸びる鎖は真上へと張り詰め、肘は一切曲がらない。肩が引き延ばされ、胸は常にやや前へ突き出される姿勢だ。
両脚は床に接地している。
だが、自由はない。
素足の足首は床面の固定具に嵌められ、左右へ強制的に引き離されているのだ。
肩幅を大きく超える開脚であり、内腿に力を込めても、脚は一分たりとも寄らない。
逃げ場は存在しない。
その正面の数歩先に、小さな白い台が出現していた。
台の上には、皮を剥かれた植物の太い根が数本、無造作に並べられている。
淡い乳白色。表面は湿り気を帯び、光を鈍く反射していた。
痒粘根の太さはまちまちだが、今回準備されたものは全て極太である。また、どれも人の腕ほどの長さがあった。
切り口からは、粘性の高い透明な液がゆっくりと滲み出し、台の縁で糸を引いている。
もちろん、用途も名称も知っている。
女囚拷問の道具として定番のものであり、名称は「痒粘根」──。
あの粘性の汁に触れれば強烈な痒みを誘発し、同時に、異様なほどの滑りを生む植物根である。乾けば皮膚に貼りつき、湿れば潤滑剤のように粘る。
一度張り付けば、水で徹底的に洗い落とさない限り、痒みは数日間も続く。
これを女囚に使い、快感と不快を区別する余地を与えず、感覚を破壊するという拷問具だ。
痛みには死ぬまで耐える者は少なくないが、痒みは耐えることはできないらしい。
ハロンドールの牢獄でも、かなりの効果があるとして、頻繁に使用されていることをアネルザは知っていた。
もちろん、使われたことなどないが……。
「ま、まさか、それをわたしに使おうっていうんじゃないだろうねえ」
恐怖に顔が引きつるのを感じながら、アネルザは怒鳴った。
「使うに決まっているだろう。これは懲罰なんだ……。だけどこの世界にもあるんだな」
ロウが、淡々と口を開いた。
彼の手には、薄い手袋が嵌められている。痒粘根を扱うための防護だ。
「この世界?」
妙な物言いだと思った。
まるで、ロウ自身が外の世界からやって来たような言い方だ。
だが、はっとした。
外界人──。
この世界ではない、別の世界からやって来た稀人のことをそう呼ぶ。異界の壁を跳躍することで、異能を得ることが多いというが、もしかして、ロウは外界人なのか?
「ああ……。前世で知っていたのは“山芋責め”だ。それと、この痒粘根とやらは、性質はよく似ている。もっとも──こっちは食用じゃない。完全に拷問用の植物根のようだけどね」
前世……。
やっぱり、外界人なのか……。
アネルザの思考が、わずかに引っかかった、だが、思念はそれで遮られた。
ロウの手が一本の太い痒粘根を持ち上げ、アネルザの肉襞を押し広げながら、ぬるりと打ち沈めてきたのである。
「あ……ああっ……」
生々しい声が、白い空間に反響した。
アネルザの身体が大きく震え、吊られた両腕の鎖がかすかに鳴る。反射的に股間へ力を込めるが、開脚固定された脚は一切動かない。
脚を拡げて固定されている状態では、ぬめりを潤滑油にした挿入を拒むことなど不可能だった。
長さのある痒粘根が子宮の表面にまで到達して、さらに圧迫される。
「くっ、ああっ、や、やめて……」
「拒もうとしても無駄だ。すぐに痒みが襲ってくる」
ロウの声は、静かだった。
そして、手に持っている痒粘根をぐるぐると回転させて、汁を膣の隅々にまで擦り込むように回し始める。
「あ、ああっ、あああ……」
拒絶の意識が先に立ったはずだった。異物を受け入れさせられ、内側を荒らされているという嫌悪が、まず胸に込み上がると思った。
だが、その感覚はほとんどなかった。
その代わりに、身体の深部から別の波が広がり始める。
皮膚の裏側を撫でられているような、神経そのものを指で転がされているような、正体の掴めない刺激が、背骨を伝って全身へと流れ込んでくるのだ。
手足の先が熱を帯び、視界がわずかに滲む。
「あ……あ……」
声にならない音が、勝手に喉から漏れた。
自分がなにに反応しているのか、判断がつかない。
拒もうとする理性は確かに残っている。
だが、その理性が命じる前に、身体のほうが先に震え、内側が勝手に応じてしまう。
痺れとも、疼きともつかない妖しい感覚が、呼吸のたびに強まり、思考を押し流していく。
嫌悪と困惑が混じり合い、どちらも形を失っていく。
──おかしい。
そう理解しているのに、抗うための力が、どこにも見当たらない。
アネルザは、自分が我を忘れかけていることに気づき、遅れて愕然とした。
「王妃様も気持ちよさそうですね」
「ロウの愛撫には抵抗できないみたいだな」
コゼとシャングリアの揶揄とも素直な感想ともつかない言葉が耳に突き刺さる。
羞恥が全身を包み、冷たいものが背中に走る。
しかし、ロウの操る痒粘根が律動を開始すると、その気持ちのよさに、アネルザは意識を持っていかれそうになる。
「ああ、だめええっ」
アネルザはびくびくと身体を弾ませた。
「拷問としては、使い古されている……。だが、効果があるからこそ使い古される……。もっとも、これは拷問じゃなく、懲罰だけどね」
ロウがはっきりと言った。
痒粘根が律動するたび、アネルザの身体がびくりと跳ねる。
「じゃあ、あたしたちは、王妃様のおっぱいに塗ろうか……。エリカはそっち側ね」
手袋を嵌めたコゼが容器から別の痒粘根を手に取ると、容器ごと、エリカ側に押しやるのが見えた。
「わ、わたしもするの?」
エリカが拒絶するように一歩だけ台から後ずさりする。
「嫌なら、エリカは塗られる方にするか? どっちでもいいぞ」
ロウが律動と回転を繰り返しながら笑う。
「やります」
エリカがすぐに戻り、慌てたように痒粘根を手に取り、アネルザの乳頭に粘性物を塗り始めた。
同時にコゼ側の乳房にも、汁が擦り込まれる。
「おおっ」
アネルザは両手吊りの裸身を硬直させた。
すると、アネルザの股間から痒粘根を引き抜いたロウが別の痒粘根を手に取って、アネルザの背後に回ってきた。
「ああ、待って──そこは──」
アネルザは太腿からふくら脛を痙攣させていた。
ロウの持っている痒粘根の先端がアネルザのアナルの表面をぎゅっと押してきたのである。
「そこはじゃない──。懲罰だと言っただろう。拒否権なんかあるものか」
じわじわと痒粘根がお尻の穴の中に侵入してくる。
もちろん、これまでの性行為において、アナルを犯された経験など皆無だ。
異物をそこに受け入れたこともない。
しかし、アネルザの拒絶感とは逆に、とろとろの汁が潤滑油となって、小さなその器官を押し広げてくる。
「ああっ、うあああっ」
鈍痛のような不快感は、すぐに大きな情欲の疼きに変わった。
アナルを犯されて快感を覚えるなど信じられなかったが、アネルザの身体が反応しているのは事実だった。
アナルから痒粘根が抜かれたときには、大きな焦燥感を覚えたほどだ。
「さて、これからが懲罰だ」
ロウが淡々と言うと、手にしていた痒粘根を容器へ戻した。
それを合図にするように、エリカとコゼも、乳房へ塗りつけていた痒粘根を容器へ収める。
ロウが痒粘根を載せた台を横に移動させてずらす。
すると、次の瞬間、アネルザの正面に、三人掛けのソファが出現した。
ロウが迷いなく、長いソファの中央へ腰を下ろす。
「はい、失礼しますね」
コゼが一歩早く動き、当然のようにロウの横へ身体を寄せて座った。
肩が触れ、太腿が重なる距離だ。
「あっ、ちょっと……」
遅れたことに気づいたエリカが、慌てて反対側へ回り込み、勢いそのまま腰を下ろした。
ソファがわずかに揺れ、エリカは姿勢を正すように背筋を伸ばした。
「ふたりとも、必死だな」
その様子を見て、シャングリアが小さく息を漏らす。苦笑を浮かべたまま、コゼの隣へと腰を下ろした。
一方で、ロウはなにも言わない。ただ、視線だけをアネルザへ向けている。
アネルザは、両手を吊られ、脚を開かれたまま、その視線を一身に受け止めていた。
「くっ」
アネルザは歯を食いしばり、呼吸を整え、身体を動かさぬよう必死に意識を集中させる。
痒みは、まだ一点に留まっている。内側の奥で、じくじくと、いやらしい熱を伴って脈打つ程度だ。
──耐えろ。
そう言い聞かせ、肩を強張らせ、腹に力を込める。
だが、時間が経つにつれ、様子が変わっていった。
痒みは一点ではなくなり、波のように広がり始める。
深部から表層へ、内側から外側へと、境目なく滲み出し、身体の感覚を塗り潰していく。
股間が──クリトリスが──乳房が──乳首が──アナルが──痒粘根の汁を塗られた場所の全部で一斉に異様な感覚が沸き起こった。
耐えがたいほどの痒み──。
もしも、両手が吊られてなければ、恥も外聞もなく自ら股間やアナルを掻きむしらなければならないほどの激しい痒みだった。
アネルザは、あの痒粘根が女囚用の拷問具として、頻繁に利用される理由を身体をもって知覚した。
「……ああっ……痒い──」
声を噛み殺そうとしたが、口からは逆に悲鳴があがっていた。
自分の意思とは無関係に、腰が反射的に跳ねた。
その動きが引き金だった。
次の瞬間、痒みが一段強まる。
耐えようと固めた身体が、逆に刺激を際立たせてしまったのだ。
「ああああっ、だめええ──」
腰がもう一度、今度ははっきりと揺れる。
吊られた両腕の鎖が鳴った。
乳房が揺れ、腰が前に突き出され、戻り、また突き出される。
固定された腕と脚が拘束されてほとんど動かせないまま、わずかな緩みを使って暴れ始める。
──やめろ。
──動くな。
そう思えば思うほど、痒みは増し、身体は勝手に反応する。
腰が揺れ、胸が上下に大きく弾む。
呼吸が荒れ、喉から抑えきれない声が漏れた。
「王妃様の尻振り踊りが、はじまったな」
ロウの面白がるような声が聞こえた。
言葉が突き刺さった瞬間、羞恥が一気に込み上げる。
だが、その羞恥すら、痒みの波に呑み込まれていく。
「ち、違う……っ」
否定しようとするが、身体は正直だった。
痒みをどうにかしようと、無意識に腰を揺らし、胸を前に突き出してしまう。
「怖い王妃だという評判だったから、もっと堪え性があるかと思ったけど、思った以上に脆かったな」
ロウがアネルザの苦悶を眺めながら、微笑みを浮かべている。
「……あああ、ふ、ふざけるな──こ、こんなの我慢できるわけないだろう──」
怒りのあまり怒鳴りあげた。
このアネルザともあろうものが、淫らに腰を振り、喘ぎ声を上げる姿を眺められながら嘲笑されている。
それがわかっていても、アネルザはもはや、乳房を震わせ、腰を必死に揺すぶって身悶えることをやめることができなかった。
「我慢できないのを我慢させるのが調教だ。仕方ないだろう? アネルザ、お前は調教されているんだ」
ロウが笑う。
かっと怒りが込みあがるが、それは時間とともに小さくなっていく。
怒りよりも怖さ──。怖さよりもこの男に縋って慈悲を乞いたくなる弱い感情がアネルザを押し包む。
必死にそれを頭から追い出す。
無抵抗に犯され、身体を陵辱されるとしても、気力が尽き、目の前の見知らぬ男に屈服するなど、王妃としてあってはならないのだ。
しかし、それとは別に、もう早く嬲ってほしい──。
アネルザをぐちゃぐちゃにして、徹底的に辱めてほしい──。そんな倒錯した感情が脳裏を掠め始めてくる。
目の前のロウに嬲られ、犯され、支配されて屈服する──。それを想像したとき、アネルザの身体は女体として熱く疼きだし、強い渇望感で狂いそうになってきた。
「……ああ、もう許しておくれ──.お願いだよ──」
アネルザは狂おしく身悶えしながら叫んだ。
だが、誰も動かない。
四人はソファに座ったまま、ただ眺めている。
ただ、なにもされず放置される──。
なんという残酷な拷問なのか──。
絶望感がアネルザを支配していく。
痒みはさらに強まり、もはや一点ではなく、身体全体を包み込む。
掻けない。触れられない。逃げられない。
アネルザは、ついに耐えきれなくなった。
「……お願いだよ。なんとかして……ああ、もう耐えられないよ──」
声が情けなく震える。
それでも、王妃としての自尊心を捨てたアネルザとしての必死の哀願だった。
「どうだ、アネルザ。王妃といえども、自分がただの女だということを自覚したか?」
だが、返ってきたのは、冷ややかな声だった。
「た、ただの……女って……」
「自分が被虐の癖があるということは知っていたか? これまで、それなりに性経験があるようだけど、もしかしたら、心から満足したことはないんじゃないか……? いや、その心からの満足ということさえ、知らないんじゃないか?」
ロウが立ちあがる。
そして、アネルザの前に立つと、脂汗にまみれたアネルザの顎を強引に上げさせた。
もう少しもじっとしていられず、腰も胸もアネルザは激しく悶えさせている。だが、ロウに掴まれている顔だけは動かないようにじっと耐えた。
「な、なにを……」
なにを言っているのかと怒鳴ろうとしたが、それはロウから醸し出される理由のない圧迫感に押し潰された。
「いい顔になったな。アネルザ。俺の女になれ……。そうすれば教えてやろう……。支配され、羞恥に顔を歪め……屈辱に泣き……その先にある快感を……」
ロウの顔が近づいてくる。
「お、お前……なにを……」
声が掠れる。
「自分でも気がついているだろう? 違うなら、どうして股間を濡らしている。なぜ、痒み以外の感覚に震えている? 痒粘根は媚薬じゃないぞ……。アネルザ、いまお前は理不尽な仕打ちを受けて、それでも妖しく欲情している」
どきりとした。
ロウの言葉に誤りはない。
実は、これだけの痒みの苦悶であるにもかかわらず、乳首とクリトリスは刺激を求めてじんじんと灼け、かっと燃え立つ花芯からは掻痒感に苛まれて淫らに収縮蠕動をしていることには気がついていた。
股間から絞り出されてる樹液が内腿を濡れ拡がっていることも……。
「アネルザ……堕ちろ……。そうすれば楽になる……」
ロウの唇がいきなり、アネルザの唇に重なってきた。
唾液とともに、舌が口の中に侵入してくる。
ロウの舌が舌に絡みつき、歯裏を擦り、口中を舐め回される。
腰の芯まで灼けただれるような快感がアネルザを襲っていた。
「んんっ、んっ」
口づけがこんなに気持ちいいとは想像もしなかった。
アネルザは身体をがくがくと揺すり立てて官能に染まった声を呻き漏らした。
ロウが離れていく。
アネルザが激しい焦燥感に襲われた。
そして、気が狂うような痒みが全身を苛む。
「ああ、だめえっ、離れないで──。な、なんとかしてくれ──痒いんだよ──」
アネルザは身体を揺すり立てながら絶叫した。
「頼み方が違う」
アネルザは、はっとして顔を上げる。
「マゾの王妃を苛めてください……そう言え……。そう頼めば願いを叶えてやる」
その言葉に、息を呑んだ。
「なっ……」
屈辱が、胸を締めつける。
さすがに、そんな言葉は──。
「いやか? まだ矜恃が許さないか? だったら、いつまでも尻をそこで振っていろ、時間は無限にある」
ロウが離れていく──。
嬲ってもらえない……。
だが、誰も助けに来ない。
再び、放置される。
そう思ったとき、狂おしい疼きと激しい痒みがさらにアネルザを掻きたてた。
痒みは、もはや理性を許さなかった。
「……あああ……っ……」
腰が大きく跳ね、胸が激しく揺れる。
もがき、暴れ、吊られたまま身体を捩る。
自分がなにをしているのか、考える余地もない。
「……おね……がい……だよ──」
声が崩れる。
そして、ついに──。
「……お願いだから……マゾの王妃を……苛めて……おくれ──」
言葉を口にした瞬間、アネルザの身体から力が抜け落ちた。
「わかった。じゃあ、願いをかなえてやるよ。存分に苛めてやろう」
すでにソファに座り直しているロウが、宙から乾いた絵筆を執りだした。
全部で六本──。
それを女たち三人に、二本ずつ手渡す。
「王妃の希望だ。しっかりと苛めてやれ……。それと、アネルザ、今度は失禁するなよ。もしも、だらしなく小便を漏らせば、ご褒美はお預けだ」
ロウがソファに腰掛けたまま笑った。
次の瞬間、突然に強い尿意がまたもや襲いかかってきた。
「ひいっ」
アネルザは思わず声をあげてしまった。
「じゃあ、ご主人様のご命令ですので」
「王妃様、すみません」
「だが、痒粘根を塗っておいて、これで責めるのか? ロウも残酷だな」
コゼ、エリカ、シャングリアの三人が二本ずつの筆を両手に手にしてアネルザを囲んだ。
左右の乳首──脇腹と内腿──股間とお尻の穴──その六箇所に筆の穂先が当てられて、それぞれで円を描くようにくすぐってきた。
「ひあっ、あひいいっ、ああああっ」
アネルザは、みるみると切迫する尿意に耐えながら、生汗にぬめ光る裸身をびくんびくんと激しく揺すり立てた。