※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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222 小離宮のサロン

 小離宮の中庭に設えられた主宰席で、イザベラは背を伸ばして座っていた。

 白い天幕の下、低く整えられた生垣と花壇が円を描き、その内側に立席式の卓が点在している。昼の柔らかな光を受け、杯や皿、飾りの魔道具が淡く輝いていた。

 

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」

 

 正面に立つ二人の令嬢が、揃って礼を取る。

 モンベール伯の長女アドリーヌと、サンベール伯のエミール。ともに十五歳。緊張を隠しきれないが、目にははっきりとした期待が宿っている。

 

「よく来てくれたな」

 

 イザベラは椅子に座ったまま、穏やかに応じた。

 

「お声をかけていただき、とても光栄です。こうした場は初めてで……」

 

「女官試験も考えております。ぜひ、勉強会にも参加させていただければ」

 

 二人は言葉を選びながら、しかし率直だった。

 イザベラは頷き、杯を置く。

 

「学びたい者が集う場にしたい。形式に縛られず、知を持ち寄る。修学に意欲のある令嬢がいると耳にしたので声をかけさせてもらった」

 

 イザベラの言葉に、ふたりが同時に背筋をぐんと伸ばした。

 もっとも、実際に有能で意欲ある令嬢を調べ、声をかけたのは侍女たちだ。

 イザベラは名を貸し、主宰としての席にいるだけだ。準備も進行も、ミレイユを中心に侍女たちによって、すでに滞りなく動いている。

 

 そのときだった。

 股の奥に、鋭い衝撃が走った。

 

「くっ」

 

 股間を反射的に押さえそうになったが、手は動かさず、イザベラは短いドレススカートから伸びる脚を折るだけに留めた。

 動いたのは、両乳首、クリトリス、膣、アナルに装着されている五個の淫具のうち、クリトリスのものだ。

 さっきから、このクリトリスだけが、短い間隔でしつこく振動を繰り返している。

 

 歯を喰いしばって込みあがる官能に耐える。

 すると、振動がやっと停止した。

 息が一瞬だけ詰まり、喉がかすかに鳴り、イザベラの肩が、ほんのわずかに揺れる。

 

「どうかなさいましたか、王女殿下?」

 

 アドリーヌが、心配そうに顔を上げる。

 

「な、なんでもない」

 

 即座に答え、視線を外さず微笑む。

 刺激はすでに止んだことで、行き場のなくなった淫情が四肢の隅々まで席巻していた。

 力が抜ける感覚だけが残っていた。

 いつの間にか、こんなに淫らな身体になってしまった。その原因であるロウに恨みのような思いが沸き起こる。

 

 イザベラは軽く周りを見て、近くに自分の侍女たちの誰かがいないか素早く探す。

 淫具を操作できる距離は、十ベス以内──大人の男が大股で十歩ほど進んだくらいの距離以内と教えられている。

 だから、その内側に、操作具を持つ者がいたはずなのだ。

 とにかく、イザベラが操作具を持っている侍女を特定して、声を掛ければ、操作具を取りあげることができる。

 見つけられなければ、この馬鹿げた遊びが小宴のあいだ、ずっと続くということだ。

 

 だが、人は多い。

 中庭には二百名近い参加者が集い、立ち話と杯の音が穏やかなざわめきを作っている。

 ほとんど国政に関与していなかったイザベラのサロンの呼び掛けに、これほどの人数が集まるとは思わなかった。

 

 これも、ロウの号令で女たちが協力してくれた結果だ。

 ベルズが神殿業務の傍らでやっている若手の魔道研究家のサロンからの参加者──。

 ミランダが声を掛けた有能な新人冒険者たちの集団──。

 マアが新興ターナ商会として声を掛けた中・小クラスの商家たち──。

 そして、侍女たちが声を掛けた、アドリーヌやエミールたちのような令嬢たち──。

 これほどまでに集まってくれたことを、ありがたく思う。

 だが、おかげで、淫具を操作している侍女を特定するのが難しいのである。

 

「やはり、どうかなされました?」

 

 エミールも不思議そうに小首を傾げている。

 イザベラは、慌てて意識を正面の二人に戻す。

 

「なんでもない……、それよりも、勉強会は、もともと、まだまだ未熟なわたしのためなのだが、ひとりで受けるのは勿体ないからな。是非、一緒に学んでいこう」

 

「是非、お願いいたします」

 

 アドリーヌとエミールの二人が目を輝かせている。

 イザベラは、その会話のあいだも静かに、侍女たちの動きを追っている。彼女たちは静かに会場を巡り、臨時に集めた冒険者の手伝い人とともに宴を動かし、あるいは参加者たちの雑談に耳を傾けて、彼らの商談に結びつくような参加者を紹介したりしている。

 忙しく動いているので、イザベラに構う余裕はないと思うのだが……。

 

「あ、んっ……」

 

 そのとき、またしてもクリトリスの淫具が激しく振動した。

 思わず、椅子に座っている体勢を崩しそうになったが、すぐに振動が停止してくれた。

 はっとして、令嬢ふたりを見る。やはり怪訝そうに見ていた。

 イザベラは慌てて会話を戻す。

 

「勉強会は昼間を考えている。識者を招くこともあれば、参加者同士で議論することもある。今日は最初なので、顔合わせの意味で小宴の形式にしたが、次からは室内の予定だ。是非参加してくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 二人はほっとしたように息をついた。

 そして、儀礼通りの仕草で挨拶をして去っていく。

 ひと息をついたところで、イザベラはテーブルの上にある紅茶を手に取り、静かに口にする。

 喉を潤しながら、改めて会場内に視線を送る。

 

 目立つのは、装飾としてあちこちに配置された魔道具の試作品だ。

 ベルズの紹介で参加している若い魔道研究家たちの手によるもので、光量を抑えた浮遊灯や、風向きを読む小さな風紋器が、庭の景を邪魔せずに機能している。

 彼らも作品を世に出す機会として、張り切って持ち寄ったのかもしれない。

 確かに珍しいものばかりだ。

 すでに、その若者たちがあちこちで、商会からの参加者たちに囲まれているところを見ると、お互いにうまくいくのではないかと思う。

 そうなってくれればいいと思う。

 

 また、そのひとつで、侍女のデセルが、商会の者と研究家を引き合わせているのも見えた。

 言葉は控えめだが、互いに身を乗り出し、すでに次の約束を交わしている様子が見て取れる。

 しかし、デセルは違う。

 距離が遠い。わずかに、十ベスを超えている。

 

「姫様、次の来客をお呼びしていいですか? ヴァルニエ子爵家の子爵代理のルシアン様がご挨拶をさせて頂きたいとの申し出です。家督は継いでいませんが、実務は握ってます」

 

 後ろで、影のように立っているシャーラが声をかけた。

 イザベラは頭だけを後ろに向ける。

 

「……はあ、それはよいが……。まさか、お前が“スイッチ持ち”じゃないだろうなあ?」

 

 “スイッチ持ち”というのは、侍女の中で本物の操作具を持っている五人のことだ。

 考えてみれば、動き回っている侍女たちの中で、ずっとイザベラの後ろにいるのは、シャーラだけだ。

 シャーラがスイッチ持ちである可能性については考えてなかったのだ。

 

「お試しになりますか?」

 

 シャーラが手のひらに埋まるくらいの楕円球の物体を差し出す。

 これが操作具である。ただし、実際に作動する操作具を持っているのは五人だけであり、ほかの者はダミーの操作具を持っているのだ。

 シャーラが差し出したのが、本物なのか、ダミーなのかは、見た目で判断するのは不可能だ。

 

「……わたしとお前の仲だ……。これが本物であるかどうか教えてくれないのか?」

 

 イザベラは、恨めしく訊ねた。

 これが本物であれば、イザベラが握れば、機能が停止する。もう二度と動かなくなる。

 しかし、問題はダミーの操作具だった場合だ。これを侍女が操作してもなにも起きないが、イザベラが握ると、五個の全部の淫具が動き、イザベラが絶頂するまで停止しないことになっている。

 この満座のなかで醜態を晒す危険を考えれば、迂闊に試すことはできない。

 

「教えません。ロウ様のご命令ですので」

 

 シャーラは平然と応じた。

 イザベラは内心で小さく舌打ちする。

 

「まあいい。子爵代理を呼べ」

 

「かしこまりました」

 

 シャーラが軽く手をあげる。

 近くにいた集団の中から、貴公子然とした若者が出てきた。

 あれが、ヴァルニエ子爵代理のルシアンなのだろう。

 

「おおっ」

 

 そのとき、この小宴で初めて、アナルに埋められている淫具から衝撃が起こった。

 目を閉じて、官能の揺らめく炎に必死に抗う。

 

「王国の希望──イザベラ王女殿下に、ご挨拶を申しあげます」

 

 目の前にやって来たルシアンが優雅に頭をさげる。

 アナルの淫具が止まる。

 どの振動も共通なのだが、振動の時間そのものは短い。おそらく、イザベラが耐えられるぎりぎりを調整しているのだと思う。

 

 脱力したいのを耐えて、イザベラは呼吸を整えて、姿勢を伸ばす。

 表情は変えない。声も乱さない。

 目の前の貴公子に微笑みを深める。

 

「よく来てくれた。歓迎する」

 

 イザベラは応じた。

 ルシアン=ヴァルニエは、端正な所作で一礼している。

 その距離に、イザベラの意識が一瞬だけ強張る。

 翻弄される淫具の刺激により、確かめるまでもなく、イザベラの下着はもう気持ちが悪いほどに濡れていた。

 考えてみれば、淫具は無音だが、漏れ出る愛液は匂うのでないかと思ったのだ。

 

 それはともかく、そろそろ来るか──?

 さっきのアドリーヌたちの会話のときには、ひっきりなしに責められた。

 イザベラは、ルシアンとの会話を続けながら身構える。

 だが、いつまでもなにも起きない。

 それはそれで、緊張がどんどんと高まっていく。

 

「……本日だけでも、幾つかいい商談が結べそうです」

 

 ルシアンは微笑みとともに告げる。

 

「それは、よかった。これからも、こういうことを主宰していこうと思う。そなたの利益のために、是非とも利用して欲しい」

 

 貴族たちに利益を与えろ──。

 アネルザから言われた言葉を思い出して言う。

 すると、ルシアンが小さく笑う。

 

「利用など……。いえ、殿下にこの機会を設けていただいたおかげです。感謝いたします」

 

 ルシアンは静かに笑い続ける。

 なにが面白いのかわからないが、まあ満足しているようであればいいだろう。

 どんなに小さくでもいいから、成果を出せと叱ったアネルザも多少は認めてくれるだろうか。

 

「ああ、ありがとう」

 

 声は乱れない。微笑みも崩れない。

 だが、内側では張り詰めたままの感覚が解けず、呼吸だけが浅い。

 言葉を交わすあいだも、意識はどうしても下腹へ引き寄せられる。

 来ない。

 来ないことが、かえって落ち着かない。

 

「今後も、サロンに顔を出させていただければ」

 

「歓迎する。必要なときに来ればいい。昼間だけになるが、これからは、小離宮は常にサロンとして開放しようと思う。そなたたちのような者が情報交換もできるようにな」

 

「殿下は、我々のような力のない貴族にも目を配っていくださる……。本当に感謝いたします。私ももっと精進をしなければ」

 

 やがて、ルシアンが深く礼を取り下がっていく。

 その背を見送りながら、イザベラは静かに息を吐いた。

 

 そのときだった──。

 

「ひああっ」

 

 思わず、悲鳴のような声をあげて椅子から転げ落ちそうになった。

 両乳首とクリトリスと膣とアナル──五箇所の淫具がルシアンが離れるのを待っていたかのように、一斉に動いたのだ。

 

「姫様、お静かに──」

 

 シャーラの焦ったような声で、はっとして自分の手で口を塞ぐ。

 刺激はすぐに終わったが、同時の刺激はかなりの衝撃だった。

 イザベラは肩で息をしてしまった。

 

 すると、少し離れた横方向にトリアがいて、なにかを内ポケットに隠すような素振りをしながら、人影に隠れるのが見えた。

 

「トリア──お前だ。ちょっと来い──」

 

 イザベラは咄嗟に声をあげた。

 

「お呼びになりましたか?」

 

 すると、トリアが悪戯が見つかったような笑顔を浮かべ、人波を縫って目の前まで来た。

 いつもと変わらない足取り。いつもと変わらない、少しだけ楽しげな表情だ。

 

「お前だ。お前がスイッチ持ちだ」

 

 イザベラは、ためらいなく断じた。

 ロウの遊びで、女同士の遊戯を強要されることは珍しくないが、十人の侍女のなかで、この手の遊びにもっとも積極的に加わるのがトリアだ。

 嫌がるどころか、むしろ進んで役を引き受ける。

 

 そして──先ほどの、しつこくクリトリスだけを狙った短い振動。

 あれは、トリアの癖だ。

 確信していた。

 

「そうですか?」

 

 トリアは、肩をすくめるでもなく、静かに微笑んだ。

 

「ああ、そうだ」

 

「じゃあ、お試しになりますか?」

 

 そう言って、服の内側から、手のひらに収まる楕円球を取り出す。

 操作具だ──。

 

「当たり前だ。貸せ」

 

 イザベラは、ためらわず手を伸ばした。

 

「でも、いいのですか、姫様?」

 

 トリアの声は、低く、落ち着いている。

 

「なにがだ?」

 

「間違っていたら、絶頂するまで止まりませんよ。さっきみたいに、一瞬では終わりませんから。スイッチ押しの指摘失敗は絶頂するまでの連続ですよ」

 

 挑発というより、確認だった。

 それが、なおさら腹立たしい。

 

「……口から災いだな、トリア」

 

 イザベラは、視線を逸らさずに言った。

 

「えっ?」

 

 トリアが一瞬、呆けた表情になる。

 イザベラは微笑んだ。

 

「さっきの一斉の攻撃を知っているということは、少なくとも、お前がひとつは操作していたということだ。違うか」

 

 トリアは、答えない。

 ただ、楽しそうに笑っている。

 それで十分だった。

 

「……お前がスイッチ持ちだ」

 

 正解ならなにも起きずに、この操作具の機能が停止する。間違っていたら、淫具の一斉振動で、ここで絶頂──。

 

 イザベラは、手にした操作具を、右手で力いっぱいに握り絞めた。

 

「おおっ……、んおおっ……」

 

 五箇所──両乳首、クリトリス、膣、アナル。

 全部の淫具が、これまでとは比べものにならない勢いで、一斉に作動した。

 

 悲鳴のような声が喉を突き抜ける。

 イザベラは咄嗟に口を押さえたが、身体は正直だった。椅子の上で大きく仰け反り、そのまま転げ落ちそうになる。

 

「姫様──」

 

 背後から、シャーラが素早く肩を支える。

 同時に、テーブルの上へ半球型の魔道具が置かれた。

 消音具だ──。声を外に漏らさないためのものだと、見ただけでわかる。

 

 その瞬間、トリアが一歩前に出て、イザベラに密着するように立った。

 視線を遮るように、身体を壁にする。

 さらに、反対側からノルエルが現れ、無言のまま並び立つ。

 三人の身体が、自然な仕草でイザベラを囲った。

 

「んんんんっ」

 

 衝きあげるような衝撃に見舞われて、イザベラは椅子の上で身体を仰け反らせている。

 五個の淫具が、これまでとは比べものにならない勢いで一斉に振動を続ける。

 いままでの刺激など、ただの玩弄だったと理解させるほどの、すさまじい容赦のなさだった。

 

「んんぐううっ……」

 

 イザベラは、口を塞いだまま、ぶるぶると身体を痙攣させた。仰け反った体勢のまま、身体が勝手に跳ねて姿勢が崩れる。

 もし、シャーラが肩を押さえていなければ、本当に椅子から転げ落ちていただろう。

 

 そして、快感が突き抜けていった。

 思考が白くなり、意識さえも遠のきかける。

 そして──淫具が、同時に静止した。

 

 イザベラは、完全に力を失った。

 身体を預けるように座り込み、荒い息を繰り返す。

 乱れたドレスのスカートの内側から、つっと、温かい愛液が膝へ向かって垂れ落ちていくのを感じた。

 

「大丈夫ですか、姫様?」

 

 シャーラが低く囁く。

 

「はあ、はあ……だ、大丈夫なわけ……あるか……」

 

 イザベラは懸命に息を整える。

 

「声だけでなく、短い時間ですが、姫様の姿を周囲から隠しました……。見られていません。でも、もう切りますね」

 

 シャーラにより、半球型の魔道具が回収される。

 中庭のざわめきが、何事もなかったかのように戻ってくる。

 どうやら、確かに結界は張られていたようだ。

 急いで周りを観察するが、イザベラの醜態に気がついた者はいなさそうだ。

 それだけはほっとする。

 イザベラは、荒い呼吸のままトリアを睨みつけた。

 

「……はあ……、はあ……。お前が、スイッチ持ちではないと……?」

 

「ええ」

 

 トリアは、あっさりと頷いた。

 

「わたしが持っていたのは、ダミーですよ」

 

 そのときだった。

 ノルエルが、申し訳なさそうに一歩前へ出て、内ポケットから操作具を差し出した。

 

「あっ」

 

 思わず、イザベラが声をあげる。

 それは、シャーラが出したものとも、トリアのものとも違っていた。

 イザベラが事前にロウから教えられていた形状とも異なっていた。

 

 五つの小さなボタン──。

 それぞれが、対応する部位を選べるようになっている。

 

「……お前が、スイッチ持ちだったのか?」

 

 一番大人しく、目立たない侍女。

 あれほどしつこく、執拗に責め立てていたと知り、イザベラは怒りよりも、意外さに言葉を失った。

 

「指示していたのは、わたしですけどね」

 

 横から、トリアが小さく舌を出す。

 

「お前は……」

 

 イザベラは、睨みつける。

 

「とにかく、仕切り直しですよ、姫様」

 

 トリアは、軽い調子で言った。

 

「仕切り直し?」

 

「ええ……。でも、これでスイッチ持ちがひとりだとわかりましたね。でも、ゲームのルールは変わりません」

 

 トリアが、ノルエルが持っていた操作具をひょいと取り上げる。

 

「えっ、どういうことだ? まだやるのか?」

 

「当たり前です。ロウ様のご命令ですから……。これは、誰かに渡してきます」

 

 トリアは、平然としている。

 そして、本物の操作具を内ポケットに隠し直した。

 イザベラは、救いを求めるようにシャーラを見る。

 

「なあ、シャーラ……。だが、ここにはロウはいないぞ」

 

「……ですが、ロウ様のご命令です」

 

 シャーラは、冷たく言い切った。

 トリアとノルエルが、操作具を手に、人波の向こうへ消えていく。

 イザベラは項垂れてしまった。

 

 中庭の小宴は、何事もなかったかのように続いていた。

 杯が交わされ、笑い声が弾み、商談が結ばれていく。サロンそのものは、多分、成功なのだろう。

 

 しかし、まだまだ、ゲームは終わらないのだ。

 イザベラは、主宰席で服装を整え直すとともに、背筋を伸ばし直した。

 表情と呼吸を整え、王女として微笑む。

 内腿から膝に落ちている愛液は、しっかりと脚を閉じることで隠す。

 

 ──終わっていない。

 そう、はっきりと理解しながら……。






【蛇足(その後の第2ラウンド)】

 イザベラは引き続き淫具の「ゲーム」に翻弄される。
 そして、次の悪戯でも、イザベラは怪しい動きをするトリアを見つける。

 トリアが指し示したのは五つのボタン付きの操作具で、イザベラは今度こそ本物だと確信して握る。
 だがそれもダミーだった。
 結果として、イザベラは再び小宴の最中で醜態を晒す。

 真相は、本物とダミーの操作具がすべて入れ替えられていたというもの。
 ゲームは終わらず、イザベラは完全に侍女たちの手のひらの上にいることを思い知らされる。


【蛇足2(第3ラウンド)】

 次の「ゲーム」では、イザベラはトリアは囮役で、本物のスイッチ持ちは別にいると見抜いたつもりで行動する。
 トリアが怪しい動きをしても、あえて相手にせず、近くに本物がいないか細心の注意で探し続ける。

 しかし──。
 結局、小宴の終わりまで誰も特定できない。

 そして最後に判明する。
 今回のスイッチ持ちは、最初からトリア本人だった。

 イザベラはまたしても侍女たちの手のひらの上で転がされていたことを思い知らされる。
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