【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
くたくたに疲れ切った身体へ、丸太が縛りつけられた。
両肩に載せ、腕を横に伸ばして支えるかたちに縄で固定される。木の重みが、骨に直接のしかかってきた。
呼吸を深くしようとすると、胸が持ち上がらず、浅い息になる。
「倒れるんじゃないよ。倒れたら、どうなるかわかっているんだろうねえ」
ターシャの声が、すぐそばで聞こえた。
嘲る調子だけが、いつもどおりだった。
合図が出る。
丸太を支えていた周囲の三人の男が、同時に手を離した。
「あっ……ぐっ」
重心が一気に落ち、視界が揺れる。
脚が反射的に開き、地面を踏み締めた。改造された乗馬用ブーツの底が、土を噛む。膝がわずかに震えたが止める。止めなければならない。
肩口で縄が食い込み、感覚が薄れていく。
腕は横に伸ばされたまま、逃げ場がない。丸太の重さは、支えるというより、載せられているだけだった。
男たちは距離を取り、見ているだけになる。
助ける位置にはいない。
「姿勢が悪いね」
短く指摘が入る。
顎を引き、背を立てる。そう指示さられている。逆らえば、やり直しになる。その恐怖がボニーを動かす。
足裏に力を集め、重さを分散させる。
「さて。お前はなんだい?」
ターシャが一歩、前に出た。
「じ、人便です……」
ボニーは必死に丸太の重みに耐えながら答えた。
「じゃあ、歩け、人便──。部屋の中をぐるぐるとだ。いいと言うまで回り続けるんだ」
ターシャが手にした電撃棒を、棒鞭のように振り抜いた。
横腹を一閃する衝撃が走る。
「うっ」
声は短く、喉で潰れた。
両腕は縄で固定され、大きな丸太を肩と背で受けたまま、身体を前に出すしかない。
歯を噛み締め、脚を動かす。
床を踏むたび、丸太の重みが肩から背中へ、じわりと沈み込んでくる。
三人の男たちは部屋の隅に立ち、その外側を回らせる配置だった。
逃げ道ではない。確認のための円だ。
よろよろと進む。
回転責めと、そのあとに続いた石板責めで、体力はすでに削り取られている。
呼吸は浅く、胸の奥がひりつく。
それでも、脚を止めるわけにはいかない。
股間とアナルには、媚薬を塗られているディルドが、いまも確かな存在感を残していた。
歩くたびに内部でずれ、鈍い刺激が遅れて追いついてくる。
やっと一周が終わる──。
それだけで、全身から油汗が噴き出した。水を浴びたように、背中が濡れる。
肩の関節が軋む。
踵の異様に高いブーツが、わずかな段差でも脚を裏切ろうとする。
それでも、倒れない。
倒れたあとの恐怖は、身体と心が覚えている。
「遅いねえ……。しっかり歩くんだよ、人便」
ターシャの声が飛んだ。
脚に力を入れる。
視界が狭まり、床だけが見える。
「まだ遅いよ──。なにをされたら、もう少し真面目になるんだい?」
周回が終わって戻ってきたボニーに、ターシャの言葉が降りかかる。
「あ、歩いてます……。じ、人便は……歩いております」
とにかく、なにをされるかわからない恐怖で、ボニーは懸命に脚に力を入れた。
「電撃がいいかい? 淫具の振動がいいかい? それとも、浣腸っていうのもあるよ」
列挙されるたび、背筋が冷える。
ボニーはなにも言わず、脚を前に出した。
二周──三周──。
呼吸が乱れ、腕の感覚が薄れていく。
四周目に入ったところで、膝が一瞬、沈んだ。
「お前、まさか、人便のくせに、転ぶんじゃないだろうねえ──」
ターシャの声が低くなる。
「い、いえ……人便は……頑張っております──」
喉が詰まり、言葉が途切れかける。
「だったら、あと三周しな」
即断だった。
「は、はい……」
返事は出た。
身体は、もう限界に近い。
「どうしたんだい? まさか、嫌なんじゃないだろうねえ? 人便はこうやって扱われるのが好きなはずだけどね」
ターシャが横にやってきて歩調を合わせる。
視線が突き刺さる。
「い、いえ……」
「はああ? じゃあ、嫌なのかい──? もしかして、自分が人間だなんて、思ってないだろうねえ」
「そ、そんなことは、ありません。あ、あたしは人便です──」
慌てて声をあげる。
首を振る余裕はない。
「じゃあ、喜んでいるんだね?」
間髪入れずに確認が来る。
「は、はい……喜んでいます……」
言葉が、考えるより先に出た。
「ははは、いいことだ。なら、五周にしてやるよ」
「ひっ、は、はい」
「嬉しいだろう?」
「は、はい……」
一瞬、声が漏れかける。
それしか答えられない。嬉しくないと口にしたら、人便ではないということ……。
そのときには、さらに怖ろしい拷問が待っているのだ。
「嬉しいんだね?」
「は、はい……嬉しいです……」
ボニーは歩みを進めながら言った。
「なら、十周だ」
「えっ?」
「あと十周だ。止まっても、転んでも、全てをやり直しだよ」
ボニーは、なにも考えられなくなった。
考えないほうが、楽だと、身体が知っている。
ただ、脚を前に出す。
丸太を落とさない。
姿勢を崩さない。
人便として、回り続ける。
それだけ。
しかし、十周回り終わっても、ターシャは終わりを告げてはくれなかった。
「遅いね。さらに三周だ──」
「本気でやろうとしてないね。人便になってない証拠だ。さらに二周──」
「さらに、遅くなってるじゃないか。また三周しな」
歩いても歩いても終わることのない追加を告げられる。
「も、もう……許して……か、痒いんです──」
ボニーはついに叫んだ。
ディルドや乳房に塗られていた掻痒剤の影響は、疲労よりも、いまやボニーを追い詰めるようになっていた。
「まだ、人の心が残っているからさ。苦しければ、人の心をなくしてみせな。そうすれば、一切から解放されるよ」
ターシャが酷薄に告げた。
「ああ……」
ボニーは項垂れた。
しかし、じっとしてはいられない。
いまや、股間と胸の痒みは、新たなボニーの苦悶だ。
「仕方ないねえ。じゃあ、条件を変えてやる。水を零さずに一周しな。速度は問わない。でも、一度でも止まればやり直しだ」
ターシャは男たちに命じて、丸太の両端に縄で木桶をぶら下げさせた。
その中に、服の下から取り出した紙を放る。そして、口の中でなにかを呟いた。
「あっ、やっ」
ボニーは思わず声をあげた、
木桶の中にみるみると水が満ちていき、縁の外まで溢れてから水の発生がとまる。
水の重みがさらに両肩にのしかかる。
「条件を満たさないと、永遠に終わらないと思いな。始め──」
朦朧となりながらも、ボニーは脚を前に出す。
思考は動かない。
ただ、ターシャの言葉に身体が従うだけ。
しかし、ブーツの踵が高くて体勢が崩れそうになる。痒みが激しく、身体の震えがとまらない。
「わざわざ、痒みを訴える根性があるんだ。これくらいの水は運べるさ」
ターシャの哄笑が背中から浴びせられる。
そして、最初の男の横を曲がろうとしたときだった。
そこにいる男が、いつの間に準備をしていたのか、棒のついた羽根でボニーの胸をくすぐるように上下に掃いたのだ。
「ひんっ、ああっ」
予期していなかった刺激に、ボニーは全身をのけ反らせて突っ張らせた。
桶の水がばしゃりとまとまって零れる。
「ほらほら、早く進まねえかよ」
今度は股間の繊毛をすくように羽根が動く。
「ひいいっ」
ボニーは悲鳴をあげた。
それでも懸命に歩き進む。
だが、次の角では股間を勃起させている男が長い棒の先に装着した羽根を動かしながら待っている。
ボニーが近づくと、すぐに羽根が身体のあちこちに襲いかかる。
「ああっ、あっ、ああっ」
ボニーは切羽詰まったような声を出しながら、やっとのこと角を曲がり終わる。
しかし、すぐに次の角で男が羽根を持って待っている。
やっとターシャの前に戻ったときには、水桶の水はかなり減ってしまっていた。
「水を零さずに一周する──。それすらもできないのかい。だったら、一生回ってな」
ターシャが哄笑した。
「い、いえ……もう一度……」
ボニーは哀願する。
すると、水がまた満水にされた。
最初の角──次の角──三番目の角──それぞれで。羽根が意地悪く襲いかかり、身体が反射的に動き、桶が揺れる。
水はそのたびに縁から弾け落ちる。
「もう一度だ」
また水が満たされる。
最初の羽根は耐えた。しかし、別の角で、羽根が無防備な腋の下をくすぐってきた。身体をよじってしまい水が零れる。
「また、失格だよ。でも、ちゃんと回ってから戻っておいで」
次の周回──。
脇腹にくすぐる感触が走る。水面が跳ねる。
「まだだ──」
ターシャのところに戻ると、水はまた満ちる。
乳房──股間──アナル──が順番に角で責められる。 そのたびに、縁から水が落ちる。
「零したね。最初から」
終わりは告げられない。
また、歩く──。
零さず──。
止まらず──。
落とさず──。
回り続ける。
それでも、水をこぼしてしまい、水を満たされ、遅疑の周回を歩かされる。
そして、角のたびに、羽根がボニーの裸身を責め立てる。妨害は入る──。
わずかな揺れで、やり直しを告げられる。
「あああっ」
終わりのない玩弄──。
ついに、ボニーは泣き出してしまった。
「止まるんじゃない──」
最初の角を曲がりきったところで、動かなくなったボニーにターシャが怒声を浴びせる。
そして、大股でやってくると、股間に電撃棒が当てられた。
「ひぎゃああ──」
すさまじい衝撃に、ボニーはひっくり返った。
下肢に力を入れたが無理だった。
そのまま、床に崩れ落ちてしまう。
「立つんだよ、人便」
仰向けに床に倒れているボニーの脇腹をターシャが蹴る。
しかし、嗚咽をあげて泣くボニーには、もうなにもできなかった。
上からターシャの冷笑が見下ろした。
「……仕方ないねえ。どうやら、まだ、こいつは人便になりきれてなかったようだ……。漏斗を持ってきて、木桶の水を二杯……いや、三杯飲ませな。水を飲んだら、三人で犯していい……。気絶したら、また回転責めだ」
ターシャが部屋を出ていく気配がした。
すると、男たちが丸太を背負ったまま倒れて身動きできないボニーの口に、大きな漏斗を突っ込み、桶の水を口の中に流し込み始めた。