【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「逃亡したダルカンという男とあのアスカが繋がっている可能性だと?」
一郎は、エリカの言葉に思わず唸った。
三人で遊んだ夢のような夜が明けて朝になっていた。
一郎が目を覚ましたときには、イライジャは朝食の支度ということでもう姿はなく、エリカもすっかりと身支度が終わり、しかも、すでに出立の準備を整え終わっていた。
旅の荷物は、いますぐにでも出発できるように部屋の隅に置いてある。
一郎が目覚めると、夕べは、ほとんど気を失うようにして寝入ってしまったので相談できなかったが、と前置きして、エリカがこのまま里をすぐに出ようと提案してきたのだ。
いま、その理由を聞いて驚いた。
里を逃亡したダルカンと、あのアスカが繋がっている可能性があるというのだ。
「繋がっているといえるかどうかまではわかりません。ただ、エルフ族が各里で作るクリスタル石には、それぞれ独自の波紋があります。アスカ様は、多量の魔力を召喚術のために必要としていたので、常にかなりの量のクリスタル石を手元に置いていました」
「もしかして、あのアスカのところになった魔石がこの里から?」
一郎は訊ねる。
「わたしも、昨日気がついたのです。アスカ様が使っていたクリスタル石の大部分は、あのダルカンが密売していたこのエルフの里産のものと同じ波紋のように思うのです」
「つまりは、あのアスカが、この褐色エルフの里と取引をしていたということか……。しまったな……」
そうであれば、なんらかのかたちで、アスカが、ここに一郎とエリカがいることを知る可能性がある。
いや、そもそも、逃亡したダルカンが、アスカの手先だったとすれば、一郎たちがここにいるのをアスカが知るのは時間の問題だろう。
大部分のダルカンの子飼いの部下は、侮辱形である刺青刑よりは自害を選んだが、ダルカン自身はそれを受け入れて、里から出ている。
その足でアスカ城に戻った事も考えられる。
「アスカ様がここから密売されていたクリスタル石を使っていたからといって、直接の取引があったとも断定できません……。でも、万が一のことを考えて、やはり、すぐにここを引き払って、ハロンドール国入りした方がいいと思うのです」
「賛成だな……。そもそもダルカンは生きている。アスカに報告を入れる可能性がある。とにかく、そうと決まれば、さっさと出よう──。もう、ここに長居する理由があるわけでもないしな」
「はい、ありがとうございます」
エリカが大きく頷いた。
とにかく、あのアスカに捕まるかもしれないと考えただけで、大きな恐怖が走る。
捕まれば、今度こそ死んだ方がましな目に遭わされるだろう。
いや、それとも速攻で抹殺されるかもしれない。
いずれにしても、もともと、ここにやってきたのは、ハロンドールに入国する路銀を確保するためだ。
それはユイナを助けたときに殺した三人から奪った金子と、エリカが里で売り払ってきた連中の装具代で賄えた。
トーラスたちが礼金を払うかどうかは不明だが、それはもういい。諦めよう。
すぐに出立すべきだ。
「ではイライジャに伝えてきます。朝食をとったら出ましょう」
エリカが立ちあがって、一郎を置いて部屋から出ていく。
一郎は寝台に座り直した。
あとは呼びに来るのを待つだけだ。
そのまま、ごろりと横になる。
そのときだった──。
突然に自分の身体の内部に、得体の知れない存在が入り込んできた感覚が襲ってきた。
「な、なんだ?」
驚いて飛び起きかけた。
だが、手足が動かない……。
びっくりして助けを呼ぼうと思った、
直後に喉になにかが詰まるような感触が襲いかかった。
「あっ……がっ……はっ……」
声が塞がれた──。
それだけじゃなく息もできない──。
気管になにか異物のようなものが詰められたような感じだ。
苦しい──。
息が……。
一郎は身体をもがかせようとした。
しかし、やっぱり身体は動かない──。
わけがわからない──。
死ぬ──。
助けて……。
『くくく……。もう無駄だよ。ロウの身体はぼくが乗っ取ったからね……。助けを呼ばないと誓えば、息を止めるのをやめてあげるよ──。もしも、誰かに助けを呼べば、その場で殺すからね……』
声が聞こえた。
正確には聞こえるのではなく、心の中に直接に話しかけられていた。
さっき、身体の中になにかが侵入する感覚がしたので、その存在が一郎の身体を操っているに違いない。
その存在のステータスも感じた。
“ベルルス(真名)/クンニ(契約名)
妖魔(魔妖精(淫魔族))、雌
生命力:500
攻撃力:10
魔道力:1000
経験人数
男999↑、女999↑
淫乱レベル:A
快感値:1000/1000(通常)
状態
契約中”
妖魔? 淫魔族──? 魔妖精──?
なんだ、これ──?
とにかく、一郎は、心の中で約束を守ると念じながら、大きく首を縦に振った。
なにしろ、いまも呼吸が停止させられているのだ。
ここままだと、死んでしまう。
ベルルスというのが何者かさっぱりとわからないが、とんでもないことになったというのはわかる。
それにしても、妖魔とか、淫魔というのはなんなのだろう……?
また、この性行為の経験人数の多さも異常だ──。
そう思っていると、不意に喉に詰まっていたものが消滅して息ができるようになった。
「ぷはあっ」
一郎は盛大に呼吸をした。
すると、一郎の身体の中に巣食っているベルルスとかいう存在が大笑いしたのが聞こえた。
ただ、実際には、一切の声はしていない。
一郎の心の中だけに聞こえているものだ。
『とにかく、ぼくの力はわかった? じゃあ、契約に従って、あんたを懲らしめることにするよ……。好色男に罰を与えてくれと言われているんでね……』
身体に巣食っているベルルスという存在が愉快そうに言った。もっとも、実際に喋っているのではなく、頭の中を通じて喋っているように伝わるのだ。
そして、なにかが起きた。
寝ている一郎の視線に、膨らんできた胸が入ってきた?
そして、股間にも違和感が……。
なんかあるべきものがなくなったような……。
「うわあっ──?」
一郎は得体の知れない不思議な感触に声をあげた。
そのとき、突然に身体の拘束がなくなった。
一郎は慌てて、身体を起こして胸と股間に手を触れた。
胸に乳房がある。
逆に股間にはなにもない。
女?
女の身体?
「うわっ、なんだこりゃあ──」
このベルルスは、一郎の身体を女にしたのか?
あまりのことに、どう反応していいかわからなかった。
すると、ベルルスの我慢できなくなったような笑い声がした。
「俺になにをしたんだ、ベルルス──?」
一郎は絶叫した。
そのとき、そのベルルスの笑い声が消滅し、恐怖に包まれたような悲鳴が部屋にとどろいた。
「うぎゃあああああああ──」
なにかが突然に一郎の前に転がり出た。
白い肌をした女の小人だ。
身体が透けて見える金飾りのある薄い布をまとっていて、髪は見たことがないような澄んだ緑だ。背中には薄い羽根がある。
小人であるということを除いて、まったくの女体そのものだ。
一郎の感覚では、まさに前の世界のファンタジー漫画などに登場する「妖精」だ。
これが一郎の身体に巣くっていたのか?
一郎は唖然として、床にひっくり返っている目の前の「妖精」を見た。
妖精は、透けているのでわかるのだが、乳房もあれば局部もある。
飛び出してきた衝撃で大きく股を曝け出すようにひっくり返ったので、ベルルスという小人の股ぐらが完全に露わになっている。
「な、なんで、ぼくの
ベルルスが恐怖に包まれた顔になっている。
そして、すっと寝台の上から宙に浮びあがって、一郎の顔をまじまじと凝視してきた。
だが、すぐにはっとしたような表情になる。
逃げるつもりだな?
咄嗟に思った。
冗談じゃない──。
女にされたままどこかに行かれてたまるか──。
「待て、どこにも行くな。止まれ──」
一郎は叫んだ。
「は、はいいいっ」
すると、驚いたことに、ベルルスが硬直したように宙で静止したのだ。
身体が恐怖に震えている。
どうしたのだろう?
一郎は、もう一度、目の前のベルルスのステータスを心に浮かべようと念じた。
“ベルルス(真名)/クンニ(契約名)
妖魔(魔妖精(淫魔族))、雌
生命力:500
攻撃力:10
魔道力:1000
経験人数:男999↑、女999↑
淫乱レベル:A
快感値:1000/1000(通常)
状態
契約中
真名による支配(ロウ)”
真名によって支配……?
一瞬、考えたが、ふと思い至る知識があった。
真名とは、妖魔の本名のことであり、これを他人に知られて名を呼ばれると、その支配に陥るという伝承だ。
ファンタジーなどでよくある設定であり、一郎も元の世界で悪魔の真名を知ることで、悪魔を操るという小説かなにかを読んだことがある気がした。
それと同じことが起きたのか……?
「ベルルス──。俺にかけた魔道を解け──」
一郎は言った。
「はい、ご主人様」
すると、乳房の重みがすっと消失した。
股間に手をやる。
確かな感触──。
一郎はほっとした。
そして、いまだに緊張した表情で宙に浮かんでいるベルルスを見た。
「なんだ、お前は? ベルルス、お前は何者だ?」
「も、もうぼくは、支配に陥りました……。で、ですから真名を呼ばないで……。ほかの者にも真名を知られてしまいます……。お、お願いです。真名を誰にもばらさないで……」
ベルルスがぶるぶると震えながら言った。
やはり、真名で呼び掛けられると、その相手の支配に陥ってしまうということのようだ。
そして、それは一回だけでなく、ほかの誰かにも知られてしまうと、その支配にも入ってしまうということだろうか……。
そのうちに、すべての者に真名を知られて、誰にも逆らえない奴隷になってしまう……。
こいつは、それを恐怖しているようだ。
「……じゃあ、お前のことは、クンニと呼べばいいのか?」
一郎は言った。
妖精は首を横に振る。
身体の中にいたときの傍若無人な雰囲気が消え果て、心からの恐怖に陥っているという感じだ。
「ほう、つまり、お前は、俺に真名を呼ばれたから、逆らえなくなったということか?」
「……真名を呼ばれた者は、その者に逆らえない。それが魂の掟なんだ……」
ベルルスは悔しげに唇を噛み、視線を逸らした。細い肩が小さく震えている。
また、ベルルスのステータスには、真名だという「ベルルス」とともに、「クンニ」という別の名も併記されている。一郎が真名を口にしたせいか、表記も変化しているが……。
それにしても、もっとましな呼び名はないのか……?
「クンニは契約名で……。ご主人様の好きなように、新しい名をつけてください……。だ、だけど、あなたは何者……? ど、どうして、ぼくのことを……?」
クンニことベルルスが目を丸くしている。
一郎は、ベルルスの身体を手を伸ばして掴むと、手元に引き寄せた。
ベルルスは抵抗しなかった。
ただ、小さな恐怖の悲鳴をあげただけだ。
そして、身体が真っ赤なもやで包まれた。
これはベルルスが欲情している証拠だ。
よくわからないが、一郎が掴むと急に身悶えを始めた。
「な、なにこれ……? へ、変だよ……。ど、どうして、こんなに……」
手の中のベルルスが当惑したような声をあげた。
「……ベルルスでも、クンニでもいいけど質問に答えろ……。お前は何者だ?」
一郎はベルルスの身体の正面にある赤いもやの部分に沿うように、すっと手をやった。
「ひゃ、ひゃああああっ」
ベルルスは一郎の手の中で激しく身悶えると、大きな声で嬌声を発した。
一郎には、ベルルスの「快感値」が〈1000〉から〈500〉まで一気に下がったのがわかった。
こんな小人妖精でも、ちゃんと快感はあるようだ。
それはともかく、指でひと撫でで、この反応は感じ過ぎじゃないだろうか。
「な、なに……? なんで、こんなに……?」
ベルルスが当惑している。
随分と感じやすい性質のようだが、いきなり性感帯を的確に刺激をされてびっくりしたのかもしれない。
「へえ、ちゃんと感じるのか……。じゃあ、待ってろ」
一郎の心に、この小人の女妖精みたいなベルルスに、急に悪戯心が芽生えた。
よくわからないが、どうせ悪戯好きの妖精かなにかだろう。
この世界では、こんな妖精も珍しい存在ではないのかもしれない。
とにかく、一郎にとんでもないことをしようとしたのは事実だ。
だったら、きっちりと懲らしめてやろう──。
一郎は、手の中にベルルスを掴んだまま、エリカがまとめていた荷のところに行った。
「確か、エリカが獲物を捕らえるときの罠に使っていたものがあったはずだ……」
呟きながら荷の中を探していると、すぐに目的のものが出てきた。
“トリモチ”だ。
粘着力のある溶剤であり、それで罠を仕掛けるときに使うのだ。
一郎は部屋にある小さな卓の上にトリモチを少しだけつけた。そして、ベルルスの手の先と両膝をトリモチで卓に密着させる。
ベルルスは、両腕を頭の上に伸ばして、両脚をM字に開脚した体勢で貼りつけられて動けなくなった。もともと肌を隠さないような透けた衣だったが、それも捲れあがり、局部が完全に露わな状態だ。
「これでいいか」
荷を探っていると、羽ペンを見つけた。
怯えた表情のベルルスの身体をその「羽根」で擦ってやる。
こんな小さな身体だと、羽根は身体の表面を同時に一気になぞることになる。一郎はベルルスの身体に浮かんでいる赤いもやをできるだけ全部一緒に刺激するように羽根で数回掃く。
羽ペンの毛先が、ベルルスの乳首をかすめた。
ふわりと毛先がしなり、手元にわずかな抵抗が返ってくる。羽毛が擦れるたび、ベルルスの白い肌が細かく震え、鳥肌のような粒立ちが浮かぶのが見えた。
「ひゃあっ、ひゃあ、ひゃがあああ──」
ベルルスが白目を剥いて暴れ出した。
しかし、トリモチで台に磔にされているので、実際には多少左右に身悶えしているだけだ。
一郎は続けて羽根を動かしていく。
面白い──。
羽根をひと掻きするたびに、百単位で快感値が低下していく。
考えてみればそうだろう。
脇から乳房、そして腹も横腹も曝け出している股間の全部を一気に刺激されるということだ。ほとんど性感帯を余すことなく同時に刺激をしているのだ。
さすがに堪らないらしい。
ベルルスは怖ろしいほどの速度でさがっていく「快感値」が示すように、白目を剥いてがくがくと震えて追い詰められていく。
一郎はベルルスが呼吸をしようとするのを見計らって、それを邪魔するように連続で刺激をしてやる。
さっきの仕返しだ。
快感で呼吸を邪魔するのだ。
すぐにベルルスがおかしな声を出し始めた。
そう思ったら、〈100〉を切った快感値が一気に“0”になった。
快感値が〈0〉になれば、絶頂の状態だ。この妖精は一郎による羽根の愛撫だけで呆気なく達したようだ。
「はひゃああ──」
そして、ベルルスがM字磔の身体を限界まで反らせて悲鳴をあげた。
しかも、尿のようなものを股間から垂れ流した。
「魔妖精でも小便するんだな」
一郎は笑いながら、続けて羽根を擦り続ける。
この小さな女が魔妖精であるというのは、ステータスを見ることでわかっている。
もっとも、“魔妖精”というのがなんのことかはわからないが……。
しかし、絶頂により〈0〉になった快感値の数字は、すぐに〈200〉以上に回復した。これはすごい。人族ではありえない回復速度だ。
一郎は、今度はベルルスの身体を指で擦った。
数字がまたもやすっと下がった。
妖精には、じわじわと侵食されるときの焦りと、一気に削り取られる瞬間の衝撃の両方が交互に襲いかかっただろう。
さらに、羽根を操る。軽く毛先を返すと、柔らかな抵抗が指に伝わってきた。そして、毛先を軽く返した瞬間、指先に柔らかな抵抗が走る。数値が一気に跳ね落ち、ベルルスの体がびくりと揺れた。
「あぎゃあああ。な、なんでええ、なんでええ──。こ、このぼくがこんなに感じてしまうなんてええっ、なんでえええっ」
妖精の顔が快感に追い詰められながらも恐怖で包まれたのを感じた。
そして、、あっという間に、そこから一気に〈0〉になり、ベルルスがまたもや身体を弓なりにしてがくがくと震える。
羽根よりも、直接の指による愛撫の方が効果あるみたいだ。
一郎は、エリカを相手にしたとき、淫魔術による支配で絶頂感覚を好きなように操れることを思い出した。
この妖精のステータスに、一郎に支配されたとあったから、同じように快感を支配できるだろうか。
試しに、そのまま快感値を〈0〉のまま固定するように念じてみた。
“ベルルス(真名)/クンニ(契約名)
快感値:0(固定)/1000”
「ひいいいいん──な、なんだよ、これええ──ひぎいいい」
ベルルスが白目を剥いて悶絶する。
テーブルには律家にされた小さな身体がものすごい勢いで痙攣する。
それが止まらず、股間から小さな放尿のようなものが飛び出す。
だが、それでも痙攣は止まらず、クグルスは獣の吠え声のようなものをあげ続ける。
いずれにしても、淫魔術による快感の操りは、目の魔縁の妖精も有効みたいだ。
「だらしないなあ。悪戯をしにきたんなら、捕まれば仕返しされることも覚悟のうえだろ?」
一郎は、快感値の固定を解き、一度刺激をやめた。
完全に脱力している妖精のステータスの中の「快感値」がすぐに回復していく。
あっという間に、また〈200/1000〉だ。
感じるのも早いけど、回復も早い。
人間の女なら、こうはいかない。
「はあ、はあ、はあ……お、お許しを……」
やっと口がきける状態になったらしい妖精が息も絶え絶えに哀願する。
「許すって、なにをだ? まだ、なにも白状してないのに?」
一郎は、また指で肌を刺激して快感を与える。
またしても、一気に快感値が低下していき、瞬間絶頂の状態になる。
とにかく、回復状態から瞬時に絶頂感覚になるのだ。
快感どころか、苦悶でしかないだろう。
「ひゃあああっ、なんれも、喋るううう──。はく、りょうするううっ」
妖精が絶叫してトリモチで固定されている身体を限界まで弓なりにする。
今度は、快感値を絶頂寸前で固定してやった。
“ベルルス(真名)/クンニ(契約名)
快感値:1(固定)/1000”
「いぎゃああっ、ひゃあああっ、なにこれ、なにこれ、なにこれ──? ふひゃあああっ」
妖精がM字固定のまま、のたうち回る。
今度は、絶頂寸前のもっとももどかしい状態のまま固定だ。
あまりにも激しい妖精の反応に、今度、エリカにもやってやろうと思った。
びっくりするほどの極端な反応を示す小さな女をいたぶるのが愉しくなってきた。
快感値〈1〉の状態からゆっくりと〈0〉にしていく。普通ならあっという間に通り過ぎるはずの絶頂感覚を長時間味わうのだ。
妖精は白目を剥いて悶絶した。
だが、許さない。
すぐに強引に覚醒して、快感値を〈200〉前後まで回復させ、再び〈1〉で静止する。
そして、じわじわと〈0〉に落とす。
妖精は発狂したように激しく反応した。
同じことをさらに五回繰り返した。──。
すると、妖精のベルルスが口から泡のようなものを噴き出し始めた。
「ひゃがああ──ゆ、ゆるじて──。さ、さがらいまぜん──。ざからいません……。いいいいい……ひがああ──」
ベルルスがまたゆっくりと絶頂の仕草をする。
それでも指をとめない。
すぐに全身が絶頂の仕草をする。
「だったら、質問に答えろ。まだ、なにも白状してないぞ」
一郎は笑いながら刺激を続ける。
「は、はくりょうするうう──。しゃべ、らせてええ──。ひほおおおっ」
息をするのもやっとなのだ。
喋ることなどできるわけがない。
それを知りながら、一郎は妖精への責めを繰り返す。
そして、七回目──。
またもや、尿のようなものを股間から噴き出す。
一郎はやっと指を動かすのをやめた。
快感値の操作も解除する。
「さあ、ベルルス──。さっさと白状しろ。お前はなんでここに来たんだ? 何者なんだ? 言わないと、これを百回繰り返すぞ。それとも、寸止めがいいか。お前を絶頂させるのも、ぎりぎりまで追いつめるのも好きなようにできるんだ」
一郎はまだ痙攣のように身体を震わせているベルルスに指を突きつけて怒鳴った。
「はあ、はあ、はあ……。あ、あなたこそ何者……ですか? ぼ、ぼくをこうも簡単に……。お、おかしい……おかしいよ……。あ、あなた……ご主人様に責められると……、か、感じすぎる……」
ベルルスが激しく喘ぎながら言った。
そう言われると、一郎もそんな気がした。
ベルルスは愛撫とかは関係なく、ただ触っただけで性的絶頂に至る感じだった。
まるで絶頂人形だ。
「……さあなあ……。もしかしたら、俺が淫魔師であることと関係があるかもなあ……。そもそも、お前は淫魔族なのか? 淫魔族ってなんだ?」
一郎はぼつりと呟いた。
もう一度、ステータスに注目すると、ベルルスは魔妖精の淫魔族とある。
「い、淫魔師──? あ、あなた様は淫魔師──? 淫魔族と淫魔師はもともと主従の関係……。だ、だから、ぼくはあなたの能力が見抜けなくて、うっかりと身体に入ってしまって……。そ、それだけじゃなくて、快感もあなたに……。うわあああ──。騙されたああ」
ベルルスが突然に絶叫した。
「騙された?」
一方で一郎は首を傾げた。
騙されたって、なんだ?
「ご、ご主人様にあっという間に支配されてしまうんだ……。く、くそう──。淫魔師のところに、ぼくをいかせるなんて……。あああっ、許さない──許さない──許さないぞおっ」
クンニが吠えるように怒鳴り続ける。
よくわからないが、やっぱり誰かにけしかけられて来たのだけは確かのようだ。
“契約”という単語もステータスにある。
「誰かにそそのかされたんだろう。契約したということだな。誰に頼まれたんだ?」
一郎は、今度は指でそっとベルルスの身体をなぞった。
「ひゃああ、その手で触らないでええ──」
ベルルスが絶叫した。
〈300〉くらいまで戻っていた快感値が瞬時に〈0〉になって、ベルルスが完全に脱力する。
気を失った感じだ。
改めて触って気がついたが、一郎がベルルスに直接触れると、そこが真っ赤なもやになり、ものすごい速度で快感値が低下する。
どうやら、一郎の指が触った場所が凄まじい性感帯に変化するという感じだ。
それなら、本当になんでもない場所でも同じことがあるのだろうか……?
一郎はベルルスの長い髪を指で繰り返し擦ってみた。
「う、うわああ──な、なに──? なに──? なに? あはああ──」
驚いたことに髪を触っただけで、そこが真っ赤なもやに包まれた。
意識を失っていたベルルスが悲鳴をあげて覚醒する。
そして、快感を覚えている証拠に、快感値がどんどんと低下していく。
やはり、この反応は一郎が淫魔師で、ベルルスが淫魔だということに関わりがあるに違いない。
ベルルスは一郎に髪を撫ぜられるだけで、またもや昇天してしまった。
「な、なんれもする……。も、もう……ゆ、ゆるして……」
クグルスが大きな声をあげる。
「淫魔は淫魔師に操られるものなんだな? 心も身体も……」
なんとなくそんな感じだ。
また、いまは愛撫をやめたので、快感値は〈210/1000〉まで回復している。
「そ、そうです……。い、淫魔は仕える淫魔師には逆らえない……。流れている淫気がそうさせる……。あなた様が望むなら……、せ、“正しもべ”になって……仕えます……。だ、だから、もう、もう許して……」
「正しもべ?」
「一時的ではなく、恒久的に隷属するということです。は、外して……。こ、このトリモチ……は、外して……」
ベルルスが荒い息をしながら言った。
もはや、逃げることもないだろう。
一郎は、トリモチを剥がす“取り粉”を出すと、それでベルルスを磔から解放してやった。
ベルルスは、しばらくぐったりとしたままだったが、やがて、透明の羽根が数回羽ばたき、汗まみれの身体を宙に浮かびあがらせた。
すると、不意に一郎の右手首に熱を感じた。
「あちっ、なんだ?」
視線を向ける。すると、薄っすらとだが、小さな紋様が手首に描かれている。
丸い円の中に幾何学的な線と図形、そして、読むことのできない文字らしきものがあった。
「はあ、はあ、はあ……それは魔道陣です……。それが亜域と繋がります……。ぼ、ぼくを呼び出したいときはいつでもそれを擦ってください。そうすると、ご主人様の淫気の力がぼくのいる場所とこの世界の通路を作ります……」
ベルルスが言った。
よくわからないが、いつの間にか、この魔妖精をしもべにしたことになったらしい。
どういうことだろう……?
まあ、後でエリカに訊いてみるか……?
「……それで、誰にけしかけられたんだ?」
一郎は訊ねた。
「それは契約で口封じされていて……。契約はまだ破れないんです……。で、でも、もしもご主人様が契約解除を命じるなら……。淫魔の主従関係は通常の魔道契約に優先しますので……」
「だったら契約なんて解除しろ──。誰に頼まれたのかを言え……」
「うわああっありがとうございますうう──。ぼくは、ご主人様の命令で契約を解除します──。ぼくを陥れたあいつに仕返しに行ってきます」
ベルルスが満面の笑みを浮かべて姿を消失させた。
「うわっ──待て──」
一郎は声をあげたが、すでにベルルスはいなくなってしまっていた。
結局、誰に頼まれたのか、白状させられなかった……。
一郎は、さっき右手首の魔法陣とかいう紋様を擦れば、やってくるとベルルスが言ったことを思いだして、それで呼び戻そうと思った。
しかし、やめた──。
あまりにも危険すぎる……。
しもべにしたとはいえ、魔妖精とあった存在がどういうものかわからない以上、迂闊な事は危険だ。
どう対処すればすべきか、エリカに訊いてからにしよう──。
まあ、でもちょっと憎めない存在だったかも……。面白かったし……。
とりあえず、一郎は出立の準備しているはずのエリカに合流するために部屋を出た。