【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
ベルズは状況を理解できなかった。
路地の入口でエリカたちと言葉を交わした、その次の瞬間には、足元から噴き上がった奇妙な粘性体に全身を呑み込まれていたのだ。
このおかしな術は、間違いなくロウの仕業だ。あの男は、魔道遣いであるために必要な魔道力をまったく持たないくせいに、世間の高位魔道遣い以上の術を簡単に駆使する。
「むぐっ──」
悲鳴をあげる暇もなかった。
身体が宙に浮いたような感覚。
視界は暗闇に閉ざされ、息苦しさはないのに、手足がまるで動かない。
とにかく、魔道を遣って脱出しようとした。
だが、練り上がらない。
嫌な予感が胸をよぎる。
まただ。
またロウの淫魔術で魔力を封印されてしまっていた。
ベルズは奥歯を噛み締めた。
どれほどの時間が経ったのかわからない。数秒だったのかもしれないし、もっと長かったのかもしれない。
身体を包んでいた粘性体が消滅したのだ。
視界に月明かりが戻る。
夜風が肌を撫でた。
「ひゃっ……」
思わず小さな声が漏れる。
ベルズは自分の身体を見下ろした。
なにも着ていない。
外套も──巫女服も──靴も──下着さえも──。
一糸まとわぬ全裸だった。
慌てて周囲を見る。
さっきの路地──。
ベルズはそこで素っ裸にされてしまっていた。
「なっ──」
反射的に胸元を隠そうとした。
しかし、腕が動かない。
そこでようやく気づいた。
両手首が背中側で粘性体が絡みついている。
それは細い縄のように伸び、背中側で両手をまとめあげていた。
「な、なんだ、これは?」
力を込めても外れない。
むしろ動くたびに締まる。
「ああ、ロウ殿っ──。これはそなたの仕業なのか?」
ベルズは顔を上げた。
目の前には、ロウが立っている。
少し離れた地面には、さっきのシャングリアが胡座をかいて、ロウの上着を裸身にかけていた。
そして、月明かりの下──。
裸のままだと改めて悟る……。
ベルズの頬は一気に熱を帯びる。
「そ、そなたはっ……な、なにをしたのだ──? 服はどうなったのだ」
怒鳴ろうとしたが、声が震える。
路地の冷たい外気が肌を撫でるたび、自分が完全に無防備な姿で立たされていることを嫌でも意識させられた。
逃げようにも逃げられない。
拘束されている。魔道も封じられている。
ベルズは唇を噛み締めた。
「もしかして、ベルズは、ロウの収納術には初めて接するのか。多分、身につけているものは、ロウの術で収納されたのだと思うぞ」
シャングリアが暢気そうに声を掛けた。
さっき路地を垣間見たとき、シャングリアはまさにここでロウに犯されていた感じだった。
ロウの上着で隠れていない部分のシャングリアの肌は、汗ばんでいて、まだ赤く火照っており、彼女は荒い息を繰り返している。
さらに路地を見る。両端にエリカとコゼが見張りをしているのが見えるが、誰もが入ってこれるような通りと通りを繋ぐ小径だ。
いつ、誰がやってくるかもわからない。
「まあ、そういうことだな。ベルズがいい子にしてれば、服は返してあげるよ。逆らえば裸のままだ。これはもう、ここで俺にレイプされるしかないだろう」
ロウの口元がゆっくりと歪む。
「冗談を言うな。身につけているものを収納する術などない」
「なにを言っている。ロウは生きている人間でさえ、亜空間の収納してしまうんだぞ。服だけを剥がして収納するなんて、いつも自由自在にやってる」
シャングリアがあっけらかんと応じる。
ベルズは唖然となった。
「……そういうことだ。観念して、俺にレイプされろ」
ロウがベルズの身体を掴み、向き合うように立たせる。背中が壁へ押しつけられた。
だが、石壁の硬い感触がない。
代わりに柔らかなものが背中を支えている。
ロウが手を離した。
「くっ」
ベルズは反射的に身を捩る。
逃げようとした。
しかし、身体が動かない。
背中が壁から離れないのだ。
「あっ、また……」
そこで気づく。
また粘性体だ。
背中一面に感じるのは、壁に張り付いた粘性体だろう。
ベルズはこれでも、スクルズとともに、この王都で五本の指に入る高位魔道遣いだ。
そのベルズが術の行使に発生する魔道の揺れを感知できない。
「ベルズはあまり俺の屋敷に来ないからな。色々な術が使えるようになったんだぞ」
ロウが笑う。
「色々な術?」
「ああ、例えばこんなことだ」
ロウが右手を持ち上げる。
ベルズの眼の前で五本の指先が半透明の粘性体に覆われた。
しかも瞬間、その粘性体が細かく震え始めた。
ぶうんと、虫の羽音にも似た微かな振動音が響く。
ベルズは思わず眼を見開いた。
「な、な、なんだ、その術は?」
見たことがない。
少なくとも王都の三大神殿にも、ギルドにも存在しない魔道だ。
「本当に変な術ばかり増えているぞ」
横からシャングリアが呆れたように言った。
「俺も自分でよくわからないんだよな。気づいたらできるようになっていた」
「そんな馬鹿な話があるものか。なんだ、気がついたらって……」
ベルズは呆れ返った。
「なんか、淫靡なことを想像すると、できてしまうんだよ。そんなのあるのかなあ?」
「あるものか──。魔道術とはそんなに簡単なものじゃない」
「そうなのか」
ロウがベルズの片脚を掴んだ。
「ひゃっ」
身体が跳ねる。さっきの指先で振動している粘性体だ。それが内腿を掴んだので、振動の刺激が腿から下腹部にかけて鋭く伝わってきたのだ。
そのまま脚を持ち上げられ、膝を曲げた状態で壁へ押しつけられた。
「ああ、ロ、ロウ殿っ──」
持ち上げられた片脚は固定されていた。
「レイプっぽく、なってきただろう?」
「ば、馬鹿を言うな。誰か来たらどうするのだ。ここは王都の真ん中だぞ」
「ちゃんとエリカとコゼが見張っている。安心しろ」
「できるかあ──」
「まあまあ……」
ロウがさっきの振動する指で、片脚上げで開脚している内腿から股間にかけてを、優しい手管で撫でてきた。
「くうっ、んくううっ」
歯を喰いしばる。
寝室でもなければ、屋内ですらない。
全くの野外なのだ。
遠くの路地の向こうから、酔客の笑い声が聞こえた気がした。
ベルズは思わず肩を震わせる。
それにしても、相変わらず、ロウの手管は神がかりだ。
的確にベルズの弱いところを刺激してくる。
誰かがこの路地へ曲がって来れば終わりだ。
そう思うほど身体は言うことを聞かなくなる。
振動する指先の翻弄もあり、ベルズは身体を走る快感の強さに、思わず激しく反応しそうになった。
「レイプされているわりには、びっしょりだね」
ロウがその指で股間を這い回らせる。
右手で股間に触れ、さらに左手で乳房をねっとりと揉みあげてきた。
その左手もぶるぶると振動をしている。
触られるところは、全部気持ちがいい──。
ベルズは、敏感に反応せざるを得なかった。
視界の端には見張りを続けるエリカの姿もある。
「あ、ああっ、やめて──やめてください──あああっ」
頭が真っ白になり、気がつくと口からは普段では使わないような女っぽい口調が迸っていた。
昔からの癖で、追い詰められるとどうしても、そうなる。
自分では制御できない。
「やめてか……。じゃあ、これはどうだ?」
ロウが指を深く股間に挿入だけでなく、お尻の穴にも別の指を入れてきた。
その二本の指が前後の穴のあいだの肉壁を通じて、激しく振動をぶつけてくる。
「ひあああっ、いやああっ」
ベルズは粘性体で密着している背中を弓なりにして、がくがくと身体を震わせて、膝を落としかける。
しかし、粘性体がそれを阻止する。
「手は二本しかないけど、粘性体を駆使すれば、全部を刺激できるよ。いくらでも快感を極めるといい」
いまは触れられていなかった乳房が粘性体に包まれたのがわかった。
ロウの手と同じ感触で揉みしだいてきたかと思うと、乳首だけはぶるぶると振動を加えられる。
前後の指は震えたまま律動し、さらに陰核も粘性体で包まれて柔らかい毛先でくすぐるような刺激を送りこんできた。
「はああ、はううううっ」
全身を襲ううねるような喜悦に、ベルズは激しく悶える。
せめて、声を押し殺そうとするが、それも難しかった。
路地の入口に、一瞬だけ視線を向ける。
もし誰かが現れたら──。
そう考えた瞬間、背筋が冷えた。
「ベルズ──あんた、もうちょっと声を抑えて──」
そのとき、離れて見張りをしていたはずのエリカが、焦ったように声を掛けてきた。
いつの間にか、そばまでやって来ていたようだ。
「そ、そんなこと……あ、ああっ、い、い、言われても……いぐううっ──」
ベルズはついに絶頂してしまった。
すると、ロウが指を抜き、もう一度、手でベルズの片脚を抱え直した。
「もう少し苛めてやりたいけど、さすがにこれ以上は危ない。そろそろレイプも終わりにしてやろう」
ベルズに密着したロウの身体から一瞬にして、身につけているものが消滅する。
本当に身体の接しているものを、そのまま収納できるのだと、改めて驚く。
だが、それ以上、考えることはできなかった。
ロウの怒張が深々と股間を貫いてきたのだ。
「はううっ──ああっ、はあっ」
すぐに激しく律動が始まる。
声が漏れる。
我慢などできない──。
気持ちのいい場所を荒々しく擦られる──。
燃えあがった肌が外気の冷たさに触れることが、野外であることを、心のどこかに思い起こさせる。しかも、第二神殿のすぐ近く──。
見つかれば終わりだとはわかっているが、自分を制御できない。
「ロ、ロウ殿……そ、そなたみたいな……き、鬼畜は──。いない──。あっ、あああっ──」
全身を絶頂の衝撃が襲う。
ベルズは悲鳴のような声をあげ、込みあがる快感の奔流に呑まれるまま、全身をがくがくと震わせた。
「……鬼畜が嫌いか?」
ロウが一定の速度のまま律動を続けながら笑ったのが聞こえた。
その余裕が口惜しい……。
だが、それがいい……。
ベルズを完全に圧倒し、支配してくれる鬼畜──。
それが嫌いなわけがない……。
「あ、ああっ、す、好きです。そなたの鬼畜は大好き……。ああっ、もっと、いぐうっ」
ベルズは力一杯に叫ぶとともに、圧倒的な連続の快感に我を忘れた。
「うわっ、こ、声がでかい……」
「ちょ、ちょっと、ベルズ──」
さっきのエリカだけでなく、コゼの狼狽えた声まで、どこか遠くで聞こえた気がした。
しかし、もう頭は真っ白だ。
なにも考えられない……。
そのベルズを、ロウがしっかりと抱き締めてくれている。
白く染まっていく意識の中で、その肌の温もりだけは辛うじて感じていた。