【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
251 奥座敷の来客
「ああ、ゆ、許して、許してください、このようなこと、いやあっ」
「無能」が四肢を鎖で四隅に繋がれている寝台の上で身をよじっている。
アンはそれを見て、思わず笑みを浮かべた。
本当に見苦しい。
この女は、いつもそうだ。
普段は従順なふりをしているくせに、自分の予想を超えたことをされると、すぐに取り乱す。
無能の両目は黒い布で覆われていた。
一応は顔を隠すためだということにしているが、実際には、その方がこの無能が怯えるからだ。
目隠しをして、誰に犯されるのかもわからずに、身体を穢される。
それを言い渡しており、この無能はそれで激しく動揺をしているのだ。
また、無能に両手は寝台の頭方向に大きく腕を伸ばすように隅に向かって鎖で繋げており、両脚は大きく股を拡げて金属棒の両端に足首を繋いでいる。
この男の注文だ。
無能には、いま誰がこの部屋にいるのかもわからない。
誰に見られているのかも、誰に触れられようとしているのかも知らない。
その不安そうな様子を見るのが面白いのだ。
主人であるキシダインはいま王都にいない。
数日前からタリオ公国方面へ向かっている。
だから、本物のアンである「無能」の代わりに、客を接待するのは、アンの外見と声だけでなく記憶まで魔道で引き継いでいる自分の役割だ。
そもそも、無能の調教は、キシダインにより、自分が任されている。
だから、この奥の院でなにをするかは、いまは自分の自由なのだ。
「夫」であるキシダインが、最近では苛立つことが増えたのをアンは知っていた。
原因はイザベラだ。
これまで政治には無関心だった第三王女が、離宮で開き始めたサロンが予想以上の成功を収めている。
性別も身分も問わずに若者を集め、新しい商売や事業を生み出す場になっていた。
最初は誰も相手にしていなかった。
だが、いまでは違う。
かつてキシダイン派として栄えていた王都の大商家が突然に次々と事業に失敗する一方で、サロンに出入りしていた中小商家は勢いを増し続けている。
離宮サロンの話題になるたびに、キシダインの機嫌は悪くなった。
だからこそ、今回わざわざタリオへ向かったのだろう。
旧友であるグラム兄弟を迎えるためでもあるが、それだけではない。
イザベラとの王太子争いを有利に進めるため、タリオ大公アーサーの側近たちと会い、後押しを取りつける目的もあるはずだった。
そんな時期に王都へやって来たのが、ディセル侯爵である。
南部領主貴族の重鎮──。
そして商業ギルド閥の有力者──。
本来なら自由流通を掲げるキシダインとは相容れない立場の男だ。
だが、いまのキシダインにとっては違う。
どんな形でも味方を増やしたい。
そう考える程度には追い詰められているのだろうと、アンは見ていた。
視線を向けると、ディセル侯爵は上機嫌な様子で、テーブルで葡萄酒のグラスを傾けながら、寝台を眺めている。
どうやら、この余興は気に入ったらしい。
アンは小さく笑みを浮かべた。
とにかく、このディセル侯に機嫌よく酒を飲ませて、話を聞いていると、六十を超えているというのに、かなり好色な男だとわかった。
しかも他人の女を奪うのが趣味らしく、いまの若妻もかつて愛し合う恋人がいるのを強引に奪って妻にし、それから放置状態だという。
ならば、うってつけの相手がいると思った。
王都で美貌を謳われた第一王女と、「そっくり」の面影を持つ白痴女がいると触れ込み、この地下層に連れてきたのである。
もちろん、偽物ではなく、目の前の女こそが本物だとは薄々に気がついているだろう。
しかし、アンはそれを言わないし、ディセル侯も口にしない。
あくまでも、自分をアン王女だと思い込んでいる白痴女ということだ。
そう考えると、少しだけ可笑しかった。
「お願いです、アン様。わたしを知らない人に抱かせるなど、酷いことはしないで──」
無能が怯えた声を漏らした。
アンはそれを聞きながら、ゆっくりと唇を歪めた。
「黙りなさい。なんの役にも立たない無能が、キシダイン様のお役に立てるのよ。もっと喜んだらどうなの」
「左様……。折角の馳走じゃ。わしが責任を持って、南部をハロルド公支持で固めよう」
老人の笑い声が部屋に響く。
その声を聞いた瞬間、無能の身体がびくりと震えた。
「そ、その声……。南部?」
無能が呆然と呟く。
「も、もしかして……ディセル侯爵……ですか……?」
アンは思わず口元を歪めた。
へえ、気づいたか……。さすがは、元王族だ。
「ほっ、ほっ、ほっ。わしの声を覚えておりましたか」
ディセル侯が愉快そうに笑う。
目隠しをしている無能の顔から血の気が引いていく。
「そ、そんな……」
「ならば、誰かわからぬとは酷いではないですかな」
ディセル侯は葡萄酒をひと口飲んだ。
「お、お待ちください……。だったら、わたしは……」
「わしは昔から、アン王女様によく似た娘には興味がありましてな。可憐な少女時代のアン王女様にも、何度かお目にかかりました」
無能の言葉をディセル侯が途中で遮る。
無能の肩が大きく震えた。
すると、ディセル侯が笑いながら立ちあがった。ゆっくりと、寝台の無能に歩み寄っていく。
気配に気がついたのだろう。
無能が目に見えて怯える仕草になる。
「いやっ、来ないで──。来ないでください──」
鎖がじゃらじゃらと鳴った。
「しかし、こうして見ると驚くほどよく似ておる」
ディセル侯が寝台の横に立つ。
アンは入れ替わるように、寝台の横から、たったいままでディセル侯が座っていた椅子に腰かけた。
一方で、ディセル侯は、無能にまとわせている薄物の白い寝衣の紐を解く。特殊な作りになっていて、一本の紐を解くだけで、袖も割れて引き剥ぐことができるようになっている。
ディセル侯が無能から身につけているものを奪い去って、床に放り投げた。
無能の裸があらわになり悲鳴をあげる。
「まるで、大切に育てられた深層の王女の肌のようじゃのう。若い者のように性急にはなれんが、その分、じっくりと味わさせてもらおうか」
ディセル侯は寝台の頭側にある操作具に触れ、天井から鎖をおろす。
無能の脚のあいだにある金属棒の中心にある留め具に鎖の先端を繋ぎ、鎖を再び引きあげていく。
「ああ、なにをなさるのですか──。おやめください──」
無能の両足首を両端に繋いでいる金属棒がゆっくりと引きあがっていく。
自分がどんなに浅ましい格好にされるのかがわかったのだろう。
恐怖を顔に浮かべて、狼狽えだす。
しかし、いまの無能にはどうすることもできない。
あっという間に、足首を縛られて天井に向かって割り開いた格好になった。
アンは、ちょうど無能の寝台の脚方向にいるので、女性器どころか尻穴まで剥き出しにされてしまったのがよく見えた。
女としてこれほどに恥辱的な格好もないだろう。
「ああっ」
無能が真っ赤になった顔を左右に振って悲鳴をあげる。
「ほれ、こうすると尻穴までよく見える。たっぷりとかわいがってやろう、白痴殿」
ディセル卿が寝台にあがって、無能の脚の前に胡座をかいた。
無能がますます泣き叫んだ。
「泣くのは早いのう。まだ、なにもしておらんというのに」
ディセル卿が笑う。
寝台の横には、ディセル卿の注文で様々な責め具を台に載せて準備をしている。
ディセル卿が手に取ったのは、一本の絵筆だ。
それで無能の尻穴の表面をくすぐり始める。
「ひいいっ、いやっ」
無能が弾かれたように、うなじを大きくのけ反らせて昂ぶった声を張り上げた。
「ほら、もっと逃げんか、白痴殿。さもないと、いくらでも嬲られるぞ」
ディセル卿が筆を無能の尻に這わせながら笑う。
無能は自由にならない両脚を懸命に振って暴れる。
この女は、自分をアン王女と思い込んでいる白痴女──。
いまは、それが「真実」だ。
少なくとも、無能を嬲っているディセル侯にとってはそうだし、アンも同じだった。
無能は目隠しをされたまま、敏感になった身体を激しくよじらせている。
必死に腰を引き、逃れようともがいているが、その姿さえも滑稽だった。
その様子を眺めながら、アンはふと思いつく。
キシダインがタリオから戻るまでは、まだ十日ほどあるはずだ。
ならば、そのあいだ、この白痴女をもっと有効に使えないだろうか。
ディセル侯の機嫌は上々だ。
今夜の余興も気に入っているらしい。
だったら、ほかの客人にも、同じようにあてがうのはどうだろう。
この女を見せれば、喜ぶ者は少なくないはずだ。
それに──。
無能の心を砕くにも都合がいい。
かつて王女だった女が、白痴の痴女として、娼婦のように毎日別の男に犯されるのだ。
その屈辱が積み重なれば、この女もようやく自分の立場を理解するかもしれない。
アンは小さく唇を歪めた。
悪くない考えじゃないか?
むしろ、いままで思いつかなかったのが不思議なくらいだった。
そのとき、寝台の無能がけたたましい声をあげた。
ディセル侯がいつの間にか操る筆を二本にして、無能の尻穴と陰核を同時にくすぐっている。
無能は、拘束されている身体を限界まで弓なりにして、ぶるぶると身体を痙攣させ始めた。