【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「そんなこと、言ってないだろ」
一郎が言い返しても、酔っ払いふたりの耳には届いていない。
抱きついたままのミランダが、さっき一郎から奪った酒瓶の栓を素早く抜くと、目の前の空いているグラスに酒を注ぐ。
「ははははは──。まさか、本当に来てくれるなんて思わなかったよ。ほら、飲みなさいよ──」
なみなみと酒を注いだグラスが、一郎の目の前へ突きつけられる。
むっとするほど濃い酒の匂いが鼻をついた。
「おっと、わたしの酒が先だよ。ロウ、わたしの酒から飲んでくれるんだろうねえ」
すると、アネルザも別のグラスに火酒を注いで一郎の前に突きつけてきた。
「ああ? あたしの酒だよ──。ロウ、お前が手をつけたのはあたしが先なんだ。まさか、順番を間違えやしないだろうねえ」
ミランダまで一郎の肩へ身体を預けてきた。
「こんなものは、後先なんて関係あるものかい。王妃のわたしなら、なんでも貢いでやるよ。なにが欲しい? 金かい? 王宮の秘法かい? それとも王位かい?」
アネルザも大笑いしながら、乳房を一郎の腕に押しつけてくる。
「お前ら、いい加減にしてくれよ」
こいつら、本当に飲み過ぎだ──。
一郎は閉口した。
どう見ても、完全に泥酔している。
ふたりとも裸の上半身を遠慮なく押しつけてくる。
左右から身体を寄せられ、剥き出しの乳房が腕へ柔らかく押し当てられる。酒に火照った肌の熱と、濃厚な酒の匂いが入り混じって、一郎は思わず身を強張らせた。
このまま挟まれていたら、無理矢理に酒を飲まされそうだ。一郎は下戸ではないが、強くもない。
一郎は腰を浮かせる。
「こわっ、どこに行くんだよ──」
アネルザが素早く腰へ腕を回し、ぐいっと引き戻した。
見た目からは想像もできない怪力だった。
「ロウ、逃げようとしたのかい?」
ミランダも反対側から腰を掴んできた。
すると、またもや、アネルザの目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ始めた。
「やっぱり、あたしたちみたいな年増は、用無しなんだろ──。そりゃあ、エリカたちみたいに、美女じゃないけど」
ミランダも一郎の腕へしがみつき、涙ぐみながら頷く。
「……くそうっ。そうなのかい……酷いじゃないかい」
ふたりとも、さっきまで笑っていたとは思えないほど本気で泣いていた。
酔いが回りすぎて、感情の箍まで外れてしまっているのだろう。
一郎は大きく息を吐いた。
「聞いておくれよ、ミランダ。この男がどんなにひとでなしだったのか。痒み責めでもがき苦しませた挙げ句に、淫紋だけ刻んで放置責めだ」
「本当かい、アネルザ──? あたしは頭に袋を被せられて犯されたよ。ドワフ族のあたしがどんなに惨めな気持ちになったかわかるかい」
「わたしは逆さに吊るされたさ……。スカートが捲くれるのを必死に防ぐあたしを笑って見物したんだ。上から鼻の穴に水も注がれた。こいつはわたしを苦しめるんだ。こうやってね」
アネルザが手を伸ばして、ズボンの上から一郎の股間を掴んでゆさゆさと揺すぶってくる。
「うわっ、ちょっとやめろよ」
一郎は思わず声をあげた。
しかし、思っていた以上にアネルザの力は強い。
しかも、前からはアネルザ、後ろからはミランダが身体を押さえ込むように挟んでいるため、一郎は逃げ出すこともできない。
「やめるもんかよ、この女たらしめ──。お前と会ってから、このアネルザともあろう者が、四六時中、お前のことばかり考えている。どうしてくれる。責任をとれ、この鬼畜男」
「待ちなよ、アネルザ。まずは裸にするんだ。こいつに、いつもあたしたちが受けている仕打ちと同じことを味わわせてやろうじゃないかい」
ミランダがけらけらと笑う。
次の瞬間、一郎の上衣を掴むと、一気に左右へ引き裂き、胸元をあらわにした。
「痛え──」
一郎は思わず声をあげた。
ミランダが怪力で服ごと両腕を後ろへ引っ張ったため、肩へ強い痛みが走ったのだ。
「おお、こうやって改めて、お前の裸を眺めると、なんだかぞくぞくするよ……」
アネルザは一郎のすぐ目の前まで顔を寄せ、頬を寄せ合うようにしながら、うっとりとした表情を浮かべた。
酔いきった瞳は熱っぽく潤み、普段の威厳はすっかり消え失せていた。
さらに、一郎の胸板にアネルザの豊満な乳房をこれでもかと擦り付けてくる。
「アネルザ、狡いよ。半分はあたしのものさ」
ミランダが一郎の前へ回り込み、アネルザとは反対側から抱きついてきた。
その勢いのまま、一郎は床へ倒される。
気がつけば、二人の女に挟まれ、押さえ込まれる格好になっていた。
まったく、こいつらは……。
一郎は、すっかり酔い潰れた二人を見て呆れるしかなかった。どうしてこんな騒ぎになっているのか。
「ああ、ロウ殿。わたしはお前に夢中だ。だから、いつまでも、お前の女のひとりでいさせておくれ。ルードルフを脅して爵位でも領地でも、なんでも手に入れてやるから」
アネルザが頬と乳房を一郎に擦りつけながら、甘えた声を漏らす。
爵位なんか、いるか……。
そう言おうとした、その瞬間だった。
ミランダの顔が不意に重なってきた。
一郎の口が塞がれ、口の中へ液体が流れ込んできた。
酒だ──。
ミランダが酒を口移しで飲ませてきたのである。
一郎は思わず咳き込んでしまった。
「とにかく、ロウ。あんたも飲んでおくれよ。たまには、あたしと、とことん付き合ってくれてもいいだろう」
唇を離したミランダが、けらけらと笑う。
「おっ、だったら、わたしの酒も受けてくれ、ロウ殿。こっちは、わたしからの愛の酒だ」
アネルザも身体を起こし、酒を口に含むと一郎へ飲ませてきた。
仕方なく、それも受け入れる。
あまり酒を重ねたくはなかったが、ここで断れば二人が暴れ出しかねない。
それにしても、強い酒だ。
たった二回の口移しで、一郎はかっと全身が熱くなるのを感じた。
「はははは。ロウ、あんた酒には弱いんだね。この程度で真っ赤になるなんて。希代の鬼畜男のくせに情けないじゃないかい」
ミランダが一郎へ半身を重ねたまま愉快そうに笑う。
「……あまり酒を飲む機会がなくてね」
とりあえず、それだけ答える。
「このあたしやアネルザはもちろん、三巫女に姫様、シャーラ、
ミランダは笑い続ける。
なにがそこまでおかしいのか……。
もっとも、一郎も、酔っ払い相手には下手に逆らわない方がいいというくらいの分別はある。
「それにしても、ミランダ。あんたは面白い女だ。冒険者ギルドは縁がなかったけど、もっと早く付き合えばよかったよ。なにより酒の飲みっぷりが気に入った」
アネルザは満足そうに笑った。
「あたしも驚いたよ。まさか、この国の王妃がドワフ族のあたしに、酒でついてこれるとはね」
「ついてなんてきてないよ。あんたが三杯飲む間に、一杯飲むだけさ。とにかく、イザベラもあんたも、わたしの仲間だよ。絶対に誰にも手を出させはしない。安心しておくれ」
「ほう、だったら、この前、政治駆け引きでギルドに引き受けたキシダインの息はかかった職員をそろそろ追いだしていいかい。飼い殺しにはしているけど、目障りでね」
「ああ、そんなのがあったねえ。追い出しな。もうキシダインに勢いはない。イザベラがいい仕事をしてくれた。王宮の戦力図は一気に逆転だ」
「じゃあ、追い出すよ。あれらの起こした不正業務の証拠はたっぷりとある。ギルドの法で処理してやる」
ミランダがまた腹を抱えて笑いだす。
いずれにせよ、二人とも一郎へ寄り添ったまま離れようとしない。
一郎は抵抗を諦め、小さく息を吐いた。
少なくとも、この様子なら二人はすっかり打ち解けたらしい。
「……そういえば、シャーラとも仲良くなったのか、アネルザ? さっきはおかしなことしてたな」
一郎は、入ってきたときに、アネルザが裸のシャーラへ馬乗りになっていた光景を思い出して、訊ねた。
「シャーラかい? もうわかったから帰らせてくれって、何度も言っていたけど……。そういえば、いなくなったねえ。まさか、本当に帰ったのかい?」
アネルザが怪訝そうに首を傾げた。
その横で、またもやミランダが腹を抱えて笑い出す。
ミランダがここまで笑い上戸だったとは、一郎も知らなかった。
さっきから笑ってばかりだ。
「ロウと入れ替わりに出て行ったじゃないか。気づかなかったのかい、アネルザ」
「気づかなかった……。くそっ。このわたしがお詫びの印に、シャーラに犯されてやるって決めてたのに……。あいつ、逃げたんだね。やっぱり意気地なしだ。だからキシダインにつけ込まれるんだ」
アネルザが本気で悔しそうに唇を尖らせた。
犯されてやるつもりだった……?
いや、どう見ても、シャーラへ馬乗りになって襲いかかっていたのはアネルザだった。
この様子では、さっきまで二人で何をやっていたのか、本人もろくに覚えていないのだろう。
それはともかく、シャーラとマアは逃げたが、ベルズはまだ部屋の外で様子を窺っているはずだ。
スクルズも三人娘もいる。
それなのに、誰ひとり助けに入ってくる気配がない。
畜生……。
あいつら、完全に俺を見捨てやがったな……。
「……シャーラはよくやっているよ。度重なるキシダインやあんたの刺客から、イザベラを守り続けた。あのエルフ族の魔道戦士は大したものだよ」
笑っていたミランダが、不意に真顔へ戻った。
すると、アネルザの表情も一変する。
「……言っておくけど、わたしはイザベラの命を奪おうなんて思ったことはないよ。そんな怖ろしいこと、考えもしなかった」
「そう……なのかい? 姫様が暗殺をされかけたのは、一度や二度じゃないよ。そもそも、ロウを引き入れたのは、こいつのおかしな術なら、毒を飲んでも跳ね返せるからだ」
「知っていたら、キシダインを叱りつけた……。もちろん、イザベラへ何度も意地悪をしたのは認める。でも、殺そうなんて、とんでもない。それだけは信じておくれよ」
アネルザの目から、また大粒の涙がこぼれ落ちた。
本当に忙しい女だ。
「信じるよ。信じるともさ、アネルザ。あんたがそんなことをするはずがないんだ」
ミランダまで目を潤ませ、一郎越しにアネルザの肩を抱く。
なんなんだよ、こいつら──。
二人に挟まれたまま、一郎は大きく嘆息した。
「ただ、わたしはアンをなんとか女王か王妃にしてやりたかったのさ……。あの娘は嫡子なんだ。本来なら王太女になるはずだった。母として、アンのことを案じていただけなんだよ、ミランダ」
アネルザはぼろぼろと涙をこぼし続けた。
今度は泣き上戸か──。
「……信じているよ、アネルザ。あたしたちはもう親友さ。そう誓ったろう」
「そうだ──。わたしらは親友だ。そして、同じ男に征服された女だ。これからも仲良くしようじゃないかい」
アネルザが横で満面の笑みを浮かべる。
泣いたと思えば笑い出す。本当に忙しい女たちだ。
「じゃあ、仲良くなってよかったじゃないか。ところで、そろそろ退いてくれないか」
一郎は苦笑しながら言った。
どうでもいいことだが、二人はずっと一郎へ添い寝するように左右から押さえつけたままなのだ。
「なんだって、ロウ──。あたしたちの愛は受けられないっていうのかい? やっぱり若くない女は嫌なんだろう」
ミランダが声をあげる。
「聞き捨てならないね、ロウ。わたしたちを年増扱いするのかい。これでも、まだ捨てたものじゃないはずさ。ほら、このミランダの肌をご覧よ。ドワフ族は歳を重ねても若々しいというからね。まるで少女みたいじゃないか」
「おっ、嬉しいねえ、親友──」
「ああ、ミランダは十分に若いよ。もっとも、それに比べれば、わたしは見劣りするけどね……」
「いやいや、アネルザ。そんなことないさ。あんたも十分綺麗だよ。よし、こうなったら、ロウを懲らしめようじゃないかい」
すると、ミランダが妙なことを言い始めた。
「懲らしめる?」
アネルザが反応する。
「いつも自分がやってることを、今日は自分で味わってもらおう。教育のためさ。そういう役は、あたしたちみたいな歳上の女がやるべきだろう?」
「思うよ──。じゃあ、ロウ殿、年増扱いした仕返しだ」
アネルザが起きあがり、そのまま一郎のズボンに手を伸ばしてきた。
「待てって──。いつ俺が年増扱いした。お、おい、待て」
一郎は慌ててアネルザの手を払いのけようとした。
だが、体勢を立て直したミランダが背後から羽交い締めにし、その動きを封じる。
一郎は抵抗するのをやめた。
あっという間に、二人の酔っ払いに取り押さえられて、服を全部脱がされてしまった。
「こうやって押さえてるから、先に行きな、アネルザ」
ミランダが愉快そうに笑う。
見た目からは想像もつかない、相変わらずの怪力で、一郎は身動きひとつできなくなった。
「わかった。その代わり、次はあんただよ。わたしばかり得をするわけにはいかないからね。今度はわたしがロウを押さえてあげる」
アネルザが笑みを浮かべながら身を乗り出してくる。
そして、まだ身につけていた下半身のスカートと下着を取り去って全裸になると、仰向けになっている一郎を膝立ちで跨いだ。
仕方ない……。
ここは、酔っ払い二人に付き合ってやるしかないか。
一度相手をすれば、少しは大人しくなるだろう。
酔いも、そのうち醒めるはずだ。
そうしたら、廊下で様子を窺っている連中を呼び込んでやる。
泥酔した二人を俺一人へ押しつけて済むと思ったら、大間違いだ。
だが、いまは、まずはこいつらだ。
とにかく、二人を静かにさせるしかない。
一郎は小さく息を吐いた。
そして、半勃ちだった自分の股間を完全に勃起させる。
その様子を見たミランダとアネルザが、同時に息を呑んだのがわかった。
【作者より】
コミカライズ『異世界で淫魔師ハレム2』が、2026/7/6に発売開始しています。よろしくお願いします。