【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「し、失礼します、無能様……」
部屋の扉の向こうから、おずおずとした声が聞こえた。
王宮からともに嫁いできた侍女、ノヴァだった。
いまでは、この屋敷の地下層への出入りを許されている唯一の侍女でもある。
「いいのよ、ノヴァ。入ってちょうだい」
アンが返事をすると、扉が静かに開き、ノヴァが車輪付きの手押し台を押しながら部屋へ入ってきた。
アンは小さく微笑む。
キシダインの命令で、この屋敷の者は、誰もがアンを「無能」と呼ぶ。
この部屋に監視用の魔道具が仕掛けられていることは、アンもノヴァも知っていた。
たとえ部屋の中にふたりきりでも、「アン様」と呼べば監視役へ伝わる。そして間もなく、アンに化けたあの女が現れ、ノヴァを容赦なく折檻するのだ。
それゆえ、ノヴァもアンを「無能」と呼ぶしかない。
それでも、その言葉を口にするたび、ノヴァの声は痛々しいほど震えていた。
いまもまた、申し訳なさそうに俯いている。
そんな顔をする必要などないのに。
アンは、ハロルド公キシダインの妻でありながら、妻ではなかった。
屋敷内には、アンと寸分違わぬ姿と声を持つ女がいる。どのような魔道を用いたのかはわからないが、その女は第一王女アンとして振る舞い、人々も疑うことなく受け入れていた。
一方、本物のアンである自分は、このアン邸の地下牢へ閉じ込められている。
キシダインに高慢な一面があることは承知していた。
だが、婚姻するまでは、常軌を逸した人物ではなかった。
ところが、魔道力を持たないアンには単独での王位継承権がなくても、共同統治の制度を利用すれば、キシダインとともに王位を継げる──そう知った日から、彼は変わってしまった。
アンは、その話をきっぱりと拒絶した。
次代の王はイザベラである。
それに異論はないし、自分も王位など望んではいなかった。
その瞬間、キシダインは豹変した。
アンを監禁し、替え玉となる女を作り上げ、王位継承へ名乗りを上げたのである。
偽のアンに「共同統治を望んでいる」という芝居を演じさせ、本物のアンだけを地下へ閉じ込めた。
それでも、キシダインはアンを殺さない。
共同統治の資格を持つ王女は必要であり、王位継承の儀では、どうしてもアン王女の血を宝珠へ刻まなければならないからだ。
だからこそ、キシダインはアンを生かしている。
従順な王妃へ作り変えるため、この地下牢へ閉じ込め、心を折ろうとしているのだ。
部屋には寝台しかなかった。
机も椅子もなく、衣服を納める棚も、髪を梳かす櫛ひとつない。
必要なものは、その都度、ノヴァが運んでくる。
それ以外は、一切許されない。
それもまた、キシダインの命令だった。
「失礼しますね……」
ノヴァは台車を押しながら、アンの座っている寝台のそばまで来る。
夕食のようだ。
台車の上には、野菜と肉のスープ、蜂蜜とチーズを載せたパン、魚の揚げ物、それに果物と果実水が並べられている。
「夕食です。でも、申しわけありません。食事が冷えてしまいました……」
ノヴァは申し訳なさそうに項垂れた。
アンは微笑むと、そっとノヴァの手を取り、その身体を自分のほうへ引き寄せた。
「あっ……」
突然のことに、ノヴァは頬を赤く染めて俯く。
アンはノヴァの侍女服の胸元へ顔を寄せ、その豊かな谷間へそっと鼻先を埋めた。
「ひ、姫様……?」
ノヴァは身体を強張らせ、戸惑ったように声を漏らす。
アンは小さく笑った。
「……無能でしょう。姫様と呼ぶと、また叱られますよ」
アンは、ノヴァに微笑みかけた。
もともと、アンが王家から嫁ぐ際に付き従ってきた侍女や従者は十数人いた。
だが、そのうち何人かは、キシダインに難癖をつけられて早々に解雇された。
さらに数人は、アンがこの屋敷から逃げ出そうとした際、見せしめとしてアンの目の前で毒を飲まされ命を落とした。
残った者たちも、ひとり、またひとりと姿を消していった。
いま、アンのそばに残っているのは、十七歳のノヴァしかいない。
「……またベーノムたちに嫌がらせをされたのね……。ごめんなさい。わたしのために……」
アンはノヴァの手をさらに引き寄せ、そのまま両腕で優しく抱き締めた。
その身体からは、新しい男の精の匂いが微かに漂っていた。
「あっ……」
ノヴァは、寝台へ腰掛けたアンの膝へ軽く腰を下ろす格好になる。
突然のことに戸惑っている様子だったが、嫌がる素振りはない。
むしろ甘えるように身体を預け、小さく身を寄せてきた。
アンは胸が締めつけられる思いだった。
ベーノムは、最近増員されたタリオ公国出身の傭兵隊を率いている。
地下層の奥の監視も彼らの役目だった。この場所で起こることを決して外へ漏らさぬよう、選び抜かれた部下だけが配置されている。
その監視により、アンは外へ出ることも、誰かと連絡を取ることもできない。
ノヴァもまた、同じだ。
そして、その閉ざされた場所で苦しむのは、アンだけではない。
ベーノムの部下たちは、キシダインの命令を恐れ、アンへ直接手を出すことはしない。
だが、その代わりに、ノヴァが彼らの標的になっていた。
この地下の奥で暮らす女は、アンとノヴァだけだ。
そして、いつの間にかノヴァは、ベーノムの部下たちの欲望のはけ口にされるようになっていた。
朝も、昼も、夜も──。
地下層のあちこちで男たちに乱暴されていることを、アンは知っている。
だが、どうすることもできない。
いまもまた、アンへ食事を運んでくる途中で、誰かに捕まったのだろう。
アンにできるのは、こうして抱き締め、少しでも心を慰めることだけだった。
自分とともにキシダイン邸へ嫁いできたばかりに、ノヴァまでこんな境遇へ巻き込んでしまった。
そのことが、アンにはたまらなく申し訳なかった。
「……アン……いえ、無能様……。あ、あの、お食事を……」
ノヴァはアンの胸にもたれたまま、小さく声を漏らした。
「そうでした。では、続きは食事のあとにしましょう」
アンはくすりと笑い、そっとノヴァを解放する。
離れたノヴァは、耳まで真っ赤に染めて俯いた。
可愛い娘──。
その初々しい様子に、アンは思わず微笑む。
そして、台車の上の食事へ手を伸ばした。
「あ、あの……。そ、その食事には……び、媚薬が、たっぷり入っております……。食べ物にも……飲み物にも……」
ノヴァは周囲を気にするように視線を巡らせ、ほとんど息だけの声で囁いた。
アンは、手にした匙を思わず止める。
この部屋は魔道によって昼夜を問わず監視されている。だから、ノヴァは、食事に媚薬が仕込まれていることを口にすることさえ禁じられているのだろう。
だからこそ、誰にも聞き取れないほどの小さな声で知らせてくれたのだ。
「そう……」
アンは止めていた手を動かし、再び食事を口へ運んだ。
ここで食べるのをやめたところで意味はない。
むしろ異変に気づかれれば、ノヴァが食事へ媚薬が入っていることを知らせたと疑われる。懲罰を受けるのは、きっとノヴァだ。
「……も、申しわけございません……」
ノヴァは泣き出しそうな顔で俯いた。
アンには、食事へ媚薬が混ぜられている理由もわかっていた。
おそらく今夜にでも、キシダインはまた客人をこの地下牢へ連れてくる。
その前に媚薬を飲ませ、身体を昂らせておこうというつもりに違いない。
キシダインが勢力を伸ばそうとしている南方の領主貴族の性の相手をアンにさせるようになったのは、あの偽アンが最初だ。
それを知ったキシダインは、咎めることなく、むしろ積極的に派閥の領袖たちを連れてくるようになった。アンの王女時代を知っている貴族たちを相手に、身体を貪られるのは血も凍るかと思う程の恥辱だが、アンには逆らう手段はない。
いま、媚薬を服用させるのも、次の客人たちに、アンが自ら男を求める淫らな女だと思わせるためだった。
媚薬のことを相手へ知らせることも、固く禁じられている。
「どんなお客様なのかしら……」
アンは何気なく口にした。
知りたいわけではない。
ただ、静まり返った部屋へ零れ落ちた言葉だった。
「……キシダイン様の古くからのご友人で、グラム兄弟様という方だそうです……。タリオ公国からのお客様で、王軍大演習をご見学なさるとか。本当に申し訳ありません……」
そこまで言うと、ノヴァは堪え切れず、しくしくと泣き始めた。
アンがその客人たちの相手をさせられることを思い、胸を痛めているのだろう。
アンは慌てて匙を置き、ノヴァを優しく抱き締めた。
「いいのよ、ノヴァ……。泣かないで」
背中をゆっくりと撫でながら、アンは微笑む。
「も、申し訳…」
しかし、抱き締めると、ノヴァはさらに泣きだしてしまった。
アンはノヴァを抱く腕に力を込めた。
「……でも、王軍大演習なんて懐かしいわね。ノヴァは見たことはあるかしら」
ほんの少しだけ目を細める。
「……いえ……」
嗚咽を繰り返すノヴァがアンの腕の中で小さく首を横に振る。
「いつか一緒に行きましょう。そのときは、あなたはわたしの隣よ。仲良く手を繋いで歩くの。きっと、その日が来るわ」
王軍大演習とは、王都郊外で行われる、国王閲覧の大規模な軍事演習である。
軍勢が隊列を組み、演武を披露し、魔道が花火のように空を彩る。
演習というより、王都最大級の祭りと言った方が近い。
王侯貴族はもちろん、多くの王都市民も詰めかけ、街道には露店が並び、終日、大きな賑わいを見せる。
アンも王宮にいた頃は、毎年のように足を運んでいた。
だが、キシダインへ嫁いでからは、一度も行っていない。
これから先も、きっと二度と行くことはないだろう。
だから、「一緒に行きましょう」という約束は、叶うはずのない夢だ。
ノヴァも、それをわかっている。
それでも、アンの腕の中で小さく笑った。
「……姫様と、あたしみたいな下働きが手を繋いでですか……? 笑われますよ、姫様」
照れくさそうに笑うノヴァを見て、アンも自然と笑みがこぼれた。
監視魔道にばれないように、ノヴァはアンに抱き締められたまま、アンの胸に顔を密着させるように喋っている。
とにかく、ほんのひとときでも、この娘が笑ってくれた。
それだけで十分だった。
「……お前は侍女よ。それでいいの。それに、笑いたい者は笑わせておけばいいわ」
アンは優しく微笑む。
「……はい……」
「……それより、食事のあと、少しだけここにいてくれない……? たぶん、この食事は……今夜の接待のためなのでしょう。見知らぬ方の前へ行く前に、少しだけ……あなたと……」
そこまで口にしたところで、アンは大きく息を吐いた。
「くっ……」
突然、全身を熱が駆け抜ける。
食事はまだ半分ほどしか口にしていない。
それなのに身体は急激に火照り始め、額や首筋に汗が滲んだ。
あまりにも強い効き目だった。
「ア、アン……いえ、無能様?」
アンの様子が変わったことに気づき、ノヴァが慌てて身体を支える。
「だ、大丈夫よ……。それより……今夜のお客様は、すぐに来られるのかしら……? それとも、まだ時間はある……?」
「まだ夕方ですから、お越しになるまでには時間があると思います……」
ノヴァはそう答えると、言いづらそうに視線を落とした。
「そ、それと……これも命じられていることなのですが……。お食事のあと、無能様のお召し物は、すべて部屋の外へお下げするように、と……。ほ、本当に申し訳……」
「謝らないで……」
アンは、背中を支えてくれているノヴァに手を伸ばして、抱き締めて密着する。
「……アン……さま……」
ノヴァがびくりと身体を震わせた。
「それよりも……いや……?」
アンは抱き締めている手をそっと、ノヴァの小さな胸の膨らみに移した。
アンはそっとノヴァを見つめた。
ノヴァはさらに頬を赤く染め、小さく俯く。
「……この部屋へ来る前に……また、彼らに……」
言葉は最後まで続かなかった。
アンには、それだけで十分だった。
抱き寄せた身体から漂う匂いも、乱れた呼吸も、なにがあったのかを物語っている。
「……ふふ、だから……?」
「だ、だから……汚れています……。ちゃんと身体も洗えていません……」
絞り出すような声だった。
アンは静かに首を振る。
「汚れているのは、わたしも同じよ」
そして、小さく息をつく。
「……それよりも……。こうして一緒にいるところを見られたら、またベーノムたちにからかわれてしまうのではない?」
それだけが心配だった。
この部屋を監視具で見張っているのは、ベーノムたちに間違いないだろうが、アンにとっては滅多に会わない相手だ.彼らはこの部屋には入ってこない。
けれど、この部屋を出れば、ノヴァは再び彼らと向き合わなければならない。
アンとノヴァが淫らなことをすれば、監視をしているベーノムたちに、ノヴァは侮蔑の言葉をかけられるだろう。
そのことを思うと、胸が痛んだ。
「大丈夫ですよ……。そんなの……。皆のことは気にしません。無能様のご迷惑にならないようにします」
ノヴァは小さく首を振った。
一度言葉を切り、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「……それに、さっきのことは……嬉しかったです」
ノヴァは、アンの手をそっと離すと、静かに服を脱ぎ始めた。
部屋には衣服を置く棚ひとつない。
脱いだ服をノヴァは、丁寧に畳み、床へ重ねて置いていく。
その間に、アンは残っていた食事を急いで口へ運んだ。
もう十分だった。
それでも、あまり残せば監視している者たちに不審を抱かれるかもしれない。
とにかく、与えられた食事の半分ほどは口にした。
食べ終える頃には、ノヴァはすべての衣服を脱ぎ終えていた。
その姿を見て、アンは胸を締めつけられる。
身体には、つい先ほどまで男たちに弄ばれていたことを思わせる痛々しい痕跡が残っていた。
華奢な身体のあちこちには、薄く色づいた痣がいくつも見える。
乱暴に扱われる日々の中で、消える間もなく刻まれてしまったものなのだ。
さらに、股間の毛もきれいに剃り落とされていた。
これも以前、キシダインから聞かされたことがある。
ベーノムの部下たちが、面白半分で寄ってたかって剃ったのだという。
以前、あの偽アンが面白がるように、そんなノヴァの境遇をアンへ語った。
ノヴァ自身は決して口にしなかった。
だが、その話だけでも、この部屋の外でどれほどむごい扱いを受けているのか、アンには想像がついてしまった。
それでも、アンは目を背けたくなかった。
例えば、排泄──。
アンはこの部屋の隅にある落とし箱で用を足すことができるが、地下層には女性であるノヴァ用の厠はない。
だから、彼らに見られながら、排泄を容器にすることが決められているそうだ。
アンはそれを教えられたとき、必ず、この部屋の落とし箱で用を足すように、ノヴァに厳命した。
ほかにも、犬のように首輪をつけられて、地下層の廊下を徘徊させられるとか、この部屋に行かないときには、服を隠されて全裸で家事をさせられているとか、耳を覆いたくなる話ばかりだった。
地下層の男たちは、まるで食事をするように、ノヴァを毎日陵辱するそうだ。
それだけのことをされながらも、ノヴァはなにも言わない。逃げ出さない。
逃げれば、アンの世話をする者がいなくなるからだ。
自分とともに屋敷へ来たばかりに、この娘はこんな目に遭っている。
その罪悪感だけが募っていった。
だからこそ、アンはノヴァを抱き締めた。
慰めたかった。
守りたかった。
そして、互いに寄り添うことだけが、この地下で心を壊さずに生きる術になっていった。
そのとき、表現できない感情がアンを包んでいた。
その日以来だった。ノヴァが部屋を訪れるたび、アンは以前よりも強く抱き締めるようになった。
そして、ある日、涙を流しながら互いを抱き締めているうちに、気づけば二人は女同士の一線を越えていた。
いまでは、もうノヴァなしでは生きていけない。
アンは食事を終えると、静かに立ち上がり、自ら寝着を脱いだ。
身につけているものは、その一枚だけだ。
下着を与えられることもなく、この部屋には着替えひとつ置かれていない。
必要な衣服は、その都度ノヴァが運んでくる。だから、アンは与えられたものを身につける以外になかった。
「来て……。来てください、ノヴァ」
アンは寝台へ横たわり、両腕を静かに広げた。
いまごろ監視魔道具の向こうでは、また始まったとベーノムの部下たちが笑っているのだろう。
笑いたければ、笑えばいい。
アンは本気でそう思っていた。
自分はノヴァを愛している。
そして、ノヴァもまた、こんな自分を愛してくれている。
それの、なにが悪い。
なにが悪いというのだ──。
「姫様……愛しています……」
ノヴァが寝台へ上がり、そっとアンをうつ伏せに横たえると、上から抱き締めてきた。
ふたりが寄り添うときは、不思議といつも同じだった。
アンが受ける側──ノヴァが責める側──。
どちらから決めたわけでもない。自然と、そうなっていったのである。
ノヴァの手が、開いたアンの太腿をそっとなぞった。
「ああっ……」
アンは首を大きく反らし、思わず声を漏らす。
媚薬に支配された身体を優しく撫でられただけで、強烈な快感が全身を駆け巡った。
理性は一瞬で揺らぎ、抗いようもなく甘い陶酔へ引き込まれていく。
「ああ……なんて可愛いの……。お慕いしております……。ノヴァは……アン……無能様だけを……」
震える声で囁きながら、ノヴァの手はゆっくりと太腿を滑り、少しずつ奥へ近づいていく。
「あっ……ああっ……」
アンは押し寄せる快感に白い歯を噛み締め、身体を震わせた。
「……胸を、舐めてください……。あたしのも……」
ノヴァは優しくアンへ触れながら、もう一方の手をそっと胸へ伸ばした。
さらに、自分の乳房をアンの顔に押しつける。
アンは、目の前にやって来たノヴァの乳房を口に含み、中心の突起を舌で転がす。
「あああっ、もっと──もっとです──。どうか、乳首を噛み千切って──」
ノヴァが身体をのけ反らせて、感極まった声をあげる。
嬉しい──。
ノヴァがアンで感じてくれている──。
ただ嬉しい……。
無心になって、舌でノヴァの旨を愛撫する。
ノヴァは、アンを優しく抱き寄せ、惜しみなく愛情を注いだ。
ふたりで二匹の雌になるかのように、淫らに絡み合う。
相手の全身の肌に舌を這わせ合い、肌を擦り合わせ、思うままの場所を触り合った。
ノヴァは真っ直ぐにアンに添う体勢から、いつしか横になり、あるいは完全に逆になり、そうやって姿勢を変化させては、アンを愛してくれた。
やがて、アンは快感の頂点に達しかけた。
そして、再びノヴァに真っ直ぐに覆い被されて、股間に顔を埋められて、舌で敏感な肉芽を繰り返し弾かれたとき、目の前に火花のようなものを飛び散ったと思った。
来る……。
そう思った。
大きな快感の頂点がそこまで来ている。
「んふうううっ」
アンは思い切り太腿でノヴァを挟みつけた。
脚に圧迫されながらも、ノヴァはアンの股間の前でくすくすと笑った。
「アン様、今度は一緒にいきましょう。ノヴァが導きますから」
身体を起こしたノヴァが片脚をアンの脚に挟むように置き、女陰と女陰をぴったりと当てるようにした。
そして上下に動き出す。
ふたりの股間がねちゃねちゃと淫らな水音をたてる。
再び絶頂の兆しを感じたのは、あっという間だった。
今度は、ノヴァもまた激しい乱れの最中だった。
アンはノヴァの身体を抱き締めた。
すると、ノヴァもアンを抱き締めてくれて、しかも、唇を唇に重ねてくる。
アンは夢中になって、ノヴァの舌に自分の舌を絡ませた。
「あふうううっ」
「ああ、はああっ……」
アンとノヴァはほぼ同時に絶頂した。
しばらく、絶頂の余韻のまま股間を擦り合わせ続けたが、やがてがっくりとノヴァの身体が脱力し、アンの身体に添う体勢で被さった。
アンは、ノヴァの裸身を下からぎゅっと抱き締めた。
「あ、あなたには申し訳ないと思っています……。こ、こんなことをして……。で、でも、わたしには……」
言葉は最後まで続かなかった。
ノヴァは静かに首を振り、アンの唇へそっと口づけてきた。
舌と舌を絡め合い、お互いの唾液をすすり合う深い口づけ……。
しばらくして、やっとノヴァが顔を離した。
アンは、朦朧となっている。
「……姫様。なにもおっしゃらないでください」
ノヴァは微笑んだ。
「……ああ、ノヴァ……」
「……あたしは幸せです。こうして姫様のおそばにいられるのですから。初めて宮殿でお会いしたあの日から、ずっとお慕いしておりました」
アンは答えなかった。
ただ、腕へ少しだけ力を込め、ノヴァを静かに抱き締め続けた。
やがてアンは、ノヴァの肩へ額を預け、小さく息をついた。
この地下で生きていくためには、互いの存在が必要だった。
キシダインに奪われなかったものがあるとすれば、それだけだった。