※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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003 快楽支配

 ああ、ああっ──。いぐうううっ──。いかせて──。いかせてくださいいっ。

 

 床に横たわるエルスラが、一郎の怒張を受けて身体を弓なりに反らせた。

 性交が始まってから何度目かの絶頂の仕草だった。

 しかし、一郎は仰向けの彼女に律動を刻みながら、冷ややかに首を振る。

 

「まだだ。まだいかせない。そのまま我慢しろ」

 

「ああ、も、もう、だめええっ。いかせてええっ」

 

 エルスラが泣きじゃくるように声をあげる。

 羞恥も理性もとっくに飛んでいた。

 一郎はその姿にすっかり満足し、腰を打ちつける動きをいっそう強めていく。エルスラが我を忘れて背中にすがってくる。

 

 監禁された部屋で始めた強姦である。

 一郎は、これが初めての性交とは思えないほど冷静で、むしろ圧倒的な支配欲に包まれていた。エルスラの秘所は濡れ切っており、怒張はなんの障害もなく埋まっていく。

 

 エルスラは全裸だ。

 灰色のローブは床に左右へと拡げられ、性交の敷物と化していた。ローブの下に身につけていたスカートや下着は脱がされ、床に投げ捨てられている。

 一郎の精の支配を受け入れたエルスラは、当たり前のように従順だった。命じられるままに下半身の衣を脱ぎ捨て、その身体を受け入れたのだ。

 

 ついさっき、エルスラの口の中に一度目の射精を果たしたばかりとは思えないほど、一郎の性欲は高ぶっている。

 ほとんど本能の赴くまま、彼女を押し倒して挿入していた。

 

 エルスラの膣は熱く、濡れ、すでに受け入れる準備が整っていた。強引に押し込んでも、狭いそこはぐいぐいと怒張を締めつけてくる。

 律動を始めて間もなく、エルスラの抵抗は霧消した。

 嬌声を上げて快感に狂い、一郎の身体に必死で縋ってくる。

 その姿が可愛らしくて、一郎は試すように命じた。

 

『いきたくなったら口に出せ。許すまで絶対に達するな』と……。

 

 すると、本当に達しないまま嬌声だけが続いた。

 身体を震わせ絶頂の仕草をしながら、エルスラは果てることができなくなったのだ

 

 ──支配している。

 

 一郎は、確かな実感を得た。呪術で、肉体と快楽を支配している感覚がある。

 

 エルスラは、絶頂したくても絶頂できない果てしない性交に、あっという間に泣き狂った。

 

「ああ、もうだめえっ。もうだめです──。ゆ、許して、許してください──。いくう、いきそうですうう──」

 

「ははは、もっと溜め込め。俺が達するときに許可してやる。それまで、ずっと狂ってろ──」

 

 一郎はそう言いながら律動を続ける。

 挿入する直前、エルスラから感じ取った数字は〈30〉──。

 それが怒張を貫かせた瞬間に〈0〉へと下がり、いまは、〈1〉と〈2〉を行き来している。

 

 さっき愛撫で絶頂させたときは、数値が〈0〉になった。

 そのときの感触から推測するに、その〈0〉が絶頂のトリガーなのだろう。

 

 腰を動かしながら、ふと視界に浮かぶものがあった。

 

 桃色のもや──。

 

 全身に漂っているその色が、ぼんやりと……だが、確かに見える。

集中すると、より鮮明になる。

 

 ──性感帯──?。

 

 一郎は直感した。

浮かび上がる桃色のもやは、相手の性感帯を示している──。

 試しに、その場所をなぞるようにエルスラの肌を指で撫でる

 

「くふううっ」

 

 エルスラがびくんと大きく震えて跳ねる。

 反応は著しく鋭敏で、ぞんざいな愛撫でさえも過剰なまでの快感へと変換されているようだった。

 いや、これは単にエルスラの性質だけではない。

 

 これもまた、淫魔師としての力──。

 

 生まれて初めての性交なのに、どうしてこれほど冷静で、残酷で、的確に女を責められるのか。

 自分でも信じられなかった。

 だが、この浮かぶもやと、数字がすべてを物語っていた。

 

 浮かび上がる桃色のもやの濃淡は、一郎にとって、エルスラを快感に導く誘導の地図のようなものだ。

 エルスラの身体の濃く色づいた部分を探し、そこを指でなぞる。

 すると、その箇所はさらに紅を帯びて、数値がまた一段と下がる。

 快感を与えるたびに、より深い欲情の色が身体に浮かび、次の標的が明らかになる。

 繰り返すほどに、エルスラの理性は削られていった。

 

「だ、だめえええっ。そ、そんな……。す、すごい。すごいです。ひいいっ──」

 

 嬌声が漏れる。喘ぎというにはあまりにも露骨で、むしろ感情の坩堝から弾け出た哀願のようだった。

 エルスラの膣は、熱く、一郎の怒張を締めつけてやまなかった。

 痴態の極みを晒すその姿は、一郎にとって強烈な誘惑だった。

 欲望の導きに従い、怒張をねじ込んでいく。

 意識を集中すると、膣壁の中にさえ桃色の斑点が浮かび、その中心へと亀頭を押し当てながら律動を続けた。

 

「い、いいい──」

 

 切れた糸のような声がこぼれる。

 この感触、この景色。女体を犯すという行為が、こんなにも異次元の快感を伴うとは思わなかった。

 

 これが、性交──。

 

「お、俺も気持ちがいいよ、エルスラ……」

 

 一郎は呟くように声を漏らし、抽送をゆるやかにした。

 エルスラの数字が、ついに〈1〉で止まったまま動かなくなる。

 

「こ、こんなのすごすぎます。こ、こんなの……す、すごい──。すごい──あ、あああっ、また、いくううっ、いきたいいっ──。いかせてえええっ──」

 

 もはやエルスラの全身は、真っ赤なもやに包まれていた。膣内も熟れた果実のように赤く染まり、全身が絶頂を渇望しているのが一目でわかった。

 一郎は赤の濃い部分を探し、怒張を擦るようにゆっくりと、そして時折、強く抽送した。

 

「んぐうううっ」

 

 エルスラの口から絶息するような声が迸る。

 そして、その全身の痙攣がとまらなくなった。凄まじい力でイチロウの背中にしがみついてもくる。

 

「イチ様──いぐううっ──一イチ様──お願い──。いくううっ、いかせて──いかせてください──」

 

 エルスラが絶叫する。

 

「わかったよ。いっていい」

 

 一郎は激しい抽送を続けながら言った。

 その言葉が落ちると同時に、エルスラの数字が一気に〈0〉まで落ちた。

 

「んはああああっ、ああああっ」

 

 そして、エルスラの全身が跳ねる。

 次の瞬間、数字が〈0〉からさらに下がっていき、〈-8〉と表示された。

 膣は痙攣を続けている。その奥に怒張が当たるたび、さらに奥へと吸い込まれていく感覚があった。

 そのうち、表示が一度消え、〈5〉と再表示される。

 

 一郎には、今度こそ、その意味がはっきりと理解できた。

 知識が注がれるように、頭の中に情報が流れ込んでくる。

 

 エルスラは、これまでの絶頂を超える衝撃的な快感を味わった。だから数字がマイナスとなり、その後、絶頂の余韻として一桁に戻ったのだ。

 

「も、もういった──。い、いきました──。ああ、で、でも、またいきそう……。いぐうううっ」

 

 一郎は畳みかけるように、さらに激しく抽送を繰り返した。

 絶頂のたびに口に出すよう命じられているエルスラは、羞恥に震えながらも、必死に声をあげている。

 

「わかった。今度は好きなようにいけ。いくらでもな……」

 

 一郎がそう許可を与えると、今度は数字が〈1〉か〈2〉まで下がるたびに、一物の動きも、愛撫の手もぴたりと止めてみた。

 数値が少し戻れば再び律動を加える──それを繰り返した。

 

 すると、エルスラの反応は次第に常軌を逸していく。

 声を上げ、腰を浮かせ、髪を振り乱しながら狂ったように動き始めた。

 

「ひいいっ、ゆ、許してえええっ、イチ、イチ様ああっ」

 

 吸いつくような膣の蠕動。怒張の傘が引きずり込まれる。

 その強烈な吸引と締めつけに、一郎も堪えきれなくなった。

 一気に、熱い精をエルスラの中へと吐き出す。

 

「ああああ、イチ様ああ──」

 

 それに合わせて、エルスラもまた絶頂を迎えた。

 いや──絶頂に達したエルスラに呼応して、一郎が果てたのかもしれない。

 

「エルスラ、エルスラ、お前は俺のなんだ?」

 

 まだ、射精は続いている。

 一郎は、ほとんど無意識のうちに言葉を吐き出していた。

 その間にも、精はエルスラの奥深く、子宮へと迸り続ける。

 エルスラの絶頂はまだ終わっていない。

 快楽の波に呑まれたまま、身体を痙攣させ、力なく一郎にしがみついている。

 

「あああっ、エ、エルスラは……イチ様の奴隷です──。いぐううう──」

 

 その声とともに、彼女の目は大きく見開かれ、白濁の光に覆われた。白目を剥く寸前の陶酔──完全な脱力だった。

 一郎の腕の中で、エルスラの身体はぐったりと沈み込んだ。

 

 

 

 

「ふう……」

 

 床に横たわるエルスラからようやく身体を離した一郎は、肩で息をしながら、汗と精と蜜の入り混じった臭気に満ちた空間を見渡した。

 満ち足りた、というよりは──果てしない欲望の名残りに呑まれているような感覚。

 

 視線を落とすと、だらしなく脚を開いたまま、薄い恥毛に覆われた股間から白濁がとろりと垂れ流されているエルスラの痴態があった。

 

 信じられないほど美しい女──。

 

 その身体を、好きなように嬲り、貫き、啼かせ、そして果てた。

 

 すべてを終えたはずなのに、一郎の中にまだ燃えさしのような火が残っている。

 

 そのときだった。

 

 頭の奥に、言葉のようなものが浮かび上がった。

 すっと頭の中に、明確な文字列が映し出された。

 

 

 

 エルスラ

  エルフ族、女

  年齢18歳

  ジョブ

   魔道戦士(レベル11)

   魔道遣い(レベル25)

   召喚術師(レベル5)

  経験人数:男1、女3

  淫乱レベル:A

  快感値:50↑(回復中)

  一郎の性奴隷

 

 

 

 一郎は、思わず眉をしかめた。

 

「十八歳……?」

 

 呟いた声に、横で横たわっていたエルスラが薄くまぶたを開ける。

 

「……ど、どうして……それを?」

 

 まだ息の整わぬまま、エルスラは首を傾けた。

 一郎は自分でも困惑していた。なぜそんな情報が突然、頭に浮かぶのか──。

 

「つまり、十八なんだな。……思ったより若いな……。いや、セックスもかなり経験豊かみたいだから、てっきりもっと年増かと……」

 

 からかうように言えば、エルスラは顔を赤くして身を起こし、スカートと下着を慌てて手繰り寄せる。

 その仕草が可愛らしく、一郎は一瞬だけ、それまでの荒々しい行為を忘れそうになった。

 

「け、経験豊かだなんて……。違います……。こ、こんなに……気持ちよかったのも……初めて……ですし……」

 

 服を整えながら、エルスラがぽつりと漏らす。

 だが、その言葉の意味に自分で気づいたのか、さっと手で口を押さえた。

 

 羞恥に頬を染め、視線を逸らす。

 ──処女ではなかった。だが、反応は初心にも似ていた。

 

 一郎は、再び頭に浮かぶ文字に思いを巡らせる。

 〈男1、女3〉一──つまり、男は自分が初めてということだと思う。

 

 そして、〈淫乱レベルA〉──。

 これはよくわからないな。まあ、感じやすいということだろうか?

 

「……ところで、お前。アスカの愛人だったりするのか?」

 

 ふと、気になって訊いてみた。

 エルスラはわずかに動揺したように眉を引き攣らせ、ゆっくりと頷いた。

 

 やはりそうか……。

 アスカの愛人──。

 そう思ってみれば、さっきの性への馴れ方にも合点がいく。

 処女ではなく、だが、男との本当の交わりは初めて。

 つまり、女との交わり──アスカとの──で身体を仕込まれていたということなのだろう。

 一郎は無意識に、首をひとつ振った。

 いったい自分はどんな世界に飛ばされてしまったのか。

 

 試しに、自分自身に意識を向けてみた。

 すると──やはり、明確に、脳裏に情報が浮かぶ。

 

 

 

 イチ(田中一郎)

  人間族(外界人)、男

  年齢35歳

  ジョブ

   淫魔師(レベル55)

  経験人数:女1

  支配女

   エルスラ

  状態

   アスカの奴隷(首輪)

 

 

 

「淫魔師……?」

 

 思わず、声に出していた。

 目の前のエルスラが、不思議そうにこちらを見返している。

 支配女──エルスラ、とある。つまり、彼女は今、自分の管理下にあるということだ。

 

 そして、〈アスカの奴隷(首輪)〉──。

 

 そうだ、自分は最初に“支配の首輪”を嵌められた。

 あの時にすでに、自分の自由は奪われていたのか──。

 

 また、“淫魔師”という名が示す通り、性交を通じて異性を支配する能力者──。

 これは、まるでゲームのような──ファンタジーの世界でよくある職業のひとつのようにも思える。

 

 だが、現実の肌感として、この能力はすでに目の前で証明されていた。

 エルスラの絶頂をコントロールできたこと──、

 快感を可視化できたこと──。

 その全てが“淫魔師”としての能力なのだろう……。

 

「まあいいや……。とにかく、元の世界に戻してもらうよ。あのおかしな魔道遣いが戻って来ないうちにね」

 

 一郎は思い出したように言った。

 こんな可愛い女と性交の経験をすることができたのは有意義な体験だったが、それはもういい。

 この異世界の短い経験からすれば、ここは中世を舞台にしたRPGを思わせるような剣と魔道の世界のようだ。

 一郎がここで生きていけるとは思えない。

 だが、エルスラは床に座ったまま首を横に振った。

 

「も、元の世界に戻る方法はないわ……。い、いえ、もしかしたら、そんな方法もあるのかもしれないけど、わたしには無理よ……。多分、アスカ様もできないはずよ」

 

 あっさりとエルスラは言った。

 一郎は驚愕した。

 

「で、できない? 元の世界に戻せないって? それでも、強引に俺をこの世界に連れてきたのか。な、なんてことするんだ──」

 

 激しい怒りが込みあがり、一郎はその場に立ちあがった。

 エルスラが床に座ったまま、竦みあがるような仕草をした。

 そのとき、なにかの強い気配を一郎は感じた。

 

「なんだ?」

 

 そのときだった。

 一郎はあたりを見渡した。

 肌に触れたのはなにかの揺れのようなものを感じたのだ。

 それが、確実に迫ってくる。

 

「い、いけない。アスカ様よ──。アスカ様にわたしの結界を破られるわ」

 

 エルスラが慌てたように立ちあがった。

 一郎はそう言えば、このエルスラに、外から干渉されないように結界を張れと命じたことを思い出す。

 

「くわあっ」

 

 次の瞬間、なにかが弾けるような衝撃を感じた

 一郎は大きな風圧を受けたような感じになり、その場にひっくり返った。

 それはエルスラも同じだ。

 転がった拍子に、短いスカートの裾から蜜に濡れた下着が覗く。

 そして、気がつくと──一郎とエルスラのあいだに、アスカの姿があった。

 

 

 

 アスカ

  エルフ族、女

  年齢**

  ジョブ

   魔道遣い(レベル99)

   召喚師(レベル90)

   戦士(レベル5)

  経験人数:男**、女**

  淫乱レベル:S

  快感値:300(通常)

  支配奴隷

   …………

   …………

   イチ(首輪)

  状態

   *****

 

 

 

 現れたアスカに感じたのは、その文字だった。

 〈レベル99〉──。

 それが意味するものが、一郎の予測通りだとすれば、彼女はとんでもない能力を持った魔道遣いということになる。

 そして、“支配奴隷”の末尾にある〈イチ(首輪)〉──。

 一郎のことだ。

 

 つまり、今なお“支配の首輪”に縛られた存在であることを示していた。

 

「エルスラ、どうしたんだい、結界なんて張って……? そんなことしなくても、こんな無能力者の調教には問題ないだろう?」

 

 現れたアスカは、不審な表情でそう言った。

 だが、一郎がローブを身につけているのを見て、顔を険しくする。

 

「お前、どういうことだ、イチ。奴隷の分際で、なんでエルスラの外套を着ているんだい? そこに真っ直ぐ立て。それを脱ぐんだ」

 

 アスカが杖を向けて命じた。

 そのとき、一郎の頭になにかの呪縛のようなものがかかる。

 ──首輪だ。

 あの“支配の首輪”が反応したのだと、一郎は直感する。

 身体が勝手に反応する。

 ぴんと背筋を伸ばし、両手で着ていたローブを脱ぎ捨てた。

 

「なに? 珍棒の輪っかまで外しているじゃないか。お前が外したのかい、エルスラ?」

 

 アスカがエルスラに視線を向ける。

 

「そ、それは……。こ、これは……ですね、アスカ様……」

 

 しどろもどろに答えるエルスラ。

 だが、アスカはすぐに頬をゆるませた。

 

「……まあいい。まだ、お前には奴隷調教は早かったかもね。冷酷な女主人の演技なんて、根っからのマゾっ子には難しかったかな。いいさ。こいつの調教はわたしがやる。お前はそこで見てな」

 

 そう言うと、アスカは再び一郎に視線を向けた。

 

「さて、じゃあ本格的な調教に入るよ、イチ。動物を躾けるために大事なことは、最初に徹底的にご主人様に対する恐怖心を植え付けることだ。これから、心の底にわたしたちに対する恐怖を刻んでもらう」

 

 アスカが持っていた小さな杖を一郎に向けた。

 その顔には、怒りの色が滲んでいた。

 それだけで、十分すぎるほどの恐怖が一郎の胸に満ちる。

 

「た、助けて……」

 

 一郎は思わず口にした。

 だが、次の瞬間、強烈な光とともに、一郎の身体は拘束されるような感覚に包まれた。

 

 

 

 

 第1話『召喚された外界人』終わり──

 第2話『ルルドの森の悪霊』に続く──






【アスカ】

 諸王国時代末期に実在したとされる伝説的魔女。生年は不詳。現存する乏しい資料によれば、当時いずれの王国勢力にも属さず、辺境の蛮地に自らの魔城を築き、鬼道を操って多数の人族を支配下に置いたほか、妖魔・魔族の眷属を従えて独自の政体を形成したと記録されている。

 特筆すべきは、異世界と現世の境界を突破する召喚術を完成させたとされる点である。アスカはこの術式によって外界人と呼ばれる存在を異界より招喚し、これを呪的手段により従属化。以後、その外界人たちを通じて、自派の軍事的優位と魔術的権威を保ったと伝えられる。

 外界人は、その存在自体が異界の論理構造を帯びており、しばしば常識を超越した異能を発揮した。これは複数の同時代文献において一致して確認されており、当時の学徒や魔導師たちの驚愕と警戒を集めていた(→「外界人」参照)。

 一方で、アスカの居城が実際に存在したとされる地域は現在まで明確には特定されていない。
 また、彼女の開発した召喚術そのものも、サタルス朝初代皇帝ロウ=サタルスによって「現世の倫理と理法に反する術式」と断じられ、施術ならびに研究の全面的禁止が布告されている。これに伴い、該当する術法記述を含むあらゆる魔道書は帝国による徹底的な焚書政策の対象となった。

 ゆえに現代においては、アスカの術式と魔道体系に関する情報は極端に限定され、後世に残された伝承や断片資料から再構成されるに留まっている。

 なお、サタルス朝中期の歴史学者マネは、異端的学説の中でアスカの正体について独自の仮説を唱えており、それによれば……。


 (出典:ボルティモア著『万世大辞典』より。以下の再録文献はすべてスクルズ記念国際図書館の許可を得て、初版本より抜粋採録したものである)
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