【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
コゼとクグルスは温泉の泉の中に浸かっている。
一郎とエリカはその縁だ。
エリカの両手は背中に回させて、軽く手首を縛っていた。コゼも同じようにさせている。
「はっ、あっ、あん」
後手に拘束された裸身を一郎に布で擦られているエリカが耐えられない嬌声をこぼす。
一郎は苦笑した。
「ただ身体の汚れを布で拭いているだけだろう。いちいち反応するんじゃないぞ」
「だ、だったら、縄を解いてください……。それに、自分で洗えますし……」
「遠慮するな。自分の女の身体を隅々まで洗うのは、男の醍醐味だ。勝手に感じているのはエリカだ」
「そんなあ……」
エリカが縛られている裸身をくねらせながら、恥ずかしそうに顔を俯かせる。
だが、手足を擦り終わった布でわざともう一度股間の周囲を撫ぜるような仕草をすると、一郎の胡坐の上に腰かけていたエリカがぴんと身体を反らして声をあげた。
「ふふふ、本当にエリカって、信じられないくらいに感じやすいのね……。ねえ、ご主人様、こんな淫乱エルフには、教育が必要ですよ。罰です.罰を与えましょう」
すると、湯の中からこちらを見守っていたコゼが揶揄うように肩を揺らす。
エリカが真っ赤になる。
「なに言ってんのよ。どうして罰なのよ。余計なこと言わないで」
口実を与えれば一郎に嗜虐の理由を与えると思っているエリカが慌てて言い返している。
だが、相変わらずエリカは真面目だ。
コゼの物言いは明らかに、エリカを揶揄う軽口なのだが、エリカは真剣に応じている。
それはともかく、あのやり直しの破瓜が終わってから、コゼは人が違ったように、明るくなったしよく喋る。
まあ、いい傾向だ。
この明るい雰囲気が、本来のコゼの性質なのだろう。
それが、奴隷として人殺しの道具として使われ、さらに、屋敷の男たちから「厠女」として身体を汚され続けた日々が、コゼを暗くしていたのだと思う。
だが、あの性交のとき、一郎はそのコゼの心の影を掴みとって、それを力づくで壊すことに成功したと思った。
それが本当であったのを示すように、コゼは表情を柔らかくし、一郎やエリカ、クグルスにも自然に打ち解けていた。
自分がなにをしたのか、実際のところよくわからない。
だが、まあ、いい結果となってくれてよかった。
一郎は自分の「仕事」に満足している。
「でも、ご主人様が感じるなと、お命じになっているのに、感じるのは罰じゃないの? 性奴隷失格よ」
また、コゼがエリカを揶揄う。
エリカの顔が真っ赤になった。
「だ、だったら、あんたも我慢してみせなさいよ。ロウ様の手を我慢できるものなら、我慢してみたらいいのよ」
エリカがコゼに怒鳴り返す。
一郎は、小さく噴き出してしまった。そうやって、いちいち、真面目に返すから、コゼにいじられるのだが、多分、わかってないのだろう。
そのときだった──。
突然に、コゼがお湯の中で爆笑した。
いきなりのことだったので、一郎も思わず、エリカの身体を洗う手をとめて、コゼを見る。
「うわっ、なんだ、こいつ? 急に頭がおかしくなったか?」
湯に浮かんでいた魔妖精のクグルスが呆気にとられたような声を出した。
「ごめんなさい。わかりません。突然に笑いたくなって……。でも、可笑しい……。あたし、こんなに笑ったの久しぶり……。ううん、初めてかも……」
コゼが笑いを収めながら言った。
「コゼ……」
エリカが温かい眼差しをコゼに向けた。
一郎も頬を綻ばせた。
やがて、コゼも笑いの発作が終わり、「ごめんなさい」と全員に頭をさげた。
一郎は改めて、エリカに向き直る。
「そうだな、ちょっとは我慢しないか」
一郎は、布で股間をくすぐるように拭くだけでなく、反対の手でエリカの乳房をまさぐるに刺激した。
いまや、一郎の淫魔術により、エリカの裸身に、あちこちに性感帯の証である赤いもやが浮かんでいるのがわかるのだが、その中でも特に濃かった二箇所だ。
「ひんっ」
エリカが胡座をかいている一郎の上で、くの字に身体を曲げる。
一郎はエリカの派手な反応を愉しみながら、ほかの性感帯に布と手を移動させていく。
だが、すでに一郎の手元は薄暗い。もっとも、淫魔術でエリカの身体の性感帯を認識できる一郎には関係ない。
エリカの性感の急所を遠慮なく刺激していく。エリカはしばらくのあいだ激しくよがり続けた。
アッピア道という山街道の奥で見つけた天然の岩温泉は、夕刻を迎えていた。
すでに周囲は薄暗い。
泉のそばにはおこした焚火が煌々と燃えていて、その横にはみんなで準備した薪が積みあげられてもいた。
コゼの「破瓜」を終えてから少しひと休みをすると、一郎は「今日はここで野宿をする」と宣言した。
それでクグルスも含めた四人で支度をしたのだ。
薪を準備し、寝床を整え、エリカの魔道で周囲に警戒の結界を刻んでもらった。
食事は干し肉があったので、それを分けて食べた。
いまは、もう一度温泉の泉に入り、身体を温めようということになり、そのついでに、一郎がエリカとコゼの身体を順番に布で洗い始めたところなのである。
「もういい、交代だ。いくら拭いてもここは蜜が溢れる。切りがない。もう湯に入れ」
しばらくエリカの痴態を堪能し、一郎は、やっとエリカを解放して立たせた。
「ううう……。申し訳ありません……。でも、洗っていただいてありがとうございます……」
エリカが小さく頭をさげてから、両手首を後手に縄で拘束されたまま温泉の泉に入っていく。
だが、散々に一郎に身体を刺激され、足腰に力が入らないのかふらふらした感じだ。
「ああ……でも、また、温泉を見つけることができたら必ず立ち寄ろうな。そのときは、また、俺が三人を順番に洗ってやるよ……。それとも、ハロンドールの都で冒険者として成功したら、家に風呂を作りたいなあ……。家の中に水を引いて、火で沸かせるようにするんだ。そうしたら、毎日、お前たちを洗ってやれる」
一郎は微笑んだ。
「ご主人様はぼくたちの身体を洗うのが好きなの? ぼくも洗ってもらうのは気持ちよかったけど……」
湯の中に浸かっているクグルスがいまはうっとりとした表情で言った。
一番最初に布で洗ってやったクグルスは、一郎の手が触れるたびに激しく悶え、簡単に三回以上も気をやった。
いまはその疲れを癒すように湯に身体を浮かべている。
「ああ、好きだね。家に風呂を作る。これを当座の冒険者としての目標にするよ」
一郎は笑いながら言った。
「でも、ご主人様、家に風呂なんて、王侯貴族ですよ。水は共同井戸から運んでくるか、それとも、魔道遣いを五、六人奴隷にして、水を溜めさせる作業をやらせることができるようにしないといけないんです」
エリカと同じように後手に拘束されているコゼが、泉から出てきながら言った。
「そうなのか?」
一郎はコゼとエリカに視線を向ける。
「エリカだけじゃあ、人が入るような大きな桶いっぱいに水を溜めることなんてできないと思いますよ」
「そうですねえ……。でも、魔石で代用するということはできます。まあ、それなりの値段はしますが……。あっ、もちろん、わたしの魔道でも小さな浴槽程度であれば、時間をかけさえすれば湧かせると思います。このところ、魔道の調子もいいんです、」
コゼ、次いで、エリカが応じた。
魔石とは、ナタルの森の褐色エルフたちが扱うあのクリスタル石のことだ。
一郎のいた世界で言う「電力」に近く、この世界では日用品から魔道具まであらゆるエネルギー源になっている。しかも生成できるのはナタル森林だけで、ハロンドール王国はもちろん、ローム三公国までもがその供給に依存しているという。
ただし、北方のエルニア王国だけは別で、魔石に頼らず独自の力を確立しているらしい。
「エリカにそんなことはさせないよ。風呂が王侯貴族だけの特権なら、王侯貴族になるさ。これで目標もできた。きっと冒険者として成功してみせるぞ──。お前たちも協力しろよ……。ところで、次はコゼだ。来い」
一郎が声をかけると、コゼがエリカと入れ替わって湯から上がってくる。コゼもまた両手首を背中で縄で縛っている。
エリカにしても、コゼにしても縛る理由はないのだが、まあ、そっちの方が一郎も興奮するし、ふたりの性感も敏感になる。つまりは、ちょっとした愉しみのためだ。
やってきたコゼの裸身を胡坐座りの膝の上に抱きあげて乗せる。
布でコゼの乳首のあたりをそっと撫ぜた。
「あんっ」
コゼは乳首が弱い。
ほんのちょっと触っただけで、コゼの乳首は見事なくらいに勃起してしまった。
一郎は、ほくそ笑んだ。
「コゼはいくら感じてもいい。許可する。好きに達してもいいぞ」
一郎はコゼの胸を責めながら言った。
「ひんっ」
一方でコゼもまた、身体をぴんと突っ張らせて声をあげる。
「狡いです。わたしには我慢しろって、おっしゃったじゃないですか」
エリカが湯の中から不満の声をあげた。
一郎はそれを笑って受け流す。
「ああ、感じます、ご主人様──。そ、それと、あたし、ご主人様に拾われて……し、幸せです。もちろん、あたし、頑張ります……。ね、ねえ、エリカ?」
コゼが身体をくねくねと悶えさせながら、湯の中のエリカに声をかけた。
「もちろんよ」
エリカが元気よく言った。
「ぼくもいるよ──。また迷惑かけるから、ほかの人間の前にはなかなか姿を現せないけど、ぼくも頑張るからね」
クグルスが身体を浮かべたまま、首だけを起こして言った。
一郎は彼女たちの言葉に満足心をいっぱいにしながら、布でコゼの丸くて品のいい乳房を包み込むように揉んでやった。
「ううっ……ご、ご主人様……」
性感の疼きに襲われているらしいコゼが甘い息とともに声をたてる。
「エリカもそうだが、やっぱり、コゼの身体も淫乱でいいなあ……。俺好みだ」
一郎はわざと揶揄いながら、コゼの全身を布で磨きあげていく。
「あ、あああっ、だ、だったら……嬉しいです……。ふわっ、で、でも、あ、あたし……もっと……か、感じにくいはずで……。で、でも……ご主人様の……手だから……気持ちよくて……」
コゼが恥じらいで身体を赤くする。
「俺に触れるから感じるのか?」
一郎は指をコゼの股間に移動させると、指でクリトリスをゆっくりと動かしてやる。
「ああ、だ、だめ──。あ、ああ……き、気持ちいいです……あっ、あああっ……」
コゼは激しく悶え始めた。
「一応は破瓜を終えたばかりの女のはずだが、そんなに感じるなんて、やっぱりいやらしいな……。ここはどうだ……?」
一郎は、クリトリスを弄っている反対の手の指を、今度はコゼのアヌスにつるりと潜り込ませたのだ。
布はもう横に置いた。
「も、もう、ご主人様、いじわるばっかり……。や、やんっ、ああ──」
コゼが激しく悶える。
一郎の指がコゼの腰の前後から愛撫をするかたちになった。
「んんんっ」
食い縛ったコゼの口から喘ぎ声が洩れ、コゼの背筋が再びぴんと伸びた。
「破ったばかりの処女膜がある膣は今日はそっとしておいた方がいいだろうが、ここは大丈夫だろう? しっかりと一度気をやっておくか?」
一郎は淫魔の力で、コゼのアナルに入っている自分の指の表面に潤滑油となる油剤をたっぷりと浮きあがらせた。
それが抵抗を作ることを阻止し、その指をコゼのお尻の中に指の根元まで挿入することに成功した。
一郎は指を動かしてアナルの内側を刺激してやる。
淫魔術で感じることができるコゼのお尻の内側にある真っ赤なもやの部分だ。
どんな女であろうとも、淫魔術で感じる赤いもやへの責めから逃げることは不可能だ。
「うわああ──ご、ご主人様、それはだめえええ──」
コゼがエリカに負けず劣らぬ大きな声をあげた。
一郎がしばらくそうやってお尻を弄っていると、コゼの股間の蜜がすっかりと溢れてくるのがわかる。
“快感値:25/300↓”
コゼはすっかりとできあがって全身にはしっとりと汗をかいている。
そろそろ、いいだろう。
一郎はコゼのアヌスから指を抜くと、コゼの小さな腰を抱え直して、すっかりと勃起している肉棒の上にお尻の穴をあてがった。
そして、ゆっくりと挿し貫かせていく。
もちろん、一郎の怒張にも淫魔力で潤滑油をしっかりと浮きあがらせている。
おかげでなんの抵抗もなく、一郎の肉棒は完全にコゼのアヌスに吸い込まれた。
「あああっ」
コゼが悲鳴のような嬌声をあげた。
「ああ、やっぱり、コゼのお尻は気持ちがいいな──。それに、俺のみたところ、コゼはエリカよりもお尻で感じる素質があると思う……。膣そのものより、お尻の感覚が高いようだ。コゼのお尻が気持ちいい──」
一郎はアナルに挿入した怒張を次いで、じわじわと抜いていく。
「ひあああっ、ああっ、あっ、ありがとう……ご、ございます……。あ、あたしの……お尻で……よければ……ああああっ」
コゼの反応が激しくなる。
“快感値:9/300↓”
絶頂までもう少し……。
亀頭が抜ける前に、また奥に挿入していく。
「あああっ、気持ちいい──」
「これからは、エリカから洗い粉をもらって、毎日お尻の穴を綺麗にしておくんだ。いつでも、俺がコゼのお尻を犯せるようにな」
「は、はいいいっ、いいいっ……」
コゼは荒い息をしながら数回首を縦に振った。
エリカよりもコゼが、お尻が弱いのは本当だ。
一郎にもそれがわかっている。
「ああ、な、なんかおかしい……。お、おかしいです……。な、なにか変……」
コゼがもじもじと腰を動かしだした。
「そうか、変か……。だが、それは当たり前の感覚だ。俺も気持ちいい……。快感を怖れるな。コゼのお尻は最高だ」
一郎はコゼのアナルに律動を加えながら言った。コゼは、セックスにしろ、女としての扱いにしろ、劣等感の固まりだ。
でも、それについては、封印まではしてないが、記憶が感情に結びつかないように細工はしている。
だから、今度はセックスが気持ちいいものだという「上書き」だ。
とにかく、コゼを褒めた。
コゼのお尻への締め付けが強くなり、男根を抽送している一郎の快感が増幅される。
「ふんっ、んんっ、なっ……ああっ……くうっ」
コゼのお尻が前後左右に強く動き出す。
快感を自らむさぼり始めた。
「息を吐け──。尻の力を緩めろ──。そして、自分で擦るんだ。そうやって、尻で気をやれ」
「お、おかしいです……。気持ちいい……。だ、だめ……これはだめ……。おかしくなる……。あ、あたしおかしくなってしまいます……。ああっ──」
コゼの官能の疼きがしっかりと股間にも拡がっているのがわかる。コゼの股から垂れる蜜が一郎の股間にも落ちてきている。
コゼの快感の声はもう大きい。
そして、その尻たぶは、一郎の胡坐の上でぐいぐいと一郎の股に強く擦りつけるように、激しく動き出していた。
「いぐうううっ」
やがて、一際大きな声をあげて、コゼが絶頂した。
一郎は、それに合わせるように、コゼのアナルの中にたっぷりと精を吐き出してやった。
泉の湯気がまだ薄く漂っている夜、一郎たち三人は焚火を囲んで横になっている。
岩間の温泉の縁の石であり、そこに毛布を敷き、一郎を真ん中に、エリカとコゼが一郎に密着して寝ていた。
クグルスは、少し前に異界に戻った。
三人とも素っ裸だが、温泉の熱で身体の下の岩は温かいし、一枚の毛布を三人の上にかけている。お互いの肌の温もりもあり、湯冷めすることはなさそうだ。
薪がはぜる音を聞きながら、すでにエリカは眠りに落ちていた。
反対側のコゼは、まだ眼を開いたまま、一郎の身体に身体を寄せていた。
「ねえ、ご主人様──」
コゼは胸を押しつけるようにして囁いた。
「……なんだ?」
「今日は、ありがとうございます……。あたし、やっと……人間に戻れた気がします」
不意の素直な言葉に、一郎は目を細めた。
「そうか。なら、もう大丈夫だな……。明日からは、もっと笑って過ごせるはずだ」
一郎はエリカを起こさないように、小さな声でコゼに応じる。
「でも、不思議です……。いままでのこと……覚えてないわけじゃないんです……。でも、辛くない……。動物のように扱われて……。確かにあったことなのに……。遠い記憶のように……。ねえ、ご主人様、あたしに、なにかをしたんですか?」
「さあな。でも、多分、いまのコゼが本当のコゼなんだろう。それにしても、随分とエリカを揶揄ってたな」
一郎は微笑む。
コゼはさらに一郎にしがみつきながら、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「うん……。なんか、愉しくって……。エリカがすぐむきになるし……。でも、駄目ですか?」
「……駄目じゃない。大いにやってくれ」
一郎は微笑んだ。
そのとき、反対側で寝ているエリカの身体が身じろぎした。
「……ちょっと……待ってください……。それ聞き捨てなりませんから……」
視線を向ける。
エリカが半分眠たげに顔をあげて、一郎とコゼを見ていた。
「あら、起きてたの、エリカ?」
コゼだ。
「寝てたわ。でも、不穏な感覚には敏感なの……。あんた、わざと、わたしを揶揄っていたの? いまのどういうことよ」
「うわっ、さすが、狩猟民族のエルフ族……。だから、あんなに身体も敏感で感じやすいのね。やっぱり、エルフ族って、マゾっ子が多いの?」
「なんで、エルフ族がマゾっ子なのよ。そもそも、わたしも、マゾっ子じゃあ……」
エリカの声が大きくなる。
一郎は頬を綻ばせたまま、ふたりの会話を見守る。多分、コゼがエリカにちょっかいをかけるのもまた、コゼなりの愛情表現なのだろう。
まあ、エリカがすぐにむきになるから、思わず揶揄いたくなるというのも本音なのだろうが……。
「だって、今日は一番大きな声で泣いちゃったじゃない。あたしよりもずっと、いやらしいのは事実よね」
「ち、違うわよっ……。そ、それは……ロウ様がわたしばっかり意地悪をするから……」
顔を真っ赤にして抗弁するエリカを見て、反対側のコゼは楽しそうに笑った。
一郎もつられて笑う。
つい昨日まで影をまとっていた少女が、いまは子供のように人をからかい、そして人に甘えている。
──きっとこれが本来のコゼなのだ。
よかったな……。
一郎はしばらくのあいだ、ふたりの掛け合いを愉しんだ。
翌朝──。
太陽の光に濡れた木々が輝き、鳥の声が峠道に響いている。
三人は旅支度を整え、岩間の温泉をあとにした。
荷を背負う一郎の後ろで、コゼがまた笑いながら囁く。
「ご主人様、やっぱり冒険者で大成功して、大きなお屋敷にお風呂を作りましょうよ。そしたら毎日、夕べみたいに、あたしやエリカのことを洗ってくれるんでしょう? あたし、頑張りますね」
そう言って、コゼは一郎の腕に自分の腕を絡め、胸をすり寄せてきた。
前を歩くエリカが慌てて口を挟む。
「ああ、約束する。毎日、洗ってやるぞ。布でなくて指でな。あそこの穴とか、あそこの穴もな」
一郎はわざと淫靡な物言いとともに、指で仕草をした。
「ああ、だったら、エリカのときは、あたしが洗いたいです。あそこの穴も、あそこも」
コゼがくすくすと笑う。
「な、なに言ってんのよ、コゼ──。朝から……。みっともない……」
「みっともなくないわよ。だって、ご主人様のこと大好きなんだもん。もちろん、エリカのこともね」
コゼはいたずらっ子のように舌を出して、さらに一郎の肩にしなだれかかった。
エリカは呆れたように息を吐き、しかし耳まで真っ赤になっていた。
一郎はそのふたりのやり取りを見て、笑みをこぼす。
──新しい日が始まる。
もう暗い影を背負ったコゼではない。
陽気で小悪魔のような少女──それと、揶揄われるのがよく似合うちょっと生真面目なエルフ族の女戦士──。
峠道を抜ける旅路に、軽やかな空気が広がっていた。
第6話『淫湯の湯けむり調教』終わり──
第7話『封印の祠と囚われた魔神』に続く──
【コゼ=サタルス】
サタルス朝の初代帝ロウ・サタルスの正妃のひとり。ハロンドール人。出生地は幾つかの説があるが定説はない。生年は……(中略)。
サタルス帝には身分や種族を異にする多数の正妃がいたことは広く知られているが、コゼは奴隷階級出身であることを公言していた正妃のひとり。彼女の残した文書によれば……(中略)。
文盲だったコゼが勉強のために始めたとされる『コゼ日記』は、サタルス帝の毎日の食事、面会者、性交の相手に至るまでの赤裸々な日常生活が克明に記録されている貴重な記録であり、これにより当時の宮廷生活の様子を現在において知ることができる。
コゼは……(中略)。
……。
……。
ボルティモア著『万世大辞典』より(ここに再録した引用文はすべてスクルズ記念国際図書館から許可を受けて初版本から抜粋して採録したものである。