【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
043 小雨降る山街道
集落を出発してしばらくすると、小雨が降り始めた。
ハロンドールの王都に向かう一郎とエリカとコゼの三人旅である。
いまは王都の外郭地帯となる山岳越えの途中である。
ここを越えれば、いよいよ街道は王都に繋がる大きな城郭を繋ぐかたちで、十日もすれば王都に辿り着くそうだ。
王都に到着して、なにをするかは決まってはいないが、いまのところ、エリカとも相談して、冒険者にでもなろうかと漠然とは思っている。
ハロンドールは移民の国だ。
その中で王都は最も人口の多い場所であり、人種も多い。
目立たないように生活をしていれば人の海に紛れることもできるだろうし、アスカからの逃避行の場所として適すると考えている。
それはともかく、今朝遅くに前の晩に滞在させてもらった山岳部落を出てしばらくしてから、雨が降ってきた。
細かい霧雨なので、雨具が必要なほどでもないが、顔に当たる水の小粒が集まり、しずくに変わって顔を伝い流れていくのが鬱陶しい。
「失敗しましたね……。雨が降るとわかっていたら、もう一日あの集落に泊めてもらって、明日出発すればよかったかもしれません。それとも引き返しますか?」
この山道の脇街道を進む一郎たちの先頭を歩くコゼだ。
山道を完全に下れば、王都に繋がる主街道に合流する。
彼女は、このハロンドール王国に入る国境管理所がある城郭で縁ができ、一郎たちの旅に同行することになった人間族の凄腕のアサシン女である。
童顔で小柄なため、まだ成人に満たない少女のように見えるが、実際は一郎の後ろを歩くエリカより年上らしい。しかも、成人してから五年も経過している立派な大人の女性だ。
なお、この世界の一般的な成人年齢は十五歳であるため、二十歳のコゼは完全な大人の女性だし、一郎の元の世界の感覚でも、十分に大人だ。
しかし、見た目は可愛らしい童女の面影を色濃く残しており、どうしても幼さが目立ってしまう。
性奴隷二号である。
一郎の支配下となって、まだ間もないが、半月ほど前に岩間の天然温泉にたちよって以降、極端に甘えるようになり、さらに一郎の激しい性癖の受け入れにも積極的になった。
これも心を許してきた証拠だろう。実に可愛い。
「引き返しませんよ。もうかなり進んでいます。そもそも、コゼ、これくらいの雨は雨とは言えないわ。なにを軟弱なことを言っているのよ」
不機嫌そうに口を開いたのは、一郎の後ろを歩くエリカである。
一郎の性奴隷一号だ──。
透き通るような白い肌と飛び抜けた美貌、何よりも特徴的な尖った耳は、彼女がエルフ族であることを示している。エリカを見るたびに、一郎はここが異世界なのだと改めて実感する。
一郎がこの世界に召喚されてから、一箇月半程だろうか。
彼を呼び出したのは、エリカだった。もっとも、その力はアスカという魔女に一時的に与えられていたもので、召喚の元凶はあくまでアスカである。
エリカはそのアスカの愛人であり、部下でもあったが、一郎は淫魔術で彼女を裏切らせ、いまでは自分の性奴隷として従わせている。
アスカには報いも与えたが、まだ追跡を恐れての逃避行のさなかだ。
アスカが外界人を召喚するのは、次元を越える際に必ず特殊な力を得るからだ。彼女はその力を奪って奴隷軍を築いている。
一郎が得たのは「淫魔術」──精で女を支配し、その能力を底上げする力だった。
まずエリカを、次いで魔妖精クグルスまで眷属にし、さらにコゼを従わせた。
毎夜、抱いて可愛がるうちに、彼女たちはすっかり心酔し、いまや一郎にとってなくてはならない存在になっている。
いずれにしても、エリカの機嫌はそこぶる悪そうだ。
原因はわかっているので、一郎としては苦笑するだけで口を挾まないつもりだったが、ちょっと険悪になりそうだったので、少したしなめることにした。
「機嫌が悪そうだな、エリカ。そんなに喧嘩腰になるなよ」
一郎は歩きながら、冗談めかして口を挟む。
「あっ、申し訳ありません、ロウ様」
すると、エリカははっとしたように慌てて繕う言葉を口にする。
気の強いエリカだが、一郎に対してだけは素直で従順だ。
一郎の淫魔術で支配されているためというわけではなく、もともと真面目な性質であり、根は素直なのだ。
「まあ、気持ちはわかるけどね」
一郎は小さく笑う。
それだけでなく、淫魔術を使って、エリカのスカートと下着の中に包まれているクリトリスに、舌で舐めるような感覚を振り返ることなく送り込んでやった。
支配している女であれば、こんなことも自由自在だ。
「ひゃん」
後ろでエリカがしゃがみ込んだのがわかった。
一郎は歩みをやめて振り返る。
「ううっ、くっ、くうう……。ロ、ロウ様、悪戯は……」
エリカは真っ赤な顔を俯かせて、両手でスカートの上から股間を押さえてしゃがみ込んでいた。
もちろん、エリカは、その得体の知れな突然に刺激が一郎の仕業であることは知っている。
「悪戯か? こんな風に?」
一郎は、クリトリスを舐め続ける感覚に加えて、さらにお尻の穴を舐める感覚も注ぎ込んでやる。
「ひいっ、や、やめてください──」
エリカが悲鳴をあげながら、お尻に両手をやって全身を突っ張らせた。
だが、実際には感覚を注ぎ込まれているだけで、エリカの股間やアナルに触っているものは存在しないのだ。エリカに刺激を防ぐ方法はない。
一郎は遠隔で送っていた刺激を解除した。
エリカががくりと脱力する。
「ひ、酷いです、ロウ様──。いきなり、なにするんですか──」
エリカがまだしゃがんだまま顔をあげて一郎を睨んだ。顔が真っ赤だし、涙目だ。
だが、エリカが怒っていながらも、たったいまの突然の刺激ですでに欲情状態になってしまったのがわかる。
“エリカ
快感値:20/100↓”
一郎だけにしか見えない「魔眼」は、エリカの欲情の度合いをステータスとして、一郎の頭の中に表示させている。
「快感値」というのは、性的興奮度の数値であり、これが〈0〉になれば、絶頂となる。
目安としては、平常時で〈200〉から〈300〉が普通であり、性的な興奮が開始すると〈100〉を切り、〈30〉をさがると、挿入可能なくらいに股間が濡れている状態ということだ。
一瞬だけの刺激にしては、急激にさがりすぎだし、だからこそ、いきなり腰が抜けたみたいになってしまったのだろう。
エリカの平常時の快感値は〈100〉なのは、それだけ、エリカが感じやすいということだ。
しかも、刺激に弱く、いつも可愛い反応をする。
これもまた、一郎によるエリカの身体の開発と「調教」の結果である。
「でも、落ち着いただろう? それとも、まだ刺激が足りないか?」
「じゅ、十分です」
エリカが真っ赤な顔のまま立ちあがる。
だが、まだ少しばかり、腰がふらついている感じもする。
しかし、ステータスを観察する限り、体力は削れてないし、一郎が刺激を送るのをやめたことで、快感値も上昇して、平常に戻りつつある。
まあ、大丈夫だろう。
ここでまた、遠隔刺激を送り込めば、感じやすくて、そういう苛めのような刺激に弱いエリカのことだから、今度は一気に〈10〉くらいまで下降するかもしれない。
それはそれで面白いかもしれないが、一郎は自重した。
「ふふふ、でも、エリカはご機嫌斜めなのね……」
コゼも立ち止まって振り返っている。
三人で山道の途中で集まった感じになった。
それにしても、一郎は情事においてだけは、ただの一度も劣ったことがない。
剣も力も持たず、ただ淫魔術を授かっただけの男に過ぎないが、その力は彼を一夜にして絶倫の「淫魔師」へと変えた。精で女を支配するだけでなく、無垢だった童貞を相手の性感を見抜く達人に変え、連続して絶頂へ導くことも、逆に寸止めを繰り返すことも思うがままだ。
性欲は尽きず、射精も無尽蔵。エリカとコゼを毎夜抱き、気絶させることも珍しくない。むしろ相手がふたりだけでは物足りないほどである。
思えば、三十五歳まで女も金もなく生きてきた貧乏男が、いまや美貌のエルフや童顔の女アサシンを思うままに抱けるのだ。皮肉にも、召喚したアスカを恩人と呼んでもよいくらいだった。
「でも、ご主人様、ご主人様を不快にさせた罰として、やっぱり、まだお仕置きが必要ですよ。ちょうど、人里から離れたこともあるますし、裸歩きの罰なんてどうですか? きっと愉しめます」
コゼが白い歯を見せた。
すると、エリカが怒りを一気に顔に浮かべたのがわかった。
「なに言ってんのよ──。やるわけないでしょう──。あんたがしなさいよ──。そもそも、あんな変態扱いされるなんて、あんたのせいだからね──」
「おお、こわ。そんなに怒鳴らないでよ。そもそも、エルフ族のあんたが性欲の高い淫乱の変態女だというのはわかってんだから、そんなに照れなくていいのよ。ちょっとした露出癖やマゾの性癖のことだって、あたしもご主人様も、それであんたを蔑むことなんてないのよ。むしろ、愉しい玩具だと思って、遊ばせてもらうだけよ」
「き、聞き捨てならないわねえ──。誰が変態女よ。いい加減にしないと怒るわよ──」
エリカが大声で怒鳴り上げた。
一郎は無言でひそかに肩を竦めた。
実のところ、エリカの不機嫌さの原因は、数日前のちょっとした一郎の悪戯心に遡る。
誰も通らない山街道に差し掛かったとき、ちょっとした気紛れで、エリカを縄で後手に縛ったあと、エリカに屈辱的な真似をさせて遊んだのだ。
スカートをめくったり、下着を膝までおろしたまま歩かせたり──さらにはコゼとふたりで棒を突きつけ、羞恥に震える彼女をからかうなど、好き放題に悪戯をした。
長い時間ではなかったし、三人だけのちょっとした遊びだった。
しかし、その場には誰もいないと思っていたが、不運にも藪の陰から覗いていた者がいたのだ。
翌日立ち寄った集落では、「絶世の美女エルフが縛られ、下着をおろされて歩かされていた」という噂が広まり、三人で集落に立ち寄ったとき、エリカに好奇と嘲笑の視線が集中したのである。
そんな事情もあって、エリカはいまも機嫌が悪い。
でも、原因を作った一郎には怒りをぶつけず、楽しげにけしかけていたコゼにばかり矛先を向けるので、一郎としては苦笑するしかなかった。
「怒鳴らないのよ。そもそも、ここにいるのは三人だけなんだから、今更でしょう。あんたは、恥ずかしいことをさせられたり、意地悪な責めをされたりしたら、すぐに興奮するマゾちゃんなのはわかっているのよ。自覚はあるんでしょう?」
だが、コゼはエリカの怒りをさらりと受け流すだけだ。
「自覚ってなによ。わたしは普通よ──。馬鹿にしないでよ。マゾはあんたでしょう──」
「馬鹿になんかしてないわ。あたしはマゾよ。ご主人様専用だけどね……。でも、あんたもそうだと言っているだけじゃないのよ。なにを怒っているのよ」
「だったら、あんたが裸とかになって歩きなさいよ──。そもそも、あんな変態扱いされるなんて、あんたのせいだからね──」
「うわっ、だって、なんだかんだで、羞恥責めで興奮してたじゃないの。違うとは言わさないわよ。マゾっ子のエリカなんだから、ご主人様にちょっとばかり辱められて、ねっとりとお股を濡らしたんでしょう? そりゃあ、変態扱いされても仕方ないじゃないの」
「変態でも、マゾでもないって言ってるでしょう──」
「ええ? 本当に自覚ないの? エリカはマゾよ。決まっているじゃないの」
コゼがけらけらと笑う。多分、わざとだ。
だが、つい先日までの彼女はまるで別人だった。奴隷として縛られ、望まぬ人殺しを繰り返させられ、さらに主人の部下たちに慰み者として弄ばれる──そんな惨めな日々を生きてきたのだ。
自殺すら許されぬ絶望に囚われ、影のように怯え続けていた娘が、一郎の淫魔術によって記憶の痛みを切り離され、いまや陽気な悪戯好きへと変わった。
本来の彼女は、きっとこういう娘だったのだろう。
「違うったら──」
「違わないわよ。マゾっ子エルフちゃん」
コゼがさらに呷るようにあおるように揶揄う。
「しつこいわねえ──。いい加減にしなさいよ、コゼ──」
エリカがコゼに飛び掛からんとするように、コゼに手を伸ばした。
さすがに驚いて、慌てて一郎もエリカを掴んでとめる。
「おい、落ち着けよ、エリカ。わざと怒らせるような物言いで揶揄われているんだ」
一郎はエリカの身体を掴んで、呆れ気味に言い諭す。
ちょっとだけ、エリカが大人しくなる。
「いいですよ、ご主人様。離してあげてください。だったら証明してみる?」
すると、コゼがにこにこと微笑みながら、エリカにそう言った。
エリカはまだ一郎に身体を抱えられたままだ。
「証明?」
エリカが怪訝そうに応じる。
「だから、あんたがマゾっ子じゃないという証明よ。あんたの手を縛って、あたしが三タルザン好きなように責める。それで達しなかったら、二度とあんたのことをマゾって言わないわ」
「はあ、なによ、それ?」
「その代わりに、たったの三タルザンでいっちゃったら、エリカはマゾという証拠よ。それ相応にご主人様に扱ってもらいましょう」
「なんで、そんなことをしなきゃいけないのよ。ばかじゃないの」
腕の中のエリカが顔をしかめたのがわかった。
確かに、馬鹿みたいな提案だなとは思った。
まあ、面白そうだとは思ったが……。
三タルザンというのは、召喚前の世界では、約五分ということだ。
その時間、レズ責めを競おうというコゼの挑発であり、まあ、確かに馬鹿なことではあるのだろう。
一郎の元の時間感覚では、時間にして五分程度ということであるから、さすがにエリカも、そんな短い時間で達することはないだろうとは考えているとは思う。
だからこそのコゼの挑発だ。
しかしながら、一郎はなんとなく罠のようなものをコゼの言葉の中に感じてはいた。
もちろん、それを口に出すことはない。
「あら、怖いの? 遠慮しなくていいのよ。それに、どうせ、夜になれば、ご主人様はあたしたちをお抱きになるわ。その前のちょっとした余興よ。ご主人様を愉しませることもできるし、あんたはマゾじゃないことを証明できる。問題ないじゃないのよ」
「だから、なんで、わたしがそんなことをしないとならないといけないのかって、言ってんのよ──」
また、エリカの身体に力が入る。
一郎はエリカを慌ててエリカを抱く腕に力を込めた。
「おい、落ち着けって、エリカ……」
「でも、あたしも、あんたから試しを受けるわよ。あんたの後にあたしが縛られて、あんたに好きなようにさせてあげる。それならどう?」
コゼがにやりと微笑む。
「えっ、わたしもあんたを?」
エリカの力が再び抜ける。
しかし、一郎はコゼがかすかに一郎に向かって、目配せをしたのが見えた。やはり、なにかを企んでいる気配だ。
「ええ。好きなようにしていいわ。でも、あたしはエリカの責めなんかに反応しないけどね。あたしが感じるのはご主人様の責めにだけよ」
「へえ、面白いこと言うわねえ……。じゃあ、とにかく、あんたもわたしに責めさせるってこと?」
「まあ、そういうことね。どう、勝負する? まあ、あんたとのマゾっ子勝負で負けることなんてありえないけどね。だいたい、エルフ族というのは、五大種族の中で一番淫乱だと決まってるんだから」
「聞き捨てならないわねえ。五大種族の中で一番の淫乱は人間族よ」
「なにを根拠に言っているのよ。他種族に対して排他的で気取っているエルフ族が実は、魔道修行と称して、子供時代から淫乱なことをお互いにやっているのは知っているんだから。これでも奴隷上がりよ。エルフ族の秘密修行のことだって、人だと思っていない奴隷の前では平気で喋るから何度も耳にしたわ」
「な、なに言ってんのよ、あんた」
エリカがちょっと絶句した感じになる。
だが、正直なエリカだ。コゼの物言いにちょっとたじろいでいるのがわかる。
もしかしたら、コゼが言った、エルフ族は淫乱だとか、魔道修行のための淫靡な性遊びというのは、満更出鱈目ばかりでなく、ある程度の真実を含んでいるのかもしれない。
そんな感じだ。
しかし、エルフ族の秘密の魔道修行とはなんだろう。すごく興味がある。
今度、問いただしてみようかとも思った。
「いいから、あたしの挑戦を受けなさい。どっちがマゾっ子なのかの勝負よ。あたしが負けたら、あんたの言うことをなんでも聞いてあげるわよ。その代わり、負けたときには覚悟するのよ」
「ふうん。ならいいわ。やっても……。でも、その代わり覚悟しなさい。そして、なんでもすると言ったことを忘れんじゃないわよ」
「好きなようにしていいわ。負けたら、全裸歩きでも、なんでもしてもいいわよ。まあ、エリカにマゾっ子勝負で負けることは考えられないけどね」
「面白いわねえ。やるわよ。マゾっ子勝負──」
意外なことに、エリカがコゼの言葉に応じる返事をする。しかも、完全に挑発にのせられてやる気満々だ。
一郎もちょっとばかり呆れた。
だが、面白いことになったとも思った。
一郎は、ほくそ笑むとともに、ふたりの行く末を愉快そうに見守ることにした。