※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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049 墓前にて…幻惑の魔人

「──苗床だなんて、ふざけないでよ」

 

 エリカは、吐き捨てるように言った。羞恥と怒りで頬が熱く、拳を握りしめる。

 さっきまで幻術に囚われ、偽のロウに犯されかけていた記憶が頭をよぎる。あの一瞬、抗えずに身を委ねそうになった自分を思い出すだけで、胸の奥がちりちりと焼けるように痛んだ。

 

「……それなのに、あんたは、幻に騙されて、のこのこ身を任せかけた……。呆れたわねえ……。奴隷なら、主人を間違えちゃだめでしょう」

 

 冷ややかに言い放ったのは、コゼだ。

 その視線の鋭さに、胸の奥を抉られる。

 

 ここは、エリカ、ロウ、コゼの三人で雨宿りを兼ねて今夜の宿にした洞窟である。

 いつものように夜が始まり、ロウとコゼのふたり掛かりで責められていたのだが──、気がつけば、ロウが偽者に入れ替わっていた。

 どの時点だったのか、判然としない。だが記憶を辿れば、コゼの姿がいつの間にか消え、責め手がロウひとりだけになった瞬間があった。さらに、その責めが鞭打ちに変わった……。

 あのときか──。

 そう思い返しただけで、再び腹の底が煮えくり返る。

 

「な、なによ……。だって、幻術なんてわからなかったもの……」

 

 言い返しながらも声が震える。口惜しさと恥ずかしさで喉がつまる。

 

「ふうん……知らなかった? だからどうしたの? ご主人様以外に身を任せていいと?」

 

 コゼはあきれたように鼻を鳴らす。

 

「そんなことは言ってないでしょう──」

 

「じゃあ、なんなの? 気がつかなかったら、仕方ないって? 言い訳にしては、随分と甘いわね」

 

「うう……」

 

 言葉が続かない。

 

「とにかく、ご主人様のことなら、声も仕草も触れられた感触さえ間違えるはずないわ。わからなかった時点で、奴隷失格よ」

 

 淡々と告げるコゼの声音に、頬がさらに熱くなる。

 怒鳴り返したいが、なにも言い返せなかった。口惜しさがじわじわと胸を満たし、思わず唇を噛みしめる。

 

「まあいいわ……。とにかく、ご主人様を探そう」

 

 コゼだ。

 

「そうね……」

 

 エリカは、洞窟の中を見回した。

 だが、はっとした。そこにあるべきものがなかったのだ。

 ロウの背負い袋も、外套も、彼の剣もない。

 あるのは、赤く燻る焚火の火だけで、炎が壁をゆらゆらと照らしている。焚火の周囲にあったはずの毛布や水筒などのものも消え果てている。

 

 エリカは腕で胸を隠しながら、はっとして足元を見た。

 自分の服もない。

 コゼも同じだった。

 ふたりは全裸のまま、ただここに取り残されていたのだ。

 

「……なにもない……。そんな、馬鹿な」

 

エリカの唇から小さな呻きが漏れる。

 

「待って、たったいままで、あんたが吊られていた鎖とかは?」

 

 コゼが声をあげた。

 エリカも唖然となった。

 寸前まで、ロウに偽者によって、両手首を吊り上げられていた鎖──。それがどこにもない。

 

「どういうことなの?」

 

 思わず呟く。

 とにかく、ふたりで慌ただしく洞窟を探し始めた。

 壁を撫で、奥を覗き、足跡を確かめる。しかし、どこにも痕跡は残っていなかった。まるで最初から、ロウも荷も存在しなかったかのように。

 

「いないわ……どこにも」

 

 エリカは声を震わせた。

 コゼも険しい顔で首を振り、焚火のそばに立ち尽くしている。

ならば外に連れ出されたのか──そう思い、ふたりは洞窟の入口へ駆け寄った。

 だが……。

 

「……ない」

 

 洞窟の口が消えていた。

 そこには岩壁が続いているだけで、外の光も風も射し込まない。

 ここは、出口も入口もない、閉鎖された洞窟だ──。

 

「うそ……」

 

 エリカの背に冷たいものが走る。

 出入口さえ閉ざされ、外に出ることすらできない。

 

「……まだ幻術の中にいるということ……? エリカ、あんたの魔道でなにかわからない?」

 

 コゼの声は低く、怒気を含んでいた。

 その言葉に、エリカの胸もざわめいた。

 エリカは首を横に振る。エリカはそういう探知系の魔道は遣えないのだ。

 いずれにしても、見ているものすべてが幻かもしれない──。そう考えるだけで、足がすくみ、息が詰まる。

 

 ただひとつ確かなのは、ロウがいないという事実だけ……。

 

 


 

 

 じりじりと蝉が鳴いていた。

 梅雨が明けたばかりの夏の盛り、郊外にある共同墓地は熱気に包まれていたが、木立の間から吹き抜ける風に少し救われる。

 

 一郎は墓石の前に立っていた。

 数百と並ぶ石のひとつ。まだ新しいといえる部類に入る墓石である。

 

 ここには、一郎の従姉妹……“田中享子(きょうこ)ちゃん”が眠っている。

 

 ──もう二十年か。

 

 一郎は胸の奥でつぶやいた。

 彼が十五歳、享子が十二歳のときだった。

 病に倒れ、あっけなく逝ってしまった……。小さな妹のような存在で、無邪気に「一郎兄ちゃん」と慕ってくれた可愛らしい少女──。

 両親の突然の死により孤児となった一郎を引き取ってくれた伯父夫婦の次女であり、一郎にとっては、数少ない心を寄せてくれた存在だった。

 

 水を汲み、花を供え、線香をあげる。

 煙が揺れ、蝉の声の中で細く立ちのぼった。

 一郎は静かに手を合わせ、頭を垂れる。

 

 寮のある高校に入り、卒業して就職すると伯父夫婦とは自然と疎遠になったが、この墓だけは毎年訪れることを欠かさなかった。

 それが自分にできる唯一の義理のように思えた。

 合掌を終えて腰を上げ、帰ろうとしたそのときだった。

 

「あら……、一郎さん?」

 

 背後から、懐かしい声がした。

 振り返れば、そこに涼子ちゃんが立っていた。

 享子の姉であり、一郎より一つ年下の従姉。涼子だった。

 白いブラウスに淡い色のスカート、日傘を片手に立つ姿は、少女の面影を残しながらも落ち着いた大人の女性の雰囲気を纏っていた。

 

「……涼子ちゃんか……。驚いたな。北海道に嫁いでたんじゃなかったか?」

 

 一郎は目を細めた。

 

「ええ、そうなんだけど……。たまにはひとりで帰ってきたくなるのよ。お盆だから、どうしても妹に会いたくなって……」

 

 涼子ちゃんは微笑を浮かべた。

 彼女も墓前に歩み寄り、花束を供え、線香を立てる。

 二人並んで手を合わせると、不思議と時が戻ったような気持ちになった。

 

「……一郎さんは、毎年欠かさず来てくれてるんでしょう?」

 

 涼子ちゃんが横目で見てくる。

 

「ああ。伯父さんや伯母さんとは疎遠になったけど、享子ちゃんには世話になったからな」

 

 一郎は苦笑する。

 

「そうだったわね……。享子はなぜか、あなたが好きだったから……」

 

 涼子ちゃんがくすくすと笑う。

 

「なぜか、やたらと懐かれてな。俺にバレンタインでチョコをくれた唯一の女性だ」

 

 一郎は笑った。

 

「唯一ってどういうこと? あの頃ってこと?」

 

「いや、あの頃も含めて、人生三十五年。唯一だ」

 

「嘘でしょう?」

 

「恥ずかしながら本当だ。義理チョコすら縁のなかった俺の唯一の栄光だ」

 

 一郎は冗談めかして言った。

 もっとも、事実だ。

 つくづく、女性には縁のない人生だったと思う。多分、これからも……。

 

「そうなのね……。あたしも……あげてない?」

 

「もらった記憶はないね。そうだよね?」

 

「まあ、確かにあげた記憶もないわね、ごめんなさい」

 

 涼子はお道化たように、白い歯を見せた。

 一郎もそれに合わせて声をあげて笑う。

 だが、すぐに涼子ちゃんが真顔に戻る。

 

「ほんと、早すぎたわ……」

 

「そうだね……」

 

 しばらく、墓の前で無言で墓石を見つめた。

 蝉の声が一段と大きくなる。

 やがて、涼子がふと話題を変えた。

 

「ところで、一郎さんは、いま、どんな暮らしをしているの?」

 

「俺か?」

 

 一郎は肩をすくめて笑った。

 

「……まあ、たいしたことないさ。いろんな仕事を転々として、いまは、介護員かな。それもバイトみたいなもんだ。独り身の貧乏暮らしってやつだ」

 

「……独身? 奥さんはいないの?」

 

「一度もね。チョコすらもらったことがないって言ったろう?」

 

 一郎は声をあげて笑う。

 しかし、涼子ちゃんは、真顔のままじっと一郎を見つめてくる。

 その瞳の奥に、どこか切ない光が宿っているように見えた。

 

「なんだよ、そんな顔して……、惨めに見えるか? まあ、見えるか……」

 

 一郎は苦笑した。

 

「違うの……。そうじゃないの……」

 

 涼子は首を振った。

 

「えっ?」

 

 蝉の声が鳴き止まない

 熱気と共に耳を覆い尽くすその響きの中で、涼子はじっと一郎を見上げていた。

 

「……あたし、昔から、ずっと一郎さんのことが好きだったの」

 

 唐突な言葉に、一郎は言葉を失った。

 だが涼子の眼差しは揺らがない。まっすぐに、一郎を射抜いてくる。

 

「ちょ、ちょっと……なにを──言ってるんだよ……」

 

 一郎は声を詰まらせた。

 

「嘘じゃないわ」

 

 涼子は一歩、近づいてきた。

 香水ではない。夏草の匂いと、汗を含んだ女の匂いがふっと鼻をかすめる。

 

「妹ばかりが一郎さんに懐いていたけれど……あたしだってずっと。兄妹みたいなものだからって、自分に言い聞かせて抑えてただけ……。好きだったのよ」

 

 そう言いながら、涼子の指が一郎の腕に触れた。

 細く、しっとりとした指先がためらいなく肌に沿って滑る。

 

「ちょっと……」

 

 さすがに離れようとした。

 だが、涼子ちゃんがさらに距離を詰めて、一郎の胸に身体を擦り付けるようにしてくる。

 柔らかな胸が一郎の身体に当たり、激しく動揺する。

 

 どうしたんだ、一体全体──?

 一郎は呆気にとられてしまう。

 

「北海道に嫁いで……子供もいるわ……。でもね」

 

 吐息が近い。

 涼子の頬は紅潮し、唇がかすかに開いている。

 

「こうして目の前に立ったら……もう我慢できない」

 

 一郎は後ずさろうとした。だが背後は墓石だ。

 涼子の体温がさらに近づき、ほとんど抱きつかれるような体勢になった。胸の膨らみがシャツにぐいぐいと押し当てられる。

 

「だめだよ……。涼子ちゃんは、もう──」

 

「関係ないわ──」

 

 囁きながら、涼子の指が一郎の胸をなぞり、ボタンにかかる。

 さらりと一つ外され、熱い空気がシャツの隙間から流れ込む。

 蝉の声に混じり、彼女の荒い呼吸が耳もとを打った。

 

「二十年……ずっと言えなかったのよ」

 

 瞳は潤み、熱に浮かされたように揺れている。

 

「お願い、一郎さん。妹じゃなく……“女”の私を見てよ」

 

 そう言うと、涼子は自ら唇を重ねてきた。

 柔らかく、甘く、けれど必死にしがみつくように。

 

 墓地の真昼、蝉の声が響く中。

 涼子の体は、姉でも従姉でもなく──ただ飢えた女の熱を放っていた。

 

 おかしい……。

 涼子ちゃんと口づけを交わしながら、大きな違和感を覚えた。

 大きな当惑が鎮まり、冷静な自分が戻ると、こんなことはあり得ない……という考えが頭に浮かぶ。

 

 誰だ、これ──?

 

 涼子ちゃんじゃない──。

 

 根拠はない──。

 勘だ。

 

 しかし、自分の勘は当たることを知っている。

 

 ステータスを──。

 

 ステータス……?

 なんだ、それ……と思いながらも、一郎は、ほとんど無意識のまま、自分のなかのなにかの“力”を使っていた。

 瞬時に頭に文字が浮かぶ。

 

 

 

 “イフリート

  妖魔族(淫魔人)、性別なし

  年齢:***

   封印中“

 

 

 

 イフリート──。

 妖魔? 淫魔人?

 封印中──?

 

 なんだ、これ?

 

 その瞬間だった──。

 あらゆる思念が突然に沸き起こった。

 

 違う──。

 これは現実じゃない──。

 

 あの世界に生きていた田中一郎は、もういない。

 涼子ちゃんとは、高校を卒業以来、一度も会ったことはないし、当然に享子ちゃんの墓の前で再会するなどという事実もない。

 

 しかも、一郎は、アスカというこの世界の魔女によって、異世界に召喚され、エリカというエルフ族の女と、コゼというアサシン女、クグルスという魔妖精を仲間にして、逃避行をしていて……。

 

「誰だ、お前、イフリート──」

 

 一郎が怒鳴った瞬間、抱きしめていた涼子の身体がふっと熱を帯び、次の瞬間──溶け出した。

 白いブラウスも、しなやかな肢体も、甘い吐息も、ぬめる液体のように形を失い、滴りながら崩れていく。

 

「つっ……」

 

 その奥から、別の姿が現れた。

 褐色の肌は滑らかでありながら、人肌とは異なる異様な質感を放っていた。触れれば熱いはずなのに、氷の刃のような冷たさと、炎の芯のような灼熱が同時に伝わってきそうな──そんな矛盾を孕んでいる。

 紅の瞳は炎を溶かし込んだように燃え、黒髪は風もないのに赤く火の粉を散らすように揺らめいていた。

 人ならぬ気配を纏った異世界の美女──淫魔人イフリートだった。

 

 同時に、蝉の声も墓石の列も、夏草の匂いさえも、砂絵のように音もなく崩れて消え失せた。

 気づけば、一郎は上下左右すべてを木の板に囲まれた四角い空間に立っている。

 光源はどこにもないのに、不思議と視界ははっきりと明るい。

 

「どこだ、ここは……イフリート?」

 

 一郎は怒鳴る。

 

「祠の中だな」

 

 女は紅の瞳を伏せ、どこか哀しげに嘆息した。

 

「それよりも、お前こそ……なんだ? お前といい、連れの女といい……どうして簡単にわしの幻術世界から脱出できる?」

 

 艶やかな唇からもれる声は、咎めるでも責めるでもなく、ただ不思議そうな調子だった。

 

「……なにを言っている?」

 

 一郎は眉をひそめる。

 

「……ああ、もしかして、これも、わしの力がまだ不完全だから、か。……まあ、エルフの娘はちょろかったが……。力が足りん……。もっと淫気を集めなければ……」

 

 女は自らに言い聞かせるように、哀しげに嘆息する。

 

「ああ? どういう意味だ?」

 

 一郎には意味がわからない。

 ただ、不吉なものが胸の奥をざわつかせるばかりだった。

 

「どういう意味でもいいだろう? まあよい。わしがこの祠からか脱するには、まだ淫気が不足ということだ。エリカ、コゼを苗床にすることも考えたが、お前の記憶に接してわかった。お前こそ、あいつらの力の源か……。お前こそ、苗床にすべきだな」

 

 イフリートが言った。

 

「苗床? なんだそれ。それに、記憶だと? もしかして、さっきのは、お前が俺の記憶に触れて作った幻術か?」

 

 一郎の問いに、イフリートは紅の瞳を細めて、艶然と笑った。

 

「いかにも。わしは淫気を得るために、苗床とする素材の記憶を辿り、幻術で誘い淫気を喰らう……。それがわしの力だ」

 

 女の声音は甘美で、それでいて冷たかった。

 

「淫気を喰らう……?」

 

 もしかして、魔妖精のクグルスと同じような性質をもった存在か?

 そういえば、ステータスに、「淫魔族」とあるが……。

 

「……だが、お前の記憶は奇妙だったな。見たことのない世界。見知らぬ街並み。人間ばかりの、薄っぺらな暮らし……。そして──碌な記憶がない。とことん、女との接触の記憶がないので、うまく淫魔の幻術を作れんかった」

 

 艶やかな唇が皮肉に歪む。

 

「はあ?」

 

「なあ、お前、これまでの人生で女と親しく接したことがなかったのか。適当な相手を探し出すのに、どれほど苦労したことか」

 

「……ほっとけ」

 

 一郎は吐き捨てる。だが頬が熱くなるのを抑えられなかった。

 

「まあいい……」

 

 イフリートは紅の瞳を輝かせ、豊満な胸元に手を這わせながら、ゆっくりと衣を滑らせていく。

 甘い吐息が一郎の耳を灼き、同時に硫黄めいた焦げた匂いが鼻を突いた。

 女の胸は柔らかに押し寄せながらも、炎の芯のような熱を掌へ突き刺す。近づくだけで、血が煮え立ち、脳が痺れるような感覚に囚われていく。

 

「……とにかく、お前に最高の快楽をやる。だから……わしの苗床になれ」

 

 妖艶な声とともに、イフリートは裸身のまま一郎に抱きついてきた。

 熱を帯びた肢体が押し寄せ、灼けつくような吐息が頬をなぞる。

 

「くっ──」

 

 一郎は危険なものを感じて、咄嗟に身をよじって、逃れようとした。

 だが、その瞬間──。

 周囲の木の壁が波打ち、黒い影がうねり出す。

 無数の触手が生き物のように伸び、一郎の手首、足首、腰、胸を絡め取った。

 

「なっ──?」

 

 全身が引きすくめられ、逃げ場を奪われる。

 冷たい触手の感触に鳥肌が立ち、しかしじわじわと淫靡な熱が伝わってくる。

 触手が吸盤のように肌に食いつき、熱と冷気を交互に送り込みながら、境界を曖昧にしていく。

 自分の肉体が溶かされ、異形に取り込まれていくような錯覚が走った。

 

 そこへ、イフリートの艶やかな裸体が重なった。

 灼熱の吐息を首筋に落としながら、紅い瞳で一郎を射抜き、妖しく囁く。

 

「くくく、観念しろ……お前はわしの苗床となり、淫気を注ぎ続けるのだ──」

 

 イフリートの細い手が一郎の男根に触れ、ねっとりの揉み始めた。

 触手が脈打ち、一郎の四肢をさらに締め上げる。

 灼熱の吐息と冷たい感触が交互に押し寄せ、理性の境界が削り取られていく。

 

「くっ、ああ……」

 

 視界が赤黒く染まり、意識が千々に引き裂かれそうになった──。

 

 そして……。

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