※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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10話 新米冒険者と歌姫の幼馴染【歌姫三】
064 地下水路の大ラット狩り


 大ぶりの影が五つ、湿った石畳を横切って、目の前の格子へと低く潜り込んだ。

 毛並みが鉄に擦れて、ごそりと音を立てる。鼻を刺す獣脂の匂いと湿った空気が混じり、喉の奥がわずかに苦くなる。

 

 『王都ハロルドの地下水路の大ラット狩り』──。

 

 正式に冒険者登録を済ませてから、二度目のクエストだ。あのマイムの城郭でやった歌姫ニーナからの依頼を含めれば、三度目になる。

 

 大ラット──。

 言葉としては「大ネズミ」だが、この世界においては、凶暴な猛獣だ。

 赤ん坊ほどの大きさの巨体に黒ずんだ毛並みをまとい、ところどころ瘡のように毛が抜け落ち、濡れ光る肌が不気味に浮かび上がっていた。

 

 一匹でも人を簡単にかみ殺せる攻撃力と凶暴さを備えているが、さらに恐ろしいのは群れであることらしい。

 十数匹が一斉に襲いかかれば、数名程度の人間など瞬く間に引き裂かれる──そう教えられていた。

 

「うほお、まただ。雄も雌も、次々に罠の籠に飛び込んでいく……。すごいいい」

 

 檻籠の縁をなぞりながら、魔妖精クグルスが翅を震わせた。すっかりと興奮状態だ。

 

「さすがは、ぼくのご主人様だ。やっぱりすごいや」

 

 クグルスの言葉に、一郎は小さく笑った。

 

「食欲に勝るは性欲ってね。クグルスのお手柄だ。俺は思いついただけしな」

 

 一郎は言った。

 

「ううん。ご主人様がすごいのさ。こんな方法、ぼくには思いつきもしなかった。ええっと……ふぇろもん……だっけ?」

 

「まあな」

 

 一郎は頷く。

 異性を引き寄せる匂いの元となる化学物質──。

 一郎の元の世界では「フェロモン」と呼ばれているものだが、この世界には存在しない概念だ。だからこそ応用できた。クグルスにしか扱えない淫気の力を借り、雄と雌の発情を籠の中に編ませられないかとやってみたのだ。

 結果は、発案の一郎も驚くほどの大成功だった。

 いまも、まるで吸い込まれるかのように、次から次へと異性を呼ぶ匂いを漂わせた檻に向かって、大ラットの突入が続いている。

 

「本当です……。ただ匂いを仕込んだだけで、こんなにうまくいくなんて不思議です……。本来、大ラット狩りは、かなり難しいクエストなんです。だから、昇任試験扱いにもなるんですけど……」

 

 一郎の前に立つエリカが振り向くことなく言った。

 エリカは、大ラットの攻撃から一郎を守るために、一郎に背を向けている。

 もっとも、いまのところ、大ラットは、エリカにも一郎にも見向きもせず、異性のフェロモンに引きつけられて、次々に檻に突入していく。

 エリカは、ただの一度も、剣も魔道も使ってない。

 

「ただの匂いじゃないけどな……」

 

 一郎は言った。

 

「そうさ──。ご主人様の発想と、ぼくの力が合わさってこその作戦だぞ。ラット用に練ったぼくの淫気の層が鼻先をかすめれば、たちまちに、雌は雄の籠に。雄は雌の籠にさ──。どんなもんだい、エリカ」

 

「わかっているわよ。あんたのお手柄よ、クグルス」

 

「そうさ。ぼくとご主人様の、お手柄だよ」

 

 クグルスがくるくると罠になっている大ラットの捕獲用の檻の上で舞う。

 そのクグルスの下では、またもや突入していた大ラットが檻に入り、格子の奥で、先にいた大ラットたちが背を押し合合わせるとともに、檻の蓋が閉まる音が水路に跳ね返った。

 

「まあ、クエストでは、これからも頼むことが多いと思うから、よろしく頼むな、クグルス」

 

 一郎はクグルスに視線を向ける。

 

「もちろんだよ、ご主人様」

 

 クグルスは、元気に応じた。

 

「そうですね……、でも今回、クグルスを呼び出せたのは、人目のないような地下だからこそです……。場所は選びます……」

 

 前に立つエリカだ。

 

「ふん、そんなのは、お前たちがうまくやれよ」

 

「そうはいかないわよ、悪いけど、魔妖精のあんたは、地上では禁忌種族だし、魔妖精を連れて歩けば、王都中が騒ぎになるわ……。でも、今回は助かったわ」

 

「ふふん、そうとも。ぼくの淫気があれば、獣でも人でも、欲望にまっしぐらさ」

 

 クグルスが胸を張った。

 すると、エリカがちらりと背後の一郎を振り返り、真剣な声音で続けた。

 

「けれど、大ラットは本来、本当に厄介な相手なんです。牙は鉄の檻すら噛み砕きますし、動きもすばしっこい。しかも群れで動くから、油断すれば冒険者はあっという間に食い荒らされます。初心者が命を落とすことも少なくないんです」

 

 革の具足がかすかに鳴る。背中越しに伝わる緊張は、真面目な性分そのものだった。

 

「だけど、うまくいきそうだな」

 

 一郎は笑う。

 

「はい……。でも、本来、危険なクエストだからこそ、地上に出れば市民を襲わないように。その駆除を兼ねて、C(チャーリー)ランクへの昇任試験にしているんですけどね」

 

 エリカが一息つき、ふと柔らかい声音を添えた。

本来なら、昇任試験は数度の実績を重ねてからでなければ挑めない──D(デルタ)ランクのためのギルド支部でもそう説明されていた。

 だが、一回目の成果が特に高く評価されたことで、例外的に二回目の依頼が昇任試験扱いと認められたのである。

 つまりは、支部長のテリオ婆さんの判断により、早くもC(チャーリー)ランク昇任試験の大ラット狩りを任されることになったということだ。

 もっとも、評価の中心はエリカとコゼであり、自分ではない──それはよくわかっているが……。

 

「昇任試験を認められたのは、間違いなく、エリカたちのおかげだけどね」

 

 一郎は笑った。

 

「でも、これは、ご主人様のお手柄だよ、威張っていいと思うよ」

 

「そうか?」

 

 クグルスの言葉に、一郎は口の端を上げた。

 まあ、今回については、我ながら思いつきにしては上出来だった。檻に押し込まれていく大ラットの群れを見ていると、胸の奥が少しだけ誇らしくなる。

 

 一郎も、まだ付け焼き刃の知識でしかないが──冒険者の格付けは、上から……。

 

 S(シーラ)ランク

 A(アルファ)ランク

 B(ブラボー)ランク

 C(チャーリー)ランク

 D(デルタ)ランク

 

と呼ばれている。

 依頼──クエストも同じ区分で斡旋され、受けられるのは自分のランクかそれ以下だと教えられた。

 

 実績のない新米冒険者は、まずDランクから始まる。

 だが、Dランクの依頼はギルド本部ではなく、王都の外れにある支部で扱われるのだ。

 支部は日雇い仕事に近い案件を振り分ける場所で、本来「冒険者」と堂々と呼ばれるのは、本部でクエストを受けられるCランク以上の者たちなのだという。

 

 難度が上がれば報酬も上がり、複数のパーティが同じ依頼を望めば、上級ランクが優先される。

 だから誰もが上へ行けるだけ行こうとする。単純で、そして現実的な理屈だ。

 いずれ、Sランクにまで昇れば、登録の功績だけで年金が支給されるという。──腕のある者を逃さないための、ギルドのやり方らしい。

 

「雌籠が半分、交換の合図を出すね」

 

 クグルスが小さな手で結び目を確かめ、縄を二度、軽く引いた。

 間をおいて、上で待機しているコゼが応えるように、縄を一度ぴんと張り返す。すぐに、籠がするすると竪穴を昇り始めた。

 

 竪穴は、一郎たちの立っている地下通路のすぐ脇に通じている。

 檻が音を立てながら上がっていくと、やがて地上でコゼがそれを荷車に積み替える気配が伝わってきた。今度は逆に、空になった檻が縄に括りつけられて、するすると降りてくる。

 

「はあ……。雌籠は満了。雄も、あと三分の一くらいだな」

 

 一郎は降りてきた檻を受け取り、横に並べて置いた捕獲用の籠の隣に据えた。

 そこへクグルスが舞い降りる。翅を震わせながら、籠の中へ再び淫気を編み込むと、目に見えぬ層が檻の奥でゆらめいた。

 

「よし、仕込み完了。これでまた入ってくるはずだよ」

 

 次の瞬間、鼻先をひくつかせた大ラットたちが、迷うことなく新しい檻に吸い込まれていく。

 

 背後では、エリカが剣を構えたまま、気配を逃さず一郎を護っていた。

 上ではコゼが荷車を操り、地上と地下を繋ぐ。

 設置と仕込みは一郎とクグルス。

 それぞれの役割が嚙み合い、獰猛な大ラットの群れを、次々と罠へと誘い込んでいくのだった。

 

「おい、ところで、エリカ──。お前だけ、なにもしてないじゃないか」

 

 檻に淫気を仕込みながら、クグルスが翅をばたつかせて叫んだ。

 

「なっ……変なこと言わないでよ、クグルス。ちゃんと、ロウ様やあんたをラットから守っているじゃない」

 

 エリカが不満げに言い返す。

 

「でも、一度だって戦わないし、多分、必要ない。ご主人様だって空の檻を受け取って設置してるんだぞ。なのに、エリカは剣を構えて突っ立ってるだけなんて怠けすぎだ」

 

「でも、もしものとき、ロウ様を守れるのは、わたしだけよ──」

 

「危険なんてないよ。大ラットは匂いに夢中で、ぼくやご主人様、お前にも見向きもしない。実際に汗を流してないのは、お前だけだ」

 

「そ、そんなこと言ったって……ロウ様を万が一にも危険に晒すわけには……」

 

 困惑した声音。それでも剣は下ろさない。

 一郎はくすりと笑った。

 

「まあまあ、クグルス。エリカには特別の役割を任せようか……」

 

 背後から胸に手を伸ばし、布越しに柔らかな双丘を揉みしだく。もう片方の手は腰を撫で下ろし、股間へ。布越しにもわかる淫魔術の赤いもやをなぞり、そこを重点的に愛撫した。

 

「ロ、ロウ様……駄目です……そんなこと……」

 

 細剣は握ったまま、視線も前。声だけが小刻みに揺れる。

 

「ちゃんと構えてろ。心配するな、危険が迫ればすぐ離す。そのときは全力で俺を守れ。それまでは──俺を癒やしてくれ」

 

「そ、そんな……あっ、く、んんんっ」

 

 胸を押し揉む指先、指先で股をなぞる。

 エリカの肩が大きく震えた。脚もわずかに力を失いかける。

 

「あっ、ちょっと……」

 

「おい、剣を下げるなよ。騎士なら構えを崩すな」

 

 一郎は愛撫を継続しながらささやく。

 エリカがぐっと歯を食いしばって、姿勢を伸ばしたのがわかった。

 かすかな嗚咽が喉で震えているが、懸命に声は殺している

 

「ロ、ロウ様……。ひっ……く……んん……」

 

 だが、エリカは敏感なのだ。

 全身が愛撫に反応し、身体は震えだす。

 胸甲の下の乳房は手の動きに合わせて形を変え、股の布地はすでに熱を帯びて、一郎の指に湿り気を足していく。

 だが、剣先だけは必死に前を向け続ける。

 

「そのままだ……そうやって、俺を守りながら、感じていろ」

 

「は、はい……」

 

 耳元に落ちる囁きに、エリカの息が一瞬だけ荒くなる。

 だが、それでも、彼女は背筋を伸ばし、喉から漏れそうな声を、必死に噛み殺していた。

 

「おい、剣先がぶれてるぞ……本当に俺を守れるのかな」

 

 耳元にかかる低い声に、エリカはびくりと身を震わせた。

 

「だ、大丈夫です……っ、わたしは……ロウ様を……」

 

 言葉の途中で喉が詰まる。

 布越しに指が乳首を探り当て、固く尖った部分を執拗に弾かれたのだ。

 

「んっ……くうっ…………」

 

 小さな声が漏れそうになるたびに、彼女は唇を噛みしめる。

 けれど、一郎の指は止まらない。股間を擦る動きを、わざと焦らすように浅く弱くしたかと思えば、急に強く押し込める。

 そのたびに、エリカが淫らにびくびくと反応する。

 

「ははは、いいぞ、エリカ、これこそ、お前にしかできない役目だ。しっかりと、ご主人様に淫気を提供してさしあげろ。ついでもぼくにもね」

 

 クグルスが大喜びのこえをあげた。

 

「あ、あんたのためじゃ……。で、でも……もう駄目です。ロウ様……っ、こんなのでは……守れません……」

 

 エリカの剣先は揺れ、肩も膝も震えているのに、それでも彼女は必死に姿勢を保っていた。汗が首筋を伝い、唇はきつく結ばれている。

 だが、震える声のエリカの声の奥に、かすかな怒りが滲んだのを感じた。

 一郎は指を止める。

 何事も引き際が肝心だ。

 

「……わかった。ここまでにしておこう」

 

 エリカの身体から手を離すと、エリカは大きく息を吐いた。

 肩で荒く呼吸しながら、振り返らずに言葉を搾り出す。

 

「ロウ様は……本当に……意地悪です……」

 

 剣を構えたままの背中が、羞恥と悔しさでわずかに震えている。

 それでも、怒りきれず、ほんのりと潤んだ瞳を隠すように顔を前へ向け直した。

 

 捕獲は順調に進んでいった。

 檻は次々と大ラットで埋まり、縄の軋む音を残して竪穴を昇っていく。地上ではコゼが大檻へと移し替えているはずだった。

 

 すでに百匹は超えただろう。

 王都で冒険者登録をした前回の『エンゲル草集め』は三人がかりで一日働いて銅貨二枚──。

 だが今回は、一匹につき銅貨二枚。単純計算でも銀貨二枚の稼ぎだ。

 湿った石の上で汗をかきながら、確かにこの仕事は前よりずっと割がいいと実感していた。

 

 縄が再びきしみ、空の籠が降りてくる。

 一郎がそれを受け取り、隣の檻の横に据え付けると、クグルスがすぐに翅を震わせて舞い降りた。

 

「よし、仕込み完了。また群れが吸い込まれていくよ」

 

 クグルスが陽気に騒ぐ。

 一方で、またもや、鼻を鳴らした大ラットが、迷うことなく踏み込み、格子の音が硬く響いた。

 

 一郎はその様子をひと息眺め、ふと前に立つエリカの背中へ視線を移した。

 相変わらず、細剣を構えたまま、ずっと前を見据えている。

 剣士らしい緊張感を保ちつつも、揺れる腰布が目に入ると、どうにも意地悪をしたくなる。

 

「さて……、じゃあ、また少し憩いをもらうかな……」

 

 口の端を吊り上げながら、エリカに近づき、スカートの裾に指を差し入れる。

 エリカは、太腿の半分が露出している短い丈のスカートだ。手を差し込むのは簡単だ。

 

「ロ、ロウ様……だ、駄目です……」

 

 抗議の声が返ってきたが、剣を構えたままでは押し返せない。

 構わずに脚の付け根まで手を入れる。布の奥に触れた瞬間、指先に濡れた熱がまとわりついた。

 エリカの下着は、一郎が驚くほどに濡れていた。

 

「なんだ……こんなに濡らして。これでは風邪をひくな」

 

 揶揄うようにささやくと、エリカの肩がびくりと跳ねた。

 必死に腰を捻って手を払おうとするが、動きは弱い。

 一郎は、エリカの腰の横の紐を解くと、あっという間にエリカの腰から下着を取り去ってしまった。

 

「うわっ、ちょっと──」

 

 エリカが叫ぶ。

 するりと抜け落ちたのは、白の紐パンだ。だが、べっとりと湿りを帯びて、エリカの蜜で濡れて変色していた。

 すでに、スカートの外に出た一郎の手の中にある。

 

「あっ、返してください──」

 

 エリカが真っ赤な顔で振り返り、剣を握ったまま手を伸ばす。

 だが、一郎は懐へ下着を滑り込ませて、ひらりとかわした。

 何度も取り返そうとするエリカの動きは必死だが、淫行にかけては、なぜか一郎が圧倒的に上手だった。

 

 そのとき、縄が二度ぐっと引かれる。

 湿った地下に、縄が擦れる乾いた音が響いた。

 やがて竪穴の上から、埃を散らすような気配とともに人影が滑り降りてくる。

 コゼだった。

 勢いよく竪穴の縁からコゼが身を滑らせて降りてきたのだ。

 

「ご主人様っ、もう地上の荷車も大檻もいっぱいです。……って、なにやってるの、ふたりとも──。あたしばっかり働かされて──」

 

「ち、違うわよ、こっちも働いていたわよ……。でも、ロウ様に悪戯されて……」

 

 エリカは慌ててスカートを押さえ、声を張り上げた。

 

「ああ──。やっぱり、ふたりでいちゃいちゃしてたんじゃない。あたしは貧乏籤──?」

 

「違うってば」

 

 エリカが反論する。

 

「まあまあ、コゼ。お前のおかげで順調だ。じゃあ、捕獲はここまでにしよう。いまからの地上の仕事は俺たちもするから……」

 

 一郎が笑ってなだめる。でも、コゼはまだ不満そうであり、頬を膨らませていた。

 

「絶対ですよ。それと、あとで、あたしも可愛がってくださいね」

 

 湿った地下の空気に、コゼの甲高い声だけが響き渡った。

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