※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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071 悪徳の報い

 天井から両手を縛りあげて宙吊りにされたニーナが、汗に濡れた両腿を狂ったように擦り合わせていた。

 吊られた体は痙攣を繰り返し、腿を伝った雫がぽたり、ぽたりと床石に滴り落ちていく。

 

「か、痒い──。た、助けてください──ひぐううっ──」

 

 悲鳴が部屋に響く。脂汗で濡れた頬、涎を垂らした口元。ドルニカの目には、その惨めな顔がいっそう愛らしく映った。

 

 ドルニカは長椅子にもたれ、葡萄酒の杯を片手に、その狂乱を愉しげに眺めていた。

 隣に控える侍女が静かに瓶を傾け、杯に赤い液を注ぎ足す。

 葡萄の香りと奴隷女の嗚咽が重なり、どちらが甘美か一瞬迷うほどだった。

 部屋の隅には護衛の兵が直立していた。

 無表情のまま、この光景を見守っている。誰ひとり声をあげない。

 ここでは、伯爵夫人の望みだけが絶対だ。

 

「やっぱり、正気に戻したのは正解だったわね。その分、発作の副作用も強くなったみたいだけど」

 

 ドルニカは、狂乱するニーナの宙吊りの踊りを眺めながら、横の侍女たちに話しかけた。

 いま世話をさせているのは、ふたりの侍女だが、彼女たちが困惑したように頷く。

 目の前のようなことは刺激が強いのか、ふたりとも落ち着かない感じだ。まあ、このニーナをこの王都屋敷で飼うことにした以上、今夜のような光景は日常茶飯事になる。慣れてもらうしかない。

 

「あああ、後生です──。かいいい──。お願いで……ごさいます……お願い……」

 

 ニーナが泣き叫び続ける。

 だが、だんだんとその声も暴れ方も小さなものになっていっている。

 宙吊りにして放置し、そろそろ一ノスだ。

 体力の限界も近いのだろう。

 

 このニーナには、本来なら薬切れの発作で錯乱しているはずだが、ブルドが一時的に抑える調整薬を与えてある。

 正気をつなぎとめた分、苦しみは深まり、痒みも昂ぶりも倍加しているらしい。

 だが、意識がはっきりしているからこそ、羞恥も恐怖も増幅しているのだ。ぞくぞくする。

 

 ドルニカは、ゆっくりと立ち上がり、痒みに顔を歪める女奴隷の前に歩み寄った。

 

「そんなに痒いの? ほほほ……お前が強請ったから、股と尻にドラクスの薬を塗ってやったのよ。もっとも、今日はそこに痒み剤をたっぷり混ぜてあげたけどね」

 

 ドルニカの言葉に、ニーナの吊られた体はびくびくと震え、脚を擦り合わせる動きがさらに激しくなる。

 蜜に濡れた腿が粘つき、空気にいやらしい匂いを漂わせる。

 

「あああ……もう、許して……。犯して……。お慈悲を……どうか……お慈悲を……」

 

 ニーナは呻くように言った。

 ドルニカは、腰に差していた乗馬鞭を抜くと、その先端でニーナの股間をほんの少し突く。

 あくまでほんの少しだ。

 一ノスも放置された痒みが、刺激を与えられたことで、むしろ苦しみが増加するだけの、些細な刺激だ。

 

「ああああっ、もっと──。もっとですううっ」

 

 ニーナが狂ったように全身を悶えさせ、大量の脂汗が羞恥に飛び散る。

 

「……それは、もう少し後よ……。今夜からはもっと愉しくなるわ。薬切れにのたうつか、痒み剤に狂うか──お前にはその二つしかないの。好きに味わいなさい」

 

「あああっ」

 

 ニーナが暴れ続ける。

 余程に痒みが耐えがたいのだろう。

 だが、まだまだ許さない。

 これからが面白いのだ。

 

「そうそう、ブルドから知らせがあったわ……。もうすぐ、お前の想い人がやってくるそうよ。そうしたら、その痒い場所を心ゆくまで掻き毟ってもらえるわ」

 

 すすり泣いていたニーナがびくりと顔を上げた。

 怯えに濡れた瞳が大きく開かれる。

 

「ど、どういうことですか……。ま、まさか、トーイを──」

 

 その恐怖の顔が甘美だ。

 心の奥にぞわぞわと熱が広がる。

 この裏切りの歌姫をどうすればもっと苦しませられるか。どうやって不幸のどん底に落とすか……。

 どうやったら屈辱と痴情に顔を歪ませられるか。

 考えるだけで身が疼き、愉悦が込みあがる。

 

「あの男はお前を奪い返そうと動いていたそうよ。だから捕らえて、お前と一緒に性奴隷にしてやることにしたの。嬉しいでしょう? 好きな男と並んで調教を受けられるのだから……」

 

 すると、ニーナが大きな悲鳴をあげた。

 

「そ、そんな約束は違います──。トーイには手を出さないって──お願いです、どうか、トーイだけは──」

 

 泣き叫ぶ声が心地よく響く。

 だが、脚は止まらない。

 必死に擦り合わせ、蜜を滴らせ、吊られた身体を淫らに震わせている。

 愉快でならない。

 

 ドルニカは、乗馬鞭を逆に持ち替え、張形の形になっている握りの部分で、痒みに痙攣する尻肉を割り、乗馬鞭の握りを容赦なく突き入れてやった。

 

「ひあああああっ──」

 

 ニーナは吊られたまま大きく跳ね、奇声をあげた。

 だがすぐに腰を揺らし、挿入された握りに尻穴自ら擦りつけてくる。

 涎を垂らし、愛液を迸らせ、必死の形相で……。

 哀れなほど、一生懸命に……。

 

「そう、それでいいのよ。もっと腰を振りなさい。快いでしょう? 淫らに尻をほじられて悦ぶ姿を、恋人に見せてあげなさい」

 

 ドルニカの口角を歪ませ、低い声で笑う。

 ニーナは涙声で首を振りながらも、腰の動きは止まらない。

 

「いや……いやです……。トーイには……見せたくない──」

 

 その懇願がたまらなく甘い。

 

「あらそう……。だったら、なにもしてやらないわ。その痒みを朝まで堪えるがいいわ。そのころには痒みも収まるでしょう。もっとも、次は薬切れの苦しみが来るけどね」

 

 ドルニカは、尻穴から柄を抜いて嘲笑した。

 ドラクス中毒にしたニーナに与える薬に、強い痒み剤を混ぜるというのは面白い思いつきだった。

 ニーナは、中毒症状を楽にするためのドラクス薬を得るために、痒み剤を受け入れなければならないということであり、当然に中毒症状が一時的に緩和されても、痒みという苦悶にのたうつしかない。

 だが、痒み薬を塗らなければ、ドラクス薬は得られず、いずれにしても、ニーナは地獄の苦しみを味わい続けることになるのだ。

 

 この地獄は、あのトーイにも与えてやる。

 ニーナの前で、痒み剤を尻に塗ってくれと哀願させる──想像するだけで胸の奥に熱い愉悦が広がった。

 

「ふふふ、痒み剤入りの薬を塗るか、そのまま狂い死ぬか──好きに選べばいいわ……。いずれにしても、トーイはもうすぐ来るのだから……」

 

「あああ……」

 

 啼き声が虚しく響く。

 愛しい人を辱められる未来を悟って泣き、痒みに狂って呻き、吊られた身体をだらしなく震わせる。

 哀れで淫らなその姿を眺めているだけで、尽きせぬ快楽が胸の底からじわじわと湧きあがってきた。

 

 ドルニカは踵を返し、長椅子へ戻ろうとした。

 視線を巡らせた瞬間、眉がぴくりと動いた。

 

 部屋の隅に控えていたはずの護衛が、前へ崩れ落ちていたのだ。

 また、侍女のひとり卓に突っ伏し、もうひとりの侍女は床倒れていた。

 誰も動かない。物音ももしなかった。まるで、突然に深い眠りに落ちたようだった。

 

「えっ?」

 

 ドルニカが思わず漏らした声が室内の冷気に吸われた。

 胸の奥にひやりとしたものが走る。

 そのとき、扉がいきなり開いた。

 

 入ってきたのはブルドだった。

 後ろには、あのトーイの姿──。

 さらに三十歳すぎと見える男と、小柄な若い女が従っている。どちらも見覚えはない。

 

「ト、トーイ──。ああ、わたしを見ないで──トーイ──ああ、お願いです──トーイをここから出して──なんでもいたします──だから、トーイは許してあげて──」

 

 ニーナが叫んだ。

 

「大丈夫だ、ニーナ。助けにきたんだ──」

 

 トーイが脱兎のごとく駆け、宙吊りのニーナの身体を抱き支えた。

 ドルニカは呆気にとられた。

 

「な、なにを勝手なことを──。ブルド、なぜ拘束していないのよ──」

 

 ドルニカは声を張り上げて立ちあがった。

 

「ブルド、ニーナの拘束を解け。すぐにだ」

 

 そのとき、ブルドに従う男が口を開いた。

 

「は、はい……ご、ご主人様……。その代わり……」

 

 ブルドが走った。ドルニカの存在など視界に入れていない。

 壁の操作具が動き、鎖が鳴って降りる。

 ニーナの身体が床へ下ろされ、トーイが抱き寄せた。

 目の前で起きていることが信じられない。

 

 なぜ、ブルドが──?

 なぜ、護衛も侍女も倒れている──?

 

「ご主人様……、ニーナの枷の鍵は、その女が身に着けているはずです」

 

 ブルドの声が続いた。

 ご主人様──?

 ブルドが“ご主人様”と呼ぶ男──?

 これはどういう状況なのか……?

 

「わかった、ブルド──。それよりも、トーイさん、ニーナさんは痒み剤を塗られて苦しんでいるようです。そこでとりあえず抱いてあげてはどうです?」

 

 さっきの男──ブルドに“ご主人様”と呼ばれ、ブルドとともに部屋に入ってきた男が言った。

 

「こ、ここで……ですか……?」

 

 トーイだ。

 

「ええ……。俺たちに遠慮はいりません……。隣室でふたりだけで抱き合わせてあげたいのですが、ニーナさんにも、このドルニカへの仕返しを見物させてあげたいのですよ」

 

 その男が言った。

 すると、トーイが覚悟を決めたように真剣な表情になる。そして、床にはおろされたが、まだ両手首に枷がはまったままのニーナに向き直る。

 

「ニーナ、大丈夫か? なにも考えるな。俺が悪かったんだ。マイムに帰ろう。俺の嫁になってくれ。そして、宿屋で唄を歌って欲しい。結婚しよう。この数日のことは忘れよう」

 

 トーイが言った。

 ニーナは泣きながら拒絶の言葉を発した。

 だが、トーイがその声を妨げるように股間へ指を差し入れると、痒みに悶えていた身体が激しく震え出した。

 ニーナはトーイに向かって「もう自分は戻れないから帰ってくれ」と訴えたが、その一方で、指で掻きほぐされる苦痛の痒みから解放され、嬌声をあげ始めた。

 やがて、口から洩れるのは快楽に蕩けた声だけになっていった。

 

 ドルニカは、はっと我に返った。

 

「ブ、ブルド、説明をしなさい──。これはどういうことよ──? まさか、裏切ったの?」

 

 金切声が口から洩れた。

 

「ブルドはこっちに来い。奉仕しろ。うまくできれば、精液を飲ませてやる。それでいまの苦しさはなくなるはずだ」

 

 男が低く命じながらこちらへ歩いてきた。

 ドルニカは反射的に身を引いたが、男は攻め寄ることなく、長椅子に腰をおろしただけだった。

 そこは、つい先ほどまでドルニカ自身が葡萄酒を手にして座っていた場所だった。

 

 一方で、ブルドが嬉しそうにその男の脚のあいだに跪く。

 うっとりとした顔で男の衣を剥ぎ、性器を取り出して、恭しく口に含む。

 ドルニカには、なにが起きているのかまったく理解できなかった。

 

「お、お前は誰よ──?」

 

 やっとの思いで声を発した。

 この場を支配しているのが、自分でも、ブルドでもなく、この男であることを悟ったのだ。

 

 この男がどういう手段を使ったのかわからないが、ブルドを完全に手懐けている。

 そして、この男と女、トーイをブルドに屋敷へ引き入れさせたのだろう。

 屋敷は将軍に頼んで厳重に兵を配置させていたはずだったが、ブルドが導けば意味をなさない。

 この部屋の護衛と侍女がいつの間にか倒れていたのも納得だ。

 ブルドであれば、簡単なことだ。

 

「コゼ、その女の服を剥ぎ取れ。全裸にしたら、縄で縛れ。脚を胡座に組ませてな」

 

 男がブルドの奉仕を受けながら、連れてきた若い女に命じた。

 

「大人しくしなさい、あんた──。ご主人様の命令よ。素っ裸になりなさい」

 

 コゼと呼ばれた女だ。

 いきなりドルニカの腕を掴んだ。

 

 逃げようとした。

 しかし、小柄のくせに力が強く、たちまちにその場に跪かされた。

 はっとした。

 右手に刃物を持っている。

 

「ひいい──いやああ──」

 

 ドルニカが悲鳴をあげたときには、すっぱりと服の前の部分が真っ二つに切り裂かれていた。

 さらに背中側も切断される。

 ドルニカはもがくが、おかしな技を使っているようであり、軽く押さえられているだけなのに、両手を動かせない。

 あっという間に下着まで切り裂かれて、ドルニカは生まれたままの姿にされてしまった。

 

「ご主人様、鍵です」

 

 コゼがドルニカが持っていたニーナの手首の枷の鍵を差し出した。

 

「トーイさん、鍵ですよ」

 

 男がトーイにそれを放った。

 トーイはそれを受け取ったが、いまはニーナと繋がった状態であり、そのまま行為を続けている。

 

 ドルニカにやっと恐怖が走った。

 これは異常事態だ。

 

「だ、誰か来なさい──。賊よ──、賊よ──、誰か来るのよ──。外にいる警備隊長に報せて──」

 

 ドルニカは悲鳴をあげた。

 しかし、コゼはドルニカの腕を取って強引に床へと押しつけた。

 さらに、コゼが腰から縄を取り出し、ドルニカの両腕を背後にねじり上げて縄で縛り、さらに無理やり脚を胡座に組ませた。

 そのまま、脚を胡座に組んだ格好で足首を絡めて縛りあげられる。

 

 ドルニカは、あっという間に素っ裸で胡座の姿勢に押さえ込まれ、身動きできなくなった。

 羞恥と恐怖で冷たい汗が背に流れる。

 

 そのあいだ、ブルドは男が股間から出している性器にむしゃぶりついたままだ。

 ドルニカには目もくれない。

 しかも、こんなに叫んでいるのに、誰も出てこないというのも不思議だ。

 

 そして、この男は余裕たっぷりの表情だ。

 ドルニカが騒いでも、絶対に大丈夫だという自信があるに違いない。

 自分がとんでもない危機に陥っていることを悟って、ドルニカの背に汗が流れる。

 

「下手糞な奉仕だな、ブルド──。まだ、エリカやコゼの足元にも及ばないな。だが、まあいい──。俺もいつまでもしゃぶられるのも面倒だ……。屋敷の制圧が簡単に終わったのはお前のお手柄だし、ご褒美をやるよ」

 

 男が言った。

 

「んんんっ──」

 

 ブルドが男の性器を咥えたまま歓喜の声をあげたのがわかった。

 男が腰を一瞬だけ振る。

 精を放ったのだろう。

 

「んん──んんんっ──」

 

 一心不乱に男の性器にむしゃぶりついているブルドは恍惚の表情だ。

 ドルニカは胡座に縛られた状態で、首だけをそっちに向けてその様子を眺めていた。

 ブルドの姿には呆気に取られるしかない。

 

「お、お前は誰よ──。せ、説明しなさい──。も、もしかして、雇われた冒険者というのはお前ね──?」

 

 ドルニカは声をあげた。

 

「そのとおりだ。俺はロウという冒険者だ。だけど、あんたも気が強いな。その格好でよく威張れるな」

 

 ロウと名乗った男が一物をズボンにしまいながら笑った。

 ブルドは、心からの悦びを顔に表しながら、まだ口の周りに残っているロウの精液を自分の手で集めて、美味しそうに舐めている。

 その顔には理性の欠片もない。

 

「お前、ブルドになにをしたの?」

 

 ドルニカにはブルドの変わりようが信じられなかった。

 トーイと、そのトーイが雇った冒険者の居場所がわかったという報せを受けて出て行ったのは今日の昼前だ。

 それが夜になったいま、完全にこの男に支配されきっている。

 どうして、そんなことがあり得るのだろう?

 

「別にどうということもないさ。ブルドには、自分でドラクス毒を塗らせたんだ。飲ませもしたかな。かなりの量を持っていたけど、全部使ったかな。いまのブルドは完全なドラクス中毒だ」

 

 ロウが笑った。

 

「ドラクスの毒……。全部……? そんなことをしたら……」

 

 ドルニカは、思わず声をあげた。

 

「安心しな。大量投与でも中毒で死ぬことはない。──中毒症状についても、俺の精液を飲めば、少しだけ楽になるように、身体をいじってやってる」

 

「はああ?」

 

「だから、ブルドは、もう俺の精液なしでは耐えられないんだ。こいつは、完全に俺の洗脳状態だよ」

 

 ロウは口の端を歪めた。

 ブルドは、いまだに、ロウに恍惚の表情を浮かべ、ロウの足もとにうずくまっている。

 命令を待つ犬のように……。

 

 ドルニカはぞっとした。

 この男は呪術師なのか?

 そんなことは魔道遣いではできないはずだ。

 だが、古い書物でそんな呪術が遣えるという存在の伝承に接したことがある。

 それがこの男──?

 

「いずれにしても、そんな格好にされたのに、まだ気丈でいられるとは頼もしいね。感心したよ──。だったら、これから始まることにも、気を強く保てるだろうね」

 

「な、なに言ってるのよ?」

 

「あんたみたいな鬼畜女にはどんなお仕置きをしたらいいか考えて、趣向を凝らしたよ。気に入ってくれるといいね──。エリカ、クグルス──」

 

 ロウと名乗った男が大声をあげた。

 すると、部屋の扉が開いて、大きな黒い影が入ってきた。

 ドルニカは目を見張った。

 

 黒い影に見えたのは、一頭の巨大な黒犬だった。

 筋骨隆々とした体躯に光る毛並み。唸るように低い声をあげ、股間には異様に肥大した陰茎を突き出している。

 明らかに……発情していた。

 

 犬の首輪を引いていたのは、若いエルフの美女だ。

 犬の歩みはゆっくりだが、その目には狂気じみた光が宿っている。

 ただの獣ではない。

 おそらく、人の手で調教され、人間の女を犯すためだけに仕込まれた獣だと一目でわかった。

 

「特別に調達してきた黒犬だ。少し伝手があってね……。お前みたいな女を躾けるにはちょうどいい」

 

 ロウが愉快そうに告げた。

 その黒犬が、涎を垂らしながらドルニカへ近づいてくる。

 まさか──。

 

 ドルニカは悲鳴をあげることすら忘れて、その黒犬を凝視した。

 若いエルフ女が発情で興奮しきった犬をしっかりと制御しながら、こちらへと引き寄せてくる。

 いやな予感がした。

 

「だ、誰か──誰か来るのよ──。は、早く──早く──」

 

 ドルニカは我に返り、力の限り叫んだ。

 だが、その声が虚しく反響しているあいだに、黒犬は完全にドルニカの背後へと回り込んでいた。

 唸るような息遣いが背にかかる。熱気と獣臭が混ざり、肌を粟立たせる。

 ドルニカは全身を恐怖に包まれた。

 

「いくら叫んでも無駄よ、あんた──。ブルドがこの屋敷からすべての家人を眠らせるか、追い払うかしたわ──。それよりも、報いを受けなさい」

 

 背後から聞こえてきた女の声は、静かな怒りを帯びていた。

 その瞬間、黒犬が興奮したように大きく吠えた。

 ドルニカは、心の底からありったけの悲鳴をあげた。

 しかし、やはり誰ひとり駆けつける気配はなかった。

 

「ブルド、伯爵夫人を胡座縛りのままうつ伏せにして差しあげろ。お犬さまを受け入れやすいようにな」

 

 ロウが命じた。

 すると、ブルドが従順に立ちあがり、縛りつけられたドルニカの身体を掴む。抵抗する間もなく、無理やりにうつ伏せにひっくり返された。

 

 縛られた足は胡座のまま固定されているため、腰と尻だけが高く持ち上がった格好になる。突き出された尻が宙にさらされ、肌に冷気が走った。

 背後で黒犬が鼻を鳴らす音が響く。荒い息づかいとともに、獣の熱気が尻にかかり、毛のざらつきまで伝わってきた。

 

「ひ、いやああああ──」

 

 ドルニカの喉から甲高い悲鳴が洩れた。

 

「ご主人様、指示どおりに、この貴族女の股間に、“ふぇろもん”という牝犬の匂いをまぶしておいたよ」

 

 甲高い声が耳元で響いた。

 ドルニカはぎょっとして目を凝らした。

 翅のある小さな小人女が宙に浮かんでこちらを見ている。

 

 魔妖精──?

 魔族──?

 この男はいったい何者──?

 

「選ばせてやろう、ドルニカ──。いまの乾いた膣のまま犬に犯されるか。それとも、ここにある、あんたが作ったドラクス入りの痒み剤を塗ってから犯されるかだ。どっちがいい?」

 

 ロウが鬼畜な笑い声をあげた。

 いつの間にか、ソファのところに置いていたドラクス薬入りの痒み剤の瓶を手にしている。ドルニカがニーナを嗜虐するのに使っていたものだ。

 

「い、いやああ──。いやよおお──。そんなことはしないで──。お、お願いよ──」

 

 ドルニカは胡座に縛られた身体を必死に揺すり、叫んだ。

 だが、コゼがしっかりとその身体を押さえつけている。

 

「二つの方法から選択だ。それ以外にはない」

 

 ロウの笑い声が、なおも室内にくすくすと響いた。

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