【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「おい、シルキー。あの管はなんだ?」
屋敷の裏手に広がる庭へ案内された一郎は、思わず声をあげた。
芝生の庭園の隅を、川から続く金属管が横切り、途中から地中へ潜っていたのだ。
「あれは水道でございます。ピエール様のご希望で、川の水を屋敷に引き込めるようにしたのです。地下室の浴室には堰き止め栓があり、そこを外せば濾過された水が浴槽に流れ込みます」
「えっ、つまり、風呂があるのか?」
一郎は驚いた。
浴室のある家など、王侯貴族の屋敷でもない限り、無理だといままで言われていたのだ。
しかし、この屋敷にはあるらしい。
「わたくしが魔道で管理しております。ピエール様はよく湯を張り、マーリン様やわたくしとともに入浴を愉しまれました。いまは使っておりませんが、浴槽を常に整えておくのも、わたくしの務めでした。懐かしいことです」
シルキーは遠い記憶を辿るように口にした。
「地下に浴場があるということか。いまも使おうと思えば使えるのか?」
「もちろんです。ピエール様は、マーリン様やわたくしを縛り、浴槽の中で戯れるのがお好きでした」
淡々と告げられた言葉に、一郎は眉をひそめた。
「待てよ……お前は屋敷妖精だろう。なのに、ピエールやマーリンの性の相手まで務めていたのか?」
一郎は驚きを隠せずに言った。
「屋敷妖精は主人に従うものでございます。掃除や手入れが本分ですが、命令であれば主人の“趣味”にお付き合いもいたします」
あっさりとした返答に、一郎は唖然とした。だが同時に腑に落ちた。
シルキーが夫婦の営みに詳しい理由は、まさにそこにあったのだ。
そのとき、一郎の胸にある考えが浮かんだ。
この屋敷は、望んでいた理想の住まいそのものだ。もしもマーリンのゴーストを浄化できれば、自分がここを受け継ぐこともできるのではないか。
屋敷の主はすでにおらず、親族とも絶縁していたという。相続人が残っている可能性は薄い。建築から百年近くが経ち、正式の権利者も消えているだろう。
しかも、この屋敷にはすでにシルキーが住み着いている。
新たに主人と認めた者だけがここに住める。
ならば、マーリンを浄化したのち、自分が主として認められれば、ここを住まいとできるはずだ。
もちろん、そのためにはゴーストを救わねばならない。
だが、失敗すれば、一郎だけでなくエリカやコゼの命もない。死を思い描いても仕方がない。だが、生き残れたなら、持ち主のいない屋敷がまるごと残る。
成功を前提に手を打っておく価値はある。
そして、一郎の脳裏にもうひとつの考えが浮かんだ。
ここは冒険者ギルドのクエストに名が挙がる幽霊屋敷だ。
そのまま、未解決のままとしたらどうだろう?
未解決のままであれば、屋敷はギルドの預かりとなる。ならば、未解決扱いのままにすればいい。対外的には殺人ゴーストが棲みつく問題のある屋敷だ。そこに人が暮らしているなど、誰も想像しないだろう。
アスカの追っ手から身を隠す必要のある一郎たちとしては、外部の目を欺き、追っ手から逃れる隠れ家としては最適だ。
問題は、解決したクエストを未解決のまま扱うことを、ミランダが認めるかどうかだ。
だが、方法はある。
ミランダを説得するだけでなく、逆らえない「縛り」を与える手段も──。
人のいい彼女を罠にかけるようで、心が咎めるのは確かだが、一郎にはその「手段」がある。
この二箇月ほどの付き合いで、ミランダが意外に押しに弱いこともわかっている。
いずれにせよ、まずは、この事件を片づけたあとで、ここで暮らすことをシルキーに認めさせることから始めるか……。
一郎はそう心に決めた。
拷問を受けているはずのエリカやコゼには申し訳ないが、長引く話ではない。
いまのうちに、この屋敷を手に入れる布石を打っておくことは、決して無駄ではない。
「なあ、シルキー……。もし俺がマーリンさんの浄化に成功したら、この屋敷の主はいなくなる。そのときは俺を主人と認めて、俺たちがここに住むことを許してくれるか。そうなら、俺はお前の望みどおり、浄化に全力を尽くす」
一郎は問いかけた。
「あなた様が……でございますか……? まあ、屋敷妖精は屋敷に縛られるものですから、あなた様がわたくしを支配なされば、それは構いません……」
シルキーは小首を傾げて一郎を見つめたが、やがて首を横に振った。
「申し訳ありません。どうやら、あなた様には、わたくしを繋ぎとめる魔道力が備わっていないようです。魂を縛るだけの支配力がなければ、屋敷妖精をしもべにはできません。これはわたくしのせいではなく、屋敷妖精すべてに備わる本能なのです……」
「シルキー、俺の性器を舐めろ」
一郎は言葉を遮り、鋭く命じた。
「へっ?」
シルキーは目を丸くして固まった。
「俺たちは不本意ながらここに囚われ、命の危機にある。そして、お前の願いに従い、俺はマーリンという恐ろしい女ゴーストを浄化しようとしている。つまり俺は冒険者だ。冒険者は報酬なしに仕事はしない。このクエストの報酬はなんだ?」
「報酬……で、ございますか?」
「そうだ。報酬だ。報酬がなければ冒険者は力を発揮しない。お前が魔道の縛りなくしては存在できないのと同じだ。俺に望む仕事をさせたいなら、報酬を払え」
「そういうものなのですか……? まあ、わかるような気もします。でも、その報酬が、わたくしがあなたの性器をお舐めするということなのですか? そんなことでよろしいのですか?」
「それでいい。さあ、舐めろ」
一郎はズボンから一物を取り出し、にやりと笑った。
精に宿る淫魔術で、この屋敷妖精を取り込んでやるつもりだ。
「承知しました。わたくしでよろしければ……」
シルキーの姿は人間族の十歳ほどの童女にしか見えない。そのシルキーが一郎の前に跪き、小さな口を開いた。
屋敷妖精の貞操観念は人間のものとは異なるのだろう。躊躇いはなく、慣れた手つきで一郎の性器を片手に優しく掴み、もう片方の手を腰に添えて体を支える。
「んっ、んんっ」
シルキーが苦しげに鼻を鳴らしたのはほんの一瞬だった。
次の瞬間には当然のように、一郎の精を喉の奥へと流し込み始める。
精を呑み下すごとに、一郎は淫魔術の支配がシルキーの心の糸に触れるのを感じ取った。
やがて、その糸が根元に届く。
一郎はそこをぐっと掴んだ。
「んんっ?」
シルキーの身体が初めて震え、ぱっと口を離す。
慌てたように口に指を突っ込み、吐き出そうとした。
「吐くな。毒じゃない。受け入れろ、俺を受け入れるんだ。マーリンさんの支配はそのままでいい。マーリンさんが在る限りお前は彼女に仕える。だが、浄化されて消えたときは俺に従え」
「は、はい……従います」
マーリンの支配を否定しないと告げた途端、シルキーの心から抵抗の色が消えた。
やはり彼女にとってマーリンやピエールは、主人以上の存在なのだろう。
「それにしても……あなた様は何者……? なにで、わたくしを支配できたのです? わたくしは、こんなに強い支配を受けたのは初めてです……。けれど、あなた様は魔道の力をお持ちではないはず……」
戸惑う声をあげるシルキーの全身に、赤いもやが立ちのぼった。
「まあ、それは後でゆっくり話そう。まずは例の霊廟だ……。だが、その前に──」
一郎は抑えきれない好奇心に駆られた。
「……お前はピエールさんから、快感の極みを味わったことがあるか?」
「快感の極み……? 残念ながら、わたくしのような屋敷妖精は、そのような悦びを得られないのです。ピエール様は、とても残念がっておいででした……」
シルキーは消沈した声を落とした。
だが、彼女が無念に思っているのは、自らが快楽を得られないことではなく、主人の期待に応えられなかったことだ。
だが──いまは違う。
一郎の支配に落ちたことで淫魔術が働き、彼女の肉体は変化している。
その証拠に、一郎にはシルキーの新たなステータスが見えていた。
シルキー
屋敷妖精、雌
年齢:**
屋敷妖精(レベル20)
経験人数:男1、女1
淫乱レベル:A
快感値:100/100(通常)
支配者
マーリン(ゴースト)
ロウ
赤いもやの気配もある。シルキーに女の悦びを与えることはできると思う。
「なら、俺が経験させてやろうか
「えっ……? そんなことが……できるのですか?」
シルキーが驚きの声をあげる。
一郎は彼女の前に屈み込んだ。
シルキーが着ているのは、白いフリルのついた紺のワンピースに真っ白な前掛け──典型的なメイド服だ。
一郎はスカートの裾から手を差し入れ、股間へ触れた。下着はなかった。
感触は人間のそれに近いが、恥毛はない。
淫魔術で視える桃色のもやの地図に従い、指を這わせる。肉芽に触れて円を描くように擦ると──。
「はうっ……な、なんですか、これ……。ふわあっ──」
シルキーの身体がびくりと跳ねた。
一郎はしばらくそこを弄んでから、すっと裂け目に沿って指を滑らせる。
「あっ……あっ、ああっ」
小刻みに震え始めた身体から、すぐに潤いが溢れた。
一郎は指を穴へ送り込む。小さく狭いが、柔らかく、よく馴染む。何度も挿入されてきた痕跡がある。
「んんっ──」
シルキーは電撃に打たれたように震え、両手で一郎の肩を掴んだ。
「ここを犯されたことがあるな、シルキー?」
一郎は指を膣の奥に漂う真紅のもやへと動かし、そこを擦り立てた。
「はあっ……はあっ……な、なにが起こっているのですか……? ピ、ピエール様やマーリン様が、あんなに弄ってくださったのに……わたくしの身体は……なんの反応も示さなかったのに……」
シルキーは荒い息をつきながら、震える声をもらした。
「つまりは、ここを犯されたことがあるんだな?」
一郎は肉芽と膣の内壁を交互に指で擦っていた。いずれも、シルキーの身体の中で真っ赤なもやが浮かぶ部分だ。
「は、はい……。お、おふたりに……こ、ここを犯されました。潤滑油をつ、使って……。わ、わたくしを家族にしたいと……。はあ、はうっ……おかしいです……。熱い……とても、熱い……。熱くて……ああっ」
「熱くてどうした? 気持ち悪いか?」
一郎は指を動かしながら意地悪く言った。
赤いもやは股間全体に広がり、さらに胸や耳、足や首といった人間族なら当たり前の場所に、次々と赤や桃色のもや──性感帯の印が浮かびあがっていく。
やはり一郎の手で、屋敷妖精の肉体が性行為を受け入れるものへと変化しているのだ。
「い、いえ……き、気持ちいいです……。ああっ……こ、これがピエール様やマーリン様がおっしゃっていた……快楽の極み……なのですか……? はあ、はあ、はあ……あうっ──ううっ」
「快楽の極みはこの先にある。いま感じているのは、その入り口にすぎん」
一郎は膣内で指を動かし続けた。
シルキーの股間からはとめどなく愛液が溢れ、感受性の豊かさに一郎も驚かされた。
屋敷妖精という種族は人間でも亜人でもない。だが、見た目も身体のつくりも人間の童女と変わらない。顔立ちは可愛らしい十歳ほどの女の子そのものだ。
まるでメイド姿の童女を犯しているような錯覚に、一郎は自らを変態だと嘲りながらも、幼げなシルキーの官能に蕩ける顔に欲情を抑えられなくなっていた。
“シルキー
……
淫乱レベル:A
快感値:25/100↓”
ステータスを確認すると、すでに挿入可能の目安である三十を下回っている。
「シルキー……ここを性器で犯していいか。これも報酬だ」
一郎は欲望を隠さずに告げた。もとより我慢するつもりはなかった。
「ど、どうぞ……。わ、わたくしでよければ……。はううっ……はああ……ああっ」
指を動かすたび、シルキーの身体は大きく悶えた。
一郎は近くの庭のベンチへシルキーを連れていき、腰を下ろす。シルキーを向かい合わせに膝の上へ座らせ、ズボンから怒張を取り出して導いた。
「おおおっ」
シルキーが大きくのけ反り、一郎は小さな身体をしっかり支える。怒張はずぶずぶと股間に呑み込まれていき、彼女は大人の男を受け入れる肉体であることを示した。
一郎は腰を抱き、上下運動を与える。律動が始まった。
「はう、はあっ、ああ、ほっ……す、すごい……で、です……。な、なにかが……あ、あがってきます……。ひっ、ひいっ……」
メイド服のスカートに包まれた股を犯しながら、亀頭を赤いもやの位置に擦りつけるよう角度を調整する。シルキーの反応は激しさを増した。
「んふううう──」
ついにシルキーは背を大きく反らせ、絶頂の声をあげた。
「出すぞ。股で受けろ」
一郎は低く言い、身体をぐっと引き寄せて怒張を奥まで押し込み、精を放った。
「んふうっ……き、気持ちいいです……。だ、旦那様──」
シルキーは感極まった声を響かせ、一郎が放ち続けるあいだ、か細い声で喘ぎ続けた。
射精を終えると、シルキーはそのまま一郎の胸にもたれかかる。しばらく抱かせてやったあと、一郎は身体を起こし、シルキーを支えた。
だが悠長にしている場合ではない。今頃はエリカもコゼも辛い目に遭っているはずだ。
腰を動かすと、シルキーも反応した。
「あんっ」
抜けていくとき、シルキーは小さな悲鳴をもらした。
一度立ち上がったものの、力が入らずその場にしゃがみ込む。
「こ、これが……マーリン様が感じておられた快感の極み……。わ、わたくしにも、それが訪れるとは……思いませんでした……。ありがとうございます、旦那様」
まだ荒い息をつきながらシルキーは言った。
一郎は性器をズボンにしまい、彼女を抱き起こして長椅子に座らせる。
「どうした、腰が抜けたか?」
「は、はい……そんな感じです……。とても気持ちがよくて……。そ、それに、まだ力が入りません……」
シルキーはあっけらかんと答えた。
一郎は微笑んだ。
「そこで待っていろ。行ってくる」
そう言い残し、一郎はシルキーを置いて歩き出した。
「くふっ……くうっ……ふうっ……」
エリカは素裸のまま、魔道で動く床の上をひたすらに走らされていた。
両手は背後で水平に折り曲げられ、革の帯で固く縛られている。
口には、小さな穴の開いた丸い嵌口具が噛ませられていた。
いずれも、この地下の部屋にあらかじめ置かれていたものだ。女ゴーストの魔道で、強引に装着させられた。
下半身は最初から裸、上半身の衣類は命じられるまま自ら脱がされた。
抵抗は不可能だった。
反抗どころか、少しでも拒むような素振りを見せれば、たちまち「苦痛」を与えられる。
電撃や鞭のような痛みとは違う。
それは、身体の内側から発生する純粋な「苦痛」であり、耐えることも慣れることもできない。
ゴーストはそれを愉しむように笑いながら与え続けた。
こうして素裸で拘束されたまま、動く床に乗せられたのだ。
床には白い枠線が描かれ、そこから一歩でも足がはみ出せば「苦痛」が襲ってくる。
しかも床は絶えず動き続ける。
枠線の中に留まるには、走り続けるしかない。
それを長いあいだ繰り返させられ、エリカの体力は限界に近づいていた。
一体、これはなんなのか──。
思考も朦朧とするなか、連れ込まれる直前に、一郎が抱き寄せて囁いた言葉だけが、心を支えていた。
“──しばらく耐えろ。必ず、なんとかする”
その一言を信じて、エリカは屈辱的な運動を続けた。
「ほほほ……まるで犬ね。涎を垂らして、はあはあと、走る姿はまさに犬そのものだわ。多分、ピエールは喜んでくれるわ」
宙に浮かぶ女ゴーストが意地悪く笑った。
エリカは必死に足を動かしながら、口惜しさに歯噛みする。
だが、嵌口具の穴から洩れるのは、涎とヒューヒューという呼吸音だけだった。
それにしても、このゴーストは何者なのだろう……?
屋敷に入ったとき、淫靡な絵に描かれていた女であることは間違いない。
だが、不意に出現し、強力な魔道で拘束されてからの記憶は曖昧だ。
辛うじて残っているのは、宙に吊り上げられたあと、下から吹き上げられた怪しい煙を吸い込んだ瞬間に意識が乱れ、次に気づいたときにはロウに抱きとめられて正気を取り戻したことくらいだ。
だが、すぐさま連れ去られ、この屈辱的な拷問が始まった。
「エルフ女、もっと速度をあげてあげるわ。力を入れて走りなさい」
女ゴーストが愉しげに笑う。
次の瞬間、床の速度が一段階あがった。
「はあっ……はあっ……はあっ……」
涎を垂らすのも構わず、エリカは必死に脚を動かす。
体力には自信があるが、ゴーストが操る床は意地が悪いほど速い。
いまや全力疾走に近い。しかも両腕は後ろ手に拘束され、バランスを取るだけで精一杯だった。
「ひゅー……ひーっ……ほおっ──」
一方で、離れた場所からはコゼの苦しげな声が響く。
エリカが走らされているのに対し、コゼは床に描かれた八つの円を飛び跳ねて移動させられていた。
八つのうち光っているのはひとつ。
両足を揃えてその上に立つと、すぐに別の円が点滅を始める。
わずかな猶予のうちに飛び移らなければ、「苦痛」が襲ってくる。
光は素早く移動し、コゼの額には大粒の汗が浮かんでいた。
しかも彼女もまた穴のある嵌口具を噛まされている。
さらに股間には張形を喰い込ませた貞操帯まで装着されていた。
「んっがあああっ──」
転倒する音とともに、コゼの絶叫が響いた。
光の円を踏み外したのだ。
すぐさま襲ったのは、例の「苦痛」に違いない。
「うぐううっ──」
エリカは言葉にならぬ声で彼女を呼ぶ。
「ほら、転がっていても苦しみは続くだけよ。立って光を追いかけなさい、お前」
女ゴーストの残酷な声が響き渡る。
その間も、コゼのうめきは途切れない。
「ぐうっ……」
エリカも声を洩らした。
全力疾走を続ける体力の限界がきた。速度が落ちた瞬間、足が白枠の外にはみ出す。
「──あがああっ」
女ゴーストの笑い声とともに、あの凄まじい「苦痛」がエリカを貫いた。
一郎は中庭をひとりで進んだ。
霊廟はすぐに見つかった。庭の隅に、ひっそりと建っている。
ただ、シルキー自身が同行することはできなかった。
屋敷妖精としての彼女は、いまもマーリンの支配を受けており、かつてピエールから下された「霊廟には近づくな」という命令を解除されていない。
そのため、霊廟へ向かうのは一郎ひとりの役目となった。
鍵は書斎に保管されていたものをシルキーが取り出してくれており、一郎はすでに受け取っていた。
差し込み、回す。
扉はあっさりと開いた。
だが、中は墓所ではなかった。
びっしりと棚が組まれ、所狭しと性具が整然と並べられている。
「よくも、まあ、これだけ集めたものだ……」
一郎は独りごちた。
広さは畳二枚ほどだが、責め具の小道具で埋め尽くされていた。壁にも棚にも、ぎっしりと。
──さて。マーリンを落とすには、この中から何を選べばいい……?
そのとき、気配を感じて振り返った。
「……数十年、待ち続けた。時間の感覚すら失うほどにな。ようやく、この霊廟を開く者が現れたか……」
そこに立っていたのはゴーストだった。
一郎は驚き、すぐに悟った。
「あ、あなたは……もしかして、ピエールさん?」
ロビーに飾られていた肖像画の男の顔。
一郎によく似てはいたが、年上の落ち着きを帯びていた。
「その通り、ピエールだ……。なぜ、知っておる?」
男ゴーストは驚いている。
「そういう能力があるとしか……」
「そうか……。まあいい。私は事故で死に、魂だけになった。マーリンのもとへ戻ろうと試み、この霊廟までは辿り着けたが……これ以上は進めなかった。だが屋敷で起こることは、ここから見守ることができたのだ」
ピエールは一郎をまっすぐに見た。
「ずっとここに?」
「そうだ。すぐそこにいるのにな……。だが、私の魂は、この霊廟に縛りつけられている。ところが、マーリンは、ここには近づけんのだ。生前に、私がそう命じていたばかりに……」
「なるほど……」
一郎は心の中で推測した。
ピエールとマーリンは、同じ屋敷に魂を縛られた存在だった。
だが、ピエールは霊廟から出られず、マーリンは「霊廟に近づくな」という命令を受けたまま狂ってしまった。その結果、この霊廟の存在自体を認識できなくなっていたのだろう──。
そう考えると筋が通るように思えた。
「どうか、ロウ殿よ……」
「あれ、そっちも、俺の名が……?」
「知っている。屋敷での出来事はすべて感じている。さきほどの悪戯もな。シルキーは感激していたぞ。私には叶わなかったが、彼女を“女”にしてくれたようだ」
悪戯っぽく笑う顔に、一郎は気まずさを覚えた。
「……いや、あなたからしたら、娘のような者だったのでしょうね。申し訳……」
一郎はとりあえず謝罪の言葉を口にしたが、ゴーストのピエールがそれを手で遮った。
「いや、よいのだ。シルキーは、確かに、子を持たぬ私たち夫婦にとって、娘であり……そして共通の恋人でもあった。大切にしてやってくれ。この屋敷とともにな」
「えっ……」
思わず声を洩らす一郎に、ピエールは言葉を重ねた。
「それよりも行こう。私をマーリンのもとへ連れていってくれ。エリカとコゼへの拷問が、そろそろエスカレートする気配だ……。さあ、その張形を持っていけ。それですべてが終わる。マーリンを救えるのは私だけなのだ」
ピエールは棚を指さす。
二十ほど並んだ張形の中で、もっとも人の男根に似た肌色の一本を示していた。
「ええっと……この張形……ですか?」
「そうだ。それに私の魂は結びついている。だが、私にはそれを自力で動かせる力がないのだ……。頼む、私をマーリンに会わせてくれ」