【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】 作:ドン・ドナシアン
「そろそろ、自分たちが、わたしたちの飼う雌豚だと認めたくなったんじゃないの?」
女ゴーストがすぐ近くにしゃがみ込み、逆さ吊りのエリカの耳へと息を吹きかける。
耳は床すれすれにあり、金色の髪が床へ向けて垂れ落ちていた。両足首は大きく開かれ、天井を向いて固定されている。全裸の開脚逆さ吊り──羞恥の極みの体勢だった。
足首に拘束具はなく、見えない魔道の縄で宙に縛られているのだ。
背中側で水平に折られた両腕は革帯で固められ、身動きは完全に奪われていた。
「ふ、ふざけるんじゃないわよ、この馬鹿ゴースト……」
荒い息の合間に、エリカは毒づいた。
「エ、エリカ……」
対面で同じく逆さ吊りにされたコゼが、首を小さく横に振る。
挑発するな、という無言の忠告だった。
だが、エリカの怒りは抑えきれない。ロウがささやいた「我慢しろ」の一言も、もはや自制の楔にはならなかった。
「お、お前、また、このわたしをゴーストだと言ったね。許さないよ」
女の金切り声が響く。右手の杖がぴたりとこちらを向いた。エリカの背筋に冷たいものが走る。
あの仕草は──拷問の始まりの合図だ。
「いいこと。ここで屈服を口にすれば、逆さ吊りは解いて少し休ませてあげる。でも言わないなら──」
「ぐああああ──」
最後まで聞くより早く、股間を直撃する電撃が炸裂した。
身体は宙で激しく揺れ、喉から絶叫がもれる。
電撃の激痛に加え、全身の奥底に「苦痛」そのものが注ぎ込まれている。
外と内、二重の責めが重なり、意識が刈り取られそうになる。
対面のコゼも悲鳴を上げてのたうち、見開いた眼が苦痛に歪んでいた。
やがて、やっと電撃と「苦痛」が止んだ。
全身の力が抜け落ち、がくりと垂れ下がる。
つっと冷たいものが顔を伝い落ちた。尿だ──。衝撃で失禁してしまったのだ。
「自分の尿まみれになった姿なんて、雌豚そのものじゃないの、女エルフ。さあ言いなさい。わたしは醜い雌豚であり、このマーリンと夫ピエールの奴隷だと」
マーリン……。これが、この女の名か。
エリカはロビーの絵を思い出した。
夫ピエールの前に跪き、首輪を嵌められていた女……。あれがこのゴーストだ。
マーリンはロウをピエールと勘違いし、彼の命で自分たちを調教していると思い込んでいるらしい。
だが、どんな理由があろうと、ロウ以外に服従を口にする気は毛頭ない。
ロウであれば、どんな恥辱も耐えられる。
しかし、ロウでない誰かに膝を折るなど、絶対にするものか──。
「わ、わたしが……あ、あんたらの奴隷のわけないでしょう──。いい加減にしなさい」
エリカは気力を振り絞って怒鳴った。
声にしていなければ、心が折れそうだった。
本当は怖い──。
これ以上続けられれば、言わされてしまうかもしれない。言葉だけの問題ではない。口にしてしまえば、心までも従属してしまう。
ロウ以外に屈服する。それは底知れぬ恐怖だった。
「まったく強情ね。じゃあ、人間女──? お前はどうなの。自分がわたしたちの奴隷だと認めれば、逆さ吊りからは解いて少し休ませてあげる」
マーリンが視線をコゼに向けた。
「……ふん、あたしはロウご主人様の性奴隷よ。当たり前のことを訊かないで」
コゼが嘲笑めいて口角を上げる。
エリカは息を呑んだ。
同じ苦痛を受けているはずなのに、コゼは意志を崩していない。
羨ましいほどの強さだ。
「いい覚悟ね……ったら、拷問を一段階あげるわ。これでも雌豚じゃないと言い張れるかしら」
マーリンの顔に酷薄な影が走った。
「なっ……」
「くうっ、こ、これは──?」
次の瞬間、二人の下腹部が膨れ上がっていく。
魔道による浣腸──。大量の液が強制的に注ぎ込まれ、烈しい便意が腹の底から突き上げた。
「く、くうっ……ぐう……こ、こんな……」
エリカは奥歯を噛み締める。臓腑を押し裂かれるような衝動だ。
「はっ、はああ……」
コゼの苦しげな声が洩れる。
顔は蒼白に染まり、震える下腹は妊婦のように張り出していた。
自分も同じだろう。肛門に必死で力を込めるが、いまにも溢れそうだった。
漏らせば、全身が排泄にまみれる──。
その想像だけで全身が震えた。
「さあ、もう一度さっきの責めを重ねてやろうか。自分の糞便にまみれれば、いやでも雌豚だと悟るはず」
マーリンが冷笑する。
エリカは耳を疑った。
いま、ただ耐えているだけで限界なのに、ここへ電撃と「苦痛」を重ねるというのか。耐えられるはずがない。
瞬間、股間に直撃する閃光と、内側から噴き上がる苦痛が同時に走った。
「うわああああ──」
絶叫が迸る。対面のコゼの悲鳴も重なる。
ただひとつ、肛門の筋肉を締め続けることだけを意識する。
一瞬でも緩めれば終わりだ──。
だが容赦のない拷問は思考を奪い、意識を断ち切ろうとする。
歯を食いしばり続け──やっと、電撃と苦痛が途切れた。
荒い息だけが喉を満たす。もう罵りの言葉も出ない。
しかし、おそらく、二度目はない……。エリカは悟った。
一度目は辛うじて耐えた。
だが、繰り返されたら確実に排便してしまう。
ここから先は、「大便にまみれるか」、それとも「屈服の言葉を口にするか」の二択だ。
マーリンが再び笑みを浮かべる。
「さあ、もう一度訊こうか。まずは、エルフ女から」
エリカは唇を閉ざす。
マーリンは今度はコゼに視線を移したが、彼女も荒い息を吐くだけで黙っていた。
「……いいわ。どっちでも構わない。早く屈服した方だけ厠へ行かせてやる。遅かった方は豚のように糞便にまみれるのよ」
マーリンが冷たく言い放ち、さらに杖を掲げた。
「……さあ、選べ。十数える間に口にしなければ、再び電撃を浴びてもらう。どちらが先に口を割るか──楽しみだね」
エリカの腹は煮え返った。どちらか一人だけを救う──その卑劣さに……。
「ああ、じゃあ、あと十数えてやろう。数え終われば、電撃だ。でも、早い方だけ、厠を許してやるよ……」
エリカはなにも喋らない。コゼも必死に耐えている。
「さて、じゃあ、数えようか……。終われば、確実に糞便するような苦悶を与えてやろう……。十……九……」
数が始まる。
どちらか、ひとりだけ……。
エリカは必死に肛門へ力を込める。だが、腸の奥がうねりを上げ、内側から悲鳴をあげている。下腹は張り裂けそうで、肛門の括約が痙攣する。
一瞬でも気を逸らせば噴き出す──そう確信しながら、どうすべきかを考える。
そのときだった。
不意に拷問室の扉が音を立てて開いたのだ。
「ロ、ロウさ……」
入ってきたのはロウだった。
だが、慌てて口を閉じる。
あまりの嬉しさに、ロウ様と叫びそうになったのだ、懸命にそれを飲み込む。
この女ゴーストはロウを夫ピエールだと思い込んでいる。だからこそ、彼の安全は保たれている。
もしも、正体が露見した瞬間、その怒りは確実にロウへと向かうだろう。
「マーリン、お愉しみだな……。だが、それまでだ。俺の女を床におろせ。もう、遊びは終わりだ」
ロウの声が拷問室に響いた。
「な、なにを言っているの、ピエール? この女奴隷たちはもうすぐ屈服するわ。そうしたら、あなたに渡せるわ。ねえ、もう少し、わたしに任せてくれない」
「俺の命令が聞こえないのか、マーリン。ふたりをおろせ」
静かなのに鋭い、怒りを孕んだ声音。エリカはそれだけで、ロウが本気で怒っているのを悟った。
重力に引かれ、頭と肩が床に触れる。
足も解かれ、後ろ手に縛られたまま寝かされる形になった。
コゼも同じように下ろされる。
魔道の束縛は消えたが、両手の拘束は残り、便意も極限のままだ。エリカは必死に尻に力を込め続けた。
「ねえ、ピエール?」
甘えるような声を出すマーリン。
だが、ロウは険しい顔のまま睨み返した。
「よくも、俺の女たちをいたぶってくれたな……。それから、俺をピエールと呼ぶな。俺はロウ──。この女たちのご主人様だ──」
きっぱりと言い切る声。エリカは思わず息を呑んだ。
「ピ、ピエールではない? あああ……やっぱり……。そうだ……お前はピエールではない。ピエールじゃない……ピエールじゃない……ピエールじゃない……」
マーリンの呟きは次第に狂気を孕んでいく。顔は怒りに染まり、逆立つ髪が揺らめき、身体からは信じ難い魔力が溢れ出した。
危険だ──。
エリカにははっきりわかった。
次の瞬間、ロウは殺される。
そう思っただけで、全身が氷のように冷たくなった。
「ロウ様──。いえ、ピエール様──。そのピエール様とマーリン様に屈服します──。奴隷だと認めます」
エリカは絶叫に近い声をあげて身を起こした。
「ご主人様──。あ、あたしも認める。認めるから、殺してはだめ──」
コゼも叫ぶ。
だが、マーリンの耳には届かない。
杖を掲げ、殺意の魔道をロウへと向けていた。
「ロウ様──」
「ご主人様──」
二人の悲鳴が重なる。
そのとき、ロウがすっと前へ突き出したのは、本物そっくりの肌色の張形だった。
すると、マーリンの動きが止まった。
訝しげな表情を浮かべ、じっとそれを凝視する。
「どうした、マーリン? 私の一物を見忘れたか?」
突然、男の声が部屋に響いた。ロウの声ではない。
驚く間もなく、さらに異様なことが起きた。
ロウが張形から手を放し、後ろへ退いたのに、張形は床へ落ちず、その場に浮かび続けている。
そこに、ひとりの男のゴーストが現れた。
薄い灰色のガウンをまとい、その裂け目から張形が延び──いや、それはそのまま男の怒張へと変わっていた。
「お……おおお……。ピ、ピエール……。やっと……やっと……。会いたかった……会いたかったの……おお、ピエール……」
女ゴーストのマーリンは膝を折り、涙を流しながら震える。
エリカは息を呑んだ。
見覚えがある──。ロビーに飾られていた絵の男……。
これが本物の夫ピエールのゴーストだ。
「なにをぼんやりしている。挨拶をせんか、マーリン。私がお前に股間を差し出したときは、どうするのだ? どうやら、一から躾け直さねばならんようだな」
ピエールの声は厳しくも懐かしい響きだった。
「……躾けてください……あなた……。一から……どうか……。どうか、この雌豚を……」
マーリンは泣きながら這い寄り、衣を脱ぎ捨てていく。
透ける裸身をさらし、夫の怒張へと唇を近づけた。
だが、寸前で力尽きるように首を垂れる。
「あ、あなた……わたし……わたしは……」
嗚咽がこぼれ、号泣に変わる。
先ほどまでの狂気は消え、ただ穏やかな涙を流していた。
「なにも考えるな。もう、終わったことはよい。お前がここに来る者へした仕打ちも、本来は私が受けるべき責めだ。だが、もういい……」
「ああ、ピエール……」
ゴーストのマーリンはぼろぼろと涙をこぼし続けている。
「ここは私たちの居場所ではない。お前も、それをわかっているだろう。躾は次の世界で続ければよい。それよりも、久しぶりに、お前の奉仕を受けたい。いつまで待たせるのだ」
ピエールの声は慈愛に満ちていた。
マーリンは涙をこぼしつつも微笑み、怒張に口づけし、舌を這わせ始めた。
「んん、んっ、んんっ……」
「さあ、マーリン……」
ピエールの手に首輪が現れた。
それをマーリンの首へ嵌め、鎖を握る。その姿はあの絵と同じだった。
奉仕を受けさせながら、ピエールが顔を上げ、ロウに視線を向ける。
「……ロウ殿、感謝する。言葉では尽くせぬが、心より礼を言う。この屋敷は自由に使ってほしい。譲渡の旨を私の書斎に記した。ゴーストの署名など大した効力はあるまいが、せめてもの気持ちだ。それと……マーリン」
視線を妻へ戻す。
「はい……」
マーリンは奉仕を中断し、顔を見上げる。
「ここに来るまでに、ロウ殿と少し話した。お前の杖を、女エルフのエリカ殿に譲ってやれ。それから、屋敷にある魔道具も彼らに渡してほしい」
「あなたに従います……」
首輪に繋がれたまま、マーリンは静かに応じ、再び奉仕に戻る。
次の瞬間、一本の杖がエリカの足元に現れた。
「では行こう、ロウ殿。この屋敷のものはすべて任せる。それと、シルキーを頼む」
「わかりました。そして……どうか、お幸せに」
ロウが応じる。
「ああ……」
ピエールが頷いた。
すると、ふたりのゴーストの姿が真白な光に包まれ、静かに溶けて消えていった。
ことん──と音を立てて張形だけが床に落ちる。
もう、ふたりの姿はどこにもなかった。
「……浄化したようだな。大丈夫か、お前たち?」
ロウがにっこりと微笑み、エリカとコゼを見やった。
「ロウ様──」
「ご主人様──」
声を上げた瞬間、ロウは二人を抱き寄せた。
その腕の温もりに、張り詰めていた心がほどけ、全身が熱に震える。
「よく耐えたな……」
囁きとともに頬を撫で、額へ口づけを落とす。
さらに胸や股間を撫でる手が加わり、愛撫は慰めのはずなのに、極限の便意に追い詰められた身体には拷問に等しかった。
「あ……だ、駄目です……っ。ロウ様……それ以上は……」
「ひっ、ああ……気、気持ちいいですけど……いまは……」
悲痛な声は嬌声へ変わり、涙を浮かべた顔が震える。
快楽と便意がせめぎ合い、心身を切り裂くようだった。
だが、ロウは楽しげに笑みを浮かべ、懐から短い鎖で繋がる足枷を取り出した。
「……ロ、ロウ様?」
驚く二人の足首に、容赦なくそれを嵌めていく。
「せっかくだ。お前たちが排便する姿を俺に見せてもらう。一階の厠まで、よちよち歩きでな」
「い、いまの言葉……本気じゃないですよね……?」
「そうです、あたしは勘弁して……エリカだけで……」
「なに言ってんのよ、コゼ……わたしを売る気?」
声を荒げるエリカをよそに、ロウはにやりと笑い、鼻歌まじりに廊下への扉を押し開いた。
必死に腰を引き、尻に力を込めながら、エリカはしかたなく、コゼとともに、みっともないがに股姿でその背を追う。
階段は、とても長そうだ──。
12話『幽霊屋敷』終わり──
13話『懐柔の座興』に続く──