※この作品はR-18です。

【改訂版】異世界で淫魔師ハレム【コミカライズ作品】   作:ドン・ドナシアン

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086 ゴースト夫婦の再会

「そろそろ、自分たちが、わたしたちの飼う雌豚だと認めたくなったんじゃないの?」

 

 女ゴーストがすぐ近くにしゃがみ込み、逆さ吊りのエリカの耳へと息を吹きかける。

 耳は床すれすれにあり、金色の髪が床へ向けて垂れ落ちていた。両足首は大きく開かれ、天井を向いて固定されている。全裸の開脚逆さ吊り──羞恥の極みの体勢だった。

 足首に拘束具はなく、見えない魔道の縄で宙に縛られているのだ。

 背中側で水平に折られた両腕は革帯で固められ、身動きは完全に奪われていた。

 

「ふ、ふざけるんじゃないわよ、この馬鹿ゴースト……」

 

 荒い息の合間に、エリカは毒づいた。

 

「エ、エリカ……」

 

 対面で同じく逆さ吊りにされたコゼが、首を小さく横に振る。

挑発するな、という無言の忠告だった。

 だが、エリカの怒りは抑えきれない。ロウがささやいた「我慢しろ」の一言も、もはや自制の楔にはならなかった。

 

「お、お前、また、このわたしをゴーストだと言ったね。許さないよ」

 

 女の金切り声が響く。右手の杖がぴたりとこちらを向いた。エリカの背筋に冷たいものが走る。

 あの仕草は──拷問の始まりの合図だ。

 

「いいこと。ここで屈服を口にすれば、逆さ吊りは解いて少し休ませてあげる。でも言わないなら──」

 

「ぐああああ──」

 

 最後まで聞くより早く、股間を直撃する電撃が炸裂した。

 身体は宙で激しく揺れ、喉から絶叫がもれる。

 電撃の激痛に加え、全身の奥底に「苦痛」そのものが注ぎ込まれている。

 外と内、二重の責めが重なり、意識が刈り取られそうになる。

 対面のコゼも悲鳴を上げてのたうち、見開いた眼が苦痛に歪んでいた。

 

 やがて、やっと電撃と「苦痛」が止んだ。

 全身の力が抜け落ち、がくりと垂れ下がる。

 つっと冷たいものが顔を伝い落ちた。尿だ──。衝撃で失禁してしまったのだ。

 

「自分の尿まみれになった姿なんて、雌豚そのものじゃないの、女エルフ。さあ言いなさい。わたしは醜い雌豚であり、このマーリンと夫ピエールの奴隷だと」

 

 マーリン……。これが、この女の名か。

 

 エリカはロビーの絵を思い出した。

 夫ピエールの前に跪き、首輪を嵌められていた女……。あれがこのゴーストだ。

 マーリンはロウをピエールと勘違いし、彼の命で自分たちを調教していると思い込んでいるらしい。

 

 だが、どんな理由があろうと、ロウ以外に服従を口にする気は毛頭ない。

 ロウであれば、どんな恥辱も耐えられる。

 しかし、ロウでない誰かに膝を折るなど、絶対にするものか──。

 

「わ、わたしが……あ、あんたらの奴隷のわけないでしょう──。いい加減にしなさい」

 

 エリカは気力を振り絞って怒鳴った。

 声にしていなければ、心が折れそうだった。

 

 本当は怖い──。

 

 これ以上続けられれば、言わされてしまうかもしれない。言葉だけの問題ではない。口にしてしまえば、心までも従属してしまう。

 ロウ以外に屈服する。それは底知れぬ恐怖だった。

 

「まったく強情ね。じゃあ、人間女──? お前はどうなの。自分がわたしたちの奴隷だと認めれば、逆さ吊りからは解いて少し休ませてあげる」

 

 マーリンが視線をコゼに向けた。

 

「……ふん、あたしはロウご主人様の性奴隷よ。当たり前のことを訊かないで」

 

 コゼが嘲笑めいて口角を上げる。

 エリカは息を呑んだ。

 同じ苦痛を受けているはずなのに、コゼは意志を崩していない。

 羨ましいほどの強さだ。

 

「いい覚悟ね……ったら、拷問を一段階あげるわ。これでも雌豚じゃないと言い張れるかしら」

 

 マーリンの顔に酷薄な影が走った。

 

「なっ……」

 

「くうっ、こ、これは──?」

 

 次の瞬間、二人の下腹部が膨れ上がっていく。

 

 魔道による浣腸──。大量の液が強制的に注ぎ込まれ、烈しい便意が腹の底から突き上げた。

 

「く、くうっ……ぐう……こ、こんな……」

 

 エリカは奥歯を噛み締める。臓腑を押し裂かれるような衝動だ。

 

「はっ、はああ……」

 

 コゼの苦しげな声が洩れる。

 顔は蒼白に染まり、震える下腹は妊婦のように張り出していた。

 自分も同じだろう。肛門に必死で力を込めるが、いまにも溢れそうだった。

 漏らせば、全身が排泄にまみれる──。

 その想像だけで全身が震えた。

 

「さあ、もう一度さっきの責めを重ねてやろうか。自分の糞便にまみれれば、いやでも雌豚だと悟るはず」

 

 マーリンが冷笑する。

 エリカは耳を疑った。

いま、ただ耐えているだけで限界なのに、ここへ電撃と「苦痛」を重ねるというのか。耐えられるはずがない。

 

 瞬間、股間に直撃する閃光と、内側から噴き上がる苦痛が同時に走った。

 

「うわああああ──」

 

 絶叫が迸る。対面のコゼの悲鳴も重なる。

 ただひとつ、肛門の筋肉を締め続けることだけを意識する。

 一瞬でも緩めれば終わりだ──。

 だが容赦のない拷問は思考を奪い、意識を断ち切ろうとする。

 

 歯を食いしばり続け──やっと、電撃と苦痛が途切れた。

 荒い息だけが喉を満たす。もう罵りの言葉も出ない。

 

 しかし、おそらく、二度目はない……。エリカは悟った。

 

 一度目は辛うじて耐えた。

 だが、繰り返されたら確実に排便してしまう。

 ここから先は、「大便にまみれるか」、それとも「屈服の言葉を口にするか」の二択だ。

 

 マーリンが再び笑みを浮かべる。

 

「さあ、もう一度訊こうか。まずは、エルフ女から」

 

 エリカは唇を閉ざす。

 マーリンは今度はコゼに視線を移したが、彼女も荒い息を吐くだけで黙っていた。

 

「……いいわ。どっちでも構わない。早く屈服した方だけ厠へ行かせてやる。遅かった方は豚のように糞便にまみれるのよ」

 

 マーリンが冷たく言い放ち、さらに杖を掲げた。

 

「……さあ、選べ。十数える間に口にしなければ、再び電撃を浴びてもらう。どちらが先に口を割るか──楽しみだね」

 

 エリカの腹は煮え返った。どちらか一人だけを救う──その卑劣さに……。

 

「ああ、じゃあ、あと十数えてやろう。数え終われば、電撃だ。でも、早い方だけ、厠を許してやるよ……」

 

 エリカはなにも喋らない。コゼも必死に耐えている。

 

「さて、じゃあ、数えようか……。終われば、確実に糞便するような苦悶を与えてやろう……。十……九……」

 

 数が始まる。

 どちらか、ひとりだけ……。

 エリカは必死に肛門へ力を込める。だが、腸の奥がうねりを上げ、内側から悲鳴をあげている。下腹は張り裂けそうで、肛門の括約が痙攣する。

 一瞬でも気を逸らせば噴き出す──そう確信しながら、どうすべきかを考える。

 

 そのときだった。

 不意に拷問室の扉が音を立てて開いたのだ。

 

「ロ、ロウさ……」

 

 入ってきたのはロウだった。

 だが、慌てて口を閉じる。

 あまりの嬉しさに、ロウ様と叫びそうになったのだ、懸命にそれを飲み込む。

 

 この女ゴーストはロウを夫ピエールだと思い込んでいる。だからこそ、彼の安全は保たれている。

 もしも、正体が露見した瞬間、その怒りは確実にロウへと向かうだろう。

 

「マーリン、お愉しみだな……。だが、それまでだ。俺の女を床におろせ。もう、遊びは終わりだ」

 

 ロウの声が拷問室に響いた。

 

「な、なにを言っているの、ピエール? この女奴隷たちはもうすぐ屈服するわ。そうしたら、あなたに渡せるわ。ねえ、もう少し、わたしに任せてくれない」

 

「俺の命令が聞こえないのか、マーリン。ふたりをおろせ」

 

 静かなのに鋭い、怒りを孕んだ声音。エリカはそれだけで、ロウが本気で怒っているのを悟った。

 重力に引かれ、頭と肩が床に触れる。

 足も解かれ、後ろ手に縛られたまま寝かされる形になった。

 コゼも同じように下ろされる。

 魔道の束縛は消えたが、両手の拘束は残り、便意も極限のままだ。エリカは必死に尻に力を込め続けた。

 

「ねえ、ピエール?」

 

 甘えるような声を出すマーリン。

 だが、ロウは険しい顔のまま睨み返した。

 

「よくも、俺の女たちをいたぶってくれたな……。それから、俺をピエールと呼ぶな。俺はロウ──。この女たちのご主人様だ──」

 

 きっぱりと言い切る声。エリカは思わず息を呑んだ。

 

「ピ、ピエールではない? あああ……やっぱり……。そうだ……お前はピエールではない。ピエールじゃない……ピエールじゃない……ピエールじゃない……」

 

 マーリンの呟きは次第に狂気を孕んでいく。顔は怒りに染まり、逆立つ髪が揺らめき、身体からは信じ難い魔力が溢れ出した。

 

 危険だ──。

 

 エリカにははっきりわかった。

 次の瞬間、ロウは殺される。

 そう思っただけで、全身が氷のように冷たくなった。

 

「ロウ様──。いえ、ピエール様──。そのピエール様とマーリン様に屈服します──。奴隷だと認めます」

 

 エリカは絶叫に近い声をあげて身を起こした。

 

「ご主人様──。あ、あたしも認める。認めるから、殺してはだめ──」

 

 コゼも叫ぶ。

 だが、マーリンの耳には届かない。

 杖を掲げ、殺意の魔道をロウへと向けていた。

 

「ロウ様──」

 

「ご主人様──」

 

 二人の悲鳴が重なる。

 そのとき、ロウがすっと前へ突き出したのは、本物そっくりの肌色の張形だった。

 

 すると、マーリンの動きが止まった。

訝しげな表情を浮かべ、じっとそれを凝視する。

 

「どうした、マーリン? 私の一物を見忘れたか?」

 

 突然、男の声が部屋に響いた。ロウの声ではない。

 驚く間もなく、さらに異様なことが起きた。

 ロウが張形から手を放し、後ろへ退いたのに、張形は床へ落ちず、その場に浮かび続けている。

 

 そこに、ひとりの男のゴーストが現れた。

 薄い灰色のガウンをまとい、その裂け目から張形が延び──いや、それはそのまま男の怒張へと変わっていた。

 

「お……おおお……。ピ、ピエール……。やっと……やっと……。会いたかった……会いたかったの……おお、ピエール……」

 

 女ゴーストのマーリンは膝を折り、涙を流しながら震える。

 エリカは息を呑んだ。

 見覚えがある──。ロビーに飾られていた絵の男……。

 これが本物の夫ピエールのゴーストだ。

 

「なにをぼんやりしている。挨拶をせんか、マーリン。私がお前に股間を差し出したときは、どうするのだ? どうやら、一から躾け直さねばならんようだな」

 

 ピエールの声は厳しくも懐かしい響きだった。

 

「……躾けてください……あなた……。一から……どうか……。どうか、この雌豚を……」

 

 マーリンは泣きながら這い寄り、衣を脱ぎ捨てていく。

 透ける裸身をさらし、夫の怒張へと唇を近づけた。

 だが、寸前で力尽きるように首を垂れる。

 

「あ、あなた……わたし……わたしは……」

 

 嗚咽がこぼれ、号泣に変わる。

 先ほどまでの狂気は消え、ただ穏やかな涙を流していた。

 

「なにも考えるな。もう、終わったことはよい。お前がここに来る者へした仕打ちも、本来は私が受けるべき責めだ。だが、もういい……」

 

「ああ、ピエール……」

 

 ゴーストのマーリンはぼろぼろと涙をこぼし続けている。

 

「ここは私たちの居場所ではない。お前も、それをわかっているだろう。躾は次の世界で続ければよい。それよりも、久しぶりに、お前の奉仕を受けたい。いつまで待たせるのだ」

 

 ピエールの声は慈愛に満ちていた。

 マーリンは涙をこぼしつつも微笑み、怒張に口づけし、舌を這わせ始めた。

 

「んん、んっ、んんっ……」

 

「さあ、マーリン……」

 

 ピエールの手に首輪が現れた。

 それをマーリンの首へ嵌め、鎖を握る。その姿はあの絵と同じだった。

 

 奉仕を受けさせながら、ピエールが顔を上げ、ロウに視線を向ける。

 

「……ロウ殿、感謝する。言葉では尽くせぬが、心より礼を言う。この屋敷は自由に使ってほしい。譲渡の旨を私の書斎に記した。ゴーストの署名など大した効力はあるまいが、せめてもの気持ちだ。それと……マーリン」

 

 視線を妻へ戻す。

 

「はい……」

 

 マーリンは奉仕を中断し、顔を見上げる。

 

「ここに来るまでに、ロウ殿と少し話した。お前の杖を、女エルフのエリカ殿に譲ってやれ。それから、屋敷にある魔道具も彼らに渡してほしい」

 

「あなたに従います……」

 

 首輪に繋がれたまま、マーリンは静かに応じ、再び奉仕に戻る。

 次の瞬間、一本の杖がエリカの足元に現れた。

 

「では行こう、ロウ殿。この屋敷のものはすべて任せる。それと、シルキーを頼む」

 

「わかりました。そして……どうか、お幸せに」

 

 ロウが応じる。

 

「ああ……」

 

 ピエールが頷いた。

 すると、ふたりのゴーストの姿が真白な光に包まれ、静かに溶けて消えていった。

 ことん──と音を立てて張形だけが床に落ちる。

 

もう、ふたりの姿はどこにもなかった。

 

「……浄化したようだな。大丈夫か、お前たち?」

 

 ロウがにっこりと微笑み、エリカとコゼを見やった。

 

「ロウ様──」

 

「ご主人様──」

 

 声を上げた瞬間、ロウは二人を抱き寄せた。

 その腕の温もりに、張り詰めていた心がほどけ、全身が熱に震える。

 

「よく耐えたな……」

 

 囁きとともに頬を撫で、額へ口づけを落とす。

 さらに胸や股間を撫でる手が加わり、愛撫は慰めのはずなのに、極限の便意に追い詰められた身体には拷問に等しかった。

 

「あ……だ、駄目です……っ。ロウ様……それ以上は……」

 

「ひっ、ああ……気、気持ちいいですけど……いまは……」

 

 悲痛な声は嬌声へ変わり、涙を浮かべた顔が震える。

 快楽と便意がせめぎ合い、心身を切り裂くようだった。

 だが、ロウは楽しげに笑みを浮かべ、懐から短い鎖で繋がる足枷を取り出した。

 

「……ロ、ロウ様?」

 

 驚く二人の足首に、容赦なくそれを嵌めていく。

 

「せっかくだ。お前たちが排便する姿を俺に見せてもらう。一階の厠まで、よちよち歩きでな」

 

「い、いまの言葉……本気じゃないですよね……?」

 

「そうです、あたしは勘弁して……エリカだけで……」

 

「なに言ってんのよ、コゼ……わたしを売る気?」

 

 声を荒げるエリカをよそに、ロウはにやりと笑い、鼻歌まじりに廊下への扉を押し開いた。

 必死に腰を引き、尻に力を込めながら、エリカはしかたなく、コゼとともに、みっともないがに股姿でその背を追う。

 

 階段は、とても長そうだ──。

 

 

 

 

 

 12話『幽霊屋敷』終わり──

 13話『懐柔の座興』に続く──

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