〈催眠を掛ける魔法〉でヤリまくる 作:shiguma1124
本来投稿する予定だったラヴィーネ回を八割方完成させた辺りで、「これ後に回した方がいいかも」とか思ったりしたせいで想定の倍以上遅くなってしまいました。
第二次試験も終了し残るは三次、最終試験のみとなった。
受験者の結果も原作通りだし悪くないペースで女の子達に手を出せているのでさほど不満はない。
ない筈なのだが……。
「…カイ君は今ご機嫌斜めかな?」
「……」
最後の試験を受けに向かっている最中、偶然かどうかは分からないが鉢合わせたユーベルと歩いていた時。
暫く俺の顔を覗きこんで来たと思ったらこの発言。
勘が良くて鋭い彼女ならお見通しなのだろう。
実際俺の内心はあまり穏やかではない。
別に苛立っているとか、退屈だとかと思っている訳ではないのだが……不満は抱いている。
「まぁそうかも。いつもみたいにルンルン気分って訳じゃあないかな」
「いつもはルンルン気分なんだ?特にそうは見えなかったけど」
「んん?俺は可愛い子が近くに居て、更にお話まで出来たらそれだけでも幸せだと思ってるよ」
「ほんとかなー。私と話してる時あんまり笑ったりしてなくない?」
「まっさか、思い返してみ。俺は結構笑ってるよ」
「愛想笑いが殆どだった癖に」
随分な言われようだ。
別に愛想笑いなんてしてるつもりはないんだけどねぇ。
(……でもユーベルが言ってるなら何かしらの判断基準があるかも)
これはただの気分。ただ今不満を抱いている原因を、それを取り除く方法をユーベルなら知ってるかもしれないと思っての質問。
「じゃあユーベル的に、俺が本当に心の底から笑ってた時はいつだったの?」
うーん、と少し記憶を掘り返す仕草を置いてから返事は返って来た。
「一緒にご飯食べてた時と、二次試験で作戦会議してた時…かな」
「そりゃまたどういう考えで」
「えー?見れば分かるよ」
「見てどう思ったのか教えてほしいんだけど」
正直さっきまで悩んでいた事云々よりも気になる。だって本当に自覚がないから。
「結構子供っぽいなって」
「……は?」
「だから、子供みたいに笑ってる時があるから」
(ちょっと何言ってるか分かんない)
待ってくれ。
作り笑いっぽく見えたのはまぁこの際認めるとしよう。でも、何?子供?俺が?
純粋とかと対極の位置にいるこの俺が子供みたい?
この世界に来てから初めて人に対して、こいつ頭大丈夫か?と思った瞬間である。
(いやでも…ヴィアベルの本質を見抜いて魔法を真似したり、ラントの件然りと。ユーベルの観察眼と鋭さは馬鹿に出来ない。
一概に否定する事もよくないよな……)
今の俺は混乱している。
普段だったならば、仮にさっきの発言を受けても多少驚く程度。
内心で取り乱したりユーベルの正気を疑ったりはしなかった筈だ。
じゃあその混乱の原因は何か。
それはつい昨日の出来事。
試験の間の休日。
勿論その日も俺は催眠エッチを楽しもうと街で女の子を探し、最終的にラヴィーネと行為に及んだ。
及んだのだが……そこで問題は起きた。
ただの出来心。
普段強気なラヴィーネが試験に落ちて気持ちが沈んでいた時に、カンネに撫でる事を要求するというシーンがあった事を思い出し。傷心モードに漬け込んだ慰めアンド言葉攻めエッチを決行。
途中までは良い具合に進んでいき、怒涛の褒め言葉ラッシュで照れたラヴィーネも見れて万々歳。
しかし、そろそろ一発デカいイかせ方してやろうと思いスパートを掛け始めようとした瞬間にそれは起きた。
言葉が出てこなかった。
その時のシチュエーションは、不合格になった事を普通に励ましていると両者段々と妙な気分になって来て流れと勢いで……といった男子大学生の宅飲み理想ルートみたいなものだったのだが。
設定的に付き合ったり、好き合ったりはせずただ少しの発情を掛けただけたったのがいけなかった。
思いつく言葉どれも薄っぺらく感じたし、今回のシチュに合っているとは思えなくなってしまい。
結果的にこれから一番の盛り上がりとなるところを前に心が萎み、不完全燃焼。
感覚的には、以前一次試験の後ユーベルと話した時。あの時の感覚と似ている気がする。
しかし今回問題なのは、事の際中に妙な感覚を覚えてしまった事。
エッチ出来れば全部解決するぜ!な俺にとってこれは深刻な事態だ。
何せ解決法そのものに悩みを抱いてしまっている。
(おかしい。薄っぺらくて何がいけないんだ。そもそも催眠はそういうもの、恋人プレイだってこれまでしてきて、散々鼻で笑ってしまうような事を言ってきてそれを自覚していたというのに。なんだこのザマ)
催眠を使って偽りの関係を築き、薄っぺらい言葉を投げ掛け、性の捌け口にする。
それが醍醐味であり、それをする為にこの世界に転生してこれまで生きて来たのだ。
だが昨日の俺はなんだ、只のボキャブラリー不足とかそういう話じゃない。
自分でもよく分からないけど、まるでこれまでの自分の性癖の全てを疑うみたいな事を考えた。
異常事態だ。緊急事態だ。俺は早急にこの悩みを解決しなければならない。
「……本当にどうしたの?様子変だけど」
っと、暫く黙って考え込んでしまっていた。横から顔を覗きこんでくるあざと可愛い仕草ではっとする。
「悪い、確かにちょっと今日変だな」
「大丈夫なの?今から最終試験なのに」
「大丈夫も何もないよ、試験に対する緊張も気構えも何もないね」
「へー……まぁいいけど」
(そうだ、今日は最終試験。試験自体に問題は無い、でも俺にはやるべき事がある)
何せ試験は今日まで。
まだ催眠を掛けれていない連中もいるからそこをどうにかしないといけない。
試験自体は本当に何も考えていない、考える必要がない。ゼーリエが俺を認めるかどうかだけだから、今更頑張ってどうこうなる話じゃないし。
問題なのはまだ接触出来ていないメンバーに今日中に触れなければならない事。
別に本当は今日じゃなくてもいいけど、時間に追われたり余計な事を考えなきゃいけないのは早く終わらせたい。
で、ちゃんと女の子に集中したい。
(今日はちょっと暴れちゃおっかなー…!)
だから悩んだりしてる暇はない。
中々しないけど、今日は余裕もあんまりないし久々に催眠で好き勝手させてもらおう。
‣‣‣‣‣
大陸魔法協会本部。
「……じゃ、お願いね」
にて受付担当の人と軽く会話を交わす。
ユーベルには離れておいてもらっていたが、結局話が終わったら直ぐに内容を聞かれた。
「なにしてたの」
「根回しみたいなもんかな」
「根回し?」
「そう根回し。もう今日で面倒くさい事は全部終わらせたいんだ、多少強引でも事を進めに掛かる」
「……事、って要はまた色んな子に催眠掛けようとしてるだけでしょ」
「正解」
偶にはエッチな事以外にも催眠を活用する。
結局行き着く先は同じだけど、こうやって暗躍みたいな事をするのもこれはこれで面白い。
「俺はお花でも摘んでこようと思うから、ユーベルは先行っててくれ」
更に裏で動く為に一人になろうとここで別れる。
多分ユーベルは俺がまだ何か企んでいる事に気付いてたと思うけど、案外素直に一人にしてくれた。
正直ここまでくっ付いてくるようになった理由が不明だから、彼女の行動は読めない。催眠で色々弄った結果である可能性もあるけど。
そこから催眠を使って準備を整え、時は来たる。
「第三次試験の内容は大魔法使いゼーリエによる面接です。準備出来次第順番に呼ぶので、それまで別室で待機していてください」
この説明がされた際、確か原作ではその後フリーレンとフェルンの会話シーンを挟んでからいきなりカンネの面接へと場面が移った。
メモに書いてなかったからこの別室での待機とやらについて細かい描写はなかったと思う。
一応本来の細かい手順も聞き出しておいたが、結局俺の都合の良いように変更させてもらった。
別室での待機というのは、元々都合が良い。絶対に一人となる時間が生まれるから。
後はそこに俺が入れるよう催眠で手配を済ませれば……そこからはぬるゲーだ。
試験開始までに俺が済ませた事は主に二つ。
一つは、待機中の受験者が居る部屋を自由に出入り出来るようにする事。
もう一つは受験者だけでなく試験官側であるゼンゼとも接触出来るように呼び出しておく事。
大体の流れはこう。
面接前に通される部屋、俺はそこで待機出来るよう面接の順番を最初にするという体にしてもらって別室にて待機。後は時間経過で入って来る受験者達を部屋で待ち構えて催眠を掛ける。これは男女関係なく全員にして、掛けた後はこの部屋で俺を認識しないよう設定。邪魔はしないようにね。
これを続けて、残る受験者が俺のみとなった時点で来るように仕向けていたゼンゼにも催眠を掛ける。それから俺は最後の受験者として面接を受けて三次試験は終了。
最初の根回しは、試験官側に催眠を掛けたり呼び出させたりする為のもの。
業務に関する連絡を無視する事は出来ないだろうと、協会の人に呼び出しを頼んでおいたのだ。
ゼンゼ以外は直接会えたので直で催眠を掛けて都合が良いように指示。
(多少強引でも催眠さえ掛ければどうとでもなるからな、大胆だったとしても動いてよかった)
事実多少の穴は催眠でカバーし、作戦は順調に進んだ。
ゼンゼにまで催眠を掛ける事に成功した俺は、既に勝ちを掴んだ状態でゼーリエとの面接に挑む。
アニメでも見たクソでか扉を開け、漸くかの人物を視界に収める。
花を眺めていたその感情が上手く読み取れない目が俺と合ったその瞬間。
感じた感覚は、恐怖であった。
「お前ふざけるなよ」
確かな恐怖を感じた。
制限状態であるにもかかわらず溢れ出る莫大な魔力量とか、実力的な話じゃない。
見透かされたような感覚。
それが俺の胸をドキりと跳ね上がらせる。
「…えぇっと、まだ何も言ってないと思うんですけど」
「言葉にしない程度で私が分からないとでも思ったか?本当は分かっている癖に、とことんふざけた奴だな」
座っていた彼女は立ち上がり、真っ直ぐと俺の方を見つめる。
「お前、本気で私に仕掛けてくるつもりだったな」
(やっぱバレてる……)
一目見ていけそうだと思ったら高速移動からの催眠タッチを仕掛けようと思ってたのが秒でバレた。
「どう仕掛けるかを考えるとか、実力差を測るとかじゃなく。勝てると思ったら本気で攻撃してきただろ」
どんな嘘も言い訳も通用しないだろう。そもそも絶対的に俺に非があるし。
「これまでの一級試験で私に本気で挑もうとしてきたやつなど一人もいなかった。今年は面白い奴もふざけた奴も多かったが、お前が一番だな」
「……じゃあ俺は不合格ですか?」
命の危機も一時は感じたけど、どうやらそこまでは怒っていない様子に見える。
多分だけど幼稚園児がチョップしてきた位にしか思ってない。実力差があり過ぎたのと、俺が速攻で諦めたのが伝わったから許された感じか。
「いや。殺意も敵意も向けてこなかったんだ、ただの魔法使いの性だとしておいてやる」
どうやら本当に許して貰えたみたいで一安心。
「お前何のためにこの試験に来た。この私に仕掛けようとした事と言い、その態度。別に一級魔法使いになる為ではないな?」
「ご明察通り」
「御託はいい、答えろ」
(俺がこの試験に来た理由?そんなの決まってる)
「目標を果たす為ですよ。人生を楽しむ、っていう目標を果たす為」
嘘の事は言ってないからセーフ。
「はっ。楽しむ為か…まぁいい、最後にもう一つだけ答えろ」
多少無礼な事を言おうがゼーリエは許してくれる。
そんな風に思って本心を素直に言ったけど、俺の推察は正しかったみたい。
だから最後の質問も悩む事なんてないと思っていたのに。
「これまでの人生で、本気で何かを愛した事はあるか」
「…………はい?」
完全な不意打ちを喰らった感覚。
言葉の意味が分からない。いや意味自体は分かるが、質問の意味が、意図が分からない。
(な、なんだゼーリエってこんな事言うキャラだったか?いやそれより、なんだ、は?)
俺の心は一気に困惑と混乱で埋め尽くされた。
「当ててやろうか、ないだろ」
「いや、えっと…どういう意味かを教えてほしいんですけど」
「そのままの意味だ。お前は本当に面白い奴だな、私が見てきた中で一番の臆病者だというのに一番度胸がいる筈の選択肢を選んだ。そしてその類稀なる魔法の才。やはり世界とはこうでなくてはな」
結局俺の理解が追い付かないまま、合格だと言われて面接は終了した。
まだ先程の出来事に理解が追い付いかないまま歩いていると、ずっと協会前で俺を待っていたのであろうユーベルを発見。
「随分遅かったねー。試験どうだった?」
「……受かった」
「ならなんでそんな顔してるの」
(しょうがねぇだろ…こちとら漸くゼーリエと話せたと思ったら訳分かんねぇ事言われてそのまま引き剝がされたんだぞ)
引き剥がされた、と言っても正確には終了を伝えられると同時にゼーリエが行ってしまっただけだ。
でもまだ聞きたい事があった中での強制終了は精神的にシコリが残る。
「…ユーベルは?その様子だと受かった感じ?」
「せいかーい」
こんな時でも一々反応が可愛くて助かるよ。原作と変わってないのも良い事だし。
でもなぁ。
「俺はご機嫌斜めどころかメンタルぐらぐらだよ……」
晴れて一級魔法使いとなった筈なのに、俺の心の雲行きは大変怪しくなっていた。
次回は本当にエッチパートになります。と言うよりここからは連続でエッチしまくると思われ。
試験も終わってもうカイ君を縛るものはなくなちゃったからね。