しがない強面中堅冒険者、新進気鋭の美女パーティの全員に「私のことは好きにしていいから仲間だけは助けてください」と体を差し出された。 作:ユリイカ
トラガの森は最寄りの都市であるトリタンでさえ馬で三日という距離にあるため、入り口手前でのキャンプが基本となっている。
シエラたち〈
「やっぱり、私が――」
「駄目だ!」
顔を上げ、口を開いたシエラの声をネルヴァが遮る。
説教の後、四人をテントへ向かわせたバルクは、その際にネルヴァに声をかけた。「後で俺のテントへ来い」――その言葉が何を意味しているのかは明白だった。
バルクのテントは〈極光の剣〉とは少し離れたところに建てられている。しっかりと天幕が下されており、簡単には中を窺い知ることもできない。そんな密室に、負い目の女を呼び込んですることなど。
ましてやネルヴァは目の覚めるような美女だ。シエラも貴族令嬢らしく金髪の美しい美女であるし、ファナやパテマもそれぞれに方向性こそ違うものの見目美しいことに違いはない。〈極光の剣〉が有名であるのは、四人が揃いも揃って並外れた美貌であることも大きな理由のひとつなのだ。
「こういうのは、年上のあたしに任せな」
パーティ最年長のネルヴァは自分の胸を押さえて強気に切り出す。しかし、シエラもそれに一歩も引かない。
「それなら、リーダーは私だよ」
「シエラはお嬢さんだ。こんなことで自分を汚しちゃいけない」
「そんなの……そんなの、みんなおんなじだよ」
唇を噛み締め、握った拳を振るわせるシエラ。そんな彼女をネルヴァは悲壮な顔で見る。
シエラは元々、冒険者などにならなくとも輝かしい将来が約束されていた。貴族の令嬢として生まれ、両親に愛され、兄弟とも仲が良かった。ネルヴァはそんな彼女の護衛役として雇われ、そして彼女が卓越した剣の才能を見せてからは武術指南役としても彼女を導いた。
冒険者となり世界を巡りたいとシエラが言った時、心配する周囲と対立して彼女の側に立ったのは他ならぬネルヴァである。
冒険者の暮らしが、これまでとは比べ物にならないほど過酷であることは分かっているつもりだった。それでも自分が矢面に立ち、守ればよいと思っていた。それがまさか、こんなところで躓くことになるとは。
「――あんまり遅くなっても奴の怒りを買うだけだ。そろそろ行くよ」
「ネルヴァ!」
まだ痛む足をこらえながら、ネルヴァはテントの外へと向かう。その背中をシエラは泣きそうな顔で見る。幼い頃から姉のように慕ってきた、種族こそ違えど確かに家族と言える存在だ。そんなネルヴァが、これからあの醜い男の元へと向かう。自らの身を捧げに行く。
「――ごめん、ネルヴァ」
「がっ!? シエ、ラ……!」
いつも飄々としているようで気を張り続けている姉貴分が、らしくもなく油断していた。シエラが首筋に手刀を落としたことにも反応できないほどに。
ネルヴァは薄れゆく意識のなか、己を見下ろす妹分を見る。シエラの濡れた青い瞳に決意の光があることに気付きながら、彼女は抵抗もできずに気を失った。
◇
「ま、まことに申し訳、ありませんでした!」
「……」
〈
テントの前の焚き火は落ち着いており、教官役の男はテントで何やら準備をしているようだった。ネルヴァを呼び出して、彼女が訪れるのを虎視眈々と待ち構えているのだ。
シエラは意を決して、テントの中へと飛び込む。それと同時に膝を折り、深々と頭を下げた。三つ指をつき、額が床に触れるほどの平身低頭である。長い金髪が扇のように広がり、より一層彼女を惨めにさせた。
「ネルヴァはどうした」
予定とは違う者が来たというのに、バルクは取り乱すこともなかった。まるで、シエラが訪れることが分かっていたかのようだ。
シエラは謝意を示しながら、悔しさも感じていた。この男はわざと選ばせたのだ。パーティリーダーである自分ではなく、あえてネルヴァを指名することで、お互いに自ら身を捧げるように。なんという悪略か。決して許せるはずがない。
しかし、〈極光の剣〉は彼に逆らえない。彼がトリタンの冒険者ギルドに戻り、不適格と告げれば、彼女たちに中堅以上へと進む道はなくなるのだ。だから、シエラはこうして訪れる他なかった。
「ネルヴァは、テントで身を休めております。――足を痛めておりますので。どうか、どうかご容赦いただきたく」
「そうか……。休息か。それもいいだろう」
テントの中にはむせかえるような甘い香が満ちていた。男の寝袋とは別に、見せつけるように毛布が敷かれている。ここで何を行おうとしているのか、シエラもすぐに分かった。
「で、ですので」
シエラは貴族令嬢である。蝶よ花よと育てられ、礼節や貴族の矜持を叩き込まれてきた。もちろん、齢十八となり婚姻も考えられる頃になると必然的に男女の交わりについても教えられた。しかし、このような森のなか、しかも野獣のような男によって純潔を散らすことになるとは思いもしなかった。冒険者を志した時には、考えなかった未来である。
「――不肖ながら、わ、私が、ネルヴァの代わりを」
「うん?」
バルクはシエラの震える声を聞いてなお、わざとらしくトボけて見せる。その態度が、余計に彼我の立場を感じさせ、シエラは涙を溢しそうになった。
だがここで泣き叫べば、それこそ男の思う壺である。だからこそせめて、貴族らしく気高くありたい。自分は仲間を守ため、ここにいるのだと。
「私のことは如何様にもお使いください。ですが――ですが、仲間だけは。仲間だけは何卒お許しを!」
「……そうだな」
シエラの懸命な懇願にバルクは少し間を置いて頷く。
そう、これでいいのだ。仲間たちは自分の我儘に付き合ってくれただけ。だから責任を取るべきはリーダーである自分なのだ。シエラはそう自分に言い聞かせ、折れそうになる心を保つ。
「お前たちの考えは分かった。よく分かった」
「ひっ」
ドスの効いた低い声は、女に本能的な恐怖を与える。そのことを自覚しているのかいないのか、バルクは土下座したままのシエラを見下ろして呟く。
その程度の謝罪でいいのか、と言外に問われている。シエラは震える手で服の結び目を解いた。
「おい。何をしている」
「どうか、お許しください。わ、私はネルヴァほど豊かな胸もありませんが……」
「ちょっと待て。何か――」
一度動き出せば、後は勢いだった。バルクがネルヴァを要求する前に、事実を作ってしまいたかった。
シエラは服を脱ぎ捨て、傷ひとつない純白の柔肌を露わにする。いまだ男の指に触れさせたことのない清い体である。冒険者らしく引き締まっているが、女性らしい柔らかさも同時に備え、貴族らしい気品すら纏っている。胸もネルヴァやファナと比べれば小ぶりと言えるが、年齢を考えれば相応それ以上のものである。
はらりと布を脱ぎ捨て、足元に落とす。シエラが前を向くと、バルクは眉間に深い皺を寄せていた。やはり、自分のような幼い体は趣味ではないのだろう。だが、今更後には退けない。
「どうぞ、お好きなようになさってください」
熊のような大男の元へと歩み寄り、その体を撫でるように指先で触れる。バルクはびくりと震え、シエラの両肩を押し離そうとした。シエラも負けじと密着する。ここで男の興味を惹けなければ、〈極光の剣〉は終わりなのだ。
「待て、何か勘違いを――」
「っ! こ、これは……」
バルクが何かを言いかけた時、シエラはちょうど己の下腹部に当たる硬い異物の感触に気が付いた。それが男のズボンの下から強く主張する男根であることを知った彼女は、電流を浴びたかのような衝撃を受けた。