古代のメロメロ! 作:エロイオトコ
この作品は『ポケモンと人間との間に隔たりのある古代の時代』の物語です!
そのため、『ポケモンを殺し食べる人間』という表現が描写されることがかなりあります!
(逆のパターンは現状未考案ですが、無いとは言い切れません!)
それが好ましくないという読者の皆様は、静かにブラウザバックしていただけると幸いです。
よろしければ、どうぞご覧ください!
マスカーニャの古代奇術
──パルデア地方。
過去のパルデア地方と聞けば誰もがパルデア帝国を思い浮かべるであろうが、パルデア地方はそれだけではない。
巨大な巨大な大空洞エリアゼロがもたらした恵みは、パルデア帝国の大探索時代よりもずっと過去からパルデア地方に広がっていたのだ。
これは、そんな遥か昔の時代、『人とポケモンが同じ』だった時代の、淫靡でいて一生懸命に生きていた時代のほんのワンシーン。
いずれ今の人間とポケモンの関係に繋がる、ずっと昔の物語。
「──よしっ」
射抜かれたカラスのポケモンが、ふらふらと身体の制御を失いながら地上へと落ちていく。
その様子を見ながら、村一番の狩人のカサドル(男16歳・独身)は笑みを浮かべた。
「アオガラス……しかもかなりの大物だ。期待できそうだ──」
心を躍らせながら、カサドルはアオガラスが落ちた場所に静かに進んでいく。
その場所は周囲を樹々に囲まれており、その木々の裏はもう死角だ。
どこからでもポケモンが襲ってくる可能性がある。
カサドルはそれを理解している。
弓に矢を番えたまま、周囲に気を配りながら、ゆっくりと獲物が落ちた場所に向かう。
ポケモンを仕留めることはこの時代では当然のことだった。
無理もない。そうしなければ自分たちが危うくなるのだから。
特にアオガラスはだめなのだ。見つけ次第何が何でも駆除しなくてはならない。それこそ命に懸けてでも、だ。
もしアオガラスがアーマーガアになってしまったりした場合、村に壊滅的な被害がやってきてしまう可能性が大いにある。それによって滅んだ村は数知れずだ。
そのため、アオガラスを狩るのは当然のことだとカサドルは教わった。
しかしアオガラスを狩るのは簡単なことじゃない。
アオガラスは非常に賢い。戦術観が優れているともいえるその感知能力は、死角から放たれた矢の気道さえも即座に理解して回避する。
それゆえに弓で挑むのは難しく、空を飛ぶため剣を使うのも不可能に近い。
そんな難敵だったのだが……カサドルの弓の技術によって難なくアオガラスは射抜かれた。
自らの弓の技術が向上しているその達成感に痺れながらカサドルはアオガラスの元へと向かった。
「おお……っ」
胸を一発。
矢によって貫かれたアオガラスは大地へと墜落し、その衝撃で瀕死だった。
ピクピクと節々は動いており、まだ息があることを見受けられる。
ここで手を緩めてはいけない、そう思いながらカサドルは短刀を取り出す。
この時代はポケモンがポケモンではなく、人間もまた人間ではなかった。
どちらも等しく獣と呼び合うことができるほどに、生きることに精一杯の存在同志だった。
だからこそ……生きるために命を奪うことに容赦してはいられないのだ。
静かに短刀をアオガラスの首元に向け、勢いよく振りかぶり突き刺した。
その瞬間、軽いものが弾けるような破裂音が周囲に響き渡った。
それは短刀を突き刺したアオガラスから響き渡った。
アオガラスが勢いよく破裂したのだ。
「な……!?」
カサドルは驚きはしたものの、そのアオガラスの亡骸の様子から周囲の警戒を一層高めた。
アオガラスの内側から噴き出したものは葉っぱばかりだったのだ。
アオガラスは肉食だ。木の実も食べるが、ポケモンも食べる。なんなら人間だって食べられる。
そんなポケモンの内側が木の葉ばかりのはずがない。
なにより──血も、肉も、骨も葉っぱであるわけがない。
カサドルは現状を理解して、同時にとあるポケモンの仕業である可能性を考えた。
それは様々な村から要注意ポケモンとして名が挙がっているポケモン。
ずるがしこく、人間の狙ったものを最後に横取りし、得体のしれない奇術を用い、ただの葉っぱでポケモンの亡骸を偽装して人間をだますという。
言葉通りだった。
ここまで騙されるとは。
カサドルは周囲の様子をくまなく見渡し──そして、一か所だけ不審な個所を見つけ出す。
痕跡が残っていたわけではない。
狩人の勘が見つけ出した、その場所が『自分をだました後に使う逃走経路』である可能性が非常に高かったのだ。
その直感を信じて、カサドルは矢を即座に放つ。
「カニャッ!!?」
「……お前か……『奇術の怪』!」
息をひそめていたのに気づかれ矢を放たれたことに驚き、件のポケモンがその姿を見せる。
緑の仮面を身に着けたかのような顔に滑らかな肢体。
人間たちから『奇術の怪』として名の知れ渡っていたそのポケモンは今にマスカーニャとして知られるポケモンだった。
マスカーニャの手には先ほど射抜いたアオガラスの亡骸があった。
首を蔓によって絞められており、その胸元にはカサドルの物と思しき矢が突き刺さっていた。
カサドルが撃ち落としたアオガラスを先に奪い取った、そう認識するには十分すぎる証拠だった。
「そのアーマーガアの幼体は人間が頂く。俺が射抜き、仕留めたものだからだ。それを奪おうとするとは──」
「ニャはは、はにゃぁ……」
「許さん、そして逃がさん」
「にゃ──ッ!」
カサドルは激昂しながら矢を放つ。
機敏に逃げ回るマスカーニャを追いかけながら、その逃走経路がどこなのかを読みながら確実に仕留めんと矢を放った。
それでもマスカーニャはヒラリヒラリとまるで布のように矢を交わしながら逃走を図るが、カサドルから逃げ切れる気配はしない。
「ニャぁッ!?」
「掠ったか……次は当てる」
「カニャアっ!!」
「む!?」
頬に矢が掠り、血が滲み出る。
その痛みを感じたマスカーニャは覚悟を決め、毛を逆立て威嚇する。
その隙を狙わんとカサドルは弓を引くが──そこを狙い、マスカーニャはとある物を投げつけた。
それはマスカーニャが隠し持っていた花だった。
シャトル(バトミントンのボール)のような形状をした花は勢いよく飛び、カサドルの弓を弾き飛ばした。
「っ、このっ!」
負けじとカサドルは短刀をマスカーニャに投げつける。
弓を落とされながらも迎撃されるなど初めてだったのか、油断していたマスカーニャの右腕にその短刀が突き刺さった。
「~ッ、ニャッ、ニャァっ!」
痛みによって険しい表情を見せながらも、マスカーニャは何とか痛みをこらえながら、血の流れる右腕を庇いつつ逃走を行う。
カサドルは追おうと考えた──が、もうじき夜になることを空模様から悟り、追跡を断念した。
射抜いたアオガラスをマスカーニャは落としてしまっていたため、それを回収して村へと帰還することにした。
帰りの道中、カサドルは自らの使っていた弓を見た。
ひどく痛んでいた。
マスカーニャのあの花の投擲によるものだった。
あの花が当たった瞬間、とても強い衝撃を感じたことをカサドルは実感している。
やはり、ポケモンは恐ろしい生き物である。
カサドルはそう再認識しながら、村に帰り、成果をじっくり堪能するのだった。
そんなことがあった数日後。
「…………お前……」
「カニャァっ、ハァ……っ」
血だらけのボロボロの姿の