穏やかな日差しが差し込む、四番隊の執務室。
紙の擦れる音、薬草を煎じる微かな香り、隊士たちの穏やかな話し声。そこは、血と硝煙の匂いが絶えない瀞霊廷において、唯一、時が緩やかに流れる聖域。
その中心に、月詠小夜はいた。
「月詠副隊長、こちらの報告書ですが⋯」
三席の虎徹勇音が、緊張した面持ちで小夜に歩み寄る。彼女は、その背の高さとは裏腹に、常にどこか自信なさげに肩をすぼめている。その姿が、小夜の庇護欲と、ほんの少しの嗜虐心をくすぐった。
「ええ、ありがとう、勇音。少し、こちらへ」
小夜は報告書を受け取ると、その白い指で、勇音の頬に付いた一筋の墨を、そっと拭った。驚いて息を呑む勇音の肌は、きめ細かく、そして熱を持っている。
「あらあら、また頑張りすぎてしまったのね。可愛いお顔が台無しですよ」
「ひゃっ!?も、申し訳ありません!」
真っ赤になって後ずさろうとする勇音の腕を、小夜は逃がさない。そのまま耳元に顔を寄せ、誰にも聞こえないように、甘い息と共に囁いた。
「⋯今夜、私の部屋にいらっしゃいな。たくさん、褒めて差し上げますから」
「⋯っ、はい⋯」
潤んだ瞳でこくりと頷く勇音の背中を、満足げに見送る。その完璧なまでの慈愛に満ちた微笑みに、他の隊士たちは何の疑いも抱かない。
その時、廊下を通りかかった二番隊隊長・砕蜂が、部屋の中の光景を、冷たい侮蔑の視線で一瞥した。
(⋯まただ。あの女狐め。公衆の面前で、部下に色目を使うなど⋯!)
その敵意のこもった霊圧を肌で感じながら、小夜はあえて砕蜂にだけ見えるように、先ほど勇音の頬を拭った指先を、ゆっくりと、挑発的に、そっと舐めてみせた。
砕蜂の眉が、侮辱されたと悟り、ぴくりと痙攣する。フン、と鼻を鳴らして去っていくその背中に、小夜は愉しげな視線を送った。
その全てを、少し離れた場所で、隊長の卯ノ花烈が、穏やかな、しかし全てを見通すような微笑みで見つめていた。その瞳には、咎める色はなく、むしろ、奔放な恋人の悪戯を、愛おしむような光さえ浮かんでいるように見えた。
※※※
夜。瀞霊廷が静寂に包まれる頃。
小夜の私室の障子が、おずおずと、しかし約束通りに開かれた。そこに立っていたのは、昼間とは違い、どこか決意を秘めたような、それでいて怯える子犬のような瞳をした、虎徹勇音だった。
「⋯失礼、します。月詠副隊長」
「まあ、いらっしゃい、私の可愛い勇音。そんなに固くならなくてもいいのに」
小夜は、読んでいた書物を閉じると、手招きをする。部屋には、昼間の薬草の匂いとは違う、甘く、心を落ち着かせるような、それでいてどこか理性を麻痺させるような香が、ふわりと漂っていた。
「さあ、こちらへ。まずは、その凝り固まった体を、ほぐして差し上げましょう」
小夜は、有無を言わさず、勇音を部屋の中央に敷かれた寝台にうつ伏せにさせる。死覇装の上から、まずは優しく肩を揉みほぐしていく。
「ひゃ⋯!ふ、副隊長、あの⋯」
「しーっ⋯。ここでは、小夜、と呼びなさいな。そして、ただ、私に身を委ねればいいのですよ」
囁く声は、鼓膜を震わせ、直接脳に響くようだ。香のせいか、小夜の声のせいか、勇音の体から、少しずつ力が抜けていく。
小夜の指は、肩から、滑るように背中へ。そして、帯に触れる。
「少し、窮屈そうですね。⋯解いて、差し上げます」
「えっ、あ、あの、小夜、さま⋯!」
勇音の微かな抵抗は、聞こえないふり。するり、と帯が解かれ、合わせが開かれていく。露わになった白い背中に、小夜は、はぁ、と熱い息を吹きかけた。びくり、と勇音の体が大きく跳ねる。
「なんて、綺麗な肌。手入れを、怠っていないのですね。良い子だわ」
指先が、脊椎のくぼみを、一つ一つ確かめるように、ゆっくりと下っていく。そのたびに、勇音の口から、くぐもった、甘い声が漏れる。それは、もはや拒絶の色を含んでいなかった。
「あ⋯ぅ⋯さ、よ、さま⋯」
「ええ、ここにいますよ、勇音。⋯昼間、頑張ったご褒美です。私が、貴女の体の隅々まで、その疲れを『治療』してあげますからね」
その言葉を合図に、小夜の指は、それまでためらっていた腰のラインを越え、柔らかく、丸みを帯びた丘へと、ゆっくりと、しかし確実に、その歩みを進めていくのだった。
「ひぅッ⋯!」
悲鳴のような、それでいて、どこか歓喜に満ちた喘ぎ声が、静かな夜の部屋に、小さく、そして確かに響き渡った。
白百合の純潔が、甘い蜜に濡れ、その花弁をほころばせ始めた、瞬間だった。
勇音の柔らかな臀部に触れた小夜の指は、まるで名画をなぞるかのように、その曲線美を慈しむ。死覇装の袴越しに伝わる、熱と、弾力。その感触を確かめるたびに、小夜の口元には、満足げな笑みが深くなる。
「こんなにも、熟しているのに。今まで、誰にも触れさせたことがないなんて⋯本当にもったいないことを」
「んんっ⋯!や⋯そこは⋯だめ、です⋯」
かろうじて紡がれた拒絶の言葉は、しかし、震え、上擦り、むしろ懇願のように聞こえた。
小夜は、その言葉を無視する代わりに、もう片方の手で、勇音のうなじを優しく撫で上げる。髪の生え際をくすぐるように、指を這わせる。
二方向からの刺激に、勇音の思考は完全に麻痺し、ただ快感の波に翻弄されることしかできなくなった。
「大丈夫よ、勇音。私がすることに、間違いはありません。これは、貴女のための『治療』なのですから」
その呪文のような言葉と共に、小夜は袴の紐に指をかけた。
するり、と音もなく解かれる最後の守り。空気に触れた真っ白な肌が、羞恥と期待に粟立つのが、小夜には見て取れた。
いよいよ露わになった、豊満な双丘。小夜は、その中心に広がる秘められた谷間へと、ゆっくりと、しかし躊躇なく指を沈めていく。
「ひぃっ⋯!あ、あああっ⋯!」
今まで経験したことのない、直接的な刺激。体の中心を貫くような鋭い快感に、勇音は顔を寝具に押し付けて、声を殺そうと必死にもがく。だが、その背中のしなり具合が、彼女が感じている悦びの大きさを、雄弁に物語っていた。
小夜は、その初心な反応を愛おしむように、一度指を離し、今度は耳元に唇を寄せた。
「初めて、ですか?こんな風にされるのは」
「⋯っ⋯」
「ふふ。正直で、よろしい。⋯では、私が、貴女の初めてを、全部貰って差し上げます。この体の感じ方も、声の出し方も⋯全て、私が教えてあげましょう」
そして、今度は、先ほどよりも大胆に。
湿り気を帯び始めたその秘裂を、指がゆっくりと押し開いていく。内側の、柔らかく、熱い粘膜が、小夜の指に絡みついてくるようだ。
「ん、んくぅっ⋯!いや、いやぁっ⋯!こ、こわれ⋯ちゃ、ます⋯!」
「壊してあげますよ。今までの、臆病で、自信のなかった貴女を、私が、ぐちゃぐちゃに」
小夜は、指の動きを止めないまま、空いた手で勇音の顎を掴み、無理やり顔をこちらに向けさせた。涙と涎でぐしょぐしょになった、無防備な顔。侮蔑と、嗜虐心と、そして何よりも濃密な愛情を込めて、小夜はその瞳を見つめる。
「さあ、お言いなさい、勇音。『小夜様、私を、もっとめちゃくちゃにしてください』と」
「む、むり⋯そんな⋯」
「言えないのですか?⋯言えないのなら、この『治療』は、ここでおしまいですが⋯それでも?」
ぴたり、と指の動きが止まる。
与えられかけていた快感の、突然の停止。それは、ある意味で苦痛以上の責め苦だった。体の奥が、疼いて、熱くて、どうにかなってしまいそうだった。
もう、後戻りはできない。この快感を知ってしまった体は、正直に、続きを求めている。
勇音は、羞恥に震えながらも、涙の膜が張った瞳で、小夜を見つめ返した。
そして、か細く、しかし、はっきりと、その言葉を紡いだ。
「⋯さよ、さま⋯っ」
「⋯⋯」
「わ、私を⋯もっと⋯めちゃくちゃに、して⋯ください⋯っ」
その言葉を聞いた瞬間、小夜の顔に、この世のものとは思えないほど、美しく、そして残酷な笑みが咲き誇った。
「ええ、喜んで。⋯私の、可愛い勇音」
その返事を合図に、止められていた指が、それまでとは比べ物にならないほどの、激しく、そして執拗な動きで、再び彼女の秘密の花園を蹂躙し始めた。
もはや、勇音の口から漏れるのは、意味のある言葉ではない。ただ、快楽に身をよじる獣のような、甘い、甘い喘ぎ声だけが、部屋の中に響き渡っていた。
四番隊の白百合が、その花弁を完全に開き、自らの蜜に溺れて、その純潔を散らした、夜だった。