ONE PIECE - 淫色の航路(ハーレム・ルート) - 作:heatmajin
リヴァース・マウンテンを逆流する激流は、もはや俺の船にとっては、ただの通り道に過ぎなかった。
ナミの卓越した航海術と、アルビダの、俺によって強化された超人的な操舵技術。そしてそれを統べる俺の存在。
ゴーイングメリー号はまるで、魔の海域を嘲笑うかのようにいともたやすく、偉大なる航路(グランドライン)へとその船首を滑り込ませた。
双子岬で、巨大なクジラが鳴いていたが、俺は一瞥もくれなかった。
感傷的な過去に生きる者のドラマなど、未来の全てをその手で掴む俺の物語には、不要なノイズだ。
そしてついに、俺たちは偉大なる航路の、最初の島へと到着した。
サボテンの形をした、巨大な岩山が連なる、奇妙な島。ウイスキーピーク。
港に船を着けると、信じられない光景が俺たちを待っていた。
「歓迎します!英雄の皆さん!」
「よくぞ、この島へ!」
町の住民たちが楽器を鳴らし、紙吹雪を舞わせ、俺たちを熱烈に歓迎しているのだ。
その先頭に立つのは、仰々しい髪型をした、町長を名乗る男、Mr.8ことイガラム。
そしてその隣で、愛想よく微笑む青い髪の女、ミス・ウェンズデーこと、ネフェルタリ・ビビ。
ナミやカヤたちは、その予想外の歓迎に戸惑いながらも、嬉しそうな表情を浮かべている。
「な、何だかすごい歓迎ね⋯」
「ふふっ、エロスさんがもうこんなに有名人だったなんて、素敵ですわ」
だが俺は、その偽善に満ちた光景を、冷めきった目で見下ろしていた。
(⋯茶番だな)
前世の記憶がなくとも、この、あまりに都合の良すぎる歓迎が、罠であることくらいすぐに分かる。
こいつらは全員、秘密犯罪会社バロックワークスの、しがない賞金稼ぎども。俺たちの首にかけられた賞金を狙う、ハイエナの群れだ。
だが俺は、あえてその罠に乗ることにした。
なぜなら、そのハイエナの群れの中に、俺が狙う極上の獲物が混じっているのだから。
俺は船を降りると、満面の笑みで俺たちを迎えるイガラムとビビの前に立ち、その差し出された手を握り返した。
「歓迎、感謝する。今宵は、楽しい宴にしようじゃないか」
俺のその言葉に、町の連中は、計画が上手くいったとばかりにさらに大きな歓声を上げた。
俺はその喧騒の中で一人、心の中で、これから始まるショーの筋書きを組み立てていた。
この歓迎の宴を、俺の、静かなる陵辱の舞台へと変える。
そしてあの王女の、完璧に貼り付けられた仮面を、俺の手で、ゆっくりと剥がしていくのだ。
そのための舞台は、もう整った。
◇
宴は、ウイスキーピークの中央広場で、盛大に催された。
テーブルには食いきれないほどのご馳走と酒が並び、陽気な音楽が鳴り響いている。
俺の女たちは、町の連中の巧みなもてなしに、少しずつ心を許し、それぞれの時間を楽しんでいた。
俺もまた一見すると、その歓迎を心から受け入れている、ただの客のように振る舞っていた。
イガラムと酒を酌み交わし、故郷の話に、興味深そうに耳を傾ける。
だがその水面下で、俺は、狡猾な「遊び」を開始していた。
「おっと、グラスが空いてしまったな」
俺がわざとらしくそう呟くと、近くに控えていた、ポニーテールが特徴的な名もなき女エージェントが、慌てて酒瓶を手に駆け寄ってきた。
「も、申し訳ありません!すぐにお注ぎします!」
彼女が俺のグラスに酒を注ぐ。
俺は、その手首を、優しく、しかし逃がさないように掴んだ。
「ひゃっ⋯!」
「慌てるな。礼を言っているんだ」
俺はそう言うと、まるでヨーロッパの貴族が貴婦人にするように、その手の甲を、自分の唇へとゆっくりと運んだ。
そして、その白い肌に、恭しくキスを落とす。
女はその、あまりに紳士的な振る舞いに、一瞬戸惑い、そして気を許したように頬を赤らめた。
その隙に。
俺は、彼女の指に自分の指を絡ませ、誰にも気づかれないように、ごく微量の快楽ホルモンをその身体へと流し込んだ。
「んっ⋯!」
女の身体が、びくりと小さく跳ねた。
彼女の瞳が、驚きと、困惑と、そして自分の意志とは無関係に身体の奥から湧き上がってくる、原因不明の熱に潤んでいく。
「あ⋯あの⋯」
「どうした?顔が赤いぞ」
俺は、何も知らないという顔で、彼女の手を解放した。
女は、何かを言おうとして、しかし言葉にならず、ただ会釈すると、逃げるようにその場から去っていった。
俺はその「遊び」を、宴の間中、ターゲットを変えながら、何度も、何度も、繰り返した。
酒を運んできた女の腰に手を回し、耳元で甘い言葉を囁きながら、その尻に、ホルモンを注入する。
料理を並べる女とすれ違いざまに、その肩を抱き寄せ、髪の香りを嗅ぐふりをしながら、その首筋に、快楽の種を植え付ける。
女たちの、困惑と恐怖と、そして微かな悦びに歪む顔。
俺はその全てを酒の肴として、愉しんでいた。
そして最後に。
俺は、今日の主役である、青い髪の王女の元へと足を運んだ。
「楽しい宴だな」
俺は彼女の隣に、ごく自然に腰を下ろす。
ビビは、俺が他の女たちにしてきた不気味な振る舞いに、内心で強い警戒心を抱きながらも、潜入任務中のエージェントとして、完璧な笑顔を貼り付けていた。
「ええ、本当に。これも、英雄であるあなた様のおかげですわ」
「そうか」
俺は、その言葉に満足げに頷くと、彼女のその細い腰に手を回した。
「ひっ⋯!」
ビビの身体が硬直する。
「な⋯何を⋯!」
「礼だよ。この素晴らしい宴を用意してくれた、君へのな」
俺はそう囁くと、彼女の耳元に顔を寄せた。そしてその、小さな耳たぶを、舌でねっとりと舐め上げる。
同時に、その腰を抱く手に力を込め、微量の、しかし彼女の初心な身体には十分すぎるほどの快楽ホルモンを、直接注ぎ込んだ。
「んんっ⋯!」
ビビの口から声にならない悲鳴が漏れる。
脳が、痺れる。
身体の奥から、経験したことのない熱い何かが込み上げてくる。
これがなんなのか、彼女にはまだ理解できない。
ただ、目の前の男が、とてつもなく危険な存在であることだけを、その身体が本能で理解した。
俺は数秒後、何事もなかったかのように彼女から身を離す。
「⋯どうした?顔が赤いぞ」
俺は、彼女にしか聞こえない声でそう囁くと、席を立った。
ビビはその場に座ったまま、動くこともできない。ただ、耳に残る生々しい感触と、身体を駆け巡る奇妙な熱に、震えることしかできなかった。
イガラムも、他の誰も、俺が彼女に何をしたのか、気づいていない。
彼女の、完璧に貼り付けられた「ミス・ウェンズデー」としての仮面に、小さな、しかし確実な亀裂が入っていくのを、俺はただ愉悦と共に観察していた。
まさに、その時だった。
俺たちの、歪んだ宴の空気を切り裂くように、町の入り口の方角から巨大な爆発音が轟いた。
広場にいた賞金稼ぎたちが、一斉にそちらを向き、騒然となる。
「な、何だ!?」
「敵襲か!?」
俺はその音を聞いても、全く動じない。
むしろ、待っていたとばかりに、その唇に浮かべた笑みをさらに深くした。
(⋯来たか。主役の一人が)
やがて、その爆発の中心から、二つの人影が、ゆっくりとこちらへ向かってくるのが見えた。
一人は、長身で、奇妙なサングラスをかけた男。Mr.5。
そしてもう一人は、黄色いレモン柄のドレスに身を包み、優雅にパラソルを差した女。ミス・バレンタインこと、ミキータだ。
Mr.5が、その場にいる全員に聞こえるように、野太い声で言い放った。
「てめェら、よく聞け!この中に、組織を裏切ったネズミが二匹いる!」
彼は懐から取り出した手配書を、高々と掲げる。
「Mr.8!そして、ミス・ウェンズデー!てめェらの正体は、既にボスに割れている!」
ミキータが、その言葉に、甲高い笑い声を被せた。
「キャハハハハ!残念だったわねぇ!ボス(Mr.0)の正体を探っていたみたいだけど、全てお見通しよ!」
そして彼女は、ビビとイガラムを、その指で正確に指し示した。
「その正体は、アラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビ!そして、その護衛隊長、イガラム!」
その宣言に、広場の空気は完全に凍り付いた。
町の賞金稼ぎたちは、今まで単なる同僚だと思っていた二人が実は王族で、組織の裏切り者だと知り、驚愕する。そして、ビビの首にかけられるであろう、莫大な報酬を想像し、下品な笑みを浮かべ、その武器を一斉にビビとイガラムへと向けた。
ビビとイガラムは完全に包囲され、絶体絶命の状況に追い込まれる。
俺はその、完璧に整えられた舞台を満足げに見渡した。
全ての役者が揃い、主役は絶望の淵に立たされた。
さあ、ここからが俺のショータイムだ。
俺は、ゆっくりと席を立つ。
「アルビダ、掃除しろ。五秒だ。ただし、そこの爆弾男と、空飛ぶ女は俺に残しておけ」
「御意に、エロス様」
アルビダは、その言葉を合図に、一瞬で賞金稼ぎたちの群れへと突っ込む。悲鳴と怒号が上がるが、それも数秒後には、静寂へと変わっていた。
そして俺は、ビビを殺そうと迫る、Mr.5とミキータの前に立ちはだかった。
「邪魔をするな!」
Mr.5は、鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)を、俺へと放つ。
俺は、その汚らしい鼻くそ爆弾が、こちらに届くよりも早く、彼の懐に潜り込み、その顔面に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「汚いものを、俺に向けるな」
Mr.5は一撃で意識を失い、ゴミのように地面に転がった。
その光景を見て、上空から空気が凍るような、冷たい声が響いた。
「⋯⋯よくも」
見上げると、ミキータがその美しい顔を、静かな怒りに歪ませていた。
「よくも⋯!Mr.5を⋯!」
彼女の、パートナーをやられた怒りは、しかしすぐにサディスティックな、歪んだ笑みへと変わる。
「いいわ⋯!その分、あんたには、もっと、もっと苦しんでもらうからね、王女様!」
彼女は、ビビの真上で、その華奢な身体に、絶大な質量を込める。
「キャハハハハ!任務の邪魔をする者は、全て消しちゃえばいいのよね⋯!まずは、あんたからよ!」
「くらえ!”1万kgプレス”!!!」
轟音と共に、彼女の身体が、凶器と化して落下してくる。
だがその凶器が、ビビを押し潰すことはなかった。
俺がその落下点にいつの間にか移動し、差し出した片手で、その全てを受け止めていたからだ。
ズウウウゥゥン⋯!!
俺の足元の地面が、その衝撃で放射状に砕け散る。しかし、俺自身は一歩たりとも動いていない。
「な⋯!?う、嘘でしょ⋯!?アタシの、1万キロを⋯片手で⋯!?」
ミキータの、自信と怒りに満ちた顔が初めて、純粋な驚愕と混乱に歪む。
俺は、彼女の身体を片手で軽々と支えたまま、その美しい顔を見上げ囁いた。
「空飛ぶおもちゃは、まず羽を毟ってやらないとな」
その言葉と共に俺の掌から、濃密な快楽ホルモンが、彼女の身体へと直接流れ込む。
「あ⋯っ!?な、なに、これ⋯!?きゃ、あああああああッ!!!」
彼女の甲高い悲鳴は、すぐに情けない、甘い喘ぎ声へと変わっていく。
「んんッ⋯!あ、ああッ!いや、こんな、感じ⋯!キャハ、ハ⋯ぁんっ⋯♡」
自慢の笑い声すらも快感の波に溶かされ、淫らな吐息と化す。
彼女は、俺の腕の中で白目を剥き、全身をびくんびくんと痙攣させながら、あっけなく意識を手放した。
俺は、そのぐったりとした玩具を、まるで壊れた人形でも扱うかのように、アルビダの足元へと無造作に放り投げた。
その身体はもはや、プライドの高い女エージェントではない。
ただ俺のたった一度の愛撫で、そのプライドごと意識を刈り取られた無力な女だ。
これから俺の手で、どんな音を奏でる人形になるのか。楽しみだ。
そしてその一部始終を、恐怖に染まった瞳で見つめていたビビへと向き直る。
「さて、王女様。邪魔者は、いなくなったな?」
俺のその声に、ビビははっと我に返った。
彼女の目の前にはただ一人、震えながらもその身を挺して彼女を守ろうと立ちはだかる、忠臣イガラムの姿があった。
彼は俺の圧倒的な力を前に、もはや敵意ではなく、畏怖の念をその瞳に浮かべている。
俺はそんなイガラムに、ゆっくりと歩み寄る。
そして、まるで旧知の友人にでも語りかけるかのように笑みを浮かべて、提案した。
「アラバスタ王国護衛隊長、イガラム。お前たちの国を蝕む、その元凶⋯黒幕のクロコダイルを、俺が排除してやってもいい」
「な、なんだと⋯?七武海である、クロコダイルをか!?」
「ああ。その代わり、報酬として10億ベリーをいただく。そして、アラバスタまでの、君たちの護衛も引き受けよう。どうだ?王女一人の命と、王国そのものの未来を救う対価としては、破格の値段だと思うがな」
俺のその提案はあまりにビジネスライクで、先ほどまでの、女を玩具のように扱っていた男のそれとはかけ離れていた。
そのギャップに、イガラムもビビも、混乱する。
だが国の危機を前に、彼らに選択の余地はなかった。
イガラムは、その場で地面にひざまずき、涙ながらにその条件を受け入れた。
「お⋯お受けいたします⋯!どうか、我が国、アラバスタをお救いください⋯!」
ビビは、その光景に安堵しながらも、拭いきれない、激しい混乱の中にいた。
(本当に⋯?本当にお金だけでこの男は動いてくれるの⋯?)
彼女は、宴での、俺のあの身をもって味わわされた、不気味で、そして甘美な陵辱を忘れることができなかったからだ。
あの、耳元を這った舌の感触。
そして、身体の芯を焼いた、あの理解不能な熱。
この男が、ただの金で動くまっとうな傭兵などであるはずがない。
俺は、そんな彼女の疑心暗鬼と、そして微かな「予感」に揺れる瞳を見つめ、にやりと笑う。
そして、差し出した手を、イガラムではなくビビへと向けた。
「契約、成立だな。――ようこそ、俺の船へ、ビビ王女。アラバスタまでの船旅、退屈させないでやると約束しよう」
その声は、どこまでも紳士的だった。
しかしビビには、もうわかっていた。
その紳士的な仮面の下に隠された、本当の顔を。
あの宴で自分の身体に、未知の感覚を刻み付けた、あの捕食者の顔を。
これから始まる船旅が、決して平穏なものではないこと。
そして、自分が支払うことになる本当の「代償」が、金銭などではないであろうことを、彼女は、その身体で既に予感していた。
彼女は震える手で、俺の手を取るしかなかった。
それはもはや、希望への一歩ではなく、逃れられない運命へとその身を委ねる、最初の儀式だった。