※この作品はR-18です。

ONE PIECE - 淫色の航路(ハーレム・ルート) -   作:heatmajin

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第九話:正義の少女、悪党のワルツ

ゴーイングメリー号の航海は、奇妙な安定期に入っていた。

俺のハーレムという「家族」の形は、あの夜の狂乱の儀式を経て、完全に完成した。

女たちは、それぞれの役割を理解し、俺という唯一絶対の王の下で、歪ながらも、調和の取れた日常を送っている。

 

特に、あの生意気だった二匹の猫──ナミとノジコの変化は、見ていて飽きなかった。

彼女たちの口からは、まだ時折、反抗的な言葉が飛び出す。

だが、それはもはや、飼い主の気を引くための、じゃれつきのようなものに過ぎない。

 

「エロス!ちょっとこっち来て、見てよ!次の海流、かなり複雑なんだけど!」

航海士として、すっかり船に馴染んだナミが、俺を呼びつける。その呼び捨ての口調とは裏腹に、その瞳には、俺の知識を頼りにする、確かな信頼の色が浮かんでいる。

俺が、海図を覗き込みながら、その肩に手を置いても、彼女はもう、昔のように大げさに身体を跳ねさせたりはしない。ただ、ぴくりと肩を震わせ、その頬を、ほんのりと赤く染めるだけだ。

 

その様子を、甲板でみかんの木の世話をしていたノジコが、少しだけ、羨ましそうな、そして悔しそうな顔で見ている。

俺が、彼女の元へ歩み寄り、その尻に触れてやると、彼女は「⋯バカ」と小さく呟くだけで、もう本気で抵抗しようとはしない。

その身体は、俺の愛撫を、素直に受け入れることを、覚えてしまったのだ。

 

マキノとカヤの「偽りの姉妹」は、もはや本物の姉妹以上に睦まじく、共に俺の世話を焼き、

アルビダは、俺の剣として、そして奴隷として、その忠誠心を、日に日に深くしている。

 

ああ、実に、快適な船旅だ。

だが同時に、少しだけ退屈でもあった。

そろそろ、新しい「玩具」が欲しい。この完成されたハーレムに、新たな波乱と、新たな音色を加えてくれる、新鮮な獲物が。

 

そんな俺の渇望を、運命が聞き届けたかのように。

ゴーイングメリー号の行く手に、ついに巨大な島影が見えてきた。

東の海(イーストブルー)の終着点。そして、偉大なる航路(グランドライン)への入り口。

 

「⋯ローグタウン。『始まりと終わりの町』よ」

ナミが、少し複雑な表情で呟いた。

俺は、その活気に満ちた町を眺めながら、不敵に笑みを浮かべた。

 

船が港に着くと、俺は、甲板にクルー全員を集めて告げた。

「これより、自由時間とする。ナミ、ノジコ、お前たちは久しぶりの町だろう、好きに買い物でもしてこい。マキノとカヤは、船の備品の買い出しを頼む。金は、ここにある」

俺は、金の入った袋を、ナミへと放り投げる。

「え⋯いいの?」

「ああ。ただし、日が暮れるまでには、必ず船に戻れ。俺を、待たせるなよ?」

その言葉には、有無を言わせぬ圧がこもっている。

女たちは、一瞬、顔を見合わせた後、それぞれに頷いた。彼女たちに与えられた、ささやかな自由。それすらも、俺という支配者の許可があってこそ成り立つ、檻の中の散歩に過ぎないことを、彼女たちは、もう理解している。

 

「アルビダ、お前は俺と来い」

「御意に、エロス様」

 

俺は、女たちが町へと散っていくのを、満足げに見送った。

そして、俺自身もまた、真の目的を果たすために、町へと足を踏み出す。

 

俺の視線の先には、既に次なる獲物の姿が、はっきりと見えていた。

正義という、青臭い鎧をまとった、初心な女剣士。

あの鎧を、俺の手で、一枚ずつ、丁寧に、剥がしてやるのが、今から楽しみで仕方なかった。

 

◇

 

俺は、アルビダを伴い、ローグタウンの喧騒の中を歩いていた。

この町は、海賊王ゴールド・ロジャーが生まれ、そして処刑された場所。そのせいか、他のどの町とも違う、独特の熱気と殺気が渦巻いている。

俺は、前世の記憶と、この町の空気から、目当ての獲物がどこに現れるかを、正確に予測していた。

向かうは、少し治安の悪い東地区の酒場だ。

 

案の定、俺たちがその酒場に足を踏み入れた瞬間、下品な視線が、一斉にアルビダへと突き刺さった。

「おぉ⋯?なんだ、あのイイ女⋯」

「見たことねぇ顔だな。どこの船の海賊だ?」

地元のチンピラたちが、値踏みするように、こちらを見ている。

俺は、あえて彼らの近くの席に座り、酒を注文した。

 

「よぉ、姐ちゃん。一人かい?俺たちと、もっと楽しいことしねぇか?」

すぐに、数人の男たちが、アルビダを取り囲む。

アルビダは、その美しい眉をひそめ、冷たい視線で男たちを一瞥した。

「⋯失せな、下衆ども。エロス様がお寛ぎの時間だ」

「あぁ?エロスだぁ?なんだそりゃ、そのヒョロっちい男のことか?」

チンピラの一人が、俺を指差して、下品に笑う。

 

その瞬間、アルビダの瞳に殺気が宿った。

だが俺は、その肩を手でそっと制した。

「待て、アルビダ。こいつらは、俺が『遊んで』やる」

「⋯御意に」

 

俺は、ゆっくりと立ち上がると、チンピラたちの前に立つ。

「おい、お前ら。今、俺の女に、何と言った?」

「ああん?聞こえなかったのかよ、ヒョロ助!その女を、俺たちに寄こせって言ってんだよ!」

 

その言葉を待っていた。

俺は、笑みを浮かべたまま、男の顔面に肘を叩き込む。

ゴッ、という鈍い音と共に、男は鼻の骨を砕かれ、床に沈んだ。

しかし、俺は、それで終わりにはしない。

倒れた男の腕を掴むと、まるで枝でも折るかのように、逆の方向へと捻じ曲げた。

 

「ぎゃあああああああっ!」

男の絶叫が、酒場に響き渡る。

他のチンピラたちが、恐怖と怒りで、一斉に武器を抜いて襲いかかってきた。

俺は、その攻撃を、まるで舞うように、ひらり、ひらりと躱していく。そして、すれ違いざまに、一人、また一人と、関節を的確に砕き、急所を打って、戦闘不能にしていく。

その姿は、自分の身を守るための正当防衛ではない。

明らかに、相手に最大限の苦痛を与え、その悲鳴を聞くことを、「愉しんでいる」サディストのそれだった。

 

そして、その光景を、酒場の入り口で、一人の女が、愕然とした表情で見ていた。

花柄のシャツに、ジーンズ。赤いフレームの眼鏡。まだあどけなさの残る女剣士。

たしぎだ。

 

彼女の、真っ直ぐな瞳が、俺の「悪」を、確かに捉えた。

「そこまでです!」

凛とした声が、響き渡る。

彼女は、俺と、床に転がるチンピラたちの間に、割って入った。

その目には、チンピラへの憐れみと、俺への明確な敵意と嫌悪の色が浮かんでいる。

 

「理由はどうあれ、その行き過ぎた暴力、見過ごせません!海軍の名において、あなたを拘束します!」

 

俺は、その正義感に満ちた顔を見つめ、心の底から、愉悦の笑みを浮かべた。

(⋯かかったな、純粋なヒロイン)

 

「正義のヒロインのお出ましか。面白い。だが、お前のそのなまくらで、俺が斬れるとでも?」

俺は、床に転がっていたチンピラの一人が持っていた、安物の無銘の剣を拾い上げると、ゆっくりと、彼女に向かって構えた。

舞台の幕は、上がったのだ。

 

俺の挑発に、たしぎの眉が、きりりと吊り上がった。

「その言葉、後悔させてやります!」

彼女は、その腰に差した名刀「時雨」を抜き放つと、迷いのない、一直線の突きを繰り出してきた。

真面目で、実直な、彼女の性格そのものを表すかのような、美しい剣筋。

だが、俺にとっては、あまりにも読みやすい。

 

俺は、拾ったばかりの無銘の剣で、その切っ先を、軽くいなす。

キンッ!

甲高い金属音が、酒場に響き渡った。

 

その瞬間、俺は仕掛けた。

剣と剣がぶつかり合った、その衝撃を通して、ごく微量の「興奮ホルモン」と「快楽ホルモン」を、彼女の身体へと送り込む。

「⋯っ!」

たしぎの身体が、ほんの僅かに、硬直した。

彼女は、自分の身体に起きた微細な変化に、まだ気づいていない。

 

「どうした?その程度か?」

俺は、さらに彼女を挑発し、打ち合いを続ける。

たしぎは、プライドを刺激され、何度も、何度も、斬りかかってくる。

「だまりなさい!」

「遅い!」

「くっ⋯!」

 

キンッ!カンッ!キンッ!

刃がぶつかり合うたびに、俺は、執拗に、繰り返し、ホルモンを送り込み続けた。

徐々に、彼女の脳は、この異常な方程式を学習し始めていく。

「俺との剣戟」=「心地よい興奮」

 

やがて、たしぎ自身も、その変化に気づき始めた。

(な⋯なぜ⋯?)

この男と打ち合っていると、身体の奥が、熱くなる。

心臓の鼓動が、ただの戦闘時のそれとは違う、期待に満ちた音を立てている。

もっと、打ち合いたい。

もっと、この男の剣を、自分の剣で、受け止めたい。

そんな、剣士としてあるまじき、倒錯した衝動が、彼女の心に芽生え始めていた。

 

「はぁ⋯はぁ⋯!」

彼女の呼吸は、戦闘の疲労だけでなく、奇妙な興奮によって、乱れていた。その頬は上気し、瞳は潤んでいる。

その姿は、もはや正義を執行する海軍ではなく、一人の男に夢中になる、ただの「女」の顔だった。

 

俺は、彼女の心が、十分に俺の色に染まり始めたのを確認した。

そろそろ潮時だ。

 

その時、まるで俺の筋書きを知っていたかのように、酒場の入り口から、野太い声と大量の煙が流れ込んできた。

「たしぎッ!何をもたついている!そいつが、東の海(イーストブルー)で暴れているという、例の男か!」

“白猟のスモーカー”の登場だ。

 

俺は、その煙が、俺たちを完全に包み込む直前に、たしぎから大きく距離を取った。

そして、その蕩けたような瞳を見つめ、別れの言葉を告げる。

 

「今日のワルツは、ここまでだ、お嬢さん。続きは、偉大なる航路(グランドライン)でな」

「あっ⋯待ちなさい!」

たしぎが、何かを叫ぶ。

だがその声は、スモーカーが放った煙に掻き消された。

 

俺は、その煙を、まるで存在しないかのようにすり抜け、アルビダと共に、その場から悠々と姿を消す。

「逃したか⋯!」

スモーカーの、悔しげな声が、背後で聞こえた。

 

◇

 

後に残されたのは、静まり返った酒場と、呆然と立ち尽くす、たしぎだけだった。

彼女の身体には、あの戦闘中の、異常なまでの高揚感と、微かな快感の記憶だけが、まるで烙印のように、強く、強く、刻み込まれている。

 

自分の身体に何が起きたのか、彼女には、まだ理解できない。

しかし、その心の奥底で、一つの、抗いがたい感情が、確かに芽生えていた。

 

(もう一度⋯)

もう一度、あの男と、剣を交えたい。

 

その、自覚してはいけない倒錯した渇望が、彼女の正義を、内側から、静かに、しかし確実に、蝕み始めていくのだった。

 

◇

 

夕暮れ時、俺は、アルビダと共に、ゴーイングメリー号へと戻った。

船の甲板には、買い出しを終えた女たちが、既に全員揃っていた。

ナミとノジコは、両手に大きな買い物袋を抱え、満足げな、しかしどこか疲れたような顔をしている。久しぶりの自由を、それなりに満喫したのだろう。

マキノとカヤは、船の食料庫に、手に入れた食材を運び込んでいた。

 

俺の姿を認めると、女たちは、それぞれのやり方で、俺の帰還を迎えた。

マキノは「おかえりなさい、エロス君」と、優しく微笑み、

カヤは「お怪我はありませんか?」と、心配そうに駆け寄ってくる。

アルビダは、俺の後ろで、控えるように直立し、

そして、ナミとノジコは、「⋯おかえり」と、少しだけぶっきらぼうに、しかし確かに、そう言った。

 

「ああ、ただいま。出航の準備はできているか?」

「ええ、いつでもいけるわ。食料も、水も、十分よ」

ナミが、航海士として、的確に答える。

俺は頷くと、船首へと向かった。

眼下には、ローグタウンの喧騒が広がっている。

 

(⋯たしぎ、か)

あの、純粋で、真っ直ぐな女剣士。

俺が植え付けた快感の種は、今頃彼女の中で、どんな芽を出し始めているだろうか。

彼女は、必ず、俺を追ってくる。

「正義」という名の、言い訳をしながら、その身体が求める「快感」に、引き寄せられるように。

次に会うのが楽しみだ。

 

「エロス」

不意に、ナミが隣に立ち、俺に声をかけた。

「どうした?」

「⋯あんた、本当に、私の憂いを、払ってくれるんでしょ⋯?グランドラインに入ったら、アーロンみたいな奴らが、もっともっと、いるんでしょうけど⋯」

彼女の瞳には、まだ拭いきれない不安の色が浮かんでいる。

 

俺は、そんな彼女の腰を、ぐっと引き寄せた。

「ひゃっ⋯!」

「当たり前だ」

俺は、彼女の耳元で囁く。

「お前は、誰の女だ?この、カイン・D・エロスの女だぞ。この世の全ての憂いなど、俺の前では、塵芥に等しい」

 

俺の言葉に、ナミの顔が、赤く染まる。

その反応を、俺は満足げに見届けた。

 

「全員、出航だ!進路は、リヴァース・マウンテン!偉大なる航路(グランドライン)へと、殴り込みをかけるぞ!」

俺の号令一下、ゴーイングメリー号は、ゆっくりと、港を離れた。

東の海(イーストブルー)での「遊び」は、もう終わりだ。

 

これから始まるのは、世界の常識も、法則も、全てが通用しない無法の海。

そこには、どんな気高く、美しい女たちが俺を待っているのだろうか。

 

王女か。

革命軍か。

あるいは、悪魔の子か。

 

俺は、まだ見ぬ獲物たちに思いを馳せ、不敵な笑みを、その唇に浮かべた。

俺の、淫色の航路(ハーレム・ルート)は、まだ、始まったばかりだ。

 

◇

 

その頃、ローグタウンの海軍支部。

一室で、スモーカーは、忌々しげに葉巻の煙を燻らせていた。

「⋯結局、逃げられたか。あの男、ただのチンピラとは、明らかに格が違ったな」

 

その彼の前に、一人の部下が、直立不動で立っていた。

たしぎだ。

彼女は、先ほどの戦闘の後、ずっと自分の執務室に籠っていたが、今、何かを決意したような硬い表情で、ここへやってきたのだ。

 

「スモーカーさん」

「⋯なんだ、たしぎ」

「ご報告があります。先ほどの男⋯カイン・D・エロスと名乗っていた男についてです」

彼女は一呼吸置くと、はっきりと、そして力強く、こう言った。

 

「あの男は、危険すぎます。私がこれまで対峙してきた、どの悪とも違う、根源的な『悪』の匂いがします。このまま野放しにすれば、必ずや、偉大なる航路(グランドライン)で、大きな災いを引き起こすでしょう」

 

その言葉は、海軍としての、純粋な正義感から来るものだった。

スモーカーは、その部下の真剣な眼差しを見て、黙って頷く。

そして、たしぎは続ける。

 

「ですから、お願いします!私に、あの男を追わせていただけないでしょうか!この責任は、私が取ります。私が、必ず、あの男を、グランドラインで捕らえてみせます!」

 

それは、部下としての、見事なまでの「進言」だった。

スモーカーは、その熱意に、少しだけ目を細めた。

「⋯好きにしろ。元より、俺も、あの男をこのままにしておくつもりはねぇ」

 

「!ありがとうございます!」

たしぎは、敬礼すると、部屋を飛び出していく。

その背中を見送りながら、スモーカーは、ふと、一つの違和感に気づいた。

 

(⋯やけに、熱心だな。いつもの奴とは、少し違う⋯)

彼は、気づいていない。

部下の、その正義感に満ちた言葉の裏側で、彼女の魂が、何を叫んでいたのかを。

 

(もう一度⋯)

 

部屋を駆け出していく、たしぎの心は、ただ一つの、倒錯した思いに支配されていた。

(もう一度、あの男と、剣を交えたい⋯!)

 

正義の執行という、絶対的な大義名分。

その美しい仮面の下で、彼女は、自らの身体が求める、未知の快感へと、その足を踏み出していく。

そのことにまだ、彼女自身は、気づいていない。

あるいは、気づかないフリを、しているだけなのかもしれない。

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